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2010年06月05日(土) 11:20
菅政権「脱小沢人事」に隠された小沢の思い
昨日、新総理となった菅直人を小沢一郎は遠ざけている。いや、遠ざかっている。
今、菅直人と会うわけにはいかないだろう。人事に介入、再び小沢院政、新政権にも影響力・・・書きたい放題、書かれるのは分かりきっているのだ。
あえて、菅直人と距離を置くことで、新政権の立ち上がりを順調に進め、「傀儡」などとカケラも思わせないようにコトを運ばなければ、鳩山由紀夫ともども辞任した意味はない。
出来レースの代表選と思われないため、小沢自ら田中真紀子に出馬を要請した。菅、樽床に加え田中が出れば代表選が派手になるという考えもあっただろう。
田中真紀子は断ったが、小沢が田中に要請したという事実が側近や田中の口を通して外へ出るだけでも無意味ではなかったはずだ。
小沢グループは独自の候補者擁立に失敗した。いったん樽床支持に傾きかけたが、反対意見もあり、自主投票を決めた。そういう報道は、菅直人にとって決してマイナスではなかった。
「小沢グループ」と「非小沢グループ」の対立の演出は、今の民主党には欠かせない。果たして、代表選の結果は菅直人291票、樽床伸二129票という絶妙のバランスになった。
鳩山とともに小沢が幹事長を辞めたとき、暗黙のうちに新しい政権の骨格はできていた。
参院選を前に、いわゆる「非小沢」色の政権をつくることで民主党の危機を救う。これが、いわば大局観だ。
首班指名を行う昨日の衆院本会議場。菅は、先に着席していた小沢に一瞥もくれず、自席に向かった。
携帯では連絡を取り合っている。小沢は「静かにしていただくほうがいい」という菅の考えを、複雑な心境ながら理解している。小沢がオモテに出れば叩かれることくらい百も承知だ。
むろん、小沢側近の心中はおだやかでない。党内で非主流の立場に追いやられる危機感がつのっている。
早くも、マスコミは仙谷官房長官、枝野幹事長内定と報じ、「ここまで露骨な人事をやるのか」という小沢側近の反発を伝えている。
小沢も、信服して自分についてくる愛弟子がかわいい。その怒りを吸収するため自らも怒って見せる器量が大将には求められる。
その意味で、今日の朝日新聞の、「小沢グループ猛反発」を伝える記事は興味深い。記事を時系列に並べなおし、筆者が勝手に不要と思った部分を削除して以下にまとめてみた。
前夜(3日夜)の小沢氏は荒れていた。独自候補の擁立に失敗したうえ、一新会は「樽床支持」ではまとまらなかった。小沢氏はこう憤ったという。
「何だ、一新会は。自主投票という体たらくは」
4日夜、小沢氏は都内の料理店に姿を見せた。「一新会」の幹部や樽床氏を擁立した40人あまりが集まっていた。小沢氏はこう語った。
「おれはもう幹事長じゃないけど、みんなでこれから頑張るために、おれもやることをやるぞ」
菅氏が参院選を乗り越えたとしても、9月には代表の任期満了を迎える。小沢グループはすでに、投票権を持つ党員・サポーターを積極的に集めている。小沢氏の「逆襲宣言」とも言える言葉に、出席者の一人は小沢氏の代表選立候補もあると受け止めた。
菅氏が仙谷、枝野を重用する姿勢が火に油を注いだ。小沢側近議員は「排除の論理だ。一致結束しなければならないときに、これでは選挙も勝てないし、党運営はうまくいかない」と漏らした。
新党や連立政権をつくっては壊してきた小沢氏。追い込みすぎて党が分裂する事態を恐れる党内の声もある。ベテラン議員の一人は「非主流派になれば(小沢グループの)150人で自民党と組むなんてことも考えかねない。菅さんもそこを考えてやらないと大変なことになる」と話す。
さて以上の記事から何が読み取れるだろうか。一新会のメンバーを鼓舞する大将としての心意気を小沢が示したことは確かだ。ここで士気を落とすわけにはいかない。
空中分解が迫る自民党と組むことはありえないが、菅新首相の人事を牽制する側近たちの気持ちもよく分かる。
しかし、彼らとて近視眼的思考には陥っていまい。ハラの底では、捲土重来を期して、しばらくは雌伏の時を過ごすことを受け入れざるをえないと心得ているのではないか。
ふつうのサラリーマンの家庭で育った菅直人に、94代総理大臣の座がめぐってきたことを、まずは前向きにとらえたい。
平成の22年間、鳩山由紀夫にいたる14人の総理大臣のうち、親が政官界と無縁であったのは、漁師の息子だった村山富市、写真館に生まれた海部俊樹くらいだろう。
とくに直近の4代は、祖父や父も総理をつとめた華麗なる系図の持ち主が連なった。しかし、鳩山由紀夫にはそれまでの総理のような尊大なふるまいはなかった。ぶら下がり会見にも記者たちに軽く一礼をしてのぞんだ。
次回の衆院選には出馬せず、政界を引退するという。惜しい政治家を失おうとしていることを日本人ははるか後世に思い知ることになるかもしれない。
菅直人は直情径行型のように見られがちだが、策士の一面も持ち合わせている。小沢氏との水面下のホットラインが途切れない限り、うまく政権運営をしていくことが可能だろう。
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