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2010年6月17日 掲載
外務官僚 メンツ丸潰れの右往左往
中国大使を民間人に奪われて…
伊藤忠商事の丹羽宇一郎相談役(71)が17日、中国大使に就任する。主要国の大使に民間人が就くのは、50年代の米国大使とフランス大使以来、実に半世紀ぶりの大抜擢人事だ。
今回の人事、どんな経緯で決まったのか。外交問題に詳しいジャーナリストの歳川隆雄氏が言う。
「岡田外相は、次官経験者の大使就任を禁じるなど政治主導に本気で、最初から民間人起用を決めていました。丹羽氏を岡田外相に推薦したのは、中国通で知られる経済同友会幹事の小林陽太郎氏(富士ゼロックス元会長)で、外相は2カ月ほど前から秘密裏に打診していたらしい。外務省内の人材難も理由としてあった。中国大使はこれまで、3代続けて省内の中国専門家『チャイナ・スクール』から出ていたが、宮本雄二前大使の後に適任者がいなかったのです」
民間人大使の拡充を主張している菅政権は、ギリシャ大使にも元野村HD副社長の戸田博史(58)を起用した。
大使は外務官僚なら誰でも目指すポスト。長年、官僚の“指定席”だった大使の座を次々に民間人に奪われ、外務省内には動揺が広がっている。パニック寸前だ。
元レバノン大使の天木直人氏がこう言う。
「とりわけ米国やロシア、中国など主要国大使のいすは、外務官僚の出世レースの終着点と言っていい。主要国の大使は潤沢な機密費や大使館の経費が使えるなど、ケタ違いの待遇が与えられます。それだけに、この人事に対する外務官僚の衝撃は相当です。このままでは、米国大使やロシア大使のポストも奪われるのではないかと、戦々恐々でしょう」
●年収5000万円“宮殿”暮らしの特権もパー
外務官僚が失うことを恐れている大使の特権とは、何なのか。庶民が聞いたら、卒倒するほどすさまじいものだ。
「大使を3年やれば都心に家が建つといわれています。本俸の2000万円でも十分にスゴいが、手当がハンパじゃないのです。在勤基本手当だけで年間924万円。子女教育手当が年間172万円、このほかサラリーマンの月給並みの配偶者手当や住宅手当など、トータルで年収4000万〜5000万円に膨れ上がる。手当だけで生活してもお釣りが来るのです」(外交ジャーナリスト)
大使公邸はテニスコートやプール付きの大宮殿。大使は現地でメイドを雇い「閣下」なんて呼ばれている。実際、前大使の宮本氏の傍若無人ぶりにはア然だった。
大使公邸の隣の工事の騒音がうるさいからと、北京市内の超一流ホテルに隣接するレジデンス暮らし。その滞在費用は年間1400万円だ。さらに、大使館まで10メートルの距離しかないのにリムジンで通勤していたのである。そんな王侯貴族のような生活を失うのだから、悲鳴が上がっているのだ。しかも、夫婦関係が険悪になるのも必至だ。外務省事情通が言う。
「外交官夫人は、亭主の肩書によって身分が決まるヒエラルキー社会です。大使夫人になれば、周囲からチヤホヤされ、王妃のような暮らしが約束される。そのために、外交官夫人は教養を身につけ、おしゃれと美容にカネをかけ、社交の場で上司の妻を持ち上げてきたのです。それなのに、大使夫人になれないとなると『今までの私の努力は何だったのよ』となる。女房からは一生イヤミを言われるでしょう」
たかが公僕である外務官僚に、半ば自動的に、こんな特権が与えられていたことがおかしいのだ。見直すのが当たり前である。今回の人事には、「ザマーミロ!」と拍手喝采している国民が多い。菅首相、岡田外相は官僚の抵抗に負けず、既得権益にどんどんメスを入れるべきだ。
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