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政治は裏切りのドラマである。この一両日の動きは、菅直人が小沢一郎を裏切って寝首を搔いた政変であり、新自由主義勢力による菅直人を御輿にした奪権のクーデターである。話は昨年の9月に戻らなくてはいけない。8/30の夜に大勝して政権を獲得した民主党は、当然、トロイカ体制で政権を運営するものと誰しもが予想した。代表代行の菅直人が官房長官に就くと誰もが確信した。ところが、意外にも鳩山由紀夫は菅直人を官房長官から外し、実権のない国家戦略室長に干す処断に出て、菅直人から権力を剥奪した。
官房長官を外された菅直人は、それでも国家戦略局長と政調会長を兼務して、政権の政策を仕切る要衝に立つであろうと思われたが、今度は小沢一郎が「政策の内閣一元化」を根拠に政調会長ポストを廃止、菅直人は行き場を失って完全に窓際に干し上げられた。2人に挟撃されて丸裸にされる屈辱を受けた。失権させられた菅直人に対して、マスコミは「何も仕事をしていない」と容赦なく誹謗を加えた。
トロイカは一夜にしてツートップに転じた。菅直人はスクラムを組んできた2人に手酷く裏切られたのである。昨日の友は今日の敵。私は、菅直人が遺恨で小沢一郎に復讐したとは思わない。だが、今回は昨年と逆の立場になった。今回、政変は小沢一郎が鳩山由紀夫を総理・代表の座から引きずり降ろした地点から始まっている。週明けから2日間の攻防があり、鳩山由紀夫が抗しきれず辞任を表明、間髪を置かず、菅直人が後継名乗りの手を挙げる。
さらに、山岡賢次が、6/4中の組閣と皇居認証式の日程を明言。これを見た誰もが、小沢一郎と菅直人は裏で繋がっているのだろうと想像したし、事前に2人でシナリオを組んだ上での、菅直人による他有力者の機先を制した立候補だと判断した。つまり、岡田克也も、前原誠司も、菅直人のバックに最大派閥を握る小沢一郎の影を見たから、これでは後から代表選に出ても勝てないと速断し、リスクを避けて対抗馬とならず、オール主流派についてポストを得ようと菅直人支持に回ったのである。
こうして、菅直人と小沢一郎は、最も強敵だった反小沢派の頭目の岡田克也の出馬を押さえ込むことに成功した。ここまでは、小沢一郎の思惑どおりだっただろう。ところが、岡田克也の出馬を封じ、勝利を手中にした菅直人は、ここから小沢一郎に向かって裏切りの急襲をかけるのである。小沢一郎討滅戦に出た。発端は人事だろう。枝野幸男と仙谷由人を幹事長と官房長官に据えると言い出した菅直人に、小沢一郎が激怒し、6/2も6/3も面会拒絶という暗闘に至る。
小沢一郎からすれば当然だろう。悲願の総理になる機会を与えてやったのに、裏切りの人事で報いるとは何事かと怒り心頭になるのは当然だ。菅直人は、この好機を小沢一郎との連携という方向に持ち込むのではなく、小沢一郎の追い落としに利用した。その理由は、マスコミから評価され、発足後の内閣支持率を高く上げさせて、参院選を有利に戦うためである。総理に就いても、参院選で敗北すれば水の泡だ。
選挙で勝つためには、マスコミを味方につけなくてはならない。菅直人は、マスコミが狂躁して煽る「小沢一郎の影響力排除」のキャンペーンに乗る。そして、反小沢の権力体制の確立に動く。そこまでの徹底的な裏切りを予期していなかった小沢一郎は、不意を衝かれて反撃できず、逆に、自分が菅直人のために敷いてやった6/4の代表選という短期日程に縛られ、派閥で独自候補を立てる対抗策を打てず、狼狽したまま失脚の坂道を転げ落ちる。
政治の勝負は一瞬で決まる。昨年、菅直人を裏切って電撃的に追い落とした小沢一郎は、今度は一瞬の裏切りで地獄に落とされる敗者になった。昨年の菅直人の挫折は、菅直人が自分で主唱した「政策の内閣一元化」によってリバースをかけられた形となったが、今度は、小沢一郎が仕掛けた短期日程の総理交代戦略が、逆に自分自身の首を絞める結果へと導いた。
政治はドラマである。内情を田中真紀子がテレビで暴露していたが、追い詰められた小沢一郎は、6/3の午後、田中真紀子に自身が出馬した場合の票読みまでさせていた。惨めな完敗である。昨夜(6/4)、小沢派の議員の会合に出た小沢一郎は、9月の代表選で自派の候補者を擁立して捲土重来を期すことを宣言した。
菅直人に対する復讐を誓ったのである。小沢一郎は、派内に後継者や若手の有力者を育てていない。体育会系の兵隊(陣笠)しかいない点が軍団の弱みで、そこが小沢一郎の政治家としての致命的欠陥でもある。師匠に習っていない。田中角栄は若手をよく育てた。
わずか4日前、小沢一郎と輿石東が「鳩山降ろし」に動いたときは、マスコミは「表紙を変えるだけの選挙目当て」と罵り、猛攻撃の論陣を張っていたが、菅直人が小沢排除を明確にすると、掌を返したように大喝采で新政権を歓迎している。小沢一郎の影響力が残る党首交代は「選挙目当てで表紙を変えるだけ」で、小沢一郎が排除されれば「国民の期待に添う」新政権の誕生なのである。
同じ菅新政権の誕生でもガラリと評価が変わる。いかに小沢一郎がマスコミに敵視されているかがわかる。その菅新政権がどういう性格でどういう政策をするかは、人事を見れば全てがわかる。人事こそ戦略を証明する。鳩山政権が何をするかしないかは、閣僚の布陣を見れば一目瞭然だった。
今回、幹事長は枝野幸男、官房長官は仙谷由人、政調会長は玄葉光一郎で、反小沢の前原派の主要人物で固められた。国対委員長は安住淳と言われている。菅派の人間は一人もいない。要するに、彼らの政策思想は、「構造改革」を中身として肯定する新自由主義で、冨の再分配に配慮する「国民の生活が第一」の発想とは根本的に異なるものだ。
この布陣は、まるで前原誠司が代表・首相になったら、こうした人事になっただろうと思われる親米新自由主義の露骨な権力体制で、菅直人の以前の中道リベラルのイメージからは想像できないほど右に傾斜した陣容になっている。5年前、郵政選挙で惨敗した直後の、前原誠司が代表に就いたときの執行部を想起させる。
すなわち、@消費税増税、A道州制、B外国人移民の三大新自由主義政策を敢行する政権に他ならない。玄葉光一郎と前原誠司は、3年前に「小泉勉強会」に出席し、民主党を「改革」の路線に戻したいと小泉純一郎に向かって言っていた。今度の政変は、民主党が小沢一郎の自由党と合併する前の民主党に戻る政治であると同時に、小沢一郎が旗頭になって掲げてきた反新自由主義を基軸とする基本政策を捨てる政治であり、前原誠司と岡田克也の路線で民主党を染め直す政治である。
一言で言えば、新自由主義勢力の奪権でありクーデターだ。したがって、小沢路線からの離脱を鮮明にするべく、小沢一郎が代表になって掲げた「国民の生活が第一」の標語についても、今回の参院選で看板を降ろすか、9月の代表選後に新しい看板に掲げ直すだろう。シンボルを切り替える措置に出る。今度の新政権は、国民に痛みを要求する政権であり、小泉・竹中路線を民主党政権で再定置する権力である。
だから、マスコミは喝采する。5年前のイメージを想起すると、菅直人が最も左寄りで、小沢一郎が中間で、前原誠司が右に立つという構図だった。民主党の中で、最も反新自由主義的で、社民党の政策に近いと思われたのが、中道リベラルに位置する菅直人だった。今、その菅直人が、ギギギラした新自由主義の政権を樹立し、10年間、誰もできなかった消費税増税を断行しようとしている。
その菅直人に旧社会党の横路Gが支援の票を入れている。これは皮肉だし、菅直人の変節と転向が極まった愚劣な姿だと思うが、マスコミと一緒になって、ネットの中でも、日頃は反新自由主義を唱えているはずの民主党信者が、菅政権の誕生に拍手を送っている倒錯の光景がある。生きるためには変節をしなくてはならない。私は、この政権は、マスコミが言うような本格的な安定政権になるとは思わない。
必ず不安定になり、短命に終わると予想する。その理由は二つある。一つは、この新政権の結束と高揚は、小沢一郎排除の論理の一点で媒介されていて、それが失われば、立ちどころに矛盾が露呈し、内部対立が噴出するであろう集合体だからである。敵である小沢一郎を憎悪し、反小沢で一致した仲間集団だ。
そうした集団は、敵がいなくなれば結束の意味を失う。仙谷由人、枝野幸男、前原誠司、玄葉光一郎、岡田克也、安住淳。これらの面々は、政治家としての指導力も器量もなく、組織を建設したり拡大したりする技能もない。そうした経験もない。単にマスコミの前でペラペラ政策論議の舌を回すだけの能力しかなく、小選挙区制の制度とマスコミの「二大政党制」のキャンペーンのおかげで成り上がってきた連中だ。
しかも、その政策論議の中身は、日経や読売や朝日が書いている主張と同じで、マスコミと経団連が言っている内容を政治家の立場で垂れているだけである。リーダーとして国民を引っ張る人間の器がない。そして無闇に個性だけが強い。政策について自信過剰がある。小沢一郎を倒した後、共通の敵がいなくなれば、政策の方向性をめぐって個々で紛糾する醜態を曝すだろう。
一言で言えば、この面々は理念や政策で纏まった集団ではない。前原誠司と玄葉光一郎は、新自由主義政策の舵を最も右に過激に切ろうとするだろう。そうなれば、閣内で必ず亀井静香と対立し、間に入る菅直人と悶着を起こすはずだ。菅直人は軽く見られていて、彼らは菅直人に従わない。
二つ目に、国民は、この内閣に「裏切られた」と言い出すだろう。消費税増税だけでなく、他の政策でも、政権の「国民への痛みの押しつけ」路線が明瞭になる。それを菅直人はお得意の詭弁術で合理化し、国民を説得しようと無理な理屈を持ち出し、それが破綻して叩かれる顛末が目に浮かぶ。
この政権は、マスコミに依存して、マスコミの支持のおかげで成立した政権である。政権基盤はマスコミだ。と言うことは、マスコミが菅直人への支持を止めれば、すぐに支持率は急降下する。マスコミは、新自由主義政策を進めるのなら、別に菅直人でなくてもよいのであり、できれば前原誠司か橋下徹に変えたいと考えている。
元左派の菅直人を信用していない。菅直人の政権運営は、国民を巧く騙して負担増を受け入れさせる欺瞞の技術にかかっている。どこかの時点で、国民が騙されたと言い出し、元の「国民の生活が第一」の政策に戻せと言い出すに違いない。菅直人は、国民にもいい顔をし、マスコミと経団連にもいい顔をしようとする。支持率の綱渡りをしようとする。そういう安直な政治手法は、結局は長続きしない。
新自由主義で行くのか、反新自由主義で行くのか、旗幟を鮮明にしなくてはいけなくなる。能弁家で、口先芸に自信のある菅直人は、説明をしようとするだろう。説明とは政治家の嘘である。「消費税を上げて経済成長」の話と同じで、この政策主張には根本的な嘘がある。財務省は、これまで国民に嘘を言い続け、政治家を使って国民を騙し続け、嘘が破綻したときに政治家の首を挿げ替えてきた。
財務省は、今度も同じことをするのであり、菅直人に責任をとらせて辞任させるのである。消費税を上げられればそれでいい。政治家は使い捨てなのだ。この内閣は、小沢退治の宣伝で高支持率を取る。そして、政策説明で国民の不信が高まって支持率を下げ、内輪もめを起こして退陣に追い込まれる。私はそう予想する。
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