投稿者 smac 日時 2010 年 5 月 13 日 12:31:39: dVqzW59EefGnc
普天間移設問題について、マスコミ各社に流出した「政府原案」なるものを、ザッと読んでみましたが、
これは一言で言って「現行案受け入れ」でしかありませんね。
現行日米合意の基礎は「辺野古沿岸に移設」であり、「政府原案」の基礎もまた「名護市辺野古周辺に移設」ですから、なんら変化ありません。
さらに、沖縄の負担軽減策として付加されたプランは、いずれも普天間移設問題と直接の関わりがなく、その内容も抽象的で、きわめて曖昧なものになっています。
乱暴に言えば「現行案を受け入れますから、沖縄の負担軽減にご配慮ください」と言ってるだけのものでしょう。
まったく「案」と呼ぶのも憚られるほど、お粗末極まりない「糞案」です。
ただ、今のこの時期に鳩山内閣が、こうした「糞案」を押し出してきたことについては、ただボロカスに非難すれば良いという単純なものではないでしょう。
冷静に事態を把握するためには、問題全体をマクロ的に捉える必要があります。
第一に考察すべきは「辺野古移設の実現性」でしょう。
これはもう、誰が見ても「不可能」であることが明らかなのに、多くの論者はこの「常識」を忘れて論評するため、揃いも揃って頓珍漢な言説になってしまっています。
この半年間、米国は「辺野古移設がベスト」と言い続けてきましたが、その米国の関係者ですら「辺野古移設が実現可能」と考えている人は、ほとんど居ないだろうと思います。
現地の海上阻止行動を少しでも知れば、工事強行がどんな事態をもたらすか、たちどころに理解できます。
反対派住民およびその支援活動を行う無数の個人、団体と戦争をして現場を「軍事占領」しない限り、着工はできないでしょうし、そんな事をすれば内乱です。
麻生政権は、海上保安庁を出動させてまで阻止行動排除に動きましたが、結局着工には至りませんでした。
普天間移設問題は、この半年間で「迷走」したのではなく、すでに何年も前から「暗礁に乗り上げ」ていたのです。
現在は、麻生政権当時と比べものにならないくらい「反基地」世論が盛り上がっていますので、今この時期に「辺野古移設」を押し出すのは、よほどの馬鹿か、それとも何か他に思惑があるか…のどちらかしかありません。
米国が強硬に「日米合意の速やかな実施」を主張したのは、決して「それがベストのプランだから」じゃありません。
いかに米国といえど、日本政府に対して「住民に銃を突きつけてでも実施せよ」などと言えるはずはないでしょう。
ですから、たとえ自公政権が存続していたとしても、反対派を説得することは叶わず、反対運動を排除することも叶わず、辺野古移設は実現できなかったのです。
米国が強要する「辺野古移設」は幕末期、朝廷が幕府に命令した「攘夷実行」同様、絵に描いた餅、もしくは机上の空論でしかありません。
では、そんな実現不可能なプランの実施を日本に強要していた米国は、「よほどの馬鹿」なのでしょうか?
まあ、中には欲に目が眩んで、本物の馬鹿になってしまった人も少しは居たでしょうが、大部分の指導者たちは、日本政府にとってそれが「飲めない命令」であることを理解していたはずです。
であれば、米国の圧力が意図するものは「辺野古移設実現」ではなく、他にあると見るべきです。
交渉ごとではよく、実現不能な要求を突きつけて「できないのなら○○をせよ」と言って、本来望んでいながら隠していた要望を「交換条件」にすることで相手に飲ませる…という策が使われます。
米国にとっての「望んでいながら隠していた要望」とは、ズバリ「金」でしょう。
日本に米軍再編費用のさらなる負担を押し付けること以外に考えられませんよね。
さて、それではここでシミュレーションしてみましょう。
もし鳩山政権が「辺野古移設」に合意したとしたら…、
現地の説得は10年かけても無理だろうし、政府が業を煮やして、律儀にも実力行使などすれば沖縄は大混乱に陥り、街では米兵が襲撃され、嘉手納空軍基地はテロ攻撃に見舞われるでしょう。
それでいて、米軍再編費用の日本側負担増額は実現されず、日米関係はギクシャクするでしょう。
新基地も出来ず、金も入らない…まさに「二兎追う者は一兎をも得ず」ですね(米国に同様の諺があるかどうか知りませんが)。
米国政府は決してそんな未来を望んでいないはずです。
それよりも「できないんだったら金よこせ」「わかりました」で決着する方が、百倍も望ましい結末なのです。
とはいえ、ストレートに金を要求したら、それは「米国都合」ですから日本側に足下を見られ、満足する金額を引き出せません。
逆に日本側も、旧政権が一旦合意した「辺野古移設」を「日本都合」で白紙撤回するとなれば、米側に足下を見られ、ボッタクられます。
両国政府とも「辺野古移設で合意」することを望んでいないにも関わらず、それを表向きの要求(米側)および表向きの返案(日本側)としなければならない…っていう複雑な事態に陥っているのです。
これは、ちょうど「チキンレース」と同じですね。
どちらも正面衝突して自分が死ぬことなど望んでいませんが、自分からハンドルを切ることは負けを意味しますので、直進したままアクセルを踏み続けるわけです。
以上のように考えると、今回の「政府原案」は一見、鳩山政権側の屈服に見えて、実は米国側にハンドルを切らせようと水を向ける「策」であることが見えてきます。
とはいえ、これは危険な賭けです。
米国側が最後までハンドルを切らず、あのお粗末な「政府原案」を飲んでしまったら最後、鳩山政権の崩壊どころでは済まず、日本国民は塗炭の苦しみに見舞われることでしょう。
鳩山首相は、この半年間、米国に日本の「政府原案」を蹴らせるよう、状況作りをやってきました。
その効果が、あちこちで顕われてきていることから、私は、かなりの確率で米側が「政府原案」に難癖をつけて蹴るだろう…と楽観予測していますが、それでも余談は許しません。
もう、ディスタンスはかなり詰まってきていて、正面衝突=共倒れは目前という、切羽詰まった状況になっているのです。
鳩山政権がハンドルを切らず(グアム、北マリアナ連邦両知事との面会拒否)、アクセルを踏み込んだ(政府原案のリーク)今、同乗者である私たちも覚悟を決めなければならないでしょう。
万一「辺野古移設」で日米政府合意が成立してしまったら、私たちは日米両政府を相手どり、沖縄県民と連帯して、過酷な闘争に身を焼かざるを得ません。
そして、その覚悟を強く示すことで日米いずれかの政府にハンドルを切らせるよう、働きかけなければならないのです。
こちらもまさに「チキンレース」ですね。
私は日米両首脳に、この危機をギリギリのところで回避する知恵と力量が備わっているだろうと信じています…いや強く信じたいと思います。
いよいよ日米交渉は佳境にさしかかりました。
お気楽なマスコミの論調に腹は立ちますが、やはりこの交渉の経緯からは目が離せません。
この記事を読んだ人はこんな記事も読んでいます(表示まで20秒程度時間がかかります。)
フォローアップ:
次へ 前へ
▲このページのTOPへ
★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK86掲示板
★阿修羅♪ http://www.asyura2.com/
since 1995
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの
引用、転載、リンクを許可します。
確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。
▲このページのTOPへ
★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK86掲示板