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2010年6月11日 (金)
小沢一郎氏を再浮上させるしかない
日本人には信義を重視する国民性が伝統的にある。信義とは真心で相手との信頼を破らず、約束を遵守し尽くすという姿勢だと思う。幕藩体制の江戸時代、明治以降の立憲君主体制、先の戦争以前、直後も含めて日本人の道徳としてこの信義は生きていた。時代がどうであろうとも、人間個々の間、志を等しくする集団内部では、強い信義が働いていた。これは日本人に限ったことではなく、万国共通の社会原則である。
戦後のわが国は、尊皇教育と記紀神話教育が断絶したために、日本固有のアイデンティティを形成し、それを次代に継承していく力が徐々に希薄化した。アメリカの価値観を踏襲した世界観が蔓延したために、本来の道義や規範意識がおろそかになった。これは東京裁判史観を基軸とした戦後教育の悪しき成果だが、現今の民主党にもそれが露骨に出ている。今、鳩山前総理や民主党全体が真に問われているのは、小沢一郎氏に対する信義の欠如である。
民由合併がなされた2003年以来、民主党は小沢一郎氏の働きで、有象無象の集合体であった党をきちんと政党として世間に認知させ、昨年はついに総選挙を制覇して政権交代を実現した。小沢一郎なくしてこのような展開は到底できなかった。小泉政権以降の自公政権は国民生活を犠牲にして、一部の富裕階層を富ませ、一方では米系国際金融資本に国富を恒常的に移転する構造を設けた。このため、生活の窮乏に直面した国民は小泉・竹中構造改革路線が志向する破壊的な本質に気付いてしまい、自公体制に代わる国民生活重視の新体制を希求した。この悲痛な国民の叫びを吸収し、応えたのが小沢一郎氏であった。
悲願であった政権交代が小沢氏の力量と努力で成し遂げられ、民主党は政権与党の座に着いた。普通なら多少の政治信条の差異や齟齬を越え、一致団結して旧弊政治の刷新に邁進するところだが、党内で小沢氏を牽制する勢力が常に足を引っ張った。アメリカ、それに追随する「官僚国家ヤクザ」やマスコミは、強力な小沢包囲網を形成し、小沢一郎氏の完全排除を目的として弛まぬ攻撃が推進された。反小沢派は、実体なき虚妄の政治資金疑惑に相乗し、それを増幅させる計略に加担した。小沢一郎排除計画である。これは菅直人氏と鳩山由紀夫氏の謀反によって完成した。
ただ、鳩山氏の変節はあまりにも異常であり、推測すれば、CIAか横田幕府が直接働きかけて鳩山氏を脅迫した可能性がある。そういう外力を想定しないと、鳩山前総理が行った小沢氏抱き合わせ心中は解せないものがある。中丸薫女史は、ベンジャミン・フルフォード氏との対談本『泥棒国家日本と闇の権力構造』(徳間書店)で、「横田幕府」について次のように語っている。
「いうことをきかない政治家を、たとえば竹下さん(元首相)も、お金のことでいろんなことがあったときに、MPが横田に連れていったそうです。飛行機に乗せて、太平洋の真ん中まで行って、「ここから落とす」といわれて、「イエスかノーか」と脅迫されたと聞きました。
今だって、お金のことでいろんな問題があると、MPが連れていって、ヘリコプターで宙づりにして、顔を海に何回も浸けるそうです。」(P236より)
自民党の竹下前総理大臣は、“横田基地のMP”に連行され、太平洋上で突き落とすと脅されたと言う。俄かには信じ難い話だが、横田基地のMPについて、私は思い当たることがあった。この本が出版されたのは、2005年の9月だが、小渕恵三前総理が亡くなった2000年当時、私は横田基地のMPと接触したある人物の体験記を偶然耳にしていた。その人物(M氏)は横田基地の或る将校と懇意にしていて、MPの話題になったそうである。その時、将校は、もし東京都内で不穏な動きがあった場合、横田のMPは日本の警察よりも素早く、機動的に現場に到達して武力制圧できると言ったそうである。それを聞いたM氏は、そんなことは嘘だろうと懐疑の念を表わした。
それに対し将校は、今からそれを証明して見せると言って、どこかに電話をかけた。すると15分ほどして、数十名のMPを載せた軍用車両が、二人のいる場所に到着し、完全武装をしたMPが降車して勢ぞろいしたそうだ。デモンストレーションである。M氏は度肝を抜かれ、日本の首都東京は横田基地の制圧下にあることを痛感したそうである。この話の真偽を確かめる術はなかったが、私は真実であると確信した。だから中丸薫女史の上記の話は具体的な迫真性をもって訴えてきた。鳩山前総理の極端な変節は、もしかしたら彼にこの類の脅迫があったことを思わせる。
もうひとつは田中宇氏も言っているように、韓国哨戒艇「天安」の沈没事件が、日米安全保障条約の恒久的堅持を目的として、米国がやった謀略の可能性を見る。半島有事の恐怖を醸成して在日米軍の存在価値を強調した。日米安保の存続は米国にとって重大要件である。それは駐留米軍を置いて日本を軍事的属国下にすることで、毎年数千億円もの莫大な思いやり予算や、日本国富を手中にできるからだ。小泉政権もその構造の一角であった。米国は日本に米国への富の移転が恒常的に行われるように、日本市場や社会制度の改変をやっている。
中丸女史が言うように、日本の宰相がこれに抗った政策を強行しようとした場合、横田基地の暴力が為政者を襲う可能性は充分に考えられる。あるいは田中角栄前総理大臣のように巨大な疑獄事件に嵌められることになる。経済学者の植草一秀さんは、小泉政権という、米国が設定した売国構造改革を果敢に攻撃したために国策捜査に嵌められている。マスコミが属国日本の現状を語らないので、国民は現在のデフレ不況や国民への再配分が極小化している最大の原因がどこにあるか、実感できないでいる。それは日本の優良資産や労働成果をむしり取る目的で、アメリカの内政干渉が継続しているからだ。つまり、日本の不幸は従米被占領国家の現状から脱却しなければ、いつまで経っても終わらないのだ。誰かが米国離脱の狼煙を上げる必要がある。
小沢一郎氏の真骨頂は脱米自主独立構想の実現であった。だからこそ、彼は執拗に集中的に叩かれ、排除されることになる。国民生活の建て直しは、米国支配に対して非軍事的に立ち向かうことである。一番理想なことは国民の総意で自主独立軍隊を持つことであるが、日本人は戦争のトラウマが強く、軍隊アレルギーがある。田中角栄氏は非軍事的な脱米を試みてアジアとの結束を志向し、中国と国交回復をした。小沢一郎氏も脱米の力学を親中国や親韓国に求めた。これについては反感も強く諸説あるとは思うが、冷静に考えてみれば、それ以外に現状における脱米の有効な打開策はない。
私は平沼赳夫氏が亀井静香氏の呼びかけを蹴り、結果的に与謝野馨氏らと合同した時は、少なからずショックだった。小沢氏の包括的脱米志向が中国や半島の力を当てにしている以上、平沼氏らの伝統右翼勢力が中国・半島勢力の日本侵攻を牽制する力になり、外国人参政権や人権擁護法案等、日本の国体を蚕食する法案を阻止する力になるからである。日本の自主独立の原則は、東京裁判の呪縛からの解放とアメリカ支配からの脱却である。小沢氏はこれを行うために田中角栄氏と同じ轍を歩んでいる。だからこそ、平沼氏や城内実氏ら真正保守の助力が大きな意味での脱米志向を補佐し、中国や半島の日本侵略を土俵際で食い止めることが有効だ。亀井静香氏はそこまで考えて平沼氏に呼びかけたと思える。
アメリカの収奪主義から離陸するためには、一時的に中国や半島を味方に引き入れ、その外力てアメリカを押さえる力学が必要だ。自主軍隊を作る選択肢がないなら、その方向しかないだろう。汎アジア主義、大アジア主義である。親米保守は隷属保守であり、国を潰す元凶である。郵政民営化は米国の収奪が容赦のないレベルになっていることを示す。これに反対した陣営は真の愛国者である。だからこそ、今の局面は小沢氏ら革命勢力と平沼氏ら真正保守勢力が合同して国難を排除することが重要である。これが左右を超えて難局を打開するということの真の意味だ。小沢氏にはこの大局が見えていた。だからこそ彼は国民新党の亀井氏を重用し、郵政見直し法案をここまで実現させた。あと一歩のところで、鳩山・小沢体制が崩壊させられた。
その亀井大臣が昨夜、大臣職を辞した。今国会で郵政見直し法案が成立しないことがわかったからだ。これはこの重要な法案が廃案になることを強く示唆している。つまりアメリカは宗主国マターを発動してぎりぎりのところで郵政見直し法案を潰しにかかった。現在の急激な菅体制の閣僚布陣がそれを端的に示している。亀井大臣が排除される事態となった今、いよいよアメリカの目的が、郵政見直し法案を廃案にして、年次改革要望書の計画を強引に進めることにあることが明白になった。菅体制の売国布陣は小泉政権の悪辣さを上回るような気がする。
冒頭の話に戻るが、政権交代という奇跡的な大事業を成し遂げたのは小沢一郎氏である。この歴史的な功労を忘れて民主党議員は小沢氏を攻撃した。これは忘恩の愚挙である。信義を忘れる政治家は亡国の方向性しか持たない。郵政見直し法案を何としても実現させなければならない。売国奴の竹中平蔵氏が菅体制を高く評価しているそうだ。信義とは対極に位置する竹中氏が喜ぶ新体制は危険である。
小沢一郎氏を再浮上させることが重要である。
話を元に戻すと、民主党は小沢一郎氏に対する信義が欠落している。小沢氏をむざむざ排除させたことは国家的損失である。
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