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何度も繰り返して恐縮だが、マスコミが言っている「ダブル辞任」という言葉は論理矛盾で、今回の事態を説明する概念として不適当である。代表が辞任すれば、執行部総辞職であり、代表に任命された幹事長は自動的に失職となる。内閣総辞職の閣僚の立場と同じだ。今回の報道を聞いていると、まるで代表と幹事長が独立した機関上の権原を持っているような言い方をしていて、幹事長が代表の任命権から自由な存在であるかの如き見せ方をしている。
これは全くの嘘だ。そして、その問題と重なるけれど、「無理心中」だとか、「小沢に辞任を迫った」とか、まるで鳩山由紀夫の方が仕掛けた政局であるかのように報じている。これも嘘だ。今回の政局は、誰が見てもわかるとおり、小沢一郎と輿石東の方が仕掛けた政局であり、鳩山由紀夫を引きずり降ろす権力闘争である。ところが、昨日(6/2)の鳩山由紀夫の説明とマスコミの報道では、それが逆になり、鳩山由紀夫の方が小沢一郎の辞任を求めて達成した話になっている。
ネットの中でも、そのフィクションを素朴に信じて騒いでいる者がいる。密室の協議は、当事者3人(鳩山・小沢・輿石)しか真実を知らない。事実の解読は、小沢一郎が鳩山由紀夫のために花を持たせているのである。面子を立ててやっているのだ。斬られ役の悪役を演じ、「鳩山降ろし」の事実を「ダブル辞任」に意図的に差し替えているのである。これは、小沢一郎が仕組んで仕留めた政局であり、目論見どおりの成果を手に入れている。
小沢一郎は、参院選前のどこかのタイミングで幹事長辞任をしなくてはいけなかった。普天間問題で失敗して進退が窮まった鳩山由紀夫を降ろすのと同時に、その目的を達成でき、さらに次の首相・代表の(責任なき)後見人の地位を得る展望を得たことは、まさに一石二鳥のウルトラCで、会心の政治だったと言える。ところが、マスコミの報道は、そうした真実を全く解説しない。
小沢一郎が降ろされたと報じ、小沢一郎の時代が終わったとする議論で塗り固めている。これは、本当は小沢一郎の勝利である政局を、小沢一郎の敗北であるかの如く演出するマスコミのプロパガンダである。マスコミの敵であった小沢一郎が遂に死んだと、マスコミは有頂天になって記事を書いている。マスコミが嘘を撒く動機は、小沢一郎の失脚を言い立てて、大衆に「悪は滅びる」の観念を植え付けるところにあり、新総理になる菅直人に対して、小沢一郎と手を切り、小沢一郎の影響を受けない政権運営をやれと迫っているのだ。
この6/2の政変とその情報戦は、まさに二つの権力であるマスコミと小沢一郎の熾烈な攻防であり、「鳩山辞任」という一つの事実を、小沢一郎とマスコミが自分に有利に使うべく、両者の思惑が衝突しながら交錯し、「ダブル辞任」という表象の演出に仕上がったと言える。「ダブル辞任」を小沢一郎は自分の権力の維持のために使い、マスコミは小沢一郎の抹殺のために使う。今回、マスコミによる小沢一郎叩きはピークを迎えた感があり、昨日(6/2)の夕から夜の報道は凄まじかった。
特にテレ朝の報道ステーションは圧巻で、まるで凶悪犯が民主党政権を動かしているような言い方だった。絶対悪。スタジオに並んだ4人(星浩、田崎史郎、一色清、古舘伊知郎)が、金正日と同じ扱いで小沢一郎を論じている。「古い政治との決別」だと言ったり、「菅直人がいかに小沢一郎の影響を断ち切れるかだ」とか言ったり、「小沢一郎も辞めると報が入った瞬間、株価が一時的にハネ上がった」だとか、言いたい放題を言っている。
まさに小沢叩きの饗宴で、鳩山由紀夫の政権が躓いたのも小沢一郎が原因だと決めつけ、鳩山由紀夫の公約破りの事実や言葉で国民を裏切った問題には何も関心を向けなかった。昨夜(6/2)の報道ステーションは、小沢政権の崩壊を大喜びする特別報道番組で、ソ連崩壊のときに保守系のテレビの番組がやったようなものと同じ異常さに絶句する。
星浩や一色清によれば、小沢一郎の政治は「古い自民党政治の典型」で、バラマキで、財政赤字の原因は小沢型の利益誘導政治にあるのだと言う。しかし、農家最低所得保証にしても、これは「国民の生活が第一」の政治で、日本の農業を再生するための小農経営支援だった。高速道路について、民放の報道番組のキャスターやコメンテーターは、もう無駄だから作るのは止めろと言う。しかし、現実に、安芸訪問の記事で書いたように、高速道路の通ってない地域が日本には多く残っていて、高速道路の建設で地域経済を振興させたいと願っている人々が無数にいる。東京や大都会に住む人間にとっては無駄なものでも、田舎の地域の人間にとっては道路は死活問題なのだ。
マスコミは、そうした国民の要求は無視し、それに応えることは「利益誘導の古い政治」だと言う。田舎の人間には豊かに暮らす権利はないのか。民放の論者たちの主張は、まさに小泉・竹中の「構造改革」の路線そのもので、新自由主義の路線を民主党の基本政策に据えよという議論に尽きる。一時、金融危機と派遣村のときに、マスコミは「構造改革」に距離を置く姿勢に変わったが、またぞろ元に戻っている。その代表格が一色清で、朝日新聞(テレ朝)と毎日新聞(TBS)が論陣の先鋒に立っている。
今回、郵政民営化の見直しは、マスコミ報道によって完全な悪にさせられた。消費税増税が絶対的正論になり、マスコミの世界で反対論を唱える者がいない。小泉純一郎の時代に逆戻りした。マスコミは、今度の選挙でそれを民意として確定させようとしている。昨年の選挙で、消費税は引き上げない、郵政民営化は見直すと民意が出たはずだが、マスコミはその事実を認めず、官僚と経団連の政策を正論にして押し固め、選挙でひっくり返そうとしている。
その一里塚が、今回の「小沢失脚報道」で、「悪は滅びた」と言い、「悪の復活は許さない」と息巻いている。小沢一郎攻撃と「構造改革」擁護がセットになっている。今、マスコミのプロパガンダは聞くに堪えないほど露骨になり、渋谷の街宣右翼のように猛々しくなっていて、公正中立のタテマエは完全にかなぐり捨てられた。中身は紹介しないが、今日(6/3)の朝日新聞も、グロテスクなほど小沢叩き一色の紙面になっている。普天間の「5月末」の政局が、いつの間にか、小沢叩きと「構造改革」の政策称揚のキャンペーンに化けている。
さて、昨夜(6/2)のテレビ報道では、菅直人は、小沢一郎と距離を置き、前原誠司ら反小沢派の支持を得て、無風当選を狙う戦略だと言っていた。マスコミの解説の中で見落とされている点は、今度の鳩山辞任が小沢派と参院民主党が仕掛けた権力闘争であり、代表選を含めた政治日程の全てを小沢一郎が仕切っているという点だ。
小沢一郎が主導している。その重要なポイントを星浩は言わない。昨夜(6/2)、NHKの9時のニュースに出演した山岡賢次は、何と明日(6/4)中に組閣まで全て終えると言い、6/7に施政方針演説だと言った。代表選が終わった直後に閣僚名簿が発表される。このスピード日程が、事前の準備調整なしにできるはずがなく、昨日の菅直人の速攻挙手と言い、予め菅直人と小沢一郎が打ち合わせて行動しているとしか考えられない。
機先を制したわけだ。昨年の小沢一郎と鳩山由紀夫がそうだった、機先を制され、狼狽した菅直人は代表選に立候補することもできなかった。戦わずして負けた。今回、昨年の菅直人と同じ立場に前原誠司と岡田克也が立っている。おそらく、単独での立候補は無理で、菅直人と取引して連携を組もうと模索するだろう。菅直人は、マスコミに叩かれないように、小沢一郎との距離を演出しているが、党内で弱小派の勢力しかない菅直人が、最大派閥を握る小沢一郎の協力なしに代表になれる理由がないのである。
ただ、権力は小沢一郎の数だけでなく、マスコミの風も重大な権力で、これを無視するわけにはいかない。数もカネも持たない菅直人が、マスコミを敵に回したら選挙(参院選)は勝てない。
報道では、小沢派が150人、鳩山派が50人、前原派が45人、菅派が40人、野田派が35人という勢力図になっている。一目瞭然だが、小沢派が圧倒的な数を握っていて、この最大派閥を非主流派の敵に回すという政権運営はあり得ない。特に、小沢派は経世会の流れを引く体育会系の一致結束の派閥で、一糸乱れず武断的に組織行動をする。口ではなく体で政治をする。そこが、文化系サークルで組織規律の緩い菅派や前原派や野田派と違うところだ。結束は力である。政治は数である。田中角栄の法則は、政争において時代を超えて不滅に貫徹する。体育会系は強い。マスコミは、小沢一郎のそうした政治の特徴を捉え、「古い政治」だと罵倒するが、私はそうは思わない。
体育会系の政治こそ重要で、今の日本にはそれがなさすぎる。菅直人は、もし、ここで小沢一郎と距離を置き、小沢一郎の意向に従わずに人事と政策の舵を切ったら、9月の代表選で確実に代表から引きずり降ろされるだろう。別の候補を立てられる。そして、反小沢派は結束できない。有力なカリスマ的指導者もいない。単に、小沢一郎に対する反感とマスコミの支援で一体になっているだけだ。
数を持つ小沢一郎は、反小沢派を切り崩すことができる。ポストが欲しく、出世したい中堅は、簡単に小沢一郎の陣営に与するわけで、前原派に属する細野豪志が典型的だ。小沢派の弱みは一つで、派内に担ぐ御輿がないことである。御輿は外に探さないといけない。もう一点、小沢派が党内で圧倒的に強い理由がある。それは、支持団体の労組(連合)を押さえている点である。この点をマスコミは分析情報として報道で言わない。選挙には労組に支援が要る。
マスコミは、昨夜の報道ステーションもそうだったが、小沢一郎の力は、皆が怖がって大袈裟に言っているだけで、本当は大した力は持ってないと言う。だが、連合と小沢一郎の結束は固く、前原誠司や岡田克也では、連合は組織を上げて応援する気になれないだろう。経団連とくっつく新自由主義者を応援しても仕方ないからである。民主党の候補者になって選挙区で戦うとき、労組が応援してくれるかくれないかは決定的な問題だ。今回の鳩山辞任と代表選の政局は、小沢一郎対反小沢派(前原・岡田・仙谷・枝野・野田)の闘争でもある。厳密に言えば、小沢一郎と反小沢派の政治家たちとマスコミの連合軍との戦いである。ナポレオンと対仏同盟軍のような壮絶な戦いが眼前で演じられている。
テレビ番組でコメンテーターの話を聞いているかぎり、小沢一郎は完膚無きまで叩き潰され、二度と再起できないようにすら思える。ところが、実際の代表選の政治は、ゴングが鳴った途端、どうやら小沢一郎が圧倒的優勢なのである。一夜明けて、あっさり前原誠司が白旗を上げた。岡田克也も白旗を上げた。
反小沢派からは誰も菅直人の対抗馬が出なくなった。勝利の見込みがなく、出馬を押さえ込まれた。反小沢派の負けなのだ。一瞬で勝負がついたのである。緒戦の勝負はついた。後は、人事と政策をめぐる攻防だが、これは明日(6/4)答えが出る。私は、反小沢派が押し返せるとは思えない。岡田克也と前原誠司、そして仙谷由人と枝野幸男の処遇が注目点になる。私は、幹事長は細野豪志ではないかと予想している。小沢一郎の子分でありながら、マスコミから叩かれず、テレビにかわいがられている。サプライズにもなり、参院選の宣伝になる。同じくサプライズで蓮舫が官房長官。小沢一郎の一本釣り計略の指示で。
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