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2010年6月 4日 (金)
菅直人民主党新代表選出と樽床伸二氏の名演説
6月4日、民主党の代表選が実施され、菅直人氏が新代表に選出された。鳩山政権は同日午前総辞職したが、同日中に国会で内閣総理大臣の指名選挙が行われ、菅新代表は第94代内閣総理大臣に就任することになる。
代表選に際して、菅直人氏と樽床伸二氏の二名の立候補者が立候補演説を行った。樽床氏の気迫あふれる演説が民主党議員のみならず、多くの主権者国民の心に響いたのではないかと考えられる。
昨年8月30日の総選挙を通じて政権交代の大業が成就した。政権交代を牽引したのは、2006年4月に成立した小沢−鳩山−菅の民主党トロイカ体制だった。とりわけ、民主党を解党の危機から救出し、政権交代実現の布石を盤石に敷いたのは小沢一郎元民主党代表である。
振り返れば、2005年9月の総選挙で民主党は小泉自民党に惨敗した。郵政民営化を掲げる小泉元首相に対し、岡田克也代表が率いる民主党は、明確な政策方針を示すことができなかった。その結果として民主党は大敗し、岡田克也代表は引責辞任した。
後継代表に就任したのは前原誠司氏であった。2006年年初、小泉政権はホリエモン逮捕、輸入牛肉危険部位混入、耐震構造偽装事件、防衛施設庁汚職問題で窮地に追い込まれた。野党である民主党は攻勢を強めるべき局面であったが、偽メールをもとに小泉政権を追及する指揮を執ったのが前原誠司代表で、前原氏は引責辞任した。
2006年4月、民主党は文字通り解党の危機に直面した。この危機に代表に就任したのが小沢一郎氏である。危機のなかで火中の栗を拾ったのである。
小沢民主党は代表就任直後に千葉7区の衆院補欠選挙で奇跡の大逆転勝利を勝ち取った。その後、2007年7月の参院選で大勝利を収め、参議院第一党の地位を確保するとともに、参議院での野党過半数確保を実現した。そして、政権交代実現の直前にまで民主党を大躍進させたのである。
日本政治をこれまで支配し続けてきた既得権益勢力は、露骨な小沢一郎氏攻撃を継続した。2007年参院選での小沢一郎氏に対する激しいネガティブ・キャンペーン、2007年秋の大連立構想、2008年春の日銀幹部人事、2008年秋の民主党代表選などのすべての機会を通じて、小沢一郎氏の影響力を低下させようとする工作活動が展開された。しかし、小沢一郎氏はこれらの謀略を乗り越えて、民主党を軸とする勢力による政権樹立にむけて躍進を続けた。
いよいよ、政権交代実現が視界に入った昨年3月3日、史上最大の政治謀略が仕掛けられた。小沢一郎民主党代表の公設第一秘書である大久保隆規氏が突然逮捕されたのである(三三事変)。
このような政治謀略に対しては、徹底して毅然と闘うことが基本である。小沢一郎氏は不正な検察権力行使に対して正々堂々と闘う方針を示したが、メディアによる土石流のような集中攻撃が総選挙に与える影響を勘案して、筋を曲げて代表職を辞した。
この小沢一郎氏の意思を受け継いだのが鳩山由紀夫前代表だった。その結果として、昨年8月30日の総選挙で見事に政権交代の大業が成就したのである。
しかし、既得権益勢力との闘いはまだ残されていた。本年夏の参院選である。この参院選に勝利して初めて、安定した政権基盤が確保され、2013年までの衆院任期をフルに活用することが可能になる。
既得権益勢力は、日本政治刷新を阻止するために、激しい新政権攻撃を継続した。三三事変での裁判では、三三事変そのものが政治謀略であったことを裏付ける事実が明らかになった。大久保隆規氏の政治資金処理が法律的に何ら問題ではないことが裁判の証言で明らかになったのである。
検察は窮地を脱するためにさらなる暴走を重ねた。これが本年1月15日の石川知裕衆議院議員などの逮捕であった(一一五事変)。これらの政治謀略と連携するメディアの激しいネガティブ・キャンペーンにより、小沢一郎氏に対するネガティブなイメージが定着させられたが、その明確な根拠は存在しない。
鳩山内閣が総辞職に追い込まれた直接の原因は普天間問題での政策運営の誤りにあった。その結果として、今回の代表選が実施されることになったのである。
民主党の現下の最大の課題は、悪徳ペンタゴンとの最終決戦である本年夏の参院選に勝利することである。参院選に勝利して初めて日本政治刷新の大事業を本格的に進展させることができる。
樽床氏は演説のなかで、二つの重要なメッセージを示した。
第一は、「ピンチは最大のチャンスである」こと。
民主党は昨年も総選挙直前に最大のピンチを迎えた。このピンチに対して、小沢一郎民主党代表は、我が身を捨てて党を救う道を選んだ。この柔軟で高等な無私の行動がなければ、総選挙での民主党大勝はあり得なかった。
今回も民主党は危機に直面した。危機に直面した最大の理由は、既得権益勢力=悪徳ペンタゴンが民主党攻撃を継続してきたことにある。卑劣な政治謀略ではあるが、現実に勝利するには、悪とも敢然と立ち向かわねばならないのである。
今回の鳩山総理、小沢幹事長辞任は、昨年同様、ピンチをチャンスに変える我が身を犠牲にする行動であった。
樽床氏が示した第二のメッセージは、政権交代実現の最大の功労者である小沢一郎前幹事長、鳩山由紀夫内閣総理大臣に感謝するとともに、その自己犠牲の意思を尊重し、民主党が一致結束することの重要性を示したことである。
民主党内部には、かつ民主党を解党の危機に追い込んだ張本人たちを中心に小沢一郎氏を排除しようとの行動が強まってきた。これらの議員は思い上がりもいい加減にするべきである。政権交代を実現した主役は議員ではない。主権者国民である。
主権者国民は小沢−鳩山−菅の民主党トロイカ体制が運営した民主党を支持し、政権交代の偉業を実現させたのである。この現実をも踏まえず、自己の利益だけを追求する民主党内反党主義者を主権者国民は排除したいと願っているのだ。これらの悪党の代表が渡部恒三氏である。
樽床氏の挙党一致の呼び掛けに対して、菅直人氏も「ノーサイド」と応じ、挙党一致の方針を明示したことが最重要である。
菅直人新代表は、演説の冒頭で、鳩山前総理、小沢一郎前幹事長を政権交代実現の最大の功労者であることを適正に認識する見識を示した。
このことを踏まえて、菅直人新代表は民主党挙党一致体制を構築しなければならない。樽床氏が訴えたように、「好きだ嫌いだで危機を乗り越えることはできない」のである。好きだ嫌いだと騒いでいる人々は、頭を冷やし、深く反省するべきである。
日本政治刷新に向けての第二幕が開いた。ピンチは最大のチャンスである。今回の代表選で示されたメッセージのなかに、党を再生させる重要な鍵が多く含まれていた。
菅直人新代表兼新内閣総理大臣にとっては、民主党の挙党一致体制を賢明に構築することが最初の最重要任務になる。遺漏なき対応が強く求められる。
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