投稿者 カッサンドラ 日時 2010 年 2 月 23 日 13:35:02: Ais6UB4YIFV7c
前回の「胆沢ダム工事の怪・3」で述べた平成16年度発注の「おいしい工事」は、たとえ第1期工事で叩き合いをやった末に受注しても、後の第2期工事で自社の随意契約と約束されているのだから大損はしない。当然第1期工事獲得に各社血眼になるはずである。たとえば津軽ダムの平成20年度発注工事で見てみると
東北地方整備局入札監視委員会(第一部会第4回定例会議)審議概要
審 議 対 象 期 間:平成20年10月1日 〜 平成20年12月31日
1 一般競争方式(WTO対象)
[津軽ダム本体建設(第1期)工事] 契約金額:13,038,900千円 5社参加
質 問:落札率が約70%と低くなった理由は何か。
回 答:あくまでも推測ですが、大規模工事案件でもあり、応札業者の受注意欲の結
果かと思われます。
と発注者は答えている。それでは胆沢ダム平成16年度発注ではどうだったのか。
@工事名 胆沢ダム堤体盛立(第1期)工事
落札率 94.42%
A工事名 胆沢ダム原石山材料採取(第1期)工事
落札率 94.42%
という高い落札率であるからおかしいのだ。80%台に落ちても不思議ではないのに。ほかのダム事務所の数値は、まさにこのレベルなのである。地方公共団体発注の工事などは、まさに「最低制限価格」に張り付いている。その価格を割ってしまうとアウトだから。
だから上記2件に関しては「談合情報」が寄せられなくても十分グレーだ。まさか1企業体しか入札に参加しなかったんじゃあるまいな?
さて国土交通大臣の話に入ろう。石原伸晃氏は大臣就任時には大盤振る舞いが好きだったようだ。次の2つのダムを見てみよう。
『質問主意書(平成十六年三月五日提出 質問第三〇号)
[ 奈良県大滝ダムの「基本計画変更」に関する質問主意書 ]
国土交通省が奈良県に建設中の多目的ダム・大滝ダムは、これまでに三,二一〇億円の膨大な費用を投入し、二〇〇二年度末を事業完了としていた。ところが、二〇〇三年四月に、川上村白屋地区で地すべり現象が発生した。
・・・・・・・・・・
石原伸晃国土交通大臣は、平成一六年二月四日付で、「大滝ダムの基本計画第五回変更」として、約二七〇億円の事業費追加と工期を平成二一年度まで延長することをダム使用権者に通知した。』
『[ 八ッ場ダムの事業規模を引き上げたのは石原伸晃国土交通大臣 ]
2003年に石原伸晃国土交通大臣(当時)が八ッ場ダムの事業規模を2,110億円から4,600億円に引き上げました。ダム最大の受益者である東京都と都知事は御存じ石原慎太郎です。国税分とは別に東京都として1,280億円の負担をしております。』・・Hatena:Diary 2009-11-10
簡単に言うと石原伸晃国土交通大臣は
大滝ダムで総事業費を 3,210億円 → 3,480億円
八ッ場ダムで総事業費を 2,110億円 → 4,600億円 に引き上げる事に判子を押したということだ。
だがダム工事では驚くにはあたらない。当初計画の総事業費で完成できると思うのが間違っている。2倍3倍は普通のことだ。最初の計画時には100%の精度では調査しない。「100%の精度」とはそのまま発注できるぐらいの精密さを言うが、まず必要なのは国と地元に説明できる工法と金だ。後は採択になってからじっくり調査をすればよい。
そして工事が進むにつれ、あれよあれよという間に事業費は増大する。そしてそれは業者の懐も副次的に潤す。
次に国は落札率85%未満の工事を「低入札工事」と呼んでいる。その推移を見てみると
(中部地方整備局における低入札工事の経緯)
H11 − 0.54%
H12 − 0.54%
H13 − 0.82% (平均落札率:70%)
H14 − 1.26% (平均落札率:69%)
H15 − 1.73% (平均落札率:74%)
H16 − 1.35% (平均落札率:68%)
H17 − 5.08% (平均落札率:69%)
平成16年度までは低く、平成17年度になって跳ね上がっている。みんな真面目に競争するようになったということか。低入札工事とは問題点も多いのだが。
これの原因かどうかは分からぬが、平成16年9月に国土交通大臣が自由民主党から公明党に交代している・・。
いったい政権党が大きな利権を生むことが可能なダム工事を、一野党議員の好き勝手にさせておくことをよしとするだろうか。自分の庭を荒らしまわる野良犬を黙って見ていられるものだろうか。六十余年も政権について全国隅々まで集金システムを張り巡らした自民党が、そんなことをするはずはないだろうと私は考えるのだが。
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