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2010⁄06⁄23(水) 12:09
官報談合、この「官とメディア」の問題は相当に根が深い
週刊ポストの上杉氏の官房機密費追及記事を取り上げようと思っていたが、今週の週刊朝日の佐藤優氏の≪外交機密費を受け取った新聞記者たち≫は今までの論点とは違う、官僚によるメディア支配とその手口という衝撃的な記事だった。
(週刊朝日7/2号)
リード文
≪官の利益のために世論を誘導する―霞が関がメディアを篭絡(ろうらく)するために使うのは「官房機密費」だけじゃない。外務省もまた「外交機密費」を大いに活用していたのだ。手口は巧妙だ。官僚と記者が育む「黒い友情」の実態を、"伏魔殿"の裏の裏まで知り尽くす男、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏(50)が語った。≫
この中では官僚がどのように新聞記者を手なずけ、手下にしていくのか。官僚の支配下に置かれた新聞記者によってその後なにが起こっているのか、が見えてくる。
佐藤氏も手を染めたという「白紙領収書」問題は、実際に5・6回、200枚以上の白紙領収書を作成したことを告白し、その時は、はっきりと有印公文書偽造で明らかに犯罪であることを認識していたと語っていることには驚くと同時に、外務省の中で組織として常態化、慢性化していたことがよくわかる。
渡しがお小遣いをもらっているわけではないからまあ、こういうことはやってもいい範囲だ」と思ってきたことを佐藤氏は述懐している。
こうしてつくられた白紙の領収書は、海外視察で、首相や外務大臣に同行してきた記者達に配られ、そこにいい加減な数字を書き込んで経費として精算し、お金を受け取る、というなんともミミッちいことを
していたというのだ。
これは90年代なかばで各社が経費節減で厳しくなり、この「白紙領収書」を渡す慣行もなくなったということだ。
その後には外務省のマスコミ対策は変化し、外務省の記者クラブ「霞クラブ」の特定の記者にターゲットを絞り工作し、そこに「機密費」が使われているということだ。
「機密費」から接待を受けた記者は次第にその弱みから、外務省よりの記事を書き、また頼まれたレポートなどもアルバイトで書いていた、ということだ。
各国大使館に配布される「政局レポート」という報告書は「公文書」のかたちで省外秘になっていて、「これは霞クラブの記者に内々に執筆してもらったものです。厳に当省出身の幹部職員のみに回覧してください」という注意事項があり、佐藤氏も度々目にしたとのこと。
こういう協力的な記者を外務省では「与党」と名づけ、それに反して抵抗してくる記者を「野党」として分類している。外務省がまず狙うのは、この「野党」の記者ということだ。
正義感が強く、国民の「知る権利」に応えるという意識が高い"誠実"な記者で、そういう記者には、外務省も誠実なふりをして対応し、徐々に手懐(てなず)けていき最終的には「与党」の記者を増やしていくというのだ。
その徐々にというのが大変巧妙で、佐藤氏も言っているが、「スパイ」が協力者を作るときの典型的な方法だとということで、妙に納得した。
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「野党」に区分けされた正義感あふれ外務省にも公然と批判してくる誠実な記者を、まずは誠実なふりして対応し「野党」から「建設的野党」になっていただいて、ある程度、関係が深くなったところで"悪魔の囁き"をする。
「あなたのような政局動向に通じている記者の見解を、ぜひ外務省の幹部、あるいは在外公館の幹部に伝えたい。匿名でリポートを書いてくれないか」
そして数十万を渡す。これももちろん「外交機密費」から出ているという。
最初はできるだけハードルを低くして攻めて行く。
「新聞の重要な記事のところに、赤で記しをつけてください」
「切り抜きをください」
「切り抜きにコメントを書いてください」
「報道についてリポートを作ってください」
「役所の中の様子を教えてください」
という"本当の狙い"に行き着く。
≪そして、だんだんモノを受け取ることに慣れさせ、その対価としてカネをもらう習慣をつけ、できるところから少しずつ深みにはめていくわけです。いったんこのリポートを書いたら、もう一生終わりです。どんな社も、記者が取材で得た政治家の懇談メモ=表に出さない前提の(オフレコ)メモを使って、官からカネをもらってリポートを書いたことが露見したらクビです。それがわかっているから、そういう記者は、"無二の親友"になる。こうして「野党」側から「与党」側に移行してくる記者な少なくないのです。≫
佐藤氏は、現在報道されている情報で、特に外交問題と検察の特捜部に関連する案件に関しては「9割」が官の側からの情報だと断定している。
そうした官僚側が取捨選択した、官僚の意向に沿ったヨイショ記事など、マスメディアは官製情報とも呼べる情報を垂れ流し、国民のためというより官僚のためのメディアに成り下がっている、といえる。
これについて我々は「暴走検察」でイヤというほど見せられてきた。
それが全省庁にあてはまっている、ということだろう。
元時事通信記者で経済関連記者クラブに所属していた相場英雄氏が、『Business Media 誠 』の中で、政治部記者と官房機密費について次のように書いている。(参照)(http://bizmakoto.jp/makoto/articles/1006/17/news006.html)
≪筆者が接した「ごく一部の政治部ベテラン記者たち(他社を含む)」の中には、有力政治家からもらった高額な宝飾品を誇示したり、はたまた住宅購入に当たり、派閥領袖(りょうしゅう)から頭金の支援を仰いでいたことを嬉々として明かしてくれた人物さえ存在した。こうした人は1人や2人ではなかった。他の同僚、また他社の記者からも同様の話を多数聞いたことがある。政治部の中でも、特に自民党の大派閥担当、あるいは政局取材に強みを持つ記者ほどこの傾向が顕著だったと鮮明に記憶している。要するに、担当した政治家やその秘書、あるいは派閥との結びつきがどれだけ強いかが、記者に対する暗黙の評価対象になっていたからだ。 現在問題となっている官房機密費に関して、筆者は野中氏が指摘した「官房長官の引き継ぎ簿」を実際に目にしたわけではない。誰がいくら、いつ受領したかなど詳細に関しても知り得る立場にない。 ただ先に触れたように筆者が接した「ごく一部の政治部ベテラン記者たち」の事象に当てはめれば、一連の官房機密費問題に対して抱く心証は「さもありなん」であり、「クロ」なのだ。≫
官房機密費や外交機密費なども含め、この「官とメディア」の問題は、相当に根が深い。
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