一票の格差『違憲状態』 東京高裁判決 『2倍』を判断基準にhttp://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2010022502000057.html 「一票の格差」が最大二・三〇倍だった昨年八月の衆院選小選挙区の定数配分は違憲だとして、東京都と神奈川県の弁護士らが、両都県の計九選挙区について、選挙無効を求めた訴訟の判決が二十四日、東京高裁であった。富越和厚裁判長は、二倍以上の格差を「違憲状態」と判断した上で、選挙制度改正には時間を要することから「是正の合理的期間内であり、違憲と断定はできない」として、請求を棄却した。 (一部地域既報) 昨年の衆院選をめぐっては、別の弁護士グループが起こした訴訟で大阪、広島両高裁が「違憲」と判決。今回も違憲状態が示されたことで、二倍を合憲、違憲の判断ラインとする流れは強まった。人口比で配分する前に、人口に関係なく、あらかじめ全都道府県に一議席ずつ配分する「一人別枠方式」の不合理性も相次いで指摘され、改正論議が高まりそうだ。 富越裁判長は二倍以上の格差について「国民の平等な国政参加の機会、立法権の民主性の担保の観点で不当」とし、憲法が要請する投票価値の平等に反する疑いを指摘した。 その上で、過疎地への配慮を目的とし、結果として格差拡大を助長している一人別枠方式を検討。「国民を居住地によって差別し、人口の少ない県の一票の価値を、人口の多い県の価値より大きく設定している」と批判し、二倍以上の格差がある状態では「別枠方式を維持する必要性、合理性は認めがたい」とした。 しかし、小選挙区制で二倍を超える格差について最高裁が合憲判断をしてきたことをふまえ、二〇〇五年国勢調査(最大格差二・二〇倍)に基づいた区割り見直しを行わなかった点を「国会の裁量権逸脱とは言えない」と結論づけ、違憲判断は避けた。 ◆上告審へ原告側『合理性なさ判断を』 四十年近く定数訴訟にかかわってきた原告の山口邦明弁護士は、二十四日の判決後の記者会見で「全国八高裁の中でも、東京高裁が『違憲状態』と判断したことは重い」と手応えをにじませた。 最高裁はこれまで衆院選小選挙区の二倍台の格差を「合憲」と判断。にもかかわらず、大阪、広島に次いで東京高裁判決も判断ラインを「二倍」に置いた背景には、政権交代を経て「有権者は投票行動で政治情勢が大きく変化することを経験した」(大阪高裁判決)という投票価値の変化がある。 さらに、昨年八月の国民審査では、「一票の格差」訴訟で合憲判断をした最高裁判事の不信任率が他より高かった。山口弁護士は「裁判員裁判が始まり、司法に国民の目が向けられていることを裁判所が意識したこともあるのでは」と推測する。 これまでの最高裁判決も、裁判官の個別意見では「一人別枠方式は、人口比例の原則から相当逸脱している」などの強い批判が繰り返されてきた。 だが二〇〇二年を最後に格差是正の動きは止まり、大阪、広島両高裁は一人別枠方式に起因する不平等を放置した国会の“不作為”から、違憲判決を導き出した。 今回の東京高裁は「是正のため合理的期間内」にあるとの理由から明確な「違憲」とせず、「違憲状態」との判断にとどめたが、原告らは「期間の問題を持ち出すのはごまかしに映る」と批判した。 三訴訟とも今後は上告審に審理が移る。山口弁護士は「最高裁の多数意見として、一人別枠方式に合理性がないことを判断してほしい」と期待をかけた。
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