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「既得権」、「制度化」という問題  クライメートで考えるべき社会問題
http://www.asyura2.com/10/senkyo85/msg/456.html
投稿者 現代のニュートンの信奉者 日時 2010 年 4 月 30 日 09:13:15: OJQhyYCMJu/cQ
 

ECOマネジメント
伊藤洋一の『BRICsの衝撃』
“制度化”された気候変動問題 それでも人類がすべきことを考えよ
2010年4月28日(水)公開
http://eco.nikkeibp.co.jp/em/column/itou/70/index.shtml

日本のマスコミが見過ごしたワケ

 毎回このコラムを書くといろいろな方からメールを頂いたりするのだが、前回の「温暖化防止取り組み“純化”の契機に クライメートゲートが示唆したこと」(第69回)は、私が最近始めたツイッター(私のID=ycastercom)の場でも多くの方から紹介され、取り上げられることが多かったし、新聞社から取材の電話も頂いた。ことさら反響が多いエッセイだった。

 なぜ前回のこのコラムが注目されたのか。それは、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が採用した地球温暖化の有力な証拠とされるデータに、ねつ造の疑いがある」という巷間「クライメートゲート(Climategate)」と呼ばれる騒動に関して、日本での報道がそもそも少なかったために、その存在、つまりクライメートゲート疑惑の存在を多くの日本人が知らなかったことが一因だろう。事件の推移と現段階の私の判断は前回に書いたのだが、事件そのものはどのような決着を見せるかわからないにせよ、決して無視して良いようなものではなかった。にもかかわらず、日本ではなぜこの問題に関する報道が少なく、日本の一般の人も多くは知らなかったのか。

 日本で報道がないわけではなかった。最初は小さい記事が出て、その後いくつかの新聞では特集も組まれた。しかし、その量は、私が世界のすべての新聞を見ているわけではないという前提を置かせていただくにしても、やはり世界主要国の報道量に比べると少なかったように思う。米国や欧州ではこの問題は主要紙の一面にしばしば登場した。なのに日本では報道は少なかった。なぜか。

 その第一の理由は、マスコミを含めて日本では、「地球は温暖化しており、それは人類の経済活動の結果生じている」という考え方が強かった故に、その前提を崩す「いわゆる“クライメートゲート疑惑”」に関して、我々もマスコミも「敢えて考え直す」「事実を改めて検証する」という気持ちに躊躇(ちゅうちょ)があったのではないかということだ。人間、そして人間が構成する社会は、“既知”のことを敢えてもう一度問い直すことにおっくうさを感じることがある。今回の「クライメートゲート疑惑」に関しては、「どうせ英国の良く知らない大学の話でもあるし、既定知を見直すのは面倒」という気分があったと思う。

“制度化”した気候変動

 前回のエッセイにも書いたが、日本で、地球の気候変動は人類が活発な経済活動を開始する前から存在したものであり、すべてを人類の経済活動に帰結させるのは無理だとの意見は根強くあった。47億年と言われる地球の歴史の中では、人類が誕生する前から地球には氷河期があり、今よりも温暖な気候の期間もあった。そういう意味では、地球は人類の活動とは全く関係なく温暖化と冷却化を繰り返してきた。それは誰でも知っている。全球凍結などという厳しい寒冷期もあったのだ。

 面白いことは、日本よりはるかに多く、米国や欧州には「人類の経済活動による地球温暖化」を疑問視するウェブサイトやブログが多数あり、クライメートゲートを含む気候変動関連の事柄が盛んに議論されていたことだ。日本の出版物の中にも、「地球温暖化なる議論は本当か、疑問が多い」という本はあったし、メジャーでない雑誌にはその手の記事があった。そういう意味では、「地球温暖化への疑念」の有り様の彼我の差はall or nothing というほど大きくなかった。しかし報道の量は圧倒的に違ったのである。

 私が自戒の念を込めて思うのは、やはり問題が起きたときには、今何が起きており、それが含意する問題の行方を考え、今までの議論のどこがもしかして間違っていて、どこは今後も展開できるのかを考えておく必要はなかったか、ということだ。私としてももっと素早くこの問題をここで取り上げるべきだったかもしれない。

 第二の問題は、前回 以下のように書いた問題だ。

 全世界で見ても、「Stop 地球温暖化」の世界的な潮流は、各国の国家資金の流れも大きく変えてきた。国家資金、公的資金、それに多額の寄付金などが、“温暖化防止”のために使われ、そうした流れの中で多くの組織が作られ、市場が開設され、同時に多くの人がそれで職を得る状況になっている。そうした中で出てきた“クライメートゲート”は、その大きな流れ全体についての疑念を生んでいる。これはゆゆしき事態だし、はっきりの究明しなければならない問題だろう。因果関係が怪しくなったことで、“温暖化防止運動”に、巨額な公的、私的な資金が使われることへの疑念が大きく持ち上がったわけだ。

 筆者はこれを、「制度化の問題」と呼んでいる。それは「institutionalization」と呼んでも良い。つまりある知見が広まり、それに社会全体として危機感が伴うと、それは制度化(それを防ぐための組織などを含めて)する。そこには国家資金が振り向けられ、多くの善意の人からの寄付金も集まる。つまりお金が集まる。それに伴って制度(法律など)や組織が作られ始め、人が雇用され、それが職となる。それが出来上がれば、institutionalizationの完成だ。

 そうすると、誰も職を失いたくないから、組織の中では例えば地球温暖化などの「知見」が検証する必要のない「所与」のものとなる。所与のものになったら、動かしたくなくなる。既にそれは制度であり、組織であるからだ。予算も付いている。また温暖化に関する番組の作っていた向きは、敢えて過去に自分が作った番組の前提を揺るがすようなことはしたくなくなる。つまり社会全体としてそれがinstitutionalizationされるのだ。

「いずれにしても良いこと」考えよ

 繰り返すが、社会はしばしばある知見が「制度化」されると、それに反する議論、論証が出てきても、「それは既に議論されたことだ」と敢えて見直すことをしなくなる。それはもしかしたら「既得権益」が脅かされる事態が生じるので、それに対する遠慮が生まれるからかもしれない。環境保護に関する今回の問題以外でも、そうしたことはしばしば生じる。しかしそれは好ましくない。

 「拒否」「知らぬ顔の半兵衛」といった姿勢は、温暖化阻止の息の長い運動の面から見ても問題が多い。「大きな疑念があったのにそれを見てみないふりをした」ということになれば、温暖化防止に関わる運動の正当性がいつか問われることになる。やはり1つひとつの動きに丁寧に真実を見つめ、国内の知見を集め、議論を重ね、どの可能性が高いのかを検証し、その中で「いずれにしても社会にとっても地球にとっても良いこと」を考える必要があると思う。長い目で見て。

 私の意見は、“クライメートゲート疑惑”にもかかわらず、環境を無視した人類の経済活動、それよりも破壊活動が人間の住環境や健康を崩す、害する危険性があり、それは是正されるべきである、というものだ。だから車はエコカーに乗り、家の電球もLED(発光ダイオード)に変えつつある。経済は人間が快適に暮らすためにある。その経済や不必要な破壊行為が人類の生存環境を壊すのでは本末転倒だ。地球が何十億年もかけて我々に残してくれた化石燃料の中でも石油という資源を、過去たった100年でかなりの部分使ってしまったことはやはりやり過ぎだろう。

 今の経済活動のあり方を考え直す理由はいっぱいある。環境問題の存在は、やはり真剣に考えねばならない。しかも環境保護が良いことだという確信があっても、疑念が生じたときにはそれに正面から向き合わねばならないと思う。そうしないと、運動の意義そのものが後々問われる。

 それこそ前回筆者が“純化”という単語を使った理由だ。

参考URL

日本経団連21世紀政策研究所のホームページ
独シュピーゲル・オンライン『地球温暖化研究を襲った超大型暴風雨』
http://www.21ppi.org/pdf/sawa/100427.pdf

日本学術会議ホームページ
日本学術会議 公開シンポジウム
「IPCC(気候変動に関する政府間パネル)問題の検証と今後の科学の課題」の開催
http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/94-s-3-1.pdf

***************************************
日本学術会議のシンポジウムは本日開催です。
投稿者は参加予定です。  

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コメント
 
01. 2010年4月30日 09:26:32: eJpJR4SFmM
日本の場合それに「和をみだすな」という概念があります。

官僚機構や大企業など特にそうだと思います。
前任者が決めたことをひっくり返すことは、前任者を否定することになり、職場の「和」が乱れます。
前任者が上司であれば、そんな恐ろしいことは部下はできません。
むしろいかに上司の間違いをごまかすか、やばくなったら論理のすり替えをするかばかり考えています。
それが職場の「和」を保つからです。

「和」は、「真実」より優先されるのが、日本の社会です。

そして間違いに気づいていても、気づいたまま突き進んでいってしまうのです。
太平洋戦争もそうでした。破滅するまで。


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