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「ティー・パーティー」と「コーヒー・パーティー」【リベラル21:現政権党も草の根宣伝戦略として見習うべし】 http://www.asyura2.com/10/senkyo81/msg/895.html
http://lib21.blog96.fc2.com/blog-entry-1096.html 伊藤力司 (ジャーナリスト)
英語の party という言葉には、日本語の「パーティー」「会合」という意味のほかに、「政党」「党派」「徒党」などの意味があることはご承知の通りだ。今回の「ティー・パーティー」「コーヒー・パーティー」は「会合」ではなく「党派」「徒党」の意味である。特にこの「ティー・パーティー」は、アメリカ健国の歴史で有名な「ボストン茶会事件Boston Tea Party)」(1773年)に因んで命名した運動である。 当時のアメリカは大英帝国イギリスの植民地だった。イギリスは1773年新たに茶法を制定した。植民地側が茶税を逃れるためにオランダ商人から茶を密輸入していたのを禁止して、大量の在庫を抱えていた大英帝国東インド会社に茶の販売独占権を与えるためだった。これに対しマサチューセッツ植民地の「ティー・パーティー」(いわば茶一揆集団)が英国の徴税権に反抗するため、停泊していた東インド会社の船から大量の茶箱を海に投げ捨てた事件である。これが、対英独立戦争(1975〜76年)のきっかけになった「ボストン茶会事件」である。 2008年大統領選挙で民主党オバマ候補が共和党マケイン候補に圧勝、米国史上初の黒人大統領の登場に米国だけでなく世界が湧いている間、米国の保守派は「反オバマ」の声を上げる機会を待っていた。その機会は2009年夏に訪れた。オバマ大統領が内政上第1の課題として取り組んだ医療保険制度の改革への反対運動を公然化したのである。医療保険は保守派にとって最も攻撃しやすいテーマである。東部13州の独立、先住民と戦った西部開拓、同胞が殺し合った南北戦争―を通じて培われたアメリカ魂は独立自存を尊び、政府に頼ることを最低限とする精神構造にある。連邦予算をできるだけ切り詰めた「小さな政府」を持つことこそ正しいアメリカと考え、国家財政で医療保険を賄うことに本能的な反発を感じる人が多いのだ。 この運動は英国の徴税権に反対した「ボストン茶会事件」の故事にあやかっているだけに、連邦政府の徴税権に異議を申し立てようとする、穏やかでない動機を持っている。減税と財政規律重視の「小さい政府」という目標では共和党と共通だが、「ティー・パーティー」のメンバーは既存の政党とは一線を画し、「草の根保守派」を貫こうとしている。共和党にとっては有力な味方だが、時と場合によっては「獅子身中の虫」にもなりかねない要素をはらんでいる。 昨年死亡したエドワード・ケネディ上院議員のあとを埋めるため今年1月に行われたマサチューセッツ州上院補選では、大方の予想に反して共和党のブラウン候補が当選した。これには「ティー・パーティー」のメンバー多数が州外からも駆けつけてブラウン氏を応援、無党派層の票を集めたことが大きかった。民主党の牙城と言われたマサチューセッツ州でケネディ議員が 31年間守ってきた同州選出の上院議席を失い、上院民主党は60議席の安定多数を失った。このことは医療保険改革に苦闘するオバマ政権をさらに苦しめる。 マサチューセッツ州での勝利に気を良くした「ティー・パーティー」は2月4〜6日にテネシー州ナッシュビルで初の全国大会を開き、存在感をアピールした。大会最終日には、08年大統領選の共和党副大統領候補だったペイリン前アラスカ州知事がメインスピーチを行い「アメリカは次に革命に進もうとしている、みなさんはその一員なのです」と述べて喝采を浴びた。ペイリン氏は現在共和党主流派とは一線を画す存在だ。一方、大統領候補だったマケイン上院議員は今年11 月の中間選挙で改選期を迎えるが、同議員の地元アリゾナ州の予備選で「ティー・パーティー」はマケイン議員の対抗馬を推している。 「ティー・パーティー」はオバマ民主党に反発する各地の「草の根保守派」の緩やかな連合体で、インターネットを利用して急速に連携を広げてきた。これに対抗するため、やはりネットを利用して生まれたのが「親オバマ」の「コーヒー・パーティー」だ。メリーランド州シルバースプリングに住むドキュメンタリー映画の監督でアナベル・パークという女性が、インターネット上の「フェイスブック」というネットワークを通じて「コーヒー・パーティー」の結成を呼び掛けたのが2月初め。それから1カ月足らずで、賛同者が5万人を超えた(1時間当たり1000人のアクセス)という。 パークさんは「コーヒー・パーティー」( Coffee Party USA)を立ち上げるに当たって「多くのアメリカ人は同じことを考えています。ティー・パーティー運動ではアメリカが直面している問題を解決するとは思えません。今すぐ私たちに必要なのは別のやり方です」と宣言して、次のように呼びかけた。「企業のためにではなく、私たちのような普通のアメリカ人のために働くアメリカ政府を望む人は誰でも入会を歓迎します」「アメリカ人の多数派は私たちのような普通の人間です。ところがいつの間にか、連邦政府が私たちの争いや心配や不安の源、つまり私たちの敵であるかのように思い込まされているのです」。 このようないきさつで生まれた「コーヒー・パーティー」は、名前も目標も「ティー・パーティー」を意識していることは言うまでもない。双方ともインターネットを駆使し、一般市民同士が直接意見を交換しながら急速に基盤を広げているところは共通だ。立ち上げ後僅か1ヶ月足らずの「コーヒー・パーティー」でも、もう30州に45の支部が生まれているという。政治的に目指す方向は正反対だが、この2つの「パーティー」が11月の中間選挙にどう影響するか興味深い。
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