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梅雨のさなかに選挙はあり、梅雨が明ける前に選挙は終わる。恒例の記者クラブ主催の党首討論会も、思った以上に早く来て、すぐに通り過ぎた。昨年の総選挙の党首討論会はテレビの前で釘づけで見た記憶がある。鳩山由紀夫の2分間スピーチが絶妙で、討論会の中身も盛り上がって非常に面白かった。政権交代への胎動があり、与野党の立場が入れ替わる将来がくっきり見えていた。
今年の討論会は生中継で見なかった。昨年のような政治への期待や興奮がすっかり消え、暗鬱な気分で政治家の言葉と向かい合わなくてはならず、その彼我に悄然とさせられる。昨夜(6/22)の報道ステーションで、討論会の映像を少し紹介していたが、菅直人の言葉は嘘ばかりで実がなく、信用する気分で真面目に聞けないのである。官僚の言葉だ。
そして、権力者の言葉である。騙し、はぐらかし、その場を凌ぎ、選挙を目論見どおりの結果で終わらせることだけが念頭にある。もし、民主党が勝利すれば、選挙前に取り繕って言ったところの、増税の代償措置の「低所得者への負担軽減」や「複数税率」はすぐに忘れ、「消費税10%増税」が国民の信を受けたとマスコミに囃させ、自分もそう宣言し、谷垣禎三が辞任した後の自民党を巻き込んで、来年4月からの引き上げに卒然と着手するだろう。
この選挙は消費税選挙であり、5年前の郵政民営化選挙と同じだ。菅直人が企画設計したシングル・イシュー選挙である。5年前の郵政選挙が終わったときの、小泉純一郎の勝ち誇った顔が浮かぶ。 菅直人は、入念に計算した選挙戦略の日程に従って、公示日の6/24からカナダのサミットに飛び、来週初の6/28に帰国する。
財政再建の国際公約を打ち上げ、そのニュースを国内に流させ、選挙戦の報道と関心の主導権を握る作戦だ。帰国してからも、国際公約としての財政再建をマスコミと連携してプロパガンダするだろう。明日(6/24)公示日のNHKの夜7時のニュースには出演しない。枝野幸男に代役させ、消費税論議をかわすつもりだ。今回、民主党の選挙公約の実体は、マニフェストの紙ではなくて菅直人の口なのであり、野党の批判やマスコミの質問は菅直人本人に向かわざるを得ず、代役の口では用を供さない。
代役の口では、消費税問題について、最初から責任ある説明答弁が期待できないのである。そういう選挙の構図が菅直人によって意図的に細工されている。これから1週間の論戦は、選挙戦の中で最も重要な戦局だが、菅直人はその戦場には姿を現さず、メッセージはカナダから発信するのだ。用意周到である。
とすると、昨日(6/22)の9党党首討論会は、選挙中に菅直人が自身の口で消費税を討論するきわめて貴重な機会だった。にもかかわらず、マスコミの報道の扱いが非常に小さい。マツダの事件の影響もあり、NHKのニュースでも映像は大幅に省略されていた。そして、マスコミの作為があるのかどうか、大相撲の野球賭博関連で報道をびっしり埋めている。昨年も、本来なら最も選挙報道が過熱するはずの時期、酒井法子の麻薬事件で報道が塗り潰された出来事があった。
9党党首討論会の報道に最も多く時間を割いたテレビ朝日だが、一色清が発したコメントは、私が昨日の記事で書いた、「マスコミの思惑は、選挙後に消費税増税の政策大連立を実現させること」の悪い予感を直截に言葉にする不気味なものだった。曰く、「私も討論会の現場に行って聞いていたのですが、民主党と自民党の間には実際には政策上の違いは殆ど無いんですねえ」。
早く大連立を実現させたい衝動を抑えられない一色清は、選挙後は、消費税大連立を扇動する論陣の先頭に立つに違いない。どちらが勝っても、一色清の言う主張は同じだ。民主党と自民党は早く協議のテーブルを作って、来年度からの消費税増税を決定しろ。公約を実行しろ。二大政党の公約が同じだから、マスコミの論者は選挙後の政治解説に悩まなくていい。
今回、菅直人が代表になった民主党は、安保系の政策でも右傾化が顕著で、小沢一郎が代表時に廃止していた憲法調査会を復活させている。消費税大連立の後は、改憲大連立の展望が見えている。マスコミはそれを嗾けるだろう。@消費税、A道州制、B外国人移民、C憲法改正。この四つを一挙に問う解散総選挙が発動されるかもしれない。無論、民主党と自民党の政策大連立の体制下で。
そして、そのときは、衆院の比例定数を80議席削減した上で。今度の参院選は、二大政党制を政策大連立に収斂させ、一党独裁制に移行させる契機となり得る。実際のところ、官僚もマスコミも二勢力に分かれていない。「重要な問題は与野党を超えて」と言えば、誰も異論を唱えず、この国では一瞬で正当化される。
昨日(6/22)の討論会でも、菅直人は、「所得の低い方に大きな負担はかからないで済むような軽減税率とか、消費税負担分をお返しする還付制度も合わせてきちんと考えをまとめていきたい」と言っている。しかし、言葉を見ればわかるように、軽減税率と還付を制度導入すると言っているのではなく、「考える」と言っているだけだ。「検討」が始まれば、すぐに雲散霧消にされるだろう。
何度も同じことを言うが、軽減税率を制度設計するためには行政の準備時間がかかる。財務省は「数年かかる」と言い、要するにこの制度を作業する意思がないのである。来年3月に纏める税制改正の中に、軽減税率や税還付が含まれるはずがなく、財務省側は必ず骨抜きにするだろう。つまり、菅直人の言う「軽減税率や税還付」は根拠のない口から出まかせであり、その場凌ぎの嘘である。
そもそも、軽減税率や低所得者への還付を最初から考えていたのなら、その政策趣旨を所信表明演説の中で言うべきで、参院選のマニフェストの中に入れていなくてはいけない。「消費税10%増税」は公約だと認めているらしいが、「軽減税率と税還付」については、「検討」を公約しただけで実施の公約はされてないのである。有権者を騙すための言葉の道具だ。
野党は、この点についてテレビ討論で集中的に議論を掘り下げるべきで、民主党に説明をさせるべきである。加えて、菅直人の言う「抜本的な税制改正」が何かを糾すべきで、所得税の累進課税や資産課税の強化も嘘であることを明らかにしなくてはいけない。菅直人と財務省の狙いは、最初から消費税増税一本で、それ以外は法人税の減税だけなのだ。
消費税の問題というのは、国の予算の財源の捻出方法の問題であり、「官僚の無駄の削減」の問題と一つであるはずだが、昨日(6/22)の新聞で報道された「国家公務員退職管理基本方針」については、夜のテレビ報道では全く触れられなかった。この天下り容認の政府方針の閣議決定は、まさに衝撃の事実と驚愕するほかない。
参院選の最中に、「無駄の削減」が論議される中で、堂々と天下りが容認され、そればかりか、高級幹部の受け皿として上級の「専門スタッフ職」が用意される中身になっている。予算の無駄の根本は、官僚の天下りと独行法人・公益法人にあり、政権を取ったらそこにメスを入れて外科手術するというのが、民主党の従来の主張だった。
菅直人は、党首討論会で「無駄の削減を続ける」と言ったが、これが心にもない嘘だということは、天下り容認の基本方針が歴然と示している。マスコミは、蓮舫が派手にパフォーマンスする事業仕分けのショーは囃して騒ぐが、このような重大な公約違反の天下り容認についてはテレビで取り上げない。
そもそも、蓮舫の事業仕分けにしても、テレビで撮影されている現場では、「廃止」が連発され、官僚たちが水戸黄門の印籠の前で跪かされているようであり、見ている国民は気分爽快になるが、事業仕分けのショーが終わればそこまでで、「廃止」と白板に書かれた事業は実際には廃止にはならないのである。「廃止の方向」とされただけだ。廃止させるためには国会で法律の手続きが要る。法律を作るのは官僚であり、官僚と民主党は裏で手を握っていて、「廃止」はパフォーマンスだけの宙づりで終わる。民放テレビの「ハコモノ叩き」特集のガス抜きと何も変わらない。
天下りを容認する「国家公務員退職管理基本方針」が、この時期に閣議決定されるのは、来年度予算と関係しているからである。来年度の人員計画に影響する。去年の今頃、官僚たちはさぞかし肝を冷やして、新政権の誕生に戦々恐々だっただろうが、結局、天下りは安泰で、先輩たちと同じコースとサラリーを保障される落着となり、政権交代の発生による「突然の不幸な運命」を免れた。
政権交代など、何も恐くはない。6月は来年度予算の重要な指針が決まる時期で、この「公務員基本方針」もそうだが、6/18に閣議決定された「新成長戦略」と「法人税減税方針」もそうである。閣議では、法人税率引き下げ(40%→25%)の時期は明示されなかった。時期を明示しなかったのは、この法人税減税が消費税増税とセットになっているからで、参院選で消費税10%増税が国民の信認を受ければ、直ちに国会(自民党)と税調で取り纏め、来年4月から同時にスタートさせる気だ。
官僚には官僚の国家事業計画があり、それは経団連と米国に冨を分配して奉仕し、さらに自分(官僚貴族)が冨を貪るためのもので、国会や政党や選挙はそのための単なる形式的な手続きに過ぎないのである。官僚が作成し実行する国家事業計画には、下賤の国民の意思は介入させない。この法人税率引き下げと消費税率引き上げのセットの問題については、共産党だけが指摘していて、マスコミは当然のこと、他野党も口を噤んで何も言おうとしない。共産党だけが言うから、それは市民が耳を傾ける必要のない異端宗派の念仏になり、一般社会では正論として聞いてはいけない危険で邪悪な情報となる。見ざる言わざる聞かざるの禁忌対象となり、誰もその問題を正面から議論できなくなる。
菅直人が政変で首相になって3週間、雌伏していた新自由主義者が奪権して、凄まじい勢いで「構造改革」路線を復古させている。例の、消費税を上げる前には衆院を解散して国民に信を問うという話も、おそらく嘘だろうし、参院選の開票後はきれいに忘れているだろうが、気になるのは、参院選後の消費税の政策大連立を契機に、そのまま2党の政権大連立に直進した場合で、その場合、衆院の300小選挙区は、候補者擁立の段階で2党間で調整がされ、殆どの候補が無風で当選する事態となる。
当然、選挙は消費税のシングル・イシューで、形式的な国民投票のような形態になる。民主か、自民か、1名の候補を2党で応援する。その場合、小沢派の民主党現職の中で消費税増税に反対する者が出て、菅執行部が公認せず、本部から刺客が送られる展開が考えられる。そうした推移を考えると、菅直人の頭の中では、9月の代表選前に解散総選挙を構えていて、それまでの間に自民党との間で消費税の大連立を組み、2党の選挙協力を固めるという最悪の予想が成り立つ。
報道を見ていると、すでに京都や長野の2人区はそういう骨肉の状況に突入していて、小沢一郎が発掘してきた女性新人候補が、消費税に断固反対の姿勢を強調し、さらに普天間の辺野古移設にも反対を訴え、社民党の票の受け皿になる選挙を展開している事実が報告されている。一つの選挙区を右派(菅派)と左派(小沢派)で分けつつ死闘を演じている。小沢一郎も、菅直人も、他の民主党関係者も、これは前哨戦だと思っているだろう。次の総選挙は民主と自民が大連立する可能性がある。争点は消費税。そして、民主党が小沢派と執行部派の分裂選挙になる。さらに、政策軸で分かれた右派と左派の戦いとなる。
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