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アル=カーイダの衰退 【Commons】 「田原 牧」
http://www.asyura2.com/10/senkyo81/msg/178.html
投稿者 アルカディア 日時 2010 年 2 月 24 日 08:15:22: jjR5cYzLvBZKE
 

http://www.the-journal.jp/contents/maki/2010/02/post.html
《THE JOURNAL》

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筆者紹介(Profile)

田原 牧(たはら・まき)

-----<経歴>-----

1962年生まれ。
新聞記者。
87年に中日新聞社入社。
社会部を経て、95年にカイロ・アメリカン大学に語学留学。
その後、カイロ支局に勤務。
現在、東京新聞(中日新聞東京本社)特別報道部デスク。
同志社大学・一神教学際研究センター共同研究員。
日本アラブ協会発行「季刊アラブ」編集委員。

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以下転載

 米オバマ政権は2月上旬、アフガニスタンで対ターリバーンの大規模作戦を始めた。アル=カーイダの解体が狙いだという。その一週間ほど前、汎アラブ有力紙「シャルク・ル・アウサット(中東)」(電子版)に、エジプト人のサイード・イマーム・シャリーフ師(通称ドクトール・ファドル)の獄中会見を見つけた。読んでみると、ここ数年の私の推察と重なっていた。結論からいえば、米国はターリバーンに負けるし、この狙いのための流血なら無意味極まりない。なぜなら、アル=カーイダは衰退し、放っておいても凋落するからだ。
 ただ、オバマは急かされていたのだろう。昨年11月以降、ムスリムの軍医が国内基地で発砲し、クリスマスにはナイジェリア元財務相の息子が国内線の機上で殉教者作戦(自爆テロ)を試みた。アフガンにあるCIAの秘密基地でも、二重スパイが自爆した。国内世論が沸騰し、作戦に踏み切った。でも、展望はない。仮にウサーマ・ビン・ラーディンやアイマン・ザワーヒリーが死んだとする。しかし、米国が従来の対中東、対イスラーム政策を堅持する限り、一連の事件程度の脅威が消えることはない。


 
 具体的なアフガンをめぐる情勢分析は次に回したい。今回はアル=カーイダの跳躍と衰退にテーマを絞る。先のドクトール・ファドルはザワーヒリーが属していたエジプトのイスラーム急進派組織「ジハード団」のトップだった人物だ。内科医で理論家である。彼は同紙に「1998年に入るや、ザワーヒリーはエジプトにおける権力問題を放棄し、ビン・ラーディンに追従するために『遠い敵(米国)』に照準を定めようと思考を変えた」と告白している。腑に落ちたのはこの一節だった。
 1998年とは、どんな年だったのか。ここが大切だ。前年の11月、エジプトで日本人にも無縁ではない事件が発生していた。中部ルクソールでの外国人観光客襲撃事件だ。日本人10人も殺された。犯行集団は同じ急進派の「イスラーム集団」の反主流派だったが、この事件を機にジハード団を含む同国のイスラーム武闘組織はほぼ壊滅される。


 ここで「そもそも論」に少し触れたい。それ抜きには、アル=カーイダの特異性が分からない。このグループの源流でもあるイスラーム復興運動の特徴とは何か。流れは18世紀にさかのぼる。ときの西欧の政治、経済的侵略に対し、当時のイスラーム主義者たちはその原因を内省に求めた。つまり、イスラーム圏内部の堕落が侵略を許した理由と考えたのである。導かれた結論は、初期イスラームへの回帰である。堕落した為政者を放逐し、厳格な信仰を政治に再生(イスラーム法の適用)させることだった。
 しかし、世界はこのころから社会主義思想の隆盛を迎える。アラブとて例外ではなく、1950〜60年代にはエジプトの英雄ナーセルに象徴されるように、現実の反帝国主義運動の主役は非宗教的な左派(アラブ民族主義)が担った。
 その流れが変わったのは、67年の第三次中東戦争(6日間戦争)である。アラブの盟主エジプトがイスラエルの奇襲に敗北。ナーセルの権威は地に墜ちた。そして、79年。イランの地でイスラーム革命が勝利した。イスラームによる統治が絵空事ではなく、現実になったのである。
 このインパクトからイスラーム急進派は各地で一気に勢いづく。エジプトでは81年、イスラエルと和平を結んだサッダート大統領が暗殺される。作戦を遂行したのはイスラーム集団やジハード団の混成部隊だった。

   
 サッダートを殺した論理は背教認定(タクフィール)と呼ばれる考えだ。イスラームでは背教は死罪である。サッダートは背教者と断罪され、この暗殺に民衆も沈黙の同意を与えた。
 急進派の進撃は続く。だが、義勇兵たちが参じた反ソ・アフガン戦争が終わり、急進派が主敵とした社会主義圏の中核・ソ連が崩壊し、国際情勢は様変わりする。かつ彼らの野放図な「イスラーム解放区」が各地に現出するに至って、アラブ諸国の為政者たちは弾圧を強めた。急進派は各地で追い詰められていく。
 その苦しさから、一部は過激に突出していく。背教認定はイスラーム圏の為政者を倒す論理だったのに、その矛先が民衆にも向けられた。この構造は「うちに従わないなら反革命だ」と内向きに傾いていった70年代の日本の一部新左翼党派とよく似ている。アルジェリアのイスラーム武装集団(GIA)は一晩で数百人の村人の喉を切り裂いた。当然、粛清の恐怖に民心は離れていく。その行き着いた先が先のルクソール事件だった。もはや、サッダート暗殺のときのような民衆の支持はなかった。

   
 イスラームは正しいが、誰もがジハードに赴けるほど度胸はない。為政者が背教者だといわれれば、そうかもしれないが、自らが警察国家に逆らうのは恐い。多くがちょっとした誤り(例えば飲酒)くらい侵したことはある。それすら許されないのか。アラブの敬虔なムスリム市民は息苦しく暗い雰囲気にうなだれていた。
 そうした状況下で飛び出したのがアル=カーイダだった。イスラエル、その庇護者である米国こそが第一の敵であると定めた。「虐殺され続けるパレスチナの子どもたちを忘れるな」。ビン・ラーディンのアジテーションは幼く、単純だった。でも、それはアラブ市民の99%が頷ける内容だった。
 しかし、その戦略はイスラームの本筋からは外れていた。例えば、彼らが世界的注目を浴びた98年のナイロビ、ダルエスサラームの米大使館同時爆破事件、そして9・11事件。イスラーム法では、カリフ(イスラーム圏全体の指導者)不在の現在、ジハードは専守防衛と定められている。その決まりにこれらの作戦は反した(より正確にはカリフの代理人たる指揮官=アミールがいれば正当化できるので、そのためにターリバーンの指導者オマル師をアミールと名乗らせた可能性がある。だとしても、それは無理筋だ)。
 それに腐敗したイスラーム圏の浄化が復興運動の目標だが、彼らはスローガンではそう言いながらも、実際は攻撃しやすい異教徒世界、すなわち「遠い敵」に的を定めた。これが先のファドルが指摘したザワーヒリーの転身である。つまり、弾圧が厳しく、民衆の組織化という苦行に耐えねばならない現実の権力闘争を回避し、一見派手だが権力を獲得することとはほど遠いバーチャルな闘争に逃避したということである。


 もちろん、イスラーム諸国には当時も、地味に医療活動や福祉活動、専門職組合を舞台に弾圧に耐えつつも、復興運動に携わる人々がいた。汎イスラーム圏組織の「ムスリム同胞団」などがその典型だが、ザワーヒリーは彼らをののしり唾した。
 近代国境を越えた空想上のウンマ(イスラーム共同体)から現実の闘いを逆規定する。この姿勢はかつて厳しい弾圧下で「世界同時革命」「国際根拠地建設」という空想的スローガンに飛躍を託した日本の赤軍派とどこか重なる。そして、国も地域も持たないゲリラが頼れるのは人民の海しかない。ただ幸か不幸か、暗い「内ゲバ」時代の重圧に疲れていたアラブのムスリム市民たちはアル=カーイダの単純な突出に溜飲を下げ、快哉を挙げ、金持ちは彼らに兵站(カンパ)を約束した。

   
 だが、「栄光」の日々は続かない。2006年に転機が訪れた。この年、ムスリム同胞団のパレスチナ支部である「ハマース」がパレスチナ自治区の総選挙で勝利した。続いて、レバノンのシーア派抵抗組織「ヒズブッラー」がイスラエルと戦火を交え、イスラエルの不敗神話を破った。ハマースやヒズブッラーは武闘組織として日本では伝わりがちだが、実際には医療、福祉、教育、議会も担うオーソドックスな組織である。05年の暮れには、エジプトで本家のムスリム同胞団が議会で大躍進し、この間、トルコではイスラーム主義政党が与党としての地歩を固めていた。権力の奪取が目前で展開された。
 逆にアル=カーイダは自らが反面教師にしてきたはずのタクフィールの宿痾につかまる。自らの系列のイラクのザルカウィ一派(イラク・イスラーム国)はこの年に激化したスンナ・シーア両派の抗争で、シーア派(彼らの理解ではシーア派は背教者)住民の虐殺に邁進する。その結果、彼らは逆に住民たちから袋だたきにあった。
 こうした光景を見せつけられ、イスラーム圏の民衆は目を覚ます。足元の政治を変える地道な組織への信頼(本筋のイスラーム復興運動への回帰)、そして無辜の同胞に手をかける空想主義者の無軌道ぶり、それらが合わさってアル=カーイダへのシンパシーは一気にそぎ落とされた。その流れは今日も大筋では変わっていない。海を失った魚は干上がるしかない。イエメンやソマリアにはアル=カーイダを名乗る「ならず者たち」が蝟集するが、さほどの影響力はない。すでにターリバーンがアル=カーイダを見捨てる兆候すら出ている。米国がアル=カーイダを狙ってターリバーンを叩くことは逆効果でしかない。


  随分と荒々しく駆け足で振り返った。もし、興味のある方がいらっしゃれば、共著『アメリカのグローバル戦略とイスラーム世界』(明石書店)の拙稿「イスラーム急進主義の思想と戦略」を参照していただければ幸いである。
 アル=カーイダは近代国境をまたぐ「トランスナショナル(超国家的)・ジハーディスト」と呼ばれる。しかし、その政治的役割はある側面でナショナリズムに類似していたともいえる。言うまでもなく、19世紀後半の西欧帝国主義諸国の海外侵略は経済的な動機のみならず、ナショナリズムの高揚を推進力とした。ナショナリズムが国内政治に対する民衆の不満をガス抜きさせたからである。意図せざるとも、客観的にはアル=カーイダは単純な煽りで、イスラーム諸国内の政治的、経済的矛盾を隠蔽する役割を担ったともいえる。


 こうしたアル=カーイダをめぐる歴史的経緯には、この国の現在にも通じる点があるかもしれない。世論が沸騰した小沢問題の最大の収穫は、権力の実像、つまり普段カムフラージュされているその暴力装置が人々の眼前に露呈されたことにあったと考える。検察や警察(ほかにも暴力装置はアレコレあるが)は日常的には合法(正義)の皮をかぶっている。隣人の系統的な殺人も「兵役」で合法化されれば、善良な市民ですらやれてしまう。これと同質の皮である


 だけど、チラリと権力の実体を見せられたことで、市民の間に必ずしも暴力装置に対する怒りがわき上がるとは限らない。むしろ、直視することへのアレルギーも等しく存在する。検察への見方を変えることは自分の信じてきた世界、行き着くところは自分を疑うことにつながる。それは怖くて面倒だし、何より長いものに巻かれていれば、人は思い悩まずに済むものだ(だから、小沢さんが不起訴になるや、応援団の一部から「検察の良識」なんて台詞が聞こえた際には、あーあやっぱり出てきたか、とがっかりした)。

 他方、見逃せないのは世間が小沢問題に熱狂する間、陰湿な「日本版ネオナチ」が一段と台頭してきたことだ。昨年の暮れ、彼らは京都で初級朝鮮学校を襲撃したが、これを諫める理性的な世間の声は思いのほか弱かった。でも、こうした勢力から、小沢問題では検察審査会へ不起訴不当の審査申し立てが出されていることを忘れてはならない。鳩山政権への鬱積が募る中、暴力装置の脅しとファナティックな排外主義が政権交代の熱狂をあらぬ方向に牽引していくーーそんな不安を杞憂と断じられない現在がある。
 

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コメント
 
01. 2010年2月24日 08:26:56
至急・・・閲覧されたし、3月5日号『週刊朝日』のコンビニ等への配本が差し止められている模様
        流通業界大手2社の悪行

02. 2010年2月24日 09:25:10
以前コンビニにあったのですか?

もし差し止められているなら、大問題。
やはり悪のペンタゴンは真実だったのか!



03. 2010年2月24日 09:28:55
オサマなどのアルカイダは米国の創造のたわもの。捏造した911で作られた。

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