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【高橋昌之のとっておき】普天間問題、足を引っ張り合っている場合じゃない http://www.asyura2.com/10/senkyo85/msg/886.html
[記事転載元:http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/100508/plc1005081801013-n1.htm] 普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題をめぐり、鳩山由紀夫首相が4日、沖縄県を訪問し、政府は今月末の決着に向けて本格的に動き始めました。私は日米関係、ひいては日本の国益の観点からも、何としてもこの問題を決着させるべきだと思っているのですが、政府、各党の姿勢、そしてマスコミの報道のあり方には、問題を感じざるをえませんので、今回はそれをテーマに書きます。 まず、最初に鳩山首相の沖縄訪問については評価したいと思います。もっと早く行くべきだったという指摘はあると思いますが、沖縄県や名護市側から厳しい意見が出ることを承知のうえで、首相が訪問したことは決着に向けて大きな一歩となりました。政府にとってはこれからが本当の正念場です。 沖縄県での首相の発言も率直に行ったという観点から良かったのではないでしょうか。首相は検討を重ねてきた結果として、普天間飛行場を全面的に県外に移設することは不可能と判断し、一部機能を沖縄県内に移設することを、初めて表明しました。昨年8月の衆院選で「最低でも県外」といった首相にとって「苦渋の決断」だったと思いますが、沖縄県民におわびしたうえで、理解を求めたことは前進と言えます。 また、首相は「最低でも県外」と発言していた当時について「海兵隊の存在が抑止力として沖縄になければならない理由はないと思っていた。浅かったといわれればその通りかもしれない」と率直に認め、「学べば学ぶほど、海兵隊の役割を考えたときすべて連携して抑止力が維持できるという思いに至った」と、県内への一部移設の理由を説明しました。 「首相がそんなことも知らなかったのか」という批判も、他党、有識者、国民の中にはあると思います。ただ、私が長年、政界を取材してきた限り、日本の防衛や日米同盟関係を本質的に理解している政治家は、ごくわずかです。民主党だけでなく、政権を担ってきた自民党の議員だってそうです。日本の国会で安全保障の本質的な議論は行われず、議員は真剣に勉強してこなかったからです。 したがって、首相が政権を担うまで、米海兵隊の必要性について理解できていなかったとしても不思議ではなく、これを批判する資格のある、つまり米海兵隊が日本に駐在している意義について明確に説明できる国会議員は少ないと思います。ただ、首相はその気になれば、政府部内の情報を知り、勉強できる立場にいるわけですから、理解するまでに時間がかかり過ぎたと言われても仕方がないでしょう。 一方、首相と会談した仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)沖縄県知事は、問題をこじれさせないよう、言葉を慎重に選んで対応したと思います。稲嶺進名護市長は移設受け入れ拒否の意向を示しましたが、これは想定の範囲内です。稲嶺氏は1月の市長選で移設受け入れ反対を掲げて当選したのですから、それを覆すのは簡単ではありません。 しかし、私は昨年12月に名護市に出張し、その後も名護市の情勢を取材し続けていますから、名護市民の間に、かなりの割合で移設受け入れを容認する方々がおられることを承知しています。稲嶺市長は自分のメンツにこだわることなく、名護市民の幅広い声に耳を傾け、市の将来にとって本当に良い選択をしてほしいと思います。 そのためにも、首相はじめ政府は、沖縄県や名護市に対して粘り強く、誠意をもって説得にあたるべきです。沖縄県や名護市にとって、移設を受け入れることは反対する人々がいる以上、「苦渋の決断」になることは当然で、それを求めるには、政府が誠意を尽くすしかありません。 ただ、これまでの状況をみていると、政府・与党全体にそうした誠意はあまり感じられません。政府はそれぞれの部署がバラバラに動いており、首相のもとで結束しているとはいえません。与党側も民主党が本当にこの問題を打開するため、首相を本気で支えているようには見えません。 同党の沖縄県連や鹿児島県連は地元住民の声だとして、早々と首相の方針に反して移設受け入れ反対を表明しましたが、政権担当政党として国益も考えたうえでの判断でしょうか。地元のムードに流され、国益より自分たちの選挙を考えての行動のように思われます。国会議員は有権者にとって厳しいことであっても、国益を考えて説得して理解を求めるリーダーであるべきで、その責務を忘れてはなりません。 一方、自民党の谷垣禎一総裁は4日、首相が沖縄県に一部機能の移設を伝えたことについて「県外とあおるだけあおって明確な約束違反だ」と厳しく批判しましたが、これには落胆しました。自民党はもはや単なる批判政党に堕してしまったのでしょうか。この問題が決着せずに、日米関係が悪化し、国益が損なわれても構わないと思っているのでしょうか。 自民党はキャンプ・シュワブ(沖縄県名護市)沿岸部を埋め立ててV字型滑走路を作る「現行案」を進めてきたはずです。そうであれば、自民党は現行案の履行を求め続けるのが筋で、約束違反だからどうのこうのとばかり批判するのは、国益がかかった問題を「政争の具」にしているといわざるをえません。 私はこの問題で、自民党はもともと鳩山政権の迷走を批判する資格はないと思います。普天間飛行場の返還が合意され、「苦渋の決断」で名護市が移設を受けれ入れたのは、平成9年の橋本龍太郎政権のときで、それから何年かかったのでしょうか。その後の政権が本気で問題解決に取り組んでいれば、とっくに移設はすんでいたはずです。 それを放置したまま、自民党は政権の座から落ちてしまったわけで、現在まで問題を長引かせてきた責任は、実は自民党にありますす。そうであるならば、自民党は鳩山政権を批判してばかりいるのではなく、現行案での決着を求めていくか、現在の情勢を踏まえて、より望ましい決着案を提示すべきです。 石破茂政調会長は6日、「自民党ならこうすると示さず、5月末に決着しなかったら鳩山首相は辞めろというのは、従来の野党と一緒で無責任だ」と述べ、現行案をベースに自民党として案を作成する考えを示しましたが、ようやく良識が示されたと思いました。ぜひ自民党は独自案を作り、沖縄県、米政府の理解を得て、鳩山政権に実行を迫ってほしいと思います。そうすれば、よりよい案で問題は決着することでしょう。 社民党にはあきれ果てるしかありません。福島瑞穂党首は4日、首相が沖縄県内への一部機能移設を表明したにもかかわらず、あくまで全面県外移設を主張していく考えを示しました。社民党はいまだに昔の社会党の体質を引きずり、空理空論の安全保障政策から脱することはできていませんから、私は社民党がこの問題を現実的な観点から理解するのは無理だと思っています。 にもかかわらず、民主党と連立を組んで政権の座にいることは、鳩山政権の足を引っ張る存在でしかありません。首相は5月末までの決着を明言しているわけですから、社民党は従来の方針を転換して鳩山首相の決断を受け入れるか、もし受け入れられないなら、潔く連立を離脱すべきでしょう。国益のかかったこの問題で合意できないなら、社民党に政権を担う資格はないと思います。 それから、今回はマスコミの報道のあり方についても、問題点を指摘したいと思います。4日の首相の沖縄訪問について、多くのテレビ、新聞は判で押したように「おわびに回る首相、猛反発する沖縄県の住民」という構図で報道しました。結論はいずれも「ますます今月末の決着は難しくなりました」です。これは表面的な取材と、この問題はこう報道しておけばいいという思考能力の欠如といわざるをえません。 沖縄県庁や名護市役所を取り囲んだ人々についても、テレビのリポーターは「住民が猛反発しています!」と連呼していましたが、どういう人々かよく見たのでしょうか。私が映像を見ただけでも、幟や横断幕にはそれぞれ組織名が書かれていました。これらの人々をひとくくりに「住民」ととらえていいのでしょうか。 先ほども書いたように、私は沖縄県内のルートに取材を続けており、県民の中に理性をもって現実的にこの問題を考えている人はたくさんいることを知っています。しかし、ほとんどのテレビは、移設受け入れに反対の人のコメントしか、報道しませんでした。受け入れ容認の人々のコメントも報道するのが、報道の中立性を保つうえで必要だったのではないでしょうか。 これに限らず、従来の普天間飛行場移設問題をめぐる報道は「5月末の決着は絶望的だ」などの悲観論ばかりで、何となく決着しないことを面白がっているかのように見えます。本当にそうなればいいと思っているメディアもあるかもしれませんが、5月末に決着できなかったときの日米関係の悪化、国益上のはかりしれないマイナスを真剣に考えているのでしょうか。 報道の仕方も現象面ばかり取り上げて、それこそなぜ米海兵隊が抑止力として必要なのか、あるいはそうではないのか、なぜ政府が検討を重ねた結果、沖縄県内に機能の一部を移転せざるをえないという結論に至ったのか、多くのメディアは詳しく説明していません。記者の勉強不足、取材不足も要因のひとつかもしれません。 私もマスコミの一員ですから、自戒の念を込めて書いているわけですが、この問題に限らず、メディアが今のように表面的な報道を続けていれば、国民は真実を知ることができません。ただ、国民の良識層は直感的に真相を見抜いており、そうした表面的な報道は結局、見放されると思います。 主要マスコミの記者は、フリーランスや他媒体の記者に比べて、取材先にアクセスできる「特権」を与えられています。それにふさわしい取材努力を行い、限りなく真相に迫った報道を心がけるべきでしょう。マスコミの影響力は大きく、報道ぶりによって国益が大きく左右されることを自覚すべきだと思います。 今、世間では幕末に活躍した坂本龍馬がクローズアップされています。黒船襲来を受けて日本国内でブームのように攘夷論が盛り上がる中、龍馬はその先見性と現時的な思考から、大政奉還、開国による発展という道を切り開き、日本の危機を救ったことが、多くの国民の憧れとなっているのだと思います。 普天間問題はそれに比べれば、ひとつの問題にすぎないかもしれません。しかし、それを含めて日本が現在、直面している政治、経済、社会の危機は、幕末に匹敵します。龍馬が今の日本を見たら、きっとこういうと思います。「国内で足を引っ張り合っちょる場合じゃないぜよ」。
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