投稿者 一市民 日時 2010 年 3 月 04 日 15:26:35: ya1mGpcrMdyAE
http://www.janjannews.jp/archives/2800602.html
元大阪高検・三井環氏が語る《検察の裏金》(前)
2010年03月04日
三上英次
2002年4月、当時「大阪高等検察庁公安部長」という現職検察官として、三井環(みつい・たまき)氏は、実名で、検察の組織的な裏金作りの実態について、メディアに公表する準備を進めていた。朝日新聞、共同通信、産経新聞、毎日放送(MBS)、それにNHKまでもが三井氏に取材し、特に朝日新聞に関しては、5月の連休明けに1面トップで検察の裏金について報じ、社会面で、三井氏が裏金の実態について1問1答式に答える手はずであったという。
2月28日、講演会での三井氏(撮影・三上英次 以下同じ)
その後、民主党の菅直人議員が衆議院法務委員会で三井氏を参考人招致し、三井氏はそこで証言した後、検察バッヂを外すシナリオだった。それを恐れた検察は、三井氏がテレビ局の収録に応じる日の朝、三井氏の自宅を急襲し、「電磁的公正証書原本不実記載」、簡単に言えば40数万円の住民税軽減のためにウソの転入届を出したという容疑で、逮捕したのである。「三井氏の口封じのための逮捕」――これが事情を知る人々の共通した見方だ。
逮捕したのは、大阪地検特捜部―つまり、東京と、大阪、名古屋にしかない、通常は政治家や政府高官の犯罪、あるいは重大な経済犯罪を暴くための特別の捜査機関である。その検察組織が、言わば身内である大阪高等検察庁の現職公安部長を電撃逮捕したのだ。
さらに三井氏は暴力団関係者からの収賄罪でも再逮捕、起訴され、05年2月に大阪地裁(宮崎英一裁判長)で懲役1年8ケ月、追徴金22万円の実刑判決を受ける。その後、大阪高裁(若原正樹裁判長)、最高裁(中川了滋裁判長)と有罪は覆らず、08年10月に収監、今年1月18日に静岡刑務所を満期出所となった。その三井環氏を招いて「検察の裏金」をテーマに、2月28日、千葉県柏市で講演会が開かれた。
(1)出所した三井氏に「右からも左からも…」
はじめに、講演会を企画し「無所属市民の会」を主宰する吉川ひろし千葉県議会議員からあいさつがあった。
「無所属・市民の会」の吉川氏(右)と司会を務めた内田さん(左)。
「この講演会は、三井さんを糾弾する会でも、支持する集いでもない。ただ、〈真実〉はどういうことか、みんなで考えていきたい。特に、検察というのは、日ごろは遠い存在であるが、ひとたび罠(わな)にかかるととんでもないことになりますから…」
続いて、三井氏が中央のテーブルに座り、1月の出所から講演は始まった。一時は、仮出所の話もあったというが、その申請に対して検察の横ヤリで満期出所になったのだという。
「申請の却下率は2.3%と言いますから、私はその2.3%の中に入っていたのであります」
収監されていた静岡刑務所では、ジュース、コーラの類いも認められておらず、出所後の生ビールがうまかったとのこと、次いで2月に大阪のホテルで行われた「出所祝いの集い」では、それこそ「右から左まで」「重信房子さん(注・日本赤軍)を支える会の人まで」とにかく、ありとあらゆる人たちが、〈反権力〉のその一点で集まったという。その「右から左まで」ありとあらゆる人たちが、ホテルに集うありさまを聴衆は想像したのか、会場からは一瞬どよめきも起こった。
(2)「検察の裏金」とは?
1972年に検事に任官した三井氏が、検察の裏金の全貌を知ったのは、88(昭和63)年、高知地検の次席検事になったときだという。
検察には「調査活動費」(略して「調活・ちょうかつ」)という予算がある。これは、表向きは、事件の調査や、情報収集などの経費として計上されているもので、平成10年には年間6億円に達しており、毎年4月に法務省から全国の高検(8ケ所)、地検(50ケ所)に調査活動費予算が示される。東京地検は年3000万円、大阪地検は年2000万円、そして中小の地検ではだいたい400〜500万円程度であると三井氏は実情を明かす。
例えば、三井氏が高知地検の次席検事だった頃は、1件5万円程度の架空の偽造領収書なら約80枚を作成し、計400万円分の調査活動費をすべて裏金としてプールしていたらしい。講演後の質疑応答でも、三井氏は「公安調査庁の調査活動費は実態があるが、検察組織の調査活動費は、1円たりともその実態は無い」と、力をこめて断言したのが印象的だった。
それでは、不正に蓄えられた調査活動費は、どのように使われるのか――。
上記のとおり、検察組織は、最高検察庁に検事総長が1人、8ケ所の高等検察庁に検事長8人、50ケ所の地検に同数の検事正(50人)がいるが、すべて調査活動費は、彼らの私的遊興費に充(あ)てられるというのだから驚きだ。
「女性に貢(みつ)ぐ、観光旅行をする、マージャン代に使う、ゴルフ代に使う、言い出したらきりがない」「たとえば、某検事正が連日のように深夜まで高級クラブでカラオケに興じることができるのはなぜなのか、あるいは某検事長が年間70回もゴルフができるのはなぜか」「それを可能にしているのが、調活を流用した裏ガネなのだ」。
三井氏は、著書『告発!検察〈裏ガネ作り〉』(光文社)の中でも、私的遊興費の実態を上のように書いている(P36〜38)。もちろん、三井氏自身「最初は、びっくりした」と話しつつ、「どうしても組織に流される」「惰性になっていく」と、講演でも現実の難しさも口にした。
三井環氏の著書 『告発!検察〈裏金作り〉』(光文社) 一部イニシャルもあるが、ほとんどが実名のオンパレードである。
それら調査活動費は、いつから始まったのか。その起こりははっきりしないらしい。それでも、おおよそ昭和22(1947)年頃から、そうしたものはあったのではないかと三井氏は推測し、「国民の税金が年間6億円、20年間では約120億円ものお金が、私的に使われて来た計算になる」と説明した。
(3)「けもの道」〜検察の崩壊〜
三井氏は、検察の犯罪を3つに大別する。
「第1の犯罪」は、調査活動費を幹部検事らの私的な遊興費に回し、その私的流用のために虚偽公文書作成罪などの犯罪行為が公然と検察内部で行われていたこと。「第2の犯罪」は、調査活動費に関する第1の犯罪が刑事告発を受けた際に、検事総長らが、ある自民党実力者のもとを訪れ、検察組織による裏金隠蔽を黙認するよう働きかけたこと。そして、現職のまま検察の裏金について告発しようとした三井氏に対して、ありもしない事件をでっちあげて逮捕したこと、これが「第3の犯罪」である。
講演でも、とりわけ三井氏が強く取り上げたのが、「第2の犯罪」である。
平成13(2001)年10月、当時、大阪地検の加納駿亮(かのうしゅんすけ)検事正が、高知地検時代(平7〜8)及び神戸地検時代の調査活動費私的流用で、虚偽公文書作成罪、私文書偽造、詐欺罪などで刑事告発され、週刊誌がそれを報じていた。法務省は、加納検事正の福岡高検検事長への異動(昇任)を内閣に「おうかがい」を立てていたが、刑事告発されていた加納検事正の昇任人事に内閣は難色を示す。なぜなら、「検事長」人事は、一般の検事職と異なり〔1〕法務省が内閣に上申し〔2〕内閣の承認を得て〔3〕天皇の認証により人事発令という手順になっていたからだ。〔2〕〔3〕の手続きを経て検事長になった人間の犯罪行為が明らかになり、起訴でもされるようなことになれば、内閣の責任問題にまで発展する。だから、内閣は難色を示し、再考を法務省に促したのである。
ところが、当時の原田明夫検事総長と松尾邦弘法務事務次官(注・原田氏のあとに検事総長に就任)、それに古田佑紀最高検刑事部長(現・最高裁判事)を連れて、当時の政界の実力者・後藤田正晴氏(元法務大臣)のもとを訪れ、「〈加納人事〉が認められないと、裏金問題で検察がつぶれる」と泣きついたというのだ。
当時、政府からは「加納検事正の告発問題に、〈クロ〉〈シロ〉はっきりつけよ」という要請があり、原田検事総長らは、「〈シロ〉ならば、〈加納人事〉を認める」との政府(内閣)の意向をとりつけて、同時に、加納検事正への告発について「不起訴」とすることで、この問題(刑事告発を受けていた加納検事正の検事長への昇任)の幕引きを図ったというわけだ。
この裏工作を、三井氏は「検察史上最大の汚点」と表現する。
「これは、検察が内閣を利用し、結果的に借りを作ってしまったのです。このことによって、今後、検察は内閣に対して贈収賄などの捜査ができなくなってしまうのです。内閣、つまり政権担当者への捜査を進めようとしても、向こうから『検察の裏金を公表しますよ』とでも暗にちらつかされたら、捜査を中断せざるを得ないからです」
三井氏は、同じことを著書の中で「クロをシロにした検察の大罪」と名づけた章で詳しく説明している。三井氏は「特捜検察の生みの親」河合信太郎(1913〜1982)氏の「時の政権の汚職を検挙しなければ国がほろびる」との言葉を引用し、次のように述べている。
「たかが人事のことで政権に借りをつくったのでは、汚職の検挙などおぼつかない」
「問題なのは、原田検事総長が政界と取り引きしたうえ、クロをシロとしてしまったことだ。そこに犯罪事実があるのは明らかなのに、政治家との約束を履行するため事実をねじ曲げ、『嫌疑なし』の裁定を下したのだ。こんなことがあっていいはずがない。検察の原点の崩壊である」。
「私が現職のまま実名で、検察の裏ガネ作り等をマスコミに公表する決意をした直接のきっかけはこれである」。
その後、晴れて小泉内閣は、〈加納人事〉を11月13日に承認し、加えて、原田明夫検事総長と森山眞弓法務大臣は、「検察の組織的な裏金作りは事実無根である」との記者会見までひらいた。
この「クロをシロにした検察の大罪」によって、小泉・安倍・麻生の3政権下で、内閣に好きなように操られ、「社会正義の権化たる検察」「真実のみを追求しこれを確定することを使命とする検察」の〈瓦解(がかい)〉が始まったと三井氏は言う。
(続く)
〔予告〕
※講演後半では、日歯連ヤミ献金事件(小泉内閣)、緒方公安調査庁元長官逮捕事件(安倍内閣)、そして2009年の小沢代表(当時)の公設秘書逮捕事件(麻生内閣)と、歴代内閣での「検察の暴走」ぶりが明らかに!
※《検察の裏金》(後)に続く。
〔関連サイト〕
◎「無所属市民の会」代表吉川ひろし氏
http://yoshikawahiroshi.blog61.fc2.com/
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