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菅直人の総理就任会見では、財政赤字の原因について、税金を上げて来なかったからだと説明された。増税をしないまま、社会保障費が膨らんだため、国の借金が増えたのだと言う。この説明は、半月ほど前に読んだ榊原英資の論理と同じものだ。5/20の記事にも書いたが、この榊原英資の「ドル漂流」の中の増税論を読んだとき、イヤな予感がした。
このロジックが参院選の論議で応用される展開を恐れたのである。悪い予感が的中した。これまで、菅直人や民主党だけでなく、他の野党も含めて、財政赤字の原因を、増税を避けていたからという理由で説明した例は一度もいない。そうした議論を聞かされるのは初めてだ。民主党はこれまでずっと、財政赤字は官僚による無駄遣いによって膨らんできたと指弾してきた。
昨年のマニフェストでもそう断定していて、「税金は官僚と一部政治家のものではありません」「税金のムダづかいと天下りを根絶します」と宣言している。総予算207兆円を組み替えて、「国民の生活が第一」の政策に充当すると言っている。菅直人は、財政赤字の原因説明を切り換えた。以前の説明は間違いだったとも釈明せず、マスコミの増税論の空気に便乗し、迎合して、巧妙に従来の財政認識を転換させている。
この転換は意味が大きい。これまで官僚にあるとされてきた財政赤字の責任が、一夜にして国民にあるという構図に逆転したのである。財政赤字を生み出した主犯は、官僚ではなく国民になった。 言うまでもなく、この詭弁の論理は財務官僚の悪知恵である。半年間の大臣経験で、菅直人はすっかり財務官僚に教育され、霞ヶ関の忠実なスポークスマンになり、官僚に奉仕する政治家に立派に変身を遂げた。
変節と転向は菅直人の体質であり、裏切りを続けていないと、菅直人は禁断症状を起こしてしまう。今年の1月、藤井裕久を襲って財務省入りしたとき、菅直人はカメラの前でこう言った。「大臣は役所の代表ではなく、国民が役所に送り込んだ国民の代表だ」。そして、消費税について質問するマスコミに対して、まずは国の総予算207兆円を徹底的に見直す作業から始めなければならないと慎重論で回答した。
今回、菅直人は鳩山政権の方針を見直し、従来の「脱・官僚依存」を改め、官僚と連携する協調路線に転換し、その旨を初閣議で指示している。つまり、マスコミは書かないが、政治主導を終焉させたのである。官僚主導に戻したのだ。総予算207兆円が見直された形跡は全くない。衆院選のときから、財政論議は特別会計が焦点だった。一般会計88兆円の2倍に上る169兆円の特別会計の中身を精査し、官僚が隠匿して蓄財している裏資金を解明することが、政権交代後の民主党の急務とされていた。しかし、菅直人が財務相に就任して以降、特別会計の洗い直しは気配が途絶えたままで、その言葉も含めて関心が表面から消されている。
官僚の聖域であった特別会計は、政権交代をもってしても阻止される事態となり、あの岩波新書「大臣」の著者の菅直人によって、官僚の利権が温存される結末となった。この事実は本当に皮肉で面妖だ。昨日(6/8)の会見の中で、菅直人はこう言っている。「官僚の皆さんこそ、政策やいろんな課題に取り組んできたプロフェッショナルだ。プロフェッショナルとしての知識や経験を十分生かす」。
これまでずっと脱官僚を唱え続け、霞ヶ関批判の先鋭な論鋒で国民を扇動し、昨年10月には「官僚は大バカだ」と罵った菅直人が、念願の総理大臣に就任するや否や、見事にお行儀よく官僚様に平伏する態度を見せている。呆れて脱力するのは私だけだろうか。それとも、鳩山由紀夫と同じく、学べば学ぶほど財務官僚の言うことが正しく、財政再建のために消費税増税の必要性が理解できたとでも弁解するのだろうか。
菅直人がここまで転向したら、もう財務省に対して抵抗する人間は民主党の中に誰もいないし、特別会計の見直しや官僚の無駄の削減など踏み込めるはずがない。これで打ち止めだ。昨年の鳩山マニフェストは根本から哲学が否定された。結果的に、民主党は、野党時代に財政の実情もろくに調べず、国民の人気を取るために官僚を悪者にして叩いていたということになる。
国民を騙していたことになる。こうした裏切りが、国民の意識に到達すればいいのだが、マスコミは菅直人の現実路線を翼賛する記事で埋め、増税への期待で興奮して律動している状況にあり、菅直人の裏切りを指摘する声は表面に出ない。国民が菅直人に怒りを覚えるという世論は口封じされている。半年間、鳩山由紀夫が米国と外務・防衛官僚に振り回されるのを見てきたが、次は菅直人が財務官僚にコキ使われる政治が始まる。
民主党は、マニフェストは国民との契約だと言い、その遵守を固く誓っていたが、わずか一年足らずで根本から政策転換することになった。三党連立の合意文書には、消費税率の据え置きが明記されているが、これも簡単に方針撤回されることになった。菅直人は、消費税について、「規模においても時間においても、どうあるべきなのか、そのことを党派を超えた議論をする必要が、今この時点である」と言っている。
この意味は、税率10%への引き上げを来年4月から実施するという意味で、その内容で自民党と今すぐに合意するという宣告だ。そして、鳩山政権の公約に従って、消費税増税の前に衆院選で民意を得ると言っている。と言うことは、参院選後の早い段階で衆院選を打つという予告である。7月の参院選で勝ち、消費税増税のコンセンサスを取り、8月の概算要求で消費税増税を歳入に前提した予算編成をスタートさせる。9月の代表選で消費税増税に抵抗する小沢派を追い出し、秋に衆院を解散して総選挙を行う。そうした政治日程が見える。
このとき、すでに自民党とは増税で合意ができているから、消費税増税は選挙の争点にはならない。どちらが勝っても消費税は増税される。消費税増税の信認選挙と言うか、正統性確保のための形式的な政治儀式となる。主眼は、むしろ小沢派議員の駆逐の方になるだろう。小沢派が離党して、新党で菅民主党に対抗する可能性があるが、菅直人の手法を見ていると、それを挑発して誘き出している意図が窺える。
つまり、小沢新党に消費税増税反対を選挙で掲げさせ、それを惨敗させることで消費税増税を固める謀計だ。そして、玄葉光一郎が言ったとおり、消費税増税の言い訳として、衆院解散前に議員定数の削減を可決し、比例ブロックの定数を半減した後で選挙を行うのである。もともと、民主党の公約では、官僚の無駄を削減した後で消費税を上げるという話だった。
しかし、菅直人と玄葉光一郎は、その話を巧妙にスリ替え、官僚の無駄ではなくて議員の定数を削減し、それをもって消費税増税の代償にするのである。マスコミは、この措置を「議員が身を削る行為」だとして全面支持している。この動きを見ながら、早速、辻元清美が消費税増税容認論を言い始めた。醜く毒々しいアジサイの花を咲かせている。
議員定数の削減で社民党は党壊滅に追い詰められる。その前に、消費税増税に賛成し、玄葉光一郎に媚を売り、民主党に鞍替えして国会議員の安住を手に入れるのである。民主党に入党した際は、所属は前原・野田派だろうか。菅直人は、例によって「増税して経済成長」の持論を会見でも論じた。この主張について、これまでエコノミストの側からの本格的な論評を聞いたことがない。
賛同や反論を見た記憶が特にないが、これから専門家の批判が上がるのだろうか。あまりに荒唐無稽な詭弁に過ぎて、拍子抜けして言葉を失っているのだろうか。菅直人の話を聞いていると、消費税で国民から巻き上げた資金を、大企業の新規事業や輸出開発の原資に政府が回そうとしているように見える。この「成長戦略」は、自民党の中川秀直の上げ潮政策とどこが違うのだろう。
それによって企業が儲かっても、内部留保を溜め込むだけで、国民生活が豊かになる図はないのである。竹中平蔵の時代の「実感なき成長」と同じ。菅直人は、赤字国債発行の代わりに、消費税増税で企業にカネを回そうとしている。負担を増やせばどうなるか。小泉・竹中のときも国民の負担を増やした。年収は減っているのに、住民税を上げ、医療費の負担を上げた。
その結果、消費が冷え込み、景気は低迷し、デフレスパイラルが続き、勤労者の生活と中小零細企業の経営を苦境に立たせた。一方の官僚は、使い切れない経費を使うため、居酒屋タクシーで遊んでいた。年収が200万円とか300万円しかない労働者にとって、あるいは年金生活の高齢者にとって、5%の消費税が10%に引き上げられることは死活問題だろう。
今よりも生活を切り詰める必要に迫られる。そうした現実が、マスコミの消費税論議には全く登場しない。大越健介や古舘伊知郎が嬉しそうに増税の事実上決定を祝い、与良正男や一色清が勝利の凱歌を上げ、長年のプロパガンダの奏功を寿いでいる。やっと財政再建の目途が立ったと破顔している。テレビで増税論の旗を振る彼らは、年収2千万とか、年収1億円の身分の富裕身分であり、消費税が上がっても生活に痛みを感じる立場ではない。
増税論一点張りの官僚やシンクタンクは、消費税増税が景気に与えるインパクトを正視していない。知っていてもそれは言わない。責任は菅直人に取らせればいいだけだ。中小企業は、消費税の値上げ分を製品価格に転嫁できず、コスト削減あるいは利益縮減に追い詰められ、現在でも瀕死の経営に深刻な打撃を受けるだろう。経済的には、そちらのマイナス影響の方が、消費者の買い控えより大きいと予想する。
13年間、消費税が上げられなかったのには理由がある。単なる政治の怠慢や怯懦の結果ではない。官僚の無駄づかいを一掃するまでは、消費税は上げないというのが政治の約束であり、国民とのコンセンサスだった。その合意を官僚の代理人である菅直人が破ろうとしている。
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