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利益誘導こそ民主主義の基本(田中良紹の国会探検) http://www.asyura2.com/10/senkyo81/msg/852.html
民主党の「箇所付け問題」で1日に国会審議が行われた。その中で「公共事業予算が国土交通省からではなく民主党県連から公表された」ことについて、野党から「利益誘導政治だ」と批判されたが、「利益誘導政治は民主主義を損ねる」かのような物言いであった。これに対して鳩山総理は「遺憾なこと」として国土交通大臣を処分したが、これも日本の民主主義の未熟さを物語っている。
これに対して民主主義政治は、優秀な官僚が「正しい政策」を作成して国民に押しつける政治ではない。国民が求める政策を実現するために選挙で代表を国会に送り込む。代表は国政の場でそれぞれの要求を主張する。農村の利益、都市の利益、若者の利益、年寄りの利益、企業の利益、労働者の利益など多岐に渡る利益を代表する議員がいて、なかなか調整はつかない。民主主義の政策実現は時間がかかる。そのうち利害の近い者同士が集まって徒党を組む。そうして出来た政党に国民は政策を託すようになる。 議院内閣制では、選挙で多数を占めた政党が権力を握る。言い換えれば国民が政党に権力を与える。権力を与えられた政党は自分たちが掲げる政策を思い通りに実現する。では野党を支持した国民の利益はどうなるか。国会で野党は修正を要求する。話し合いが付けば互いに譲歩して修正が実現する。しかし付かなければ多数決で与党の思い通りになる。野党は次の選挙まで政策を磨き国民の支持が得られるように切磋琢磨する。そうして国民の支持を得られればまた権力を握れる。民主主義が王様や将軍や独裁者の政治と違うのは国民が政策を選べ、力で政府を転覆しなくとも政権を変えられる事である。 議員の仕事は自分を代表に押してくれた国民の利益を最大限に主張することである。支持者のために利益誘導する事こそ民主主義政治の基本である。自民党が権力を握っていた時代に予算配分を決められるのは自民党であり、民主党はどんなに頑張ってもいくばくかの修正を勝ち取るしかない。それを不当だと言えば国民主権の冒涜になる。民主党が政権を取れば今度は立場が逆転する。それが民主主義政治である。 しかし民主党が自分たちの支持者だけの利益に固執し、その結果国民の多数が不満を持てば選挙で政権交代が起こる。民主党は幅広い国民の利益を考えなければ政権から転がり落ちる。だから野党時代のマニフェストと政権獲得後の政策に違いが出るのは当たり前である。政権交代を繰り返している国の政治を見れば、頑なにマニフェストに固執するような愚かな真似はしていない。 「利益誘導政治」を否定するのは官僚の論理である。官僚は愚かな国民の要求を吸い上げて政策を作るより、最高学府を出た自分たちの頭脳で作る政策が「正しい」と思っている。更に言えば愚かな国民の要求を聞いていたら国は滅びると思っている。だから「利益誘導政治」を全否定する。それがこの国では明治の時代から続いてきた。毎度紹介しているが、官僚勢力から「利益誘導政治家」、「金権政治家」のレッテルを貼られたのは自由民権運動の流れを汲む星亨や原敬である。二人とも地域経済活性化のために公共事業を行い、鉄道建設に力を入れた。それが「利益誘導」と批判された。 戦後になって「利益誘導」、「金権政治」のレッテルを貼られたのは田中角栄である。戦前の自由民権運動政治家と同じレッテルを貼られたのは、官僚を脅かす存在と見られたことになる。では官僚の作成する政策は優れているのか。政策形成のスピードは確かに速い。高度成長期の日本には有効だったと思う。現在の中国の驚異的な成長は、高度成長期の日本と同じで独裁体制の官僚が民主主義のコストを掛けずに経済計画を作成しているからである。 日本の高度成長を支えたもう一つの理由は冷戦体制によるアメリカからの恩恵である。日本は安全保障のコストを掛けずに1ドル360円という有利な為替レートで貿易立国路線を確立した。しかしそれらの条件は今やない。明治以来の官僚は「欧米に追いつき追い越せ」で日本を経済大国に押し上げたが、これからの日本には真似をすべきモデルがない。いわば解答のない問題を解くに等しい。解答のある問題を解くのは優等生の頭脳だが、解答のない問題を解けるのは人間の欲望の裏表に通じた政治家の知恵しかない。「官僚主導からの脱却」が叫ばれ、政権交代が起きたのは、そうした時代の必然である。 ところで「箇所付け」だが、これに自民党が鋭く反応したのは、それが権力を握る者の特権である事を知っているからである。昔はその情報欲しさに自民党議員は役所の言うことを何でも聞く「族議員」になった。「族議員」は役所の別働隊となり、官僚の既得権益を守るために働いた。その事に国民が気付くようになり、自民党は国民よりも官僚に「利益誘導」していると思われた。それが昨年の総選挙で鉄槌を食らった理由である。従って問題は「箇所付け」で民主党議員が役所の「族議員」に成り下がるかどうかである。それがなければ国民から権力を与えられた民主党が公共事業予算の配分に関与するのは至極当たり前の話である。
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