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ドイツで「現代の天動説」が消滅寸前−日本経団連21世紀政策研究所がホームページで詳細を紹介予定− http://www.asyura2.com/10/senkyo84/msg/884.html
日経BP ECOマネジメント 独で「温暖化は脅威が」少数派に 昨年11月に英国のイースト・アングリア大学の気候研究ユニット(CRU)に属する研究者たちがやりとりしたeメールがハッキングされて流出した事件──ウォーターゲート事件をもじってクライメイトゲート事件と称されている──は、様々な教訓を残した。 事件そのものを解説する紙幅はないが、同事件に巻き込まれた主人公であるCRUのユニット長であったフィル・ジョーンズ教授に関して英国内で行われている3つの調査のうち、最近2つの調査が終了し、両調査とも同教授の研究データの情報公開については問題があったものの、研究成果自体には疑問を生じさせるものではなかったと結論付けている。総選挙を間近に控え、この問題を早期に決着させる政治的必要性もあって、このタイミングでこうした結論が出されたものの、この事件がもたらした影響は、科学の在り方、科学と政治の関係、一般公衆への説明責任など広範囲でありかつ根深いと言ってよい。英国の気象庁(MET Office)などは、気温に関するすべてのデータを公開し、世界の研究者がこれから数年かけて、一から検証し直すことを提案するに至っている。 同時期に、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第4次報告書の温暖化がもたらす影響に関する記述に複数の誤りがあったことも明らかになったため、英米では温暖化懐疑派と言われる研究者たちが次々と批判論を述べたこともあり、一般メディアの関心も高まった。その結果、折しも近来にない寒波に見舞われた英米では、一般公衆は温暖化が進んでいるとは思わない、あるいは温暖化が進んでいるとしても人為的な活動が原因ではないと考える人が多くなっており、温暖化問題に関する関心は急速に失われつつある。「環境先進国」のドイツでさえ、3年前は温暖化を脅威だと感じている人が58%だったのが、最近では42%とマイノリティーになってしまったと伝えられている(下記のシュピーゲル誌の記事を参照)。 日本では、この事件についての報道が少なく、また英米で生じたような科学者同士の科学の在り方(ピアレビュー制度、データの公開性など)に関する真剣な討議も行われていない。そのため、一般公衆のほとんどはこの深刻な問題の事実や本質も知らされず、温暖化問題を自分なりに理解するための材料が全く与えられていない状態が続いている。一方で、地球温暖化対策基本法案が国会に提出されたり、環境省ロードマップが示されており、IPCC報告書の「科学」に対する再検証など温暖化対策のベースとなる基本的な取り組みがなされないまま、方法論ばかりが先行している現状は非常に危険である。 ここで一歩立ち止まるべきである。ひとりひとりが自分なりに温暖化対策に対する建設的批判眼を持てるよう、クライメイトゲート事件がきっかけとなって、世界では何が起こってきたのかを振り返ってみたい。 現時点までの事の成り行きやそのインプリケーションをまとめた最も優れた調査が、最近報道された。4月6日付けの独シュピーゲル誌の「地球温暖化研究を襲った超大型台風」("A Superstorm for Global Warming Research"── シュピーゲル誌のHPからダウンロード可能 )である。この調査は、本来環境志向の強いドイツのメディアが扱ったものであることによって、その客観性に信頼がおけること、また、取材も広範であり取材源に対して公平な取り扱いをしていることから、一読する価値が大きい。しかし、現時点で日本語に訳されていないことや長文であることから、日本にまだ広く紹介されていない。現在、シュピーゲル誌と全文和訳に関する交渉をしている最中ではあるが、記事の趣旨をいくつか紹介することについては、既に了解が取れているので、ここでいくつかの論点を紹介したい。 政治化する科学者たち 同記事は、気候変動の科学は、科学の他のどの分野よりも政治化されていると論じている。警告派と懐疑派の間の議論はまるで宗教戦争で、中立的な気候学者たちは辟易(へきえき)しているのではないかとも論じている。しかし、それは産業社会全体をどうするかという問題であり、かつ何兆ユーロものコストが生じる話だけに、その紛争は生きるか死ぬかにならざるをえなくなるというのが、同記事の診断である。 そういう中で、温暖化対策を積極的に進めてきた政府は必死になっている。「IPCCは自らの誤りを公に認め、修正すべきである。IPCCの成果への信頼回復を早期に達成しなければならない」──同誌の取材に対して答えたドイツの環境大臣の言葉だ。一方、日本ではどうだろうか。環境省はそのHPにIPCCの第4次評価報告書の誤った記述に関する弁明を載せていたが、環境大臣その他の政府高官が、IPCCに対してドイツ政府のような申し入れをしているのだろうか。 また、同記事によれば、ドイツ文部科学省が、ドイツのIPCC関連の科学者たちに状況の分析と研究の品質保証の改善を求めたところ、同省の官僚たちは、IPCCの組織としてのいい加減さに驚き、「IPCCの成果は疑問の余地なしというレベルでなければならない。なぜなら巨額の研究資金(2億5000万ユーロ/年)を投じているからだ」と同省高官が語ったそうである。 日本でも、温暖化関連の研究に大規模な財政資金を投じているが、例えば国立環境研究所や気象庁、また多くの大学に対して、そのような検証を求めたとは聞いていない。日ごろ、ドイツの環境政策に学ぶところが多い日本の環境行政だが、こうした点についても見習ってはどうだろうか。 環境産業の振興に注がれる財政援助や温暖化研究に取り組むための公的研究資金が膨大になるにつれ、科学者にとって誘惑は大きくなる。温暖化の影響はよりドラマチックに描く方が研究の推進力になるし、産業界も投資リスクを減らすためには、「科学的研究の結果」として温暖化している事実が多く語られる方が効果的になる。こうした状況の中で、温暖化研究に携わる科学者には、以前にもまして中立性とintegrity(誠実さ)が求められる。ところが、同記事に引用されたドイツ科学技術アカデミーのラインハルト・ヒュッテル総裁によると、「残念ながら、政治家になりたがっている科学者がどんどん増えている」というのだ。科学者は、自らをモニターできなければ、誰も信じてくれなくなるというのが、彼の警告である。 同記事は、次の5つの基本的な問題について、様々な研究者相手に広範な取材を試みている。 (1)今まで地球の温度は何度上昇したのか、またこれからどの程度上昇するのか。
気候変動科学の不確実性 (1)については、有名な懐疑派で、クライメイトゲート事件で流出したメールでは警告派の研究者から愚か者扱いされている鉱山技師のマッキンタイヤー氏( 同氏の有名なHPのURL )が行った、ホッケースティック・カーブ’(ここ数十年間で急激に温度が上昇しているとするグラフで、警告派のシンボルになっていたデータ)を提示したマイケル・マン・ペンシルバニア州立大学教授に対する統計学上の批判を取り上げている。また、それに関連して、マインツ大学のエスパー教授が、マン教授の木の年輪を使ってその当時の温度を推測する方法論について、樹齢500年を超える樹木は分析に適したものが少ないと批判的指摘を行っていることを取り上げている。さらに、同記事は、そうした方法論に基づいて推測されたデータで、中世に今よりも温暖だった時代があったことを否定するマン教授の主張は、警告派の同僚の研究者をも困惑させているとも紹介している。 また、フィル・ジョーンズ教授は、温度測定所の周囲の環境の変化(都市化など)を取り除くために観測データを「均質化」(homogenization)しているが、生データを公開するようマッキンタイヤー氏に度重なる要求をされた同教授は、均質化作業をどのように行ったかを書きとめた備忘録を消去したことを認めざるを得なかった、という、科学者としては信じられないエピソードを、同記事は紹介し、これは生データから彼の温度変化のカーブを再現することが不可能になったことを意味する、としている。ジョージア工科大学の気象学者、ウェブスター教授(ジョーンズ教授を説得して、生データを自分に送らせた。これまで唯一データにアクセスできた部外者)によれば、「データ管理は非常にいい加減だった」。同教授がそのデータを検証したところ、1940年代に始まる説明不可能な陸上の温度変化が見つかったという。同記事は、そのほかにも大気汚染の影響、都市化の影響などについて、ジョーンズ教授のデータに関する疑問点についてさらに取材を深めている。 (2)については、25年前には気候学者たちが、60m(!)もの海面上昇予想を行い、注目を集めようとしたが、今では予想範囲が18cmから190cmの間に収まっていると言い、(3)については、ハリケーンカテリーナで台風の大型化が恐れられたが、実際には大型化している証拠はないし、将来はむしろ台風の発生頻度は減るか同じ程度で、最高風速は少し強くなるかもしれないが、大したことはないという結論で科学者は一致しているとの取材結果を伝えている。IPCCの報告書に、温暖化の進展とともに異常気象による被害が増えているというグラフが出典なしに記載されているが、その出所がある保険会社の内部資料が流出したものであり、もちろんピアレビューを受けた研究結果ではないことが分かったというエピソードも付け加えられている。 (4)については、同記事は、発展途上国が温暖化の被害を多く受けるという神話は間違っており、むしろ干ばつに悩む中央アフリカでは降雨が増え、良い効果をもたらすと述べる一方、カナダやロシアは温暖化して農業生産は改善し、むしろ新しい干ばつ地域は今の最も気候に恵まれている先進国地域になるだろうと伝えている。 上記は記事の一部をかいつまんで紹介したものだが、原文を当たっていただくと、さらに豊富な情報が得られる。日本のメディアにも、こうした世界の有力研究者に直接当たって取材するような調査報道が出てくることが期待される。
同記事は、2℃目標(産業革命以前の水準から2℃以上上昇すると地球はコントロール不能になるので、それ以下に抑えなければならない)が出てきた経緯も詳しく取材している。日本では、2℃目標は科学的根拠があって、その目標を達成するために1990年比マイナス25%削減が必要なのだとされている。それだけに、この目標の科学的妥当性の存否は、大きな意味を持つ。もし、この目標が政治的スローガンで、厳密な科学的根拠を持たないのであれば、現政権のマイナス25%削減目標は一から見直されるべきであり、基本法や環境省ロードマップも考え直さなければならなくなるからだ。 実は、2℃目標はやはり政治的目標であったことが、この記事によって明らかにされたのである。同記事によれば、2℃目標は次のような経緯で登場した。気候モデルは非常に複雑で、その挙動を理解することは政治家にはほとんど不可能である。そこで、政治的な圧力を受けたドイツの科学者の一群が、1990年代半ばに、より消化しやすいメッセージを作りだした(invented)。それが2℃目標である。それが世界中の政治家を席巻したのだ。先般の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)の前には、ドイツの環境大臣は温度上昇が2℃を超えれば「地球上の生命は、存在しえなくなる」とまで言い切った。しかし、これは科学的にはナンセンスだ。「2℃は魔の上限ではない。それは明らかに政治的な目標だ」とポツダム気候変動研究所のシェルンフーバー所長は言う。「温暖化したからといって、世界がすぐに滅亡するわけではなく、温暖化が進まないからといって、世界が救われるわけではない。現実はもっと複雑だ」と。この発言は重い。なぜなら、同所長が2℃目標の生みの親であり、メルケル首相の科学顧問なのである。 シェルンフーバー所長によれば、「この13万年間をみると世界の平均気温が、産業革命が始まる前からプラス2℃以上になったことがないので、目の子(rule of thumb)として今まで経験したことのないところまでいかない方が安全だろうといった程度の考え方だった」という。よく考えれば、人類はそもそも氷河期に誕生したのであり、そのスパンでみれば時には現在から8℃以上もの温度差を生き抜いてきたのであり、現代はかつてないほど気候変動への適応技術を我々は有している、と記事は指摘している。 シュピーゲル誌の記事は、現在の日本の論壇や政策決定の場でほとんど行われていない気候変動の科学に対する疑問や研究プロセスに関する事実検証、そして科学と政治の関係について、非常に広範囲かつ深みを持った取材と考察を行っている。今回は、ほとんどその記事の紹介になってしまった観もあるが、日本語に訳されていない(著作権の問題が解決すれば21世紀政策研究所のHPで紹介する予定)現在、少しでも多くの人にその存在と内容をお伝えしたかったということで御容赦願いたい。 日本にも多くのIPCC報告書のオーサーがおり、さらに大学や様々な研究機関で多くの研究者が温暖化研究や政策研究に携わっている。世界的に温暖化の科学やIPCCの信頼性が問題になっている現在、そうしたコミュニティーがもう少し問題意識と危機感を持って、自分たちの研究体制やオーガナイズの仕方について自己検証を行おうとするイニシアティブがどこかから生まれてもよいのではないか。中期目標再計算チームや地球温暖化基本法の際にも問題になったが、政府内で閉じた不透明な議論の仕方や、反論・異論を許さない(あるいは排除する)現政権の姿勢は、極めて不健全かつ「怖い」ものである。日本のメディアにも、政府の政策立案過程の科学的根拠を常に問い続ける報道を期待したい。
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,687259,00.html http://eco.nikkeibp.co.jp/em/column/sawa/12/index.shtml
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