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郷原 信郎 「村木氏「無罪確実」で抜本改革を迫られる特捜検察」:日経ビジネスオンライン 2010年6月2日 水曜日
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100601/214712/
──より 転載(長文のため、4/4ページのみ転載)
全文は、下記の[印刷用ページ]からお読み下さい。
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100601/214712/?ST=print
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また、これらの郵便法違反事件の摘発の後、障害者団体向け低料第三種郵便の取扱は9割減少したと報じられた。審査が厳格化されたという事情があったとしても、要件に何の問題もなければ利用を控える理由はないのであり、適用要件の充足に問題がある低料第三種郵便の取扱が実際に相当広範囲に行われていたことは明らかであろう。
不正行為が蔓延していたことの背景には、年賀状の取扱時期に年間の収益の大半を稼ぎ出し、その時期以外は、施設も人員も遊休化しているという事業の状況において、低料金でも大量の郵便物を受け付けたいという郵便事業会社側の事情があったものと思われる。要件を充足しない障害者団体からの第三種郵便の受け付けは、法令には違反するものではあるが、一つの「便法」として行われていたのであろう。
こうした状況であったとすれば、障害者団体向け低料第三種郵便に使用するための障害者団体の認定のための証明書を、要件について十分に確認することなく発行する行為は、厚労省内でかなり恒常的に行われていた可能性がある。それが重大なこととは思わず、雑事を片付けたいという「軽い気持ち」で証明書を発行したという上村氏の公判供述には、十分な合理性、リアリティーがある。
障害者向け低料第三種郵便をめぐる不正は、民主党の大物政治家からの要請で厚労省課長の指示によって係長が不正な証明書を発行したというような大げさなものではなかったのであり、そのようなストーリーを設定したこと自体検察の根本的な誤りだったと言うべきであろう。
前記拙稿では、大阪地検の捜査を、罰金30万円以下という極めて軽い郵便法の法定刑を最大限に活用して「郵政民営化の歪み」を明らかにした点において一定の評価ができるとした上、事件の性格を認識し、早期に捜査を終結させるべきとの私見を述べた。その後の大阪地検が、厚生労働省ルートの泥沼の捜査に突入し、今回のような深刻な事態に立ち至っているのは残念でならない。
今回の事件で厚労省の現職局長の逮捕を了承した最高検も含めた検察組織としての決定は、郵便不正という事件の実態を大きく見誤ったことによるものだった。それは、現在の検察に経済社会の実態と構造を認識・理解する能力が不足していることを表していると言うべきであろう。
大きく変化している裁判所の見方
同様のことは、無罪判決が確定した東京地検特捜部のPCI特別背任事件についても言える。
この事件で検察が描いたストーリーは、PCI社長が、個人的動機から、同じ企業グループの会社に対し企業経営上不必要な利益供与を行ったというものだったが、一審、二審判決は、ともに利益供与は経営支援の必要性に基づくもので合理的な経営判断の範囲内だったとして代表取締役の任務に反するものではないとの理由で無罪とした。
これまで特捜部が起訴した事件について一審で無罪判決が出ても、ほとんどが控訴審で逆転有罪となっていたが、この事件では、控訴審は一回で結審し、検察官の証拠請求のほとんどを却下、ただちに結審して、検察官控訴が棄却された。
このように検察官立証をあっさりと切り捨てる東京高裁の対応からも、特捜検察の捜査に対する裁判所の見方が大きく変化していることが窺われる。特捜検察の取調べや供述調書作成の手法を、「信用すべき特別の情況」を否定する事実とみる大阪地裁の今回の判断は、今後裁判所の見方として一般的に定着していくと見るべきであろう。
ライブドア事件では、堀江貴文氏に狙いを定めた「劇場型捜査」が証券市場を一時機能停止に陥らせるほどの重大な経済的影響を与えたが、最終的な起訴事実は極めて軽微なものにとどまり「大山鳴動して鼠一匹」などと言われた。村上ファンド事件でも、インサイダー取引禁止規定を無理に適用して村上世彰氏を摘発したために、証券市場に重大な影響を及ぼす懸念を生じさせた。こうして迷走を続けてきた特捜検察は、ここへ来て、PCI特別背任事件、郵便不正事件と相次ぐ裁判所の厳しい判断によって、まさに窮地に追い込まれている。
検察は、特捜検察をめぐる客観情勢の激変、その深刻さを重く受け止めるべきだ。今回の事件で村木氏の冤罪の訴えを信じた支援者の活動はインターネット等を通じて多くの市民の共感を呼び、公判が大きな社会的注目を集めた。それが、これまでA「着手ストーリー」=B「処分ストーリー」=C「判決ストーリー」の構図を支えてきた特捜検察の取調べと調書作成の手法に対して裁判所が踏み込んだ判断を示すことにつながり、検察の立証は崩壊した。
こうした流れは、今後激流となって現在係属中の特捜事件全体を覆いつくすことになるであろう。検察は、経済、社会の実態を的確にとらえ、発生した事象の本質を見据える確かな目を持つ能力を身につけていかなければならない。それなくしては、今後検察が、国民の信頼を回復し、複雑化・多様化する社会における刑事司法の中核機関としての役割を果たしていくことはできないであろう。
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