投稿者 忍 日時 2010 年 2 月 23 日 14:42:22: wSkXaMWcMRZGI
委員会審議について (2010年 2月17日)
予算委員会の審議が放映されるので,テレビを見ることがある。
民主党政権になって最も変わったことは,官僚答弁の廃止である。
法制局長官の答弁も廃止,細かいことまで各省庁の大臣・副大臣・政務官に答弁させ,もたもたしている。官房長官の答弁に至っては笑止千万なことがある。憲法も何も知らないということが一目瞭然だ。そもそも政治家にそれほどの力量があるはずもなく,反対に,官僚はその役所で何十年も同じことをやってきた専門家なのだから,これを使わない,使えないというのは不合理に過ぎる。
政治主導という理念は,主導する政治家に相応の力量があって初めて可能となる。加えて,政治主導は官僚を排除することとは別物である。官僚は手足となる永続的な組織であり,それに比して政治家は,選挙によって代わるべき非永続的な存在であり,また組織として微小である。
官僚をうまく使うことこそが上手な政治手法であることは今も昔も変わらない。ただ政治家に力量がないために官僚に使われてきた過去があり,その過去を払拭する方策は,官僚を排除することではなく,自らの力量を高め,官僚を使いうる主体にすることなのである。
そのこと以前に,委員会審議には大いなる疑問がある。たぶん多くの国民が気づいていることと思うが,今回も「なぜスキャンダルばかりやって,肝心の予算をやらないの?」。
以前国会にいたとき,某女性議員がカナダ在住の日本人領事のDVについて質問をしていて驚き,なぜこんな質問がありうるのか傍にいた先輩議員に聞いてみたところ,「予算委員会だから何でもある」との答え。実際,何でもあるどころか,肝心の予算についての審議がまるでないにも等しいのである。
何にいくら使うか,それが税金の正しい使い方なのか,それを逐一審議していくのが本来の予算委員会であろうと思うが,それはほとんど出ない。そしてスキャンダルなり何なりやったあとは採決するかどうかだけ。これは数の論理で決まるから,予算案は審議する以前に決まっているということである。つまり委員会はある意味,見世物だ。各党ないし各議員の選挙区向けアピールである。注目される予算委員会は花形だから質問をしたい議員は山ほどいる。私も一度テレビ放映の際の質問に立ったが,その反響たるやすごかった。
予算委員会に限らず,どの委員会でも逐条審議をやればいいのだが,条文にのっとって質問をする人は極めて少ない(当然ながら私はそうしていた)。質問といっても感想程度の,あまりにお粗末すぎて聞いているほうが恥ずかしくなるような質問も珍しくない。
ちなみに欧米各国では逐条審議をするという(『国会学入門』大山礼子著 三省堂)。法律制定・改正である以上当然であろう。逐条審議をやれば法律の解釈も残るし,さらに重要なことは質問のネタは尽きてしまい,審議を引き延ばしては廃案に持ち込むことができないということである。
国会において改善すべきことは多い。
国会改革を,といっても,それ相応の識見のある議員がそろわないことには無理なのであろうが。
Vol.74 小沢不起訴に思うこと (2010年 2月8日)
先月来,小沢はどうなるのかと聞かれる度に,私は「在宅起訴になるでしょう」と答えていた。これだけの証拠があるからというよりむしろ,起訴しなければならないという理由からである。現職国会議員を国会開会直前に逮捕し,その絡みで与党幹事長をまさに鳴り物入りで取り調べたのだ。もちろん参考人としてではなく,一般市民からの告発を受けての被疑者としてである。そこまでやる以上,起訴なしでは済まないと考えた。
だが結論は,周知のとおり,今月4日の勾留満期(延長して20日間)当日,逮捕された3人は起訴になったものの,小沢は不起訴であった。朝青龍の突然の引退劇が重なり,この日マスコミはてんてこ舞いだったそうだ。
不起訴の理由は当然ながら,起訴するに足るだけの証拠がなかったからである。そこはさすがに法治国家。ことに日本は,英米とは違って,起訴基準が有罪基準とほぼ同じレベルである。つまり,起訴するときにすでに,合理的な疑いを容れない程度の確証(一般人が誰も疑わない)がそろっていなければならない。無罪が出にくい仕組みになっているのである。
今回,小沢の指示もなく,秘書が勝手にそんな大それたことをするはずもないと考えるのは常識的だが,常識で裁判ができるのであれば証拠は要らない。秘書の一人は「小沢の了承を得た」と喋ったようだが,「上の了承」があったことをもってして上との共同不法行為(民事事件)とするのはよいが,刑事事件の「共謀」とするには薄弱だ。加えて,密室での取り調べでは心弱くなったとしても,裁判になれば供述が覆るのは必定である。
おまけに,問題の4億円の原資が分からないままであった。政治献金→銀行融資→個人資産と弁解が変遷し,疑わしいこと限りないが,疑わしいのは被告人の利益となる。うち5000万円についてはちょうどその頃ゼネコンから裏献金をされたと見込んだとはいえ,その供述の信ぴょう性が不明であり,貰ったとされるほうは認めない。そもそも前回私が指摘したように,残額については不明のまま,関係者を逮捕をして何か吐かせて出てこないかという乗りで強制捜査を始めたのだとしたら,非常に問題である。
そして,やはり何も出てこず,当然の結論となったというわけだ。
それでも,検察は小沢の金権政治の危うさをあぶりだしたからいいじゃないかという意見もあるようだが,その役割はマスコミが担うことである。検察は自らが強大な国家権力であり,であるが故に抑制的にその権力は行使されなければならない。国民から選ばれていない検察が,自分たちが国家を変える,国を正すという意気込みを持っているとしたら,誤りであり,危険なことである。
この間,日本が世界からどう見られているか,気になって仕方がなかった。永田町も霞が関も,ひとり国内ではなく世界における日本をどうか考えてほしいと切に願う。
財政破綻をしたギリシアの例にみるまでもなく,日本の財政も危機的状況であるという。
先行きが不安である。羅針盤がなく,日本丸がどこに行くのか,不安である。
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