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「抑止力」:自民党政権時代からの密約の結果、日米ともに公式には認めることができないものが沖縄にはあるのだろう(内田樹)
http://www.asyura2.com/10/senkyo87/msg/223.html
投稿者 クルテクと森の仲間たち 日時 2010 年 5 月 28 日 11:06:12: Z7xl4Cth248vg
 

内田樹(うちだ・たつる):1950年東京生まれ。東京大学文学部卒。神戸女学院大学文学部教授。専門はフランス現代思想、映画論、武道論。著書に「下流志向」「「おじさん」的思考」「ためらいの倫理学」「私家版・ユダヤ文化論」小林秀雄賞受賞、「街場のアメリカ論」「街場の中国論」「街場の教育論」「日本辺境論」など。


内田樹のブログより http://blog.tatsuru.com/2010/05/28_1008.php


「それ」の抑止力


共同通信の取材。参院選についての見通しを訊かれる。
月曜にAERAのみなさんともその話をしたばかりである。
民主党は議席を減らすが、「大敗」というほどではないだろう。自民党はさらに議席を減らし、谷垣総裁の責任問題に発展し、党の分裂が進む。公明党も政権与党という条件がなくなったので議席減。「みんなの党」に多少議席をふやす可能性があるが、投票率が低いだろうから、「風が吹く」というような現象には達しないだろう。
というあまりぱっとしない見通しを語る。
見通しがぱっとしない理由は民主党政権が「期待したほどではなかった」という思いはあるが、「じゃあ、何を『期待』していたんだ?」と訊き返されると、有権者も政治家もだれもが明確な中長期的構想を語れないからである。
民主党だって「やろう」としたのだが、うまくできなかったのである。
それを民主党の政治家たちがとりわけ無能であったと見るか、「やれる」と思って取り組んだ政策的課題が「意外に根が深い」ことに気づいたと見るかによって、現政権に対する評価は変わるだろう。
私は現代日本の政治家のレベルが政党ごとに大きく差があるとは思わない。
どこの政党も悪いけど「似たようなもの」である。
だから、民主党政権が「期待はずれ」だったのは、政権交代前は「できる」と思っていた政策的課題が「できない」ものであったことに気づいた、という可能性の方を採るのである。
普天間基地問題は「大山鳴動して鼠一匹」的なアンチクライマックスな終わり方をしそうである。
「基地の県外移転」の主張が一気にトーンダウンしたのは鳩山首相が沖縄を訪れたあとの5月4日に記者団に対して述べた次の言葉がきっかけである。
「昨年の衆院選当時は、海兵隊が抑止力として沖縄に存在しなければならないとは思っていなかった。学べば学ぶほど(海兵隊の各部隊が)連携し抑止力を維持していることが分かった」
この言葉に対してマスメディアは一斉に罵倒を浴びせた。
いまさら抑止力の意味がわかったなんでバカじゃないか、と。
私はこのコメントを「不思議」だと思った。
アメリカ軍の抑止力や東アジア戦略のだいたいの枠組みについては、官邸にいたって専門家からいくらでもレクチャーが受けられたはずである。
しかし、そのときのレクチャーでは「分からなかった」ことがあった、と首相は言ったのである。
「抑止力の実態」について、首相は沖縄で米軍当局者から直に聞かされたのである。
聞かされて「あ、『抑止力』って、そのことなのね。あ、それは政権取る前は知るはずがないわ・・・」とびっくりしたのである。
だとすれば、そのときの「抑止力」という語が意味するのは、論理的には一つしかない。
ヘリコプターとか揚陸艇とかいうのは抑止力の「本体」ではない。
考えれば当たり前のことである。
日本が想像できるとりあえず唯一の「現実的な」軍事的危機は「北朝鮮からのミサイル攻撃」であるが、それに対してヘリコプター基地なんかあっても何の防ぎにもならない。
「朝鮮半島有事」のときにそんなにヘリコプターが必要なら、何よりもまず韓国内の米軍基地に重点配備すべきであろうが、韓国内の基地は2008年から3分の1に縮小されている。
休戦状態であり、いまだに「宣戦布告」というような言葉を外交官が口走る一触即発の国境線近くの基地を「畳む」ことは可能だが、沖縄の基地は「畳めない」としたら、理由は一つしかない。
韓国内の基地には「置けないもの」が沖縄には「置ける」ということである。
「それ」が抑止力の本体であり、「それ」が沖縄にあるということを日本政府もアメリカ政府も公式には認めることができないものが沖縄にはあるということである。
そのことを野党政治家は知らされていない。
政府の一部と外務省の一部と自衛隊の一部だけがそのことを知っている。
「それ」についての「密約」が存在するということはもう私たちはみんな知っている。
私たちが知らされていないのは「密約」の範囲がどこまで及ぶかということだけである。
だから論理的思考ができる人間なら、沖縄の海兵隊基地に「それ」が常備されている蓋然性は、そうでない場合よりもはるに高いという推論ができるはずである。
「それ」があるせいで北朝鮮は日本へのミサイル攻撃を自制している。中国は近海での軍事行動を「今程度」に抑制している。
そういう説明を聞かされた総理大臣は「『それ』が沖縄になかった場合の東アジアの軍事的バランスについての確度の高いシミュレーション」を提示する以外に米軍に「出て行ってくれ」ということができないということに気がついた。
それで「出て行ってくれないか」という言葉を呑み込んでしまったのだ。
「それ」が沖縄に常備されているということは自民党政権時代からの密約の結果なのだから、カミングアウトしても民主党政権の瑕疵になるまい、と首相も一瞬思ったかもしれない。
でも、それをカミングアウトすることは、日本がアメリカの軍事的属国であり、主権国家の体をなしていないということを改めて国際社会に向けて宣言することに他ならない。
できることなら、体面だけでも守りたい。
何よりも、「それ」は公式には「ない」ことになっている。
いずれ水面下の交渉で、「それ」が沖縄から撤去された場合でも、「もともとないはずのもの」がなくなっただけだから、誰にも報告する必要がない。
誰にも報告する必要がないのだから、「それ」が沖縄に「まだある」のか「もうない」のかは北朝鮮にも中国にもロシアにもわからない。
「パノプティコン効果」というものがありうる。
あるのかないのかわからないものについては、それが危険なものであれば、とりあえず「ある」ことにして対応する、という人間心理のことである。
「それ」について黙っていれば、「日本国内には強大な抑止力があるかもしれない(ないかもしれないけど)」という疑心暗鬼の状態に東アジア諸国を置くことができる。
うまくすれば、「それ」がないまま何十年か、「ある」ふりをして「はったり」をかますことができる。
私がいま中国人民解放軍の情報担当将校であったら、このときの鳩山総理の「抑止力」発言をそのような文脈で解釈することが「できる」というレポートを書いて上司に提出するであろう。
上司はそのレポートを見て、渋い顔をしてこう言うであろう。
「ま、そうだな。ふつうはそう考えるな。ほんとうは『それ』はないのかも知れない。ずっとなかったのかも知れない。ないのに、『それ』があるように見せるというフェイクを演じている可能性は排除できない。日本人にはそんな演技力はないけれど、アメリカ人にはある。まあ、万が一ということがあるから、いちおう『それがある』ということにして対日戦略プラン立てておくか・・・それに『それ』がある可能性が高いというふうに上には言っておいた方が人民解放軍の予算枠が大きくとれるし」
と中国人は考えているわけですね、おそらくは・・・というような説明を鳩山首相は沖縄で米軍のインテリジェンス担当者からレクチャーされたのではないか、と私は想像している。
なるほど抑止力というのはそういう心理の綾も「込み」で展開しているのか・・・と知って首相は腕を組んで考え込んでしまった。
その果てに出た言葉が「学べば学ぶほど連携し抑止力を維持していることが分かった」というものである。
新聞は(海兵隊の各部隊が)という言葉を勝手に書き加えたが、たぶん「連携」しているのは、そんなかたちのあるものではない。
抑止力というのは一種の心理ゲームである。
「それ」があるかないか判然としないというときに、抑止力はいちばん効果的に働くのであると米軍のインテリジェンス担当者に聞かされて、首相は「不勉強でした・・・」と頭を下げたのである。
じゃないかと思う。
その場にいたわけじゃないから想像だけど。
残念ながら、私の推理を裏書きしてくれる権威筋の人はたぶん日米中通じてひとりもいないはずである。そうしたくても、できないし。
でも、私と同じように推論して、その上で何も言わずに黙っている人は日本国内に30万人くらいはいるはずである。


uchida : 2010年05月28日 10:08 |
 

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コメント
 
01. 2010年5月28日 11:26:23: u8T2aRIP9Y
アメリカの戦略にはまっただけだろ。アメリカからすれば、経済的にアジアにプレゼンスを維持したい。日本にそれを飲ませるにはどうすればいいか?
極東アジアに対する抑止力が必要であることを日本に理解させる。そのために北朝鮮を利用して、潜水艦で韓国の哨戒艇を攻撃する事件を起こす。結果として身近に危険があるので、抑止力が大切ですよという。それを日本政府および日本国民は理解して、辺野古案を受け入れる。
まあ、アメリカのシナリオ通り。情けないのは、対抗できる戦略もなくただの地元合意ができないという一点で押していたこと。そんな主張をしてくるのは、アメリカは織り込み済み。

02. 2010年5月28日 11:30:54: ExT2kiEgKg
>韓国内の基地には「置けないもの」が沖縄には「置ける」ということである。
「それ」が抑止力の本体であり、「それ」が沖縄にあるということを日本政府もアメリカ政府も公式には認めることができないものが沖縄にはあるということである。

核兵器?だったら存在を公には出来ないね。曖昧にして仮想敵国に推測させておく事が確かに一番効率のいい抑止力になる。
沖縄にとっては攻撃対象になる基地など無いほうがいいのだが!


03. 2010年5月28日 11:59:43: kFyPdez0NA

風見鶏は知ってるよね。


04. 2010年5月28日 12:02:53: UK1y3tZtGs
普天間基地にはそんなものはおそらくないよ。
まわりの山に登れば、普天間基地は一望できるし、そんなのを置くスペースはないですよ。それにどうやって発射するの?ミサイルでなの?そんなサイロはないし。
訓練はどうするの?米軍が訓練もなしで、予行演習もなしでいきなり使うなんてことはないでしょ。飛行機から?だったら嘉手納におけばいいし、海兵隊がどうして「それ」を管理してるの?海兵隊の任務ではないでしょ。
嘉手納にはあるかもしれないけど、普天間にはない。意味もない。
普天間と嘉手納をごっちゃに考えないでほしいね。普天間が動けないのは、そんな大きな戦略の話ではないと思うよ。

05. 2010年5月28日 12:16:06: zz0Ge7ixek
それにしても、核抑止力って、あるのか?
「核があれば核攻撃されない」って理屈だけど、別に核のない国だって核攻撃せされてないじゃん。

第二次大戦より後、戦略核兵器が使われてないのは、もっと別の理由でないの?
中国が無暗に核攻撃してくる状況ではないし。
北朝鮮がやぶれかぶれになる時なんて、こっちに核があろうが無かろうが関係ないだろうし。


06. 2010年5月28日 12:47:01: DdtiKCB0yy
なんだかちっとも解らない文章だが、「それ」っていうのは核兵器ということなのかしら。 核兵器なら潜水艦にも積んであるだろうし、空母にも勿論あるはずだから、普天間の海兵隊とは関係ないだろう。 大事な奥様の身に危険を感じたというのなら良く解る。 家族は大事だが、それは抑止力とは無縁の話である。 どうにも理解仕様のない話にしか読めない。 従ってこの投稿は読まなかったことにしよう。 N.T 

07. 2010年5月28日 14:52:23: bstuWcLNKU
「それ」が核兵器じゃあ低レベルでお話にならないだろう。
「それ」とは太陽系を結び付けている要じゃないのか?

08. 2010年5月28日 23:36:43: mJMrLhg73k
私もこの投稿は読まなかったことにします。内田樹さんは普段ちょっと気のきいたひねったことを書く人のようですが、今回のこの記事はもはや妄想でしょう。

09. 2010年5月29日 00:10:53: bstuWcLNKU
この投稿は空耳板に移せばもっと豊かな意見やヒントが得られると思います。

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