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郵便不正事件:特捜検察の卑劣手口 「恫喝」と「恐喝」そして「甘い言葉」(週刊朝日) http://www.asyura2.com/10/senkyo85/msg/477.html
「特捜検察の卑劣手口 「恫喝」と「恐喝」そして「甘い言葉」 本誌で追及してきた大阪地検特捜部の「暴走」ぶりは、もはや隠しようがない状況だ。村木厚子・厚生労働省元局長(54)が虚偽有印公文書作成などの罪に問われた「郵便不正事件」の裁判で、ついに被告の村木元局長本人が証言台に立ったのだ。涙ながらに語ったその内容は、検察が「白」を「黒」にしようとした姑息な手口だった。本当にこの国の検察はどうなってしまっているのか。 戦前に思想犯を取り締まった特高警察は、凄惨な拷問により虚偽の自白調書をつくった。しかし、現代の大阪地検特捜部のほうが、その手口はより巧妙かもしれない。 「ワナにはめられているんじゃないかと思った」 村木被告は4月14、15日に大阪地裁で開かれた被告人質問で、逮捕直後に受けた大阪地検特捜部の取り調べの“恐怖”を、そう語った。 「あいまいなことは『わからない』、絶対にやっていないことは『絶対にない』と区別してお話ししているのに、検事の書いた調書では、すべて私が『絶対にない』と話したことになっている。これでは、一カ所でも、私の記憶にはなくても事実だった場合に、私がウソつきにされるんじゃないかと不安を感じました」 村木被告が問われているのは、障害保健福祉部企画課長だった2004年当時、民主党の石井一参院議員(75)から依頼を受けた上司の指示で、障害者団体を名乗る「凛の会」に対し、郵便割引制度の適用団体と認める「偽」の公的証明書を発行するよう部下に命じたとされる、虚偽有印公文書作成・同行使の罪である。」 村木被告に偽の証明書発行を命じたとされる当時の上司、塩田幸雄・元厚労省障害保健福祉部長(58)が2月の公判で、 「議員から口利きは受けていない。事件は壮大な虚構」 と捜査段階につくった自身の供述調書を否定したのをはじめ、村木被告から指示を受けて偽の証明書をつくったとされる上村勉被告(40=同罪の共犯で起訴)も、 「私が単独でやった」 と証言したのだ。 村木被告はこの日、ひざに置いたハンカチを時折ギュッと握り締めながら、検察の様々な手口について証言した。 事実関係で重要なポイントとなっている「凛の会」の元会長・倉沢邦夫被告(74=共犯で公判中)に村木被告が「課長名の証明書を直接、手渡した」という点については、 「絶対にありえません。通常は郵送すると思う。名義人が直接渡すものは感謝状と辞令くらい。もし渡しているならイレギュラーなことだから覚えているはず」 と完全に否定した。 そして、質問は検察の取り調べへと進んだ。村木被告の取り調べにあたった検事は2人いる。一人は、すでに本誌(3月12日号など)で、その強引な取り調べの実態を告発してきた国井弘樹検事、もう一人が、逮捕直後から村木被告の取り調べを担当した遠藤裕介検事である。 遠藤検事は、容疑を否認していた村木被告に対し、 「私の仕事はあなたの供述を変えることだ」 と言い放ったという。」 「私を有罪にするのが仕事なのかな。じゃあ、真相解明は誰がしてくれるんだろうと思いました」 さらに遠藤検事は、村木被告が、上村被告や塩田元部長に対し悪口を言ったかのような供述調書を持って来て、突然、署名を求めたという。村木被告が、 「こんなものにはサインできません」 と突き返しても、 「どこが気に入らないのか言いなさい。立派な否認調書だと思いますよ」 と詰め寄ってきた。 結局、村木被告が納得しないため、こう言って引き下がったという。 「これは検事の作文です。筆がすべったところがあったかもしれません」 遠藤検事では村木被告の自白がとれないと判断したのだろうか、次に村木被告を取り調べることになったのが国井検事だった。 国井検事は、村木被告の話を一切聞かず、自身の考える事件のストーリーを延々と説明しはじめると、調書を作成するために口述をはじめた。 「私は、上村さんに大変申し訳なく思っています。私の指示がきっかけで今回の事件が起きてしまいました。上村さんがこのようなことをしてしまったことに大変責任を感じています」 そして国井検事はプリントアウトもせずに、 「これに署名しますか?」 と、村木被告に迫ったというのだ。村木被告が、 「まったく私が話していない内容だし、私の責任について何とでも読める。いやらしく感じる」 と断ると、国井検事はパソコンで打たれていた文章を消したという。」 「僕はあなたのことが心配だから来てるんですよ。否認を続けると裁判で厳しいことになるから」 と、「甘い言葉」で自白を迫ったという。 しかし、調書を取るための検察の“ワナ”はこれだけではない。 ここに、本誌が入手した村木被告の日記がある。日付は「平成17年11月11日」。そこには「大臣ありがとう」というタイトルで、「障害者自立支援法」成立の際の慰労会に触れ、こんな内容が綴られていた。 〈尾辻(秀久)前大臣にささやかだが、御礼の会。(中略)大臣は、前日、大阪入りした際、大阪府の障害担当の室長その他から、最初は自立支援法に反対、あるいは不安だった。しかし厚生労働省があそこまで真剣に言うなら信じてみようという気になったと聞かされたとのこと。特に『村木さんが言うと本当に聞こえる』とか。(中略)宴会の途中でT(実名)厚生労働審議官から『君は危ない橋も渡ってくれた』云々と意味不明の感謝の言葉〉 検察が目をつけたのが、この〈危ない橋〉というフレーズだった。 法廷ではこの日記がモニターに映し出され、公開された。検察は村木被告に日記の説明を求め、調書にした。しかし、署名の段階で村木被告は弁護士と相談したいと留保。最終的には弁護士が「(05年11月は)事件と関係ない」とアドバイス。村木被告は署名をしなかった。 一般的に、署名のない調書が法廷に証拠として提出されることはない。しかし、検察側はあえてこれを証拠として裁判所に提出した。捜査関係者がこう解説する。 「この調書の中で、村木被告は『危ない橋を渡ったと言われるようなことをしたことはない。言われたとき意味がわからなかったから“意味不明”と書いた』と説明していました。この正式な調書になり損ねた文書に〈(村木被告は)内容に間違いありませんが、弁護士に相談しないと署名できませんと申し立て、署名指印を拒否した〉と検察はわざわざ手書きで説明したものを提出した。そこまでして、村木被告が自立支援法に絡んで、『危ない橋を渡ってくれた』と上司からほめられた“悪人”だと印象づけようとしたのでしょう」」 村木被告の元上司、塩田元部長は、業者や国会議員から金品を受け取っていたという調書を取られ、村木被告の関与を認めた。元部下である上村被告は任意同行で大阪に移送中、今回の事件で偽造した文書以外に、過去にも大臣印を流用して偽造文書を作成したことを自白させられ、今回の事件が厚労省の組織的犯罪だという調書をつくられた。これと同じようなことが、村木被告に対しても行われようとしていたのだ。 「特捜部は、何とか村木さんと政治家との密接なつながりを示すため、村木さんが民主党の議員から『君は高知県出身なんだから、高知県から衆院選、もしくは高知県知事選に出馬しないか』と誘われたという調書も取っていた。また、仕事上かかわっていた国会議員の名前を何人も挙げさせ、調書を作成させていた」(村木被告の関係者) 実際、被告人質問で村木被告は、 「(調書に国会議員や厚労省幹部など)名前が出て迷惑になるかも」 と、かなりプレッシャーを感じていた心中を吐露している。 一方、これまで本誌で報じてきたように、村木被告の裁判では、調書作成にかかわった検事や副検事が全員、取り調べメモを廃棄していたことが問題になった。大阪地検特捜部が過去に立件した事件でもメモの廃棄が問題となっており、裁判所もその対応について、 「残しておかなければ、とは思わなかったのか」 と厳しく問いただしているのだ。 村木被告は、先の遠藤検事について、 「遠藤検事は随分と丁寧にメモを取る人だなと思いました。A4サイズの用紙を横にして、縦書きしてメモを取っていました。重要なことはペンの色も使い分けていました。色はたぶん赤だった」」 「メモはA4用紙1枚くらいに断片的に書いた」 と証言をしている。 そもそもメモの廃棄は大問題だが、村木被告の主張通り、遠藤検事が詳細なメモを取っていたなら、法廷での証言は「虚偽」となる。 今回の被告人質問で、検事から事件について「言い分」がないかと尋ねられた村木被告はきっぱりこう言い切った。 「役所を知らない人がつくった事件だと思います。検事のつくったストーリーは役所の事務とかけ離れている。霞が関にいる人間が聞いたらわかります」 そして弁護人からの、 「取り調べで、もっとも憤りを感じたことは?」 との問いに対し、 「同じ公務員として検事を信用していた。しかし、国井検事も遠藤検事も『執行猶予がつけば大した罪ではない』と言いました。検事さんの物差しと私たちの物差しは全然違う。これは私にとって、罪人になるかどうか、公務員として30年やってきた信用を失うかどうかの問題なんです」 と答えると、肩を震わせ、涙で声をつまらせた。 村木被告の訴えは届くのだろうか。注目の判決は9月になる見込みだ。 本誌取材班」
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