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菅直人新首相はさる11日開かれた衆院本会議で初の所信表明演説を行ったが、失望を禁じ得ない。超党派での「財政健全会議」の設立を求めるなど、破綻した小泉・竹中改革路線(実態は超緊縮・超金融緩和政策)を裏で画策した財務省の意向をそのまま代弁するものだったからだ。
文字数に限りがあるので、ここでは特に問題の多い「経済・財政・社会保障の一体的立て直し」に焦点を絞る。菅首相は、公共事業中心の「第1の道」、供給サイドに偏った生産性重視の「第2の道」がいずれも失敗したとして、消費税増税による税の増収を財源に、社会保障給付を中心に政府支出を拡大し、国民の購買力を高めることによって経済成長を促す「第3の道」を採ると表明している。
ここで問題なのはまず第一に、第1の道は実は成功していたと言うことだ。3%の実質経済成長率を実現した1996年度には、それまでの景気対策が功を奏して内需主導型の自律的な景気拡大が実現、90年以降のバブル崩壊不況を克服しかけていた。それを破壊したのが、消費税率を3%から5%に引き上げるとともに公共投資を抑制するなど総額11兆円規模のデフレ政策を強行した97年度予算である。
その結果、景気は急激に後退、翌98年の平成金融恐慌を招くなど、散々な事態に陥った。財務省の政策を実行させられた橋本龍太郎首相は98年夏の参院選で敗北を喫し、退陣した。後年、97年度の緊縮財政は「大蔵省(現財務省)に騙された」として失政を認めているが、財務省は未だに認めもせず、責任も取らない。
さらに、90年代後半の自自連立政権の時代に、自民党の亀井静香政調会長などの尽力で財務省を説き伏せ、積極財政に転じて景気対策を発動したことで、2000年度には税収が前年度の47・2兆円から50・7兆円に回復したものの、森喜朗政権以降、緊縮財政をとり続けたために景気は再び失速したという例がある。財務省はいつも景気が良くなりかけていた時に緊縮財政を時の政権に強要し、性懲りもなく景気回復を頓挫させてきた失敗を繰り返している。
「第2の道」については何故、失敗したのか理由を説明していない。小泉政権以降の歴代自公政権が、「超緊縮財政・超金融緩和・円安バブル政策」を採用したため、@景気回復が輸出偏重の極めて脆弱な構造になってしまったA投資資金の対米流出を招いて米国の住宅バブルを助長、リーマン・ショック(国際金融危機)の共同正犯者になったBリーマン・ショックを受けた景気の落ち込みが世界で最もひどくなったーなどの問題を惹起したのである。
「第1の道」、「第2の道」の失敗の責任はいずれも、財務省にある。財務省の失政による経済苦で国民の自殺者が急増している。そんな財務省に乗せられて「第3の道」を唱えても信用できない。この「道」の問題は、@逆進性の強い消費税を増税すれば、消費性向の高い庶民には大きな打撃で、トータルで見て景気抑制効果をもたらすA本来ならば、所得税の累進制を強化して消費性向の低い高所得者層から中・低所得者層に所得再配分を行うべきであるB不要な歳出を大胆に削減し、歳出構造を抜本的に改革するという民主党の公約の放棄を宣言するものであるーなどだ。
市場原理主義者のグループである陵雲会(前原グループ)や花斉会(野田グループ)に占められた菅直人新政権は理念・政策的にも組織的にも財務省主導の市場原理主義・財政再建原理主義に基づく「小泉構造改革路線」に先祖返りする可能性が高い。これは、昨年(2009年)夏の総選挙で民主党を選択した国民に対する裏切りである。夏の参院選、9月の民主党代表選が政局の焦点になる。
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