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不思議なことに、自民党が民主党に「脱小沢」を迫っている。
劇的な鳩山首相の退陣と小沢幹事長の辞任、そして菅新首相の選出で民主党の支持率がV字回復を果たした。なんといっても鳩山首相が小沢幹事長を道ずれにしたことが大きい。小鳩ダブル辞任は、まさに「最高のサプライズ」(民主党衆院議員)になった。
一方、上昇しかけた政党支持率が再び低下してしまった自民党は、口を揃えて民主党に「脱小沢」を迫っている。
5日から6日にかけてテレビ番組などに出てきた同党幹部らは、民主党の「小沢隠し」を追及する姿勢を鮮明にした。自民党が民主党に「脱小沢」を突きつけた形だ。
自民党が選挙戦略上、もっとも怖れてきたのは他ならぬ小沢氏である。かつて自民党幹事長を経験した小沢氏は、自民党の弱点を知り尽くしている。農協、医師会、歯科医師会をはじめ、自民党の金城湯池だった業界・団体を切り崩したのは小沢氏のリードによる。《小沢氏さえ封じ込めれば》。そうした思いを抱く自民党関係者は少なくない。<小沢氏を政治的に抹殺しておけば、業界・団体を奪い返す機会がやってくる>。自民党内にはそうした思惑があるようだ
支持率が上がったとはいえ、民主党も万全とは言えない。小沢氏の後任として幹事長に就任する枝野幸男行政刷新相は、政策には明るいが党務についての手腕は未知数。民主党議員の間からも次のような声が上がる。「(幹事長は)枝野さんで大丈夫だろうか。弁護士あがりで舌鋒鋭く追及するのは得意だが、選挙の仕切りができるとは思えない。党務で汗を流したなどとは聞いたことがない。業界、団体は役人相手とは違う。小沢さんと引継ぎなしで参院選を戦うとしたら心配だ」。
さらに、郵政法案絡みで国会の延長は必至。参院選も、当初予定の7月11日投・開票から同25日へと延ばされそうだ。菅・新政権が何かでつまずくと、支持率は再び低下するだろう。民主党の不人気は、「普天間」と「政治とカネ」の問題だけではなく、昨年8月の総選挙で提示したマニフェストを守らないことにも起因する。民主党議員の多くが、小沢氏抜きでの選挙に不安を感じているのは間違いない。民主党も自民党も、小沢氏の選挙における力を認めているのである。畏れているといっても過言ではあるまい。
自民党にとって、選挙戦略上、小沢氏の影響力排除はもっとも喜ばしいことだ。しかし、「脱小沢」が進めば進むほど、民主の支持率が上がるという皮肉な状況にあることも事実。それでも小沢排除を迫らざるを得ないほど、自民党の票田は消滅しているのである。
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