投稿者 喫煙者にも権利を! 日時 2010 年 5 月 05 日 14:06:43: U75P.qb8apGDI
高野論説="抑止力論の罠"に絡め取られた鳩山首相 ── これでは普天間問題は解決しない! (News Spiral) より転載
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2010/05/post_563.html
5月4日、就任後初めて沖縄を訪問した鳩山由紀夫首相は、仲井真弘多県知事との会談で、「私は、海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由はないと思っていたが、学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は抑止力を維持できるという思いに至った。(認識が)甘かったと言われればその通りかもしれない」と述べた。それを言っちゃあおしまいよとはこのことで、もし言うなら次のようなことでなければならなかった。
《私はかつて、多くの国民の皆さんと同様、在沖海兵隊は抑止力維持に不可欠という米国の主張をほとんど鵜呑みにしていて、にもかかわらず沖縄県民の過大な基地負担と、とりわけ"世界一危険な基地"と言われる普天間基地を一刻も早く撤去しなければならない緊急性を顧みれば、何としても「最低でも県外移設」を実現する道筋を見いださなければならないとの痛切な思いを抱き、昨年総選挙前にそれを表明した。しかし、学ぶにつけ、海兵隊を含む在日米軍のいわゆる"抑止力"は、前政権下では、まるで水戸黄門の御印籠のように扱われてきて、米国側から「抑止力だ!」と言われると、それだけで「ハハーッ」とひれ伏してしまっていて、在日米軍の各部隊と自衛隊との共用も含めれば全国120カ所もある米軍施設のそれぞれが、具体的にはどこからのどういう危険をどのように抑止するために駐留しているのかという具体的な検証は、一度たりとも日米間で真剣に議論したことがなかったという、独立国としてはあるまじき驚くべき現実が明らかになってきた。そこで私としては、「在日米軍が果たしている"抑止力"とは何か」を米国と正面切って議論しつつ、その中で、普天間はじめ海兵隊についても、最終的にはグアム・テニアン、もしくハワイや米本土に撤収し緊急時にのみ日本に展開するという「常時駐留なき安保」実現への最初の試金石となることを目指して、交渉を続けていくつもりである。しかしこれは、米軍全体の世界戦略との関係もあって、何もかも「5月末」までに結着することにはならない。5月末には、日本としてのそのような姿勢を明確にしつつ、この日米の戦略協議に応じることを米側に約束させ、出来れば年限を区切って誠実な交渉を続けて行くことについて日米間の合意を達成する。その上で、しかし、普天間の危険の除去は一刻を争うことであるので、この交渉が成るまでのあくまで暫定措置として、シュワブ修正・縮小、嘉手納空軍基地、嘉手納弾薬庫、ホワイトビーチ、徳之島などあらゆる移転・分散の可能性を探究して、繰り返すがあくまで年限を定めた暫定措置として各地元に負担受け入れをお願いすることになる。》
●鳩山"抑止力"発言
改めて鳩山の今回の"抑止力"についての発言を引用する。
▼(昨年「最低でも県外」と発言した際)私は、海兵隊が必ずしも抑止力として沖縄に存在しなければならない理由にはならないと思っていた。ただ、学ぶにつけ、沖縄に存在する米軍全体の中で海兵隊は抑止力が維持できるという思いに至った。(認識が)浅かったと言われればその通りかもしれない。(仲井真知事に対して)
▼海外(移設)の話もなかったわけではないが、現実に日米同盟関係、近隣諸国との関係を考えた時、抑止力の観点から難しいという思いになった。すべてを県外に移すのは現実問題として難しい。(県知事、県議会議長に対して)
▼将来的には、グアム、テニアンへの移設ということもあり得る話と思っているが、現在の北朝鮮をはじめとする北東アジア、アジア情勢をかんがみた時に、日米同盟を維持していく中で抑止力の観点から、沖縄、周辺の皆さんに引き続いて負担をお願いせざるをえない」(稲嶺進名護市長に対して)
それならそれで鳩山は、在沖海兵隊の"抑止力"がいかに必要不可欠であるかについて、沖縄県民はじめ日本国民に堂々と説明して、「そうか、それなら海兵隊は是非とも沖縄に居て貰おうじゃないか」という国民的合意を形成しなければならない。その限りでは、5日付日本経済新聞の社説が「まず米国との同盟や在日米軍がなぜ必要なのかを、わかりやすく、きちんと国民に語るべきだ。......何のために沖縄に米軍がいるのかについては、詳しい説明を聞いた記憶がない」と言っているのは正しい。
しかし、その後に続けて日経社説が述べている、鳩山が国民に説明すべき中身は全く陳腐である。曰く、在日米軍は日本を守る義務を負っているだけでなく、さらに台湾海峡や朝鮮半島など近隣の火種に対応する役割もあり、だからこそこれらと距離的に近い在沖米軍基地を一気に減らすことはできない事情がある、云々。
つまり、"抑止力"を巡っては、(1)素朴かつ感情的な米軍基地不要論、(2)自民党政権や日経はじめマスコミのこれまでの日米間の"常識"に経った基地必要論、(3)"日米対等外交"という新しい発想に立った米軍基地"仕分け"論----という3つのレベルがあって、鳩山はこの1年近くをかけて(1)から(2)へと到達したことを今回表明したのだったが、これでは「そんなことも知らなかったのか」(名護市での対話集会に出席した住民、朝日5日付)と言われるだけである。
本論説では何度も書いてきたので、今更繰り返すのも気が重いが、例えば、北朝鮮の"脅威"に対する海兵隊の役割として、米太平洋軍海兵隊のスタルダー司令官が3月末に来日して「南北の衝突より金正日体制の崩壊の可能性の方が高く、その時、北朝鮮の核を速やかに除去することが最重要任務だ」と語ったことについて、鳩山政権は米国と議論したのかどうか。北の対日直接侵攻、核攻撃、南北衝突、北の内部崩壊など、同じ「朝鮮半島の火種」と言っても規模も性質も異なるいろいろな危機シナリオがあるのはもちろんんことだが、そのうち現実的な問題として日米が対処しなければならないのはどれとどれで、その優先順位はどうで、さらにそのうちで海兵隊が関係があるのはどれなのか。もし司令官が言うのが本当だとして、それなら海兵隊は韓国に駐留したほうがいいはずで、なぜ沖縄なのか。しかも、現行の06年合意では1万2000人の現有在沖海兵隊のうち8000人をグアムに引いて5000人を残すことになっているが、それは司令官の言うシナリオとどう関係するのか、等々。
「中国の海軍力増強」というが、それは主として米第7艦隊の問題で、海兵隊はほとんど関係ないのではないか。中国が台湾に上陸侵攻した際に海兵隊が地上戦闘に加わるというシナリオはあるのかどうか(多分、ない)。台北の米人救出? そのために沖縄に待機しなければならないというものでもないでしょう。「海兵隊が沖縄から出て行ったら尖閣諸島はどうなると思う。次の日から尖閣諸島に中国の旗が立つだろう」と米政府高官が言っていると、朝日新聞5日付の船橋洋一主筆が書いているが、これこそ典型的な"抑止力"を御印籠とした対日恫喝で、彼も言うように「尖閣列島を守るのはまずは日本の自衛隊と海上保安庁が果たすべき役割」であるし、大体、仮に中国が尖閣を支配しようとしても米国が中国との軍事紛争突入を賭けてその防衛のために出動する予定があるのかどうかも定かでない。
こういう議論を米国ととことん交わした上で、なおかつ鳩山が、上記のレベルのうち第3レベルで「抑止力はやっぱり必要」と言うのであれば、説得力が湧かないでもなかったろう。第2レベルの自民党的常識に立って"抑止力"を口にしたのでは、それ以上詳しい説明など出来るわけがなく、従って県民はじめ国民を納得させて負担を求めるなど出来るはずもない。今からでも遅くはない、「5月末」までにさらに「学んで」米国と論戦を交わし、第3レベルで物を言って貰いたい。
投稿者: 《THE JOURNAL》編集部 日時: 2010年5月 5日 09:08
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