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「戦略なき制裁」からの脱却を【哨戒艦事件でまた遠ざかった「拉致問題の解決」】:蓮池薫(マガジン9)
http://www.asyura2.com/10/senkyo88/msg/691.html
投稿者 クマのプーさん 日時 2010 年 6 月 17 日 15:55:09: twUjz/PjYItws
 

http://www.magazine9.jp/other/isezaki/index5.php

(その1)
蓮池透さん
「戦略なき制裁」からの脱却を


蓮池透●はすいけ とおる 1955年生まれ。1997年より2005年まで「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」事務局長を務めた。著書に『奪還 引き裂かれた二十四年』『奪還 第二章 終わらざる闘い』(新潮社)『拉致 左右の垣根を超えた闘いへ』『拉致2 左右の垣根を超える対話集』(かもがわ出版)がある。


 今年の3月に、「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会(家族会)」を除名になりました。会の側は「退会を承認する」とか曖昧な表現をしていましたが、事実上の除名です。北朝鮮に対しては制裁一辺倒ではなくて対話を通じて交渉するべきだという私の主張が「まかりならん」ということで、ずいぶん話もしたのですが、こういう結果になりました。

 非常に残念なことではありますが、そうすることで拉致問題の解決が進展するという会の判断であれば、それは甘んじて受けるしかないと思っています。また、除名されたからといって私は自分の主張を変えるつもりはありませんし、これからも自分なりの考え方を皆さんに伝えていけたらと考えています。


◆哨戒艦事件でまた遠ざかった「拉致問題の解決」

 私が一番まずいなと思っていたのは、「拉致被害者救出」という美辞麗句のもとで、「北朝鮮を打倒しよう」という考えが根底にある人たちに家族会の活動がコントロールされていることです。それでは、この問題はいつまで経っても解決に向かわないと思ったんですね。それが『拉致』という本を書くことになったきっかけでもあります。

 マスコミも政府も今、家族会というものを聖域化してしまっているところがあって、なかなかそれを批判するようなことが言えない、やれない。そしてそれはそもそも、拉致問題の解決が遅々として進まない、解決のための政府の政策がまったく見えないというところに端を発しているのではないかと思います。

 そういうことを考えていたところに、例の韓国の哨戒艦沈没事件が起こりました。ことの真偽は私にはわかりませんが、日本政府の対応は非常に素早くて、昨日(5月28日)には北朝鮮への追加経済制裁措置が発表されました。

 この追加制裁というのは、非常に家族会には受けがいい。そして、そこにはずっと「家族会の意向」を言い訳にして制裁を続けてきた日本政府の無責任さが非常に表れていると思うんです。さらにまた、普天間基地の問題を抱える鳩山政権にとっては、とてもタイミングのいい事件でもあった。沖縄の米軍基地の有効性を示す理屈付けに、この事件がうまく利用されたということは否めないと思います。

 でも、まだ国連も動いていないのに、単独で制裁をするのではまた北朝鮮を刺激してしまうことになるだけではないのか。それにそもそも、今回の事件は軍隊と軍隊の間で起きたもので、テロではない。安保理に制裁決議を求めるとかいうよりも、国連が仲介して南北の和解の方向に持っていくといった方法をとるべきではないかと感じています。

 今回の事件で朝鮮半島の緊張が高まったことによって、また拉致問題の解決は2〜3年は遠のいたな、というのが私の意見です。本来、南北朝鮮間はずっと戦争状態にあって、こういう事件がいつ起きてもおかしくなかったわけですから、日本政府にこれだけ素早く経済制裁に動くだけの能力があったのなら、拉致問題そのものの解決にも、もっと早く動いてほしかったと、とても残念でなりません。


◆経済制裁には「戦略」が必要

 私もかつては、北朝鮮に対しては強硬な姿勢を取るべきだと言い続けていました。しかし同時に、経済制裁をやるならやり方を考えてやってほしい、とも言ってきたし、政府にもそうお願いしてきたつもりなんです。

 つまり、どう経済制裁をやったら、北朝鮮にどんな動機付けが働いて、どういうメカニズムで拉致被害者が日本に帰ってくるのか。それをきちんと考えた上で、戦略的に制裁を行うべきだ、ということです。しかし、実際に経済制裁が行われた際には、その有効性とか戦略とかいったことが、まったく考えられた節がない。むしろ、制裁の発端となったのは2006年の北朝鮮による弾道ミサイル発射や核実験であって、拉致問題については理由として後付けにされたに過ぎません。

 北朝鮮が日朝首脳会談で拉致問題の存在を認めたのは2002年9月17日ですが、それ以前、日本の国民はほとんど拉致問題——というより北朝鮮という国に関して無関心だったと思います。それが「9・17」を境にして、それまでの日朝関係など過去のことはまったく知られないままに、とにかく 「この平和な日本の国土から善良な市民を連れ去る北朝鮮はけしからん」という世論が爆発してしまった。そして「強硬に出ろ」「制裁だ」という威勢のいい発言が支持されたということだったと思うんですね。

 しかし、それが単なる「行方不明事件」だったときならともかく、いまやこの問題は国際問題であり、外交問題、政治問題です。そうである以上、拉致ということのみをピンポイントで捉えて、一方的に帰せ帰せと主張をしてるだけでいいのか。まずは日本と北朝鮮、そして朝鮮半島の長い歴史をひもとき、俯瞰する。その中で拉致問題をどう位置づけ、どう扱うのかを真摯に考えなくては問題は動かないのではないかと思うんです。

 弟は北朝鮮にいたときに、「おまえらは昔何十万人も拉致したんだから、10人やそこら拉致してきたってどうってことないんだ」ということを何度も言われたそうです。もちろん「それとこれでおあいこだ」という話ではない。でも、日本政府は今まで、そういうふうに北朝鮮側に昔のことを言われると、どこか腰が引けていたんじゃないでしょうか。そうではなくて、「昔あんなことをやったじゃないか」と言われたら、「それに対してもちゃんと対処する」と、自信を持って言えるくらいの準備をしてほしい。そこでやっと初めて、対等な立場で交渉ができるはずです。

 その上でまずは北朝鮮から、「真実は何か」ということを語らせる、そこから交渉に入っていく。「テロ国家の言うことなんて信用できない」とも言われますが、私たちが真相を知るには、彼らに語ってもらうしかない。それを交渉の中で検証していくしか方法はないはずです。

 そのために、とにかく相手のことを、互いの歴史観なども含めてよく知る、そして理解しあうこと。ここで言う「理解」とは、相手の言っていることを理解するという意味ではありません。彼らがなぜそういうことを言うのか、その発言の背景になっているのはどういうことなのか、彼らの「視点」を分析し、知るということなんです。


◆政府が家族と同じ目線であってはいけない

 そんなふうに、ともかく形の上だけでもお互いへの信頼感を醸成して、話し合って譲歩しあう。そう言えば、弱気だ、甘いと言われるかもしれません。でも、「あんなやつらと対話しても始まらない」と言う人には、じゃあどうするのか、と聞きたい。「あんな国はつぶしてしまえ」ということになるのかもしれないけれど、じゃあ北朝鮮をつぶせば拉致被害者は帰ってくるのか。帰せ帰せと拳を突き上げるだけで、「その先」についての思考が凍結してしまっているように感じるんですね。

 もちろん、拉致被害者の家族が感情的になるのは当たり前です。でも、政府がそれと同じ水準の考え方であってはいけない。場合によっては、世論や家族の意向に反してでも、「これだ」と思うような政策をとる必要がある。そうでなくては、きっちりした外交なんてとてもできないのではないでしょうか。

 対話とか交渉というのは、非常にタフなものだと思います。経済制裁なら書類にはんこを押して各省庁に指示を出せばできるけれど、交渉となれば、互いに国益と国益をぶつけ合ってディベートをやるわけですから、相当大変なことでしょう。日本政府はずっと、そういうことを回避しているのではないか。「制裁さえやってれば、世論は満足するだろう」というような考えで、あえて交渉を避けてきたんじゃないのか。——これまでの政府の対応を見ていると、そうとさえ思えてきてしまうんです。

 

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コメント
 
01. 2010年6月17日 17:48:55: YwjQmT2ZP2
北朝鮮外交による拉致被害者の救出については、小泉純一郎氏が途中までやって止まってしまっていますので、現政権から小泉純一郎氏を特使として派遣して交渉に当たらせるというのはどうでしょうか。
小泉氏にはすでに被害者救出の実績があるし、小泉氏のお父さんは九州出身で在日朝鮮人だということですので、拉致問題の交渉専門員としては適任だと思うのですが。


02. 2010年6月17日 19:12:56: kIGHMeEoMM
彼の国との関係は中国に調停してもらうのが良い。

中国を怒らせ、ナショナリズムをあおった御仁に問題を解決する意思はあったのだろうか?

どちらにしても、米国の顔色を見ながらの交渉は、あの御仁や害務省役人には無理でしょう。


03. 2010年6月17日 20:15:06: BNZdwRc6wQ
懐の深い政治的リーダーシップが要るね。いないだろうが。

04. 2010年6月17日 20:15:06: 0OoBol3Xks
蓮池氏の意見は同意できるけど、家族会のアピールデモ、これはないよね。
いったい家族会はなにをしたいのかさっぱりわからない。
制裁を強めろといいながら交渉が一向に進んでいないと言ったり・・・
家族会をあのように分けがわからなくさせているのは世話人のブルーリボンのあの連中の入れ知恵だと思うけれど、官邸前でやったデモ行進とやらをテレビでチラリと見たけど正直呆れた。

民主党政権になっても進展がないと憤るけれども、自民党時代も含めて制裁に効き目がないことは分かっているのに北朝鮮憎しで制裁から北の打倒という誇大妄想まで口走っていた家族会の増元氏の発言がそもそも交渉の窓口を閉ざしているのに今更進展も何もないだろうと思う。
こりゃ迷走というより悪あがきです。言い方が悪くてすみませんけど。


05. 2010年6月17日 20:27:55: 5v1vBHn9BE
拉致被害者のご家族の方が問題の本質に気付かれ、それを公表されるということは
非常な勇気を必要することであり、畏敬の念に堪えません。
残念ながら、対米追従一辺倒という日本政府の基本方針に変化が無い限り、
この問題の平和的解決は不可能であると言わざるを得ません。
といって軍事的手段による解決はより困難でしょう。
ハリウッド映画のように、相手は筋書き通りに動いてはくれないのです。

06. 2010年6月18日 11:24:58: a3ZqR8iWaU
拉致問題は制裁では決して解決しないと考えます。

なぜならこの問題は「拉致被害者の家族の方々が納得できる結論」が得られない限り、永遠に未解決のままだからです。北朝鮮側がいかなる結論を発表しても、心情的に家族の方々がそれを信用することはあり得ないでしょう(加害者の発表を被害者が信じるわけがありません)。それでは拉致被害者の家族の方々が納得できる結論とはどうしたら得られるのか考えなければなりません。

答えは一つ、被害者側が調査に参加して真相を究明するしかないでしょう。

これは日本側の調査団(可能であれば拉致被害者の家族の方々自身を含む)が現地に入れる体制を整えなければ決して実現することはありません。そのためには北朝鮮との国交を正常化するのが必須の条件でしょう。誤解ないように付け加えると、国交を正常化するとは北朝鮮の拉致を認めることと同義ではありません。互いに腹を割って問題を解決するために必要なことなのです。拉致問題とは拉致被害者の方々だけの問題ではなく、日本が今後北朝鮮とどのように向き合っていくべきかという問題なのです。

日本には2つに1つしか選択肢はありません。

@北朝鮮敵視を続け永遠に互いに相容れない関係を望む
A北朝鮮と正面から向き合いお互いの問題を修復することを望む

結局は国民がどちらを望むかで結論が出ることだと思います。
(私はAを望みます)
敵視政策など愚の骨頂で、拉致問題も国家間の問題も決して解決はしないでしょう。@の方法では、一方の国家が一方の国家を滅ぼし服従させることがない限り解決はないでしょう。それがいかに難しくバカバカしいことか落ち着いて考えれば分かることです。敵視政策を敷くことで恩恵が得られ、笑いが止まらないのは戦争屋くらいでしょうね。拉致被害者の行き場のない心情も、もしかしたら利用されているのかもしれません。


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