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2010年06月03日(木) 12:00
鳩山辞任の真相と画一報道のギャップ
胸騒ぎとでもいうのだろうか。首相補佐官、中山義活は6月1日の夜更け、公邸を訪ねた。
風呂から上がってきた鳩山首相は、中山にこう語ったそうだ。
「長い間ありがとう。私は雨天の友を大切にする。これからも一緒にがんばろう」
逆境のときにも変わらず支えてくれる「雨天の友」中山に、深夜の静寂のなかで、首相は何を伝えたかったのか。
中山は言う。「長いつき合いですから感じるものがありました。ひょっとしたら、と思いました」
6月1日の当ブログ「鳩山首相は覚悟を決めているのではないか」で、その前日の5月31日に小沢幹事長、輿石参院議員会長と会談したさいのやりとりを、筆者はこう推測した。
鳩山首相は小沢幹事長らに何らかの意思を伝え、あとの判断を委ねるつもりだったのだろう。首相という地位に執着するつもりがないこと。それを、どういう表現かは分からないが二人に伝えたのではないか。
実際に、鳩山首相は5月31日の会談のさい、二人に「辞める意思」を打ち明けたと会見で語っている。
このときにほぼ、鳩山、小沢の辞任への流れが決まったといっていい。
大方のメディアが言うように「道連れ」とか、小沢が鳩山を「見限った」とか、そんな問題ではない。党代表である首相が辞めれば、幹事長も辞める。それがふつうである。
この二人の退陣がどのように影響するか、党にとってプラスになるのかどうか。それを考える時間をもう一日とって、6月1日の鳩山、小沢、輿石の三者会談で結論を出したのだ。
鳩山首相の表情、親指を立てるなどのいつもと違うふるまい。テレビで大写しになる映像を冷静に見ているわれわれ視聴者は、そこから「鳩山の覚悟」を読み取ることができる。
鳩山由紀夫という人物の日頃のものの考え方や、行動パターン、人柄もじっくり考慮に入れる余裕もある。
しかし、現場でさまざまな情報の渦に巻き込まれている記者や議員たちが、目の前で展開している現実を正確にとらえるのはきわめて難しい。
それが現場の怖さである。現場で分かることは多いが、現場では分からないこともある。
1日の三者会談のあと、平野官房長官、細野豪志組織委員長はともに「継続協議」を強調、小沢幹事長も「継続協議する」とのコメントを出しただけで、記者団の質問には答えなかった。
一方で、まだ「私と幹事長は辞める」と明かせない鳩山首相は「がんばっていきたい」と言うほかない。
そこでメディアは「首相続投に強い意欲」と報じ、すべての記事がその方向に流れる。党側の「鳩山おろし」の動き、それに抵抗する鳩山総理というステレオタイプな筋書きが、まるで事実であるかのごとく世間に広がっていく。
このように人間や政治という複雑な生き物に対する画一的なモノの見方、それに基づく記事の中身が、いかに事実と違っているかを感じさせてくれたのが、昨日の鳩山首相「辞任表明」演説、ならびにその後の会見だった。
記者は人の話を聞いて書く。他社に出し抜かれないよう素早く記事にする。さまざまな情報を頭のなかにしばらく寝かせ、熟成させ、自分なりの思考をめぐらせるという習慣も、時間的ゆとりもない。
大量に垂れ流されるメディアの情報のなかから、必要なものと不要なものを嗅ぎ分けるのはわれわれ受け手が心すべき問題なのかもしれない。
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