02. 2010年5月11日 13:34:26: 8K8fsAAVRs 有効な政策である。交通から見れば、日本の国土の8割は鉄道網が貧弱 で、自動車への依存度が9割を超える地域だ。そうした地域では、自動車 は贅沢品でなく生活の必需品である。 ところが、1キロ25円という世界一高い通行料金によって、地方の高 速道路は毎日の生活には使えない贅沢品になっている。だから、高速道路 無料化によって流通コストと生活コストを下げることを民主党が約束し たとき、地方では多くの人が期待した。 高速道路無料化の実行へのスケジュールと予算も、マニフェストに明記 された。 2010年度に6000億円の予算でスタートする。6000億円の予算があれば、 首都圏、京阪神などの「大都市圏」や名神・東名・中央などの「大都市間」 を除く、地方の高速道路のほとんどが無料にできる。距離で言えば、高速 道路全体の8割になる。 段階的に区間を拡大して、2012年度には1兆3000億円の予算で、首都 高速と阪神高速を除く全国の高速道路を無料にすることがマニフェスト に明記されていた。 予算編成で早くも無視されたマニフェスト そして、民主党政権が誕生した。昨年9月16日の組閣直後の記者会見 で、前原国土交通大臣は「総理からの指示書の第1項目が高速道路の無料 化の実現であり、総理の指示を受けた」と述べた。 鉄道ファンとして有名な前原大臣であっても、総理の指示を守り、マニ フェストに掲げた高速道路無料化を実行するだろうと期待したものだっ た。 しかし、その期待は見事に裏切られた。最初の異変は、予算編成の段階 で起きた。 藤井裕久前財務大臣は、就任直後の記者会見で、「一般会計・特別会計 合わせて207兆円の予算の中から、7.5兆円の民主党のマニフェストの財 源に優先順位をつけることは必ず実行できます」と明言した。自民党予算 を削減し、その分で民主党のマニフェストを実現するはずだった。 ところが、不思議なことに、財務省は、短期間での予算削減の有力な手 段であるシーリングによる一律の予算カットの方針を示さなかった。する と、自民党予算を削減しない省庁が続出した。 予算削減の優等生だった国交省 結果として、自民党予算の削減による民主党マニフェスト財源の確保と いうシナリオが崩れ、「マニフェストなんか実行しなくていい」という合 唱を招いた。 そんな中にあって、自民党予算を1兆円も大幅に削ったのは国土交通省 だけだった。 ところが、財務省は、予算削減の最優等生である国土交通省の最重点政 策である高速道路無料化の予算を「6000億円から500億円まで削減する」 と通告したのだ。マニフェストの重点項目の中で最大の大幅削減だった。 しかも、野田佳彦財務副大臣は、「無料化の実施は北海道だけでいい」 と発言し、馬淵澄夫国土交通副大臣から「どの地域で実施するかを決める のは国土交通省だ」という抗議を受け撤回した。そして、道路問題を担当 する馬淵副大臣を中心とした懸命な折衝によって、ようやく1000億円ま で高速道路無料化予算が復活した。 しかし、予算をマニフェストの6000億円から1000億円にまで削られた ために、2010年度に高速道路無料化が実施される地域は大幅に削られた。 無料化を実施する地域は、距離で言ってマニフェストで約束した全国の8 割から、15%程度にまで減らされてしまった。 他人事のように見守っていただけの国交大臣 この間、前原国土交通大臣は、まるで他人事のようであった。今月見ら れたような猛烈な抗議を総理に対して行うこともなければ、自ら財務省に 折衝することもなかった。高速道路無料化の提案者である私から意見やア ドバイスを聞くこともなかった。 むしろ、前原大臣が強調したのは、JRやフェリーに対する配慮であっ た。ほかの交通機関に影響が出ない範囲でしか高速道路無料化は進めない、 というのである。 高速道路無料化によって「流通コストの引き下げを通じて、生活コスト の引き下げを図る」ことを約束したマニフェストを骨抜きにし、JRやフ ェリーの利益を守るということである。「暮らしのための政治」はどこか に行ってしまった。 さらに不可解なことが起きた。小沢幹事長を中心として、マニフェスト の修正が行われ、ガソリン税の暫定税率が復活し2兆5000億円もの財源 が確保されることになった。これだけ、巨額の財源が確保されたのだから、 国土交通大臣なら、理不尽に削られた高速道路無料化の財源にその一部を 充てるのが筋である。 と言うのも、暫定税率は、自動車ユーザーが負担する税金であり、元々、 自動車ユーザーに還元するはずだったからだ。高速道路の無料化は自動車 ユーザーにまず利益が及ぶのだから、国土交通大臣としては当然のことだ ろう。しかも、高速道路ユーザーは、年間2兆5000億円の通行料金のほ
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