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民主党政権は「経済オンチ」。基礎知識さえ知らない「素人・財務大臣」に日本経済を託せるのか! (森永卓郎) http://www.asyura2.com/10/senkyo81/msg/652.html
http://www.nikkeibp.co.jp/article/sj/20100223/212265/?P=1 世界的な景気回復から取り残される「一人負け国家・ニッポン」
たとえば、2009年の1年間平均の完全失業率だ。5.1%という数字自体は過去最悪を免れたが、前年比マイナス1.1ポイントというのは過去最大の落ち込みである。 しかも、5.1%にとどまった理由は、雇用調整助成金によって約200万人の雇用がかろうじて守られている要素が大きい。 だが、有効求人倍率の数字には、助成金の影響が及ばない。2009年平均の有効求人倍率は0.47倍となり、1999年の0.48倍を下回って、こちらは統計上過去最悪を記録した。 また、2009年の全国消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合指数が、前年比マイナス1.3%となり、比較可能な1971年以降で最大の下落となっている。 こうした過去最悪の数字を記録した原因は、言うまでもなくリーマンショックの影響である。 とはいえ、2009年秋以降、世界経済が急速に回復しているのに対して、いまだに日本だけが最悪の状態に取り残されているのは大きな問題ではないか。
リーマンショック以後、物価が下落したのは米国も中国も同様である。ところが、両国とも深刻なデフレに陥ることなく、現在では消費者物価はプラスに転じて、経済状態は回復している。 IMF(国際通貨基金)によれば、2010年の世界経済の成長率は実質3.9%と見込まれており、予想以上のペースで世界は景気回復に向かっている。2009年10〜12月期の実質経済成長率を見ても、アメリカは5.7%、中国は10.7%にも達しているのだ。 なぜ日本だけが世界的な景気回復の波から取り残されているのか。 それは、主要先進国の中で日本だけがデフレを続けているからだ。では、どうすればデフレを脱却できるのか。それこそが、日本経済を回復するための大きな課題といっても過言ではない。 デフレといういわば非常事態に、藤井裕久前財務大臣に代わって財務大臣に指名されたのが菅直人副総理である。だが、「脆弱なガバナンスでマニフェストを崩壊させた民主党」でも書いたように、菅氏は薬害エイズ問題では目に見える結果を残したものの、残念ながら経済に関してはプロとはいえない。 菅氏が経済通ではないことを表すエピソードとして、こんなことがあった。
2009年10月以降、当時国家戦略担当・経済財政政策担当大臣であった菅氏は、エコノミストからの意見を聞く「マーケットアイミーティング」を開催した。 11月5日には、「カツマー」いう愛称で若者に絶大な人気を誇る経済評論家の勝間和代氏を招いて、今後の経済政策についての意見を聞いている。 マーケットアイミーティングの席上、勝間氏は「若年失業を防ぎ、財政再建を進める特効薬は、デフレを止めることだ」と強く主張した。そして、通貨の大量発行などの大胆な金融緩和を断行することで、デフレ脱却に取り組むべきだと菅大臣に強く迫ったのだ。 勝間氏は、けっして金融緩和を思いつきで言ったのではない。テレビ番組でわたしがご一緒するたびに、彼女は景気対策として金融緩和が重要であることを一貫して主張してきた。 勝間氏はマーケットアイミーティングに出席する直前、自身のツイッターで、菅氏にデフレ対策を求めることを発表。たった1日で、若者を中心とした2500人分もの賛同の署名を集めていたのだ。
若者にとって、冒頭で挙げたような現在の雇用情勢は深刻な問題である。 金融緩和をして、ゆるやかなインフレにしないと経済の拡大は望めない。そうしないことには、税収も増えないから財政もよくならない。これは、このコラムでも繰り返し述べてきた通りである。 そして経済学では、「フィリップス曲線」といって、失業率と物価上昇率は反比例する関係があるとされている。デフレを退治してある程度の物価上昇率にしないと、雇用情勢は改善しない。そう考えれば、勝間氏の主張は、ごくまっとうなものだということがおわかりになるだろう。 ところが、菅大臣から返ってきた答えは、まったく経済学に対する理解を感じさせないものであった。 「どこかのお金を持ってきて一時的に使っても、結局どこかのお金が使えなくなって、返さなければいけなくなる」 こういって菅大臣は勝間氏の提案を退けたのである。
もちろん菅大臣がとりわけ勉強不足だということではない。これまでの発言を聞いていても、50歳以上の民主党幹部のほとんどは、経済・金融に対する理解が乏しいと言わざるをえない。 それは、学者や評論家も同様である。テレビの討論番組でも、評論家の宮崎哲哉氏らを除いて、大半が勝間氏の主張する金融緩和策を無視していた。 経済通ではない菅氏が財務大臣になったことに、わたしは危惧を抱いた。 これでは、まともなデフレ対策は期待できないのではないかと思ったのだ。そうした不安は、国会での論戦を聞いていて、ますます募るばかりだ。 たとえば、2010年1月26日の参議院予算委員会のことである。 テレビや新聞でも取り上げられたからご存じの方も多いかもしれない。 自民党の林芳正・前経済財政担当大臣が菅直人財務大臣に「子ども手当ての乗数効果はどれくらいあると認識しているのか」と質問した。 すると、菅大臣は「消費性向は、おおむね0.7程度と想定している」と意味の分からない回答をしたのである。
林氏が聞きたかったのは、子ども手当を出すことで経済への効果はあるのか、ということだ。それに対して、「消費性向が0.7」というのはまったく意味が通らない。 そこで林氏が、「消費性向と乗数効果の違いを説明してほしい」と求めると、菅大臣は答えに窮してしまい、経済学への理解不足を露呈してしまった。 その場で菅大臣は、財務省出身の大串博志財務政務官に何度も説明を受けていたが、ちょっと聞いただけで答弁ができるようになるわけでもない。 結局、審議が4回もストップするほど、委員会は大混乱に陥ったのである。 林氏がわざわざ「乗数効果」などという専門用語を使ったのは、「嫌味ではないか」といった声もある。 だが、少なくとも消費性向や乗数効果というのは、大学でマクロ経済学を学ぶときに最初に登場する用語である。
もちろん、財務大臣だからといって難解な専門用語まで知っている必要はないのかもしれないが、経済の基礎知識程度の用語さえ知らない財務大臣がはたして日本の経済政策を引っ張っていけるのか。わたしはその様子を見て頭を抱えてしまったのである。 ところが、世の中は何が幸いするかわからない。事態は思わぬ方向に進んだ。 2010年1月29日に行われた通常国会冒頭の施政方針演説で、鳩山総理は「デフレの克服に向け、日本銀行と一体となって、より強力かつ総合的な経済政策を進めてまいります」と述べた。日銀に対して「金融緩和を進めろ」というプレッシャーである。 民主党政権発足直後は、「金融政策は日銀の専管事項」とする藤井前財務大臣の主張を支持していたのだから、大きな変わりようだ。 そして、わたしが驚いたのは、菅財務大臣もまた財政演説で、鳩山総理とほぼ同じ内容の発言をした点である。 わたしが知る限り、これは前代未聞の出来事である。施政方針演説と財政演説において、総理大臣と財務大臣が口を揃えて日銀包囲網とも言える圧力をかけたのだ。
これ以上の財政出動ができないと考える民主党にとって、残された景気対策の手段は、日銀の金融緩和しかないということになったのだろう。 それにしても、菅大臣は2009年11月、勝間氏による金融緩和策を門前払いしたのではないか。たった3カ月で重要政策の方針をころりと変えたことになる。 これがもし、藤井前大臣だったらこうはいかなかっただろう。大蔵官僚であった藤井前大臣は、財政・金融に対して、よくも悪くも自分なりの信念を持っている。信念を持っているからこそ発言もブレなかった。 ところが、菅大臣には信念がない。というよりも、経済に対する知識自体がない。 だからこそ、あれだけ金融緩和を否定していたのに、大胆にも考え方を変えることができたのだろう。菅大臣が経済の専門家だったら、ここにきて金融緩和にスタンスを移すことはなかったはずだ。その意味では、「怪我の功名」といってもよいかもしれない。
実は、施政方針演説があった同じ2010年1月29日、日銀の白川方明総裁は「内外情勢調査会・1月全国懇談会」で講演をしている。 そのなかで、白川総裁は「国債の買い取りは今の状態がもっとも適切なレベルだ」と断言している。これ以上の金融緩和はできないという意図をもった発言であり、まさに政権との全面対決である。 とはいえ、総理大臣と財務大臣の意見が一致している点は大きい。 2009年12月の金融緩和以降、日銀には大きな動きが見られないが、その壁を崩してもう一歩金融緩和に踏み出せば、状況の変化が期待できる。 外部環境もだいぶよくなってきた。日本の企業は軒並みひどい状況だといわれているが、アジアへの輸出に関係している企業の業績はそこそこ改善している。 ここで金融緩和が実施されて、為替を1ドル110円くらいの円安に持っていくことができれば、今のデフレから脱却できる可能性はある。 逆に言えば、当面、日本経済を立ち直らせる道はそのくらいしかないのも事実なのである。
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