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2010年6月23日 掲載
【田中康夫 にっぽん改国】奇兵隊内閣にはびこる“ああ全学連”
“逃げ足の速い奇兵隊”内閣を見ていると、「連帯を求めて 孤立を恐れず」なのだと改めて痛感します。御存知、吉本隆明らと全学連=全日本学生自治会総連合を支援した思想家・谷川雁が生み出した惹句(じゃっく)です。
個人の自立性、主体性を重視し、既成組織の統制を乗り越える為の組織原理と行動原理を意味する、と物の本では解説する件の惹句(キャッチ)を掲げて社会運動を展開した筈の全学連は、内ゲバに象徴される孤立ならぬ分裂に陥ります。
その過程で、純粋なる者は傷付き、厚顔なる者は一過性の“麻疹(はしか)”に罹っただけと嘯(うそぶ)き、「実利主義」の社会人へと転身します。
而(しか)して、菅直人という市民運動、仙谷由人、枝野幸男という学生運動の履歴を有する“三本の矢”は何れも、後者としての人生で栄達を遂げるのです。
“逃げ足”が身上だと自ら高言する宰相のみならず、原告・被告何れの立場で案件に関わるかで、自らの思考回路を一変させ、黒を白とも白を黒とも主張する弁護士出身の官房長官、幹事長の、それは宿痾(しゅくあ)なのでしょう。
早い話、「定見」という哲学や覚悟を持ち合わせていないのです。
と冷徹に捉えたなら、“マニフェスト原理主義”“手続き至上主義”の信奉者だった彼らが、“居直り朝令暮改主義”へと転向し、一行どころか一字もマニフェストに記されず、党内決定どころか党内議論すら行われていない「消費税増税」を、上から目線の国家社会主義的に唱えたのは、予想された軌跡です。
加えて、10%の根拠を問われて、自民党が既に提示した数値だから、と責任転嫁し、導入は早くても数年後だから、と子供騙しの如き甘言を弄する辺り、指導者に不可欠な真っ当さの欠片すら存在しません。腰撓(だ)めの数字でした、と告解した宰相・細川護煕の方が、遙かに誠実でした。
親独的傀儡(かいらい)政府だった第二次大戦中のヴィシー政権にも似て、菅直人政権は増税を目論む国内外の勢力に操られる奇兵隊内閣なのです。
とまれ、僕同様に「『増税で経済成長』は語るに落ちた理屈」と反駁する政治家が、ニャンと亀井静香、小沢一郎、中川秀直、渡辺喜美と、う〜む、想像を超えたレジスタンス戦線を組んで、第22回参議院議員通常選挙は24日、告示されます。
【田中康夫】
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