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死刑?この腐った司法権力がある限りは……【和歌山カレー事件】
http://www.asyura2.com/10/senkyo80/msg/228.html
投稿者 Palapala 日時 2010 年 2 月 10 日 21:59:01: MfW3M5qqlF51E
 

(回答先: オムライス党に関するデマ報道(きっこの日記、2.10)【デマゴミはなりふり構わなくなってきている。とくに時事≒惨刑】 投稿者 南青山 日時 2010 年 2 月 10 日 19:16:29)

以下は事件板で児童小説さんなどが投稿したものを配列しなおしてみました。
死刑制度は必要と思う人が多くを占めますが、この司法の元では非常に問題です。
警察検察側の主張は皆知っていますが、被告側の主張はほとんど誰も知りません。
ちょっと長いですが多くの人に知ってほしい。
__________________
  
   和歌山カレー事件
__________________
http://enzai.org/masumi_hayashi/

高見秀一弁護士の話
 私は一審から林眞須美さんの弁護人でしたので、まずは事件と裁判の流れを簡単に説明させて頂きますが、(以下、スクリーンに事件現場の地図を写しながら)この事件が起きたのは、平成10年の7月25日のことです。それからもう10年半経ちましたけど、この「ガレージ」と書いてある所で、事件当日に自治会の人たちが夏祭りで出すために、カレーとおでんを炊いていた。カレーの鍋は2つあり、そのうち「東側に置かれていた鍋」にヒ素が入っていたのです。
 そして、裁判では犯人だとされている林眞須美さんは、事件当日の午後0時20分ごろから午後1時ごろまでの間に、このガレージでカレーの見張りをしていました。その間に眞須美さんが、カレーにヒ素を入れたことになっているわけです。

 ただ、この事件では、眞須美さんがカレー鍋にヒ素を入れたところを見た人は誰もいません。しかし、カレー鍋が置かれていたガレージの向かいにあるお宅の、Hさんというお嬢さんが「ガレージに眞須美さんがいて、西側のカレー鍋のフタをあけ、鍋の中をのぞき込んでいるところを見た」と証言されている。西側の鍋というのは、要するに「ヒ素が入っていなかったほうの鍋」なのですが、この証言が裁判では、眞須美さんがカレー事件の犯人であるとする重要な間接事実の1つとされているのです。
 このHさんの目撃証言には色々問題があるのですが、そのうち2つの問題点について、今日はお話させてもらいます。

・眞須美さんのTシャツの色を間違った目撃証言
高見秀一弁護士の話
 この証言の1つ目の問題点は、一審でHさんが眞須美さんの当日の服装について、「白いTシャツだった」と証言されていることです。というのも、事件当日に眞須美さんが着ていたのは「黒いTシャツ」だったので、ここがまず事実と違うわけです。
 もっとも、裁判では、Hさんの言う通りに事件当日の眞須美さんの服装は、「白いTシャツ」だったと認定されています。そこで、眞須美さんの服装が白と黒、本当はどっちだったのか、事件当日にカレーの調理や見張り番をされた他の地域住民の方々の証言を元に検証してみます。

 まず、事件発生まもない98年9月、10月のころの地域住民の方々の証言をみていくと、Mさんという方が9月17日付けと10月1日付けの警察官調書でいずれも「林の奥さんは黒っぽい服を着ていたと思います」と証言されています。このMさんという方は、事件当日の午後1時ごろにカレーの見張り番を眞須美さんと交代した人ですが、その時に眞須美さんを見た記憶に基づいて証言されているわけです。
 それから、Tさんという方も、午前中にカレーやおでんの調理をしていた時に眞須美さんを見ているのですが、9月23日付けの警察官調書で「林さんが黒のTシャツ姿で、右手で子供を抱えるようにしてガレージに来たのです」と供述しておられます。また、0時20分ごろに眞須美さんとカレーの見張り番を交代したOさんという方も、10月1日付けの警察官調書で「林さんの服装は黒か紺のダボダボしたTシャツでした」と証言しておられたんです。

 また、この人たちの一審の法廷での証言をみても、TさんとMさんは眞須美さんの事件当日の服装を「黒」だと証言されています。一人だけ、Oさんが一審の法廷では眞須美さんの服装について「白っぽいTシャツでした」と証言し、捜査段階の「黒か紺」から証言が変わってしまったのですが、実はこのOさんは、証言を変遷させた理由として、法廷でこんなことを言っているのです。
「オリジナルの記憶は白だったんだけども、警察の方に調書をとられている時に、『他の人はみんな、林さんが黒のTシャツを着ていたと言っている。あなたの記憶違いじゃないか』と言われたんです。それで、みんなが黒だと言っているなら、林さんの服装が白だという私の記憶は間違いかもしれないと思って、取り調べでは黒だと言っていたんです」
つまり、眞須美さんの服装を法廷では「白」だと言ったOさんの証言によって、逆に、事件発生まもないころには地域住民のほとんどの方が眞須美さんの服装を「黒」だと証言していたことがハッキリするわけです。

・目撃者が見たのは眞須美さんではなく次女
 そして、Hさんの目撃証言に関するもう1つの問題点ですが、それは、眞須美さんがカレーの鍋のフタをあけた時、首にタオルを巻いていたと証言されていることです。というのも、他の地域住民の方々は誰一人、眞須美さんが事件当日にタオルを首に巻いていたとは証言していないんです。

 では、Hさんが見た「鍋をあけた人」、つまり「首にタオルを巻いていて、白いTシャツ姿だった人」は誰だったかというと、眞須美さんの次女だったのです。
 というのも、次女の方は、事件発生当時にフライデーが、眞須美さんと間違って写真を誌面に掲載したほど、眞須美さんと背格好がとてもよく似ていたんですね。それで、Hさんも次女の方を眞須美さんだと間違って証言したんだと思うのです。
 実際、次女の方は、「事件当日にはガレージでお母さんとずっと一緒にいた。その時に自分は白いTシャツを着ていて、首にタオルを巻いていた」と証言しています。それに、次女の方は、「お母さんと一緒にガレージにいる時にカレーの鍋のふたをあけ、味見をしました」ということを裁判が始まる前の手続から一貫して証言しているんですね。

 それと、Hさんは「カレーの鍋のフタをあけた時、眞須美さんは首にタオルを巻いていた」と証言している一方で、「午後0時20分ごろに眞須美さんを最初に見た時には、首にタオルをかけていなかった」とも証言しています。
 そのことから、一審判決は「最初は首にタオルを巻いていなかった被告人が、鍋のフタをあけた時に首にタオルを巻いていたのは、カレー鍋の見張り番をしていた時間帯に一度、家に帰ったからだ。その際、家にあったヒ素を持ってきたのだろう」と言外に匂わせている。

 しかし、Hさんの証言を検証すると、実は事件発生まもないころの検察官調書では、「眞須美さんは、最初に見た時(つまり午後0時20分よりも前の時点)から、白っぽいTシャツに黒っぽいズボンをはいていて、首にタオルを巻いていました」と証言しています。ですから、Hさんが最初に見た時に首にタオルを巻いていなかった眞須美さんが、次にHさんが見た時は首にタオルを巻いていたとされ、そのことから眞須美さんがカレーの見張り中に一度家に帰ったとしている点も、一審判決は間違っているわけです。

小田幸児弁護士の話

 私のほうからも、この事件の流れをちょっと話させて頂きますが、カレー事件は平成10年7月25日に発生し、最初は食中毒じゃないかと言われ、その次に、青酸化合物がカレーに混入されていたのではないかと言われました。さらにその後、カレーに入っていたのが青酸ではなく、実はヒ素だったと判明する流れになりました。

 そして8月から、林健治さんと眞須美さんの夫婦が「怪しい」という報道がされ、10月4日に夫婦が一緒に逮捕されました。この時は夫婦二人が保険金詐欺の共犯だということで逮捕されたのですが、12月になると眞須美さんは、健治さんに対する殺人未遂でも逮捕された。そんな中で私は眞須美さんの弁護人になったのですが、眞須美さんは12月初めにカレー事件でも逮捕され、12月29日に起訴されたのです。

 ただ、この事件には、直接証拠がありません。自白もないし、犯行の目撃証言もない。そんな中で起訴の大きな後押しとなったのが、中井泉さんという鑑定人がスプリング8という最新の大型放射光施設によって鑑定を行い、「林家などから見つかったとされるヒ素」と「カレー鍋に入っていたヒ素」が同一だと結論した鑑定結果でした。

・問題が多かった鑑定人
 しかし、この鑑定には色々問題があるのです。
 まず第一に、鑑定人の中井さん自身に問題がありました。というのも、中井さんは、眞須美さんがまだカレー事件では起訴されてもいない時期にマスコミを集め、裁判でも最重要証拠になると思われる鑑定結果を公表している。しかも、その会見の場で「科学によって、悪事は必ず裁かれることを証明するために鑑定したんだ」みたいなことを言っているのです。鑑定結果が裁判で証拠調べもされていない時期に、眞須美さんがカレー事件の犯人だと煽るようなことを中井さんはしたわけです。

 さらに鑑定の途中でも中井さんは、証拠が足りないと思うと、警察官に追加の資料を持ってこさせ、有罪の証拠が厚くなるように鑑定していた。つまり中井さんというのは、科学者として中立的に物事を判断するという資質に欠けた人だったのです。

 また、この中井さんを警察に紹介した山内博さんという鑑定人にも問題がありました。というのも、この人はヒ素の専門家ということになっている人ですが、法廷で尋問してみると、「飽和」や「再結晶」などという理科の知識も理解できていなかった。それに山内さんは、証言態度も非常にいい加減だったのです。

 たとえば、厚生省の調査結果をもとに証言していると山内さんが言うので、弁護人が「その調査結果を法廷に出すことはできるか?」と聞いたら、彼は「出せません」と言うんですね。そこで、次回の山内さんに対する尋問では、弁護団はその厚生省の調査結果を独自に入手し、その上で尋問したのですが、すると山内さんは、法廷に出せないと言ってはずの調査結果をカバンから取り出して、「実は……」と言い出した。山内さんはそういういい加減な人だったのです。

・再鑑定にも問題があった
 中井さんの鑑定は、鑑定手法にも疑問があったので、弁護団は再鑑定を求めました。すると、裁判所が職権で谷口一雄さんと早川慎二さんという鑑定人に再鑑定やらせたのですが、この再鑑定にも問題がありました。

 というのも、この谷口・早川鑑定では、最初は、林家などから発見されたヒ素と、カレーに入っていたヒ素が「同一とは言えない」という結果が出たのです。ところが、裁判所が弁護人に相談もなく、谷口さんと早川さんに鑑定のやり直しを命じたんですね。

 すると、谷口さんと早川さんは今度は、「同一の可能性がある」という判断をした。そして一審判決は、中井さんの鑑定に加え、科警研の鑑定や、谷口・早川鑑定を総合的に評価し、林家などから見つかったとされるヒ素とカレーに入っていたヒ素を「同一の原料で、同一の工場で、同一の工程で、同一の機会に製造されたものだ」と結論づけてしまったのです。

・鑑定資料の発見や保管の状況にも問題
 また、仮に鑑定結果が正しかったとしても、鑑定資料のヒ素の発見状況や保管状況などにも問題がありました。

 たとえば、警察は98年10月13日に林家の旧宅のガレージを捜索し、ミルク缶に入ったヒ素を発見しています。ところが、この缶の底にヒ素がついていたということで、警察は翌14日にこのガレージを再捜索している。そして、缶が置かれていたとされる場所から、こぼれていたというヒ素を押収しているのです。
なぜ、警察は最初の捜索では、こぼれていたヒ素に気づかなかったのか? しかも、缶の底についていたとされるヒ素は、押収後にどこに行ったのか、まったく明らかにされていないのです。
 スプリング8を使った鑑定では、きわめて微量のものが分析できるので、鑑定資料のヒ素に、ちょっとでも他のヒ素が混ざれば、どうしようもなくなります。したがって、この事件で鑑定資料となったヒ素は、他の事件の鑑定資料以上に気をつかって保管しないといけない。しかし、警察は鑑定資料のヒ素について、保管の状況を写真などで客観的に明らかにするということをやっていないし、ちゃんと保管していた様子がまったく無いんですね。

 裁判所は、スプリング8による鑑定について、「微量なものでも分析できて、信頼性が高い」と言っていますが、一方で「微量なものでも分析できる技術だからこそ、微量な量でも鑑定資料が汚染されたら結果が変わってしまう」という点は無視しているのです。

 また、ヒ素は白アリ駆除などで使われていたものですが、林さん宅以外に事件発生当時、どれくらいヒ素があったのかはわかってない。ですので、この裁判では鑑定によって、林家などから発見されたヒ素と、カレー鍋に入っていたヒ素が同一だと認定されていますが、この鑑定からカレーにヒ素を入れたのが林眞須美さんだと結論づけることはできないと考えています。

河村シゲルさんの挨拶

 ぼくが林眞須美さんの事件に関心を持つようになったのは、三浦和義さんとやっていたトークライブがキッカケでした。そのライブというのが、冤罪を訴えている人や、世間から後ろ指をさされているような人を呼び、お話を聞くという内容だったのですが、三浦さんがある時、「来月は、眞須美ちゃんのダンナさんを呼びたいんだ」と言ったんですね。

 その時、ぼくは「眞須美ちゃん」というのが、林眞須美さんとすぐに結びつかなかったんですが、三浦さんが呼びたいのが林健治さんだとわかって、すぐに「じゃあ、呼ぼう」と。その時、健治さんは数十年ぶりに東京に来られたそうなんですが、東京では初めてカレー事件のことを語ってくれるとのことで、「これはいいなあ」と思ったのです。

 しかし、ライブの前日になりましたら三浦さんから連絡がありまして、「腰が痛くて動けないんだ」と言う。それで急遽、三浦さんがライブに来られなくなって、ぼくは何も事前情報がないまま、ライブで林健治さんとお話することになったんです。

 ぼくはそれまで、カレー事件についてはマスコミ報道でしか知らなかったので、健治さんについては、胡散臭いオジサンというイメージしかなかったし、林眞須美さんについても、ホースで水をかける怖いオバサンというイメージしかありませんでした。つまりライブでは、ネガティブな情報しか持っていない状態で、ぼくは健治さんとお話したんですね。

 ところが、健治さんとお話した時、最初に印象的だったのは、健治さんの目が澄んでいるんです。それで、「風体は悪いけど、こんなに目が澄んだ男がいるんだなあ」と思いながら話を始めたら、健治さんはいきなり冒頭で、「私は悪い男です」と言うんです。
「保険金詐欺で何億も儲けて、ギャンブルでスッテンテンになるまで遊んだし、深夜に麻雀して近所にも迷惑をかけた。私は悪い男です」と、こんな話を健治さんは訥々とされたんですね。
 一方で健治さんは「しかし、うちの眞須美は私とは違う。眞須美は近所で好かれていたし、眞須美のことを悪く言う人はあのへんにいないんです」ということをライブで切々と訴えられたんです。

 さらに、このライブでぼくが健治さんに聞かされたのが、4人のお子さんたちが、お母さんの無実を信じて戦っているんだということです。この話にぼくは感動させられたんですが、中でも一番感動したのが、次のような話です。

 眞須美さんが入っている拘置所では、ラジオのリクエスト曲をずっと流しているそうなんですが、眞須美さんがある日ラジオを聴いていたら、「今日はお母さんの誕生日なので、この曲をリクエストします」ということで、大橋純子の「シルエットロマンス」が流れたそうなんです。実はこれ、眞須美さんが大好きな曲だということで、お子さんたちがリクエストしたそうなんですが、これを聴きながら眞須美さんは拘置所でボロボロ涙を流した、と。ぼくはライブで健治さんから、こういう話を色々聞きまして、この事件に関心を持つようになったんです。

 といっても、ぼくはこの事件のことはまだよく知りません。しかし、お子さんたちが一生懸命戦っているなら、眞須美さんの言葉にも耳を貸してもいいんじゃないかと思うんですね。
 今日ここに来ているみなさんの中にも、まだマスコミ報道でしか事件のことを知らない人が多いと思います。ですので、今日はぜひ本当の話をお聞きになって、それでもう一度、私たちが人間として、日本人として何をしたらいいか、ということを考える機会になればいいと思っています。

ご家族の挨拶

林健治さんの挨拶
 はじめまして。今日は和歌山から出てきました林健治です。
 今日は、初めての東京集会ということで、これだけ多くの方が参加してくれるとは、夢にも思っていませんでした。それで、いつもの集会ではすっと当たり前のように前に出てくるんですが、今日は足がすっと前に出てきませんで、緊張もしています。
 最高裁の口頭弁論の期日が今月24日に決まり、今は大変厳しい状況なのですが、屈することなく前に進んでいかないことには、この事件は風化してしまうので、子供と一緒に一日千秋の思いで過ごしています。今後とも、みなさまには支援のほど、よろしくお願い致します。
 それで、今日は長男と三女が同席していまして、みなさまにお礼と挨拶がしたいということなので、よろしくお願いします。

ご長男の挨拶
 今日はありがとうございます。長男の××です。
 ぼくは事件が起きた当時、小学5年生ということで、ほとんど事件のことは把握できていない状況でした。しかし、父が出所しまして、このような支援集会を重ねるうちにちょっとずつではありますが、事件のことが理解できてきまして、微々たるものですけども、母を助ける力を集めていきたいと思っています。
 家族の力だけではどうしようもないので、どうかみなさんの力を借りたいと思っています。よろしくお願いします。

ご三女の挨拶
 今日はありがとうございます。三女の××です。
 私は当時4才だったので、何も覚えていませんが、お母さんが一日でも早く戻ってきて欲しいので、これからもお母さんの支援、よろしくお願いします。

林眞須美さんのメッセージ

2月24日、最高裁第三小法廷で午後3時からの口頭弁論を前にして、初めての東京集会に、本日は多忙な中、大勢の方々にご参加いただきまして感謝の気持ちでいっぱいです。本当に心より感謝申しあげます。
本日ご参加の皆様にお願いしたいことがあります。
皆さんが裁判官になったと考えてみてください。皆さんがそうなったら私に死刑判決を下しますか?何か証拠はありますか?
私は犯人ではないので何もありません。何もないはずです。
私はカレー事件の犯人ではないのです。ですから、私は何としてでも無罪判決を勝ちとらねばという強い決意で、毎日毎日を過ごしています。
とはいえ、獄中の私にできることなんて何もないのです。
弁護士の先生方には、上告審を手弁当で闘っていただいています。
また、支援者の方々や、集会にご参加してくださっている方々など多くの皆様が、無収入のボランティアで、私や4人の子供たちを力強く支えていくださっていることが、私の心の支えになっています。
どうか真犯人の方は、一刻も早く名乗り出てください。私は毎日今日か明日かと、今か今かと待ち続けてすごしています。

本日は、長女と次女は仕事の都合で参加できませんでしたが、主人と長男、三女が参加しています。
思い返せば、私が逮捕された平成10年10月4日は、当時小学5年生の長男の運動会の日でした。長女 中三、次女 中二、三女はまだ4歳でした。
日本中のマスコミが家に押しかけ、テレビも生中継で、頭上には耳が壊れてしまいそうなくらいの大騒音のヘリコプターが、10機以上も飛んでいる戦争状態のような中で、取り残されてしまった4人の子供たちは、どんなに不安な思いであったのかと思うだけで、私はいつも息が詰まり、胸が張り裂けそうになります。
子供たちは、父も母もいない中で、日本中の誰もが敵としか思えない中で、私たちはもうこの4人しか信じられる人はいないんだと、兄弟で力をあわせながら成長してきてくれました。
長男が高校生の時にはバスケットクラブに入り、一日も休まずに練習に励み、二年生の時にはキャプテンとして、過ごしていた時に、近畿大会で長男のシュートが決まったときに、「死刑囚の子」と野次が飛んだということを、主人の手記を雑誌で読んで初めて知りました。
この時のことが長男にとっては今までの人生で一番つらかったことだそうで、彼はその時に笑顔で返したそうですが、私はこのことを知って以来、半年間は情けなくて、心身ともにボロボロでなき続ける毎日でした。
そのような中でも、この子供たちは母親である私への手紙は、何ひとつとして自分たちのつらいことや不平不満は言わずに、けなげにも私を励ましてくれるものばかりでした。
私は親バカです。
私はこの、愛しくてかわいくてたまらないこの4人の子供たちのためなら、何でも、少しでもできることはしてあげたいとの思いで、机の上の写真立ての子供たちの笑顔のVサインを、46時中目にしてすごしてきました。

本日は、こんな私にそれまでは、私のことをママと呼んでいた子供たちが、この時初めてお母さんと書いて、平成11年5月13日の初公判の前に、4人の子供の連名で送ってきてくれた手紙を紹介させていただきたいと思います。
 
「お母さんへ。
5月13日の初公判で、いよいよ裁判が始まりますね。
私たち4人は、毎日元気ですごしています。安心してください。
新聞、ニュース、雑誌等のマスコミは、本当にひどいことを書いたり言ってますが、世界中のみんなが敵になっても、私たち4人はいつもお母さんのことを信じています。
どんなにつらく、何十年かかったとしても、私たちは待ち続けてます。
世界でたった一人のお母さん。どんなにつらくて苦しくても、私たちがいることを忘れないでください。負けないでください。裁判に勝ってください。裁判で勝ってお母さんが帰ってくるまで、何十年でも私たちは待ってます。
お母さん泣かないでください。必ず勝ってください。お母さんに会える日を楽しみにしてます。体に気をつけて頑張ってください。離れて初めての母の日です。
おかあさん。どうもありがとうございます。」

私は、このわが子たちの力強い成長に答えるためにも、一日も一刻も早く子供たちのもとへ帰りたいのです。
どうか皆様、本当の裁判のことを知ってください。お力をお貸しください。
なにとぞお願いいたします。

平成21年2月13日
林 眞須美


山際永三さんの挨拶
 今日はみなさん、ご苦労様でした。もう何も申し上げることはありませんが、裁判員制度がもうすぐ始まる中で林眞須美さんの事件、その前の三浦和義さんの事件のような法廷が冷静さを失い、合理的な判断ができないような環境で行われる裁判の怖さ、裁判官だけでなく、出てくる証人や証拠がマスコミ情報で汚されている裁判の怖さを今日もつくづく感じた次第です。
 我々はもうちょっと冷静にならねばならないと思いますし、裁判はもっと厳密であって欲しいと思います。みなさん、そのために力を尽くしましょう。よろしくお願いします。

−−−−−−

http://enzai.org/masumi_hayashi/takarajima2.html

『真日本タブー事件史』(宝島社・2008年5月20日発行) | 林眞須美さんを支援する会 / 林真須美

『「静かに広がる「和歌山毒カレー事件」の「冤罪疑惑」、
浮上する捜査と証拠の「不自然」』


日本中から「毒婦」と呼ばれた林眞須美被告人が一、二審で有罪・死刑判決を受け、現在は上告中の和歌山毒カレー事件。状況証拠のみ、動機も未解明であるこの事件の冤罪疑惑が発生から約10年になる今、静かに広がってる。この事件には、たしかに冤罪と不正捜査を疑わせる事実があまりにも多い──。

「和歌山毒カレー事件 囁かれ始めた冤罪説を追う」と題した拙稿が、別冊宝島1441号『日本タブー事件史2』に掲載されたのは、今から約1年前になる。本稿は、その原稿をほぼ全面的に書き改めたものだ。
 原稿を全面的に改訂した理由は二点ある。
 第一に、この事件の冤罪疑惑が「囁かれ始めた」という時期をもうとっくに過ぎている。かつて日本中から「毒婦」と呼ばれた林眞須美被告人の有罪判決に疑問を持ち、事件の再検証をする取材者がこの1年でずいぶん増えたため、前回の原稿が現在(2008年4月)の状況にそぐわなくなってしまったのだ。
 第二に、前回の原稿を執筆後、公判記録などを元にこの1年間、事件の再検証を進めてきた私の考えがかなり変わっている。ありていに言うと、今ではこの事件を冤罪だと私は確信し、こんな裁判がよくまかり通ってきたものだと呆れているのだ。
「タブー事件史」と題された本書を手にされるような方なら、世間に広く流布していない論説を耳にしても、さほど驚くことはないはずだ。とはいえ、この事件が冤罪だと聞いても、ピンとこない方のほうが多いと予測する。私がそう予測するのは、この事件の公判の「本当のところ」がこれまでほとんど報じられていないに等しいからだ。
 この事件の一、二審では、弁護人によって、眞須美被告人をカレー事件の犯人だと信じるには不合理な事実や、捜査の不正を伺わせる事実が数多く明らかにされている。私の調査結果も交えながら、今回はその一端を紹介させて頂こう。読者諸氏が、本稿の情報すらも客観的・批判的に見つめながら、この事件の真相を再考察してくれたなら幸いだ。

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直接証拠ゼロ、動機も未解明
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 まず、和歌山毒カレー事件のあらましを一応、確認のために振り返っておく。
 この事件が発生したのは、今から約10年前、1998年7月25日午後6時頃である。和歌山市郊外の園部という新興住宅地で催された夏祭りで、亜ヒ酸が混入されたカレーを食べた67人が急性ヒ素中毒に陥り、うち4人が死亡した。そんな被害の甚大さに加え、マスコミ総出の熾烈な取材合戦をご記憶の方も多いだろう。
 メディアが眞須美被告人と、白アリ駆除業を営んでいた夫の健治氏を「疑惑の夫婦」と呼び、「保険金目的で周囲の人物たちにヒ素や睡眠薬を飲ませていたらしい」という夫婦の疑惑を洪水のように報じ始めたのは、事件発生から1ヶ月ほど経った頃からだった。それからほどなく、「疑惑の夫婦」のうち、元保険外交員の妻(眞須美被告人)こそがカレー事件の犯人だとほのめかす報道が増えていく。その根拠として当時、盛んに報じられていたのが、健治氏のほうは自分自身もヒ素中毒らしき症状で何度も入退院していたことだ。
 要するに、保険業界の内部事情に精通した眞須美被告人が保険金詐欺の主犯で、共犯者の夫にすらも保険金目的でヒ素を飲ませていたと捜査本部が目星をつけ、それにマスコミも一斉に追随したわけだ。あの保険金疑惑報道によって当時、眞須美被告人がカレー事件の犯人だという心証を固めた人は決して少なくなかったろう。
 しかし、カレー事件と保険金詐欺はあくまで「別の事件」である。洪水のような犯人視報道と裏腹に、眞須美被告人を犯人とする証拠はきわめて貧しいのがカレー事件の実態だ。
 げんに、捜査機関はカレー事件の直接証拠を一切発見できないまま、事件発生から約2ヶ月後の同年10月4日、保険金詐欺などの容疑で眞須美被告人を別件逮捕せざるをえなかった。その後も眞須美被告人は本件のカレー事件で逮捕されるまでに、二度も別件で再逮捕されている。このように捜査機関が逮捕・勾留を繰り返したのは、めぼしい証拠が見つからなかったため、眞須美被告人から自白を引き出したかったからに他ならない。
 それでも、眞須美被告人は黙秘したまま、2002年12月11日に一審の和歌山地裁で有罪・死刑判決を言い渡されている。さらに黙秘を撤回し、自分の言葉で無実を訴えた二審の大阪高裁で05年6月28日に下された判決も、再び有罪・死刑だった。テレビや新聞の言葉を借りれば、「検察が状況証拠の積み重ねで有罪の立証に成功した」わけだ。
 ただし、動機は結局、未解明である。世の中に衝動的な殺人はいくらでもあるが、カレー事件のようなことが起こって大騒ぎになれば、眞須美被告人はむしろ困る立場だったのだ。一円の得にもならない上、過去の保険金詐欺が発覚するリスクを背負ってまで、眞須美被告人がカレーに亜ヒ酸を混入したくなる動機など、何かありえるだろうか? 事件発生当時から指摘されていたこの疑問について、裁判で答えは何も見つかっていないのだ。

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住民らの証言は激しく変遷
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 では、裁判で眞須美被告人はどのような根拠で有罪とされているのか? 一、二審の判決文を検証すると、以下の4点に集約される。

@犯行に及ぶ機会があったのは、事件当日の午後0時20分頃から1時頃まで1人でカレー鍋の見張りをしていた被告人だけである。

A被告人はカレー鍋の見張りをしていた時、不自然な行動をしていた。

B被告人の周辺から発見された亜ヒ酸と、カレー鍋に混入されていた亜ヒ酸は、科学鑑定などから「同一」だと認められる。

Cヒ素を人を殺害する道具に使っていたのは、被告人以外の事件関係者には認められない特徴である。被告人は、人の命を奪うことに対する罪障感、抵抗感が鈍麻していた。

 @〜Cはどれも詳細まで検証すると、きわめて胡散臭いのが実態だ。
 まず、@についてだが、事件当日、自治会の主婦らが民家のガレージで午前8時30分頃にカレーをつくり始めてから、被害者らが午後6時頃にカレーを食べ始めるまで、9時間以上もあったのだ。しかもその間、交代でカレーの調理や見張りを務めた10人以上の主婦に加え、無数の人間がカレー鍋の周りを行き来していたことが証拠上明らかになっている。にも関わらず、9時間以上の間に40分間だけ、カレー鍋の周りに眞須美被告人しかいなかった時間帯があったと検察官や裁判官は言うのだが、いささか都合が良すぎよう。
 げんに、検察がこのような立証をするため、公判で事件当日の行動をまさに「分刻み」で詳細に証言させた住民たちの記憶が、本当にオリジナルの記憶なのか、疑わざるをえない事実も明らかになっている。
 たとえば、住民らは捜査段階で事件現場や警察学校に一同に集められ、事件当日の再現検証をやらされていた。しかも、住民らは法廷に立つ前に一様に4〜5回の証人テストを受けさせられていた。これなら、捜査機関が住民らの記憶を都合良く塗り替えようと思えば、いくらでも塗り替えられたろう。
 実際、住民らの供述は変遷が激しかった。事件発生まもない時期、警察官が録取した調書にはなかった供述が、事件発生から約4ヶ月とか、約1年3ヶ月経って検察官が録取した調書に現れている例もあったほどなのだ。

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証拠の貧しさを物語る目撃証言
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 眞須美被告人がカレー鍋の見張りをしていた時、不自然な行動をしていたとされている認定(前記A)についても、眉唾物というしかない。
 ここでは、眞須美被告人の「不自然な行動」を目撃したことになっている証人を仮にA子としよう。A子は、カレー鍋が置かれていた民家のガレージの向かい側の家の住人だ。A子証言の概要は次の通り。
「被告人は、カレー鍋の置かれていたガレージの中でクマみたいに行ったり来たりしながら、カレー鍋のフタをあけ、中をのぞきこんでいました」
 この証言については事件発生当時から、あたかも決定的な目撃証言であるかのように報じられていた。そして実際、この事件の裁判において、この証言は有罪の有力な証拠として取り扱われている。
 しかし、そのことは逆に、この事件がいかに証拠が貧しいかを如実に物語っている。というのも、A子証言における「カレー鍋」とは、正確に言うと、「事件現場に2つあったカレー鍋のうち、亜ヒ酸が混入されていなかったほうの鍋」に過ぎないのだ。亜ヒ酸が入っていなかった鍋のフタをあけたところで、一体どこが「不自然な行動」なのだろうか?
 普通に考えれば、有罪の証拠になりうるか否かすら疑問であるこの証言は、その信用性に疑問符がつく点も数多くある。とくに際立つ点を3点ほど紹介しよう。
 第一に、A子証言は捜査段階で不自然きわまりない変遷をしている。当初、「自宅1階のリビング」としていた目撃場所が途中から、「自宅2階の寝室」へと変わっていたのだ。捜査の過程で証人の供述が変遷すること自体は普通だが、それにしても、1階から2階とは、あまりにも大胆な変わり方である。
 第二に、このように供述が不自然に変遷したことについて、A子が事情を説明した供述も不自然だった。
 というのも、検察官調書では、A子は「目撃場所の勘違い」に気づいたキッカケとして、
「ガレージにあったコンロや赤いゴミ箱の見え方、被告人の目線や首、肩の見え方など、自宅1階のリビングからのガレージの見え方が記憶と違うことに疑問を持ちました」
 などと説明したことになっていた。A子は法廷でも、同様の供述をしている。
 しかし、先に述べたように事件当日、10人以上の主婦たちがカレーの調理や見張りのためにこのガレージを出入りしていたにも関わらず、「赤いゴミ箱を見た」と証言した者はA子以外に1人もいないのだ。
 第三に、事件当日の眞須美被告人の服装に関しても、A子の証言はその他の住民たちの証言と食い違っていた。
 具体的に言うと、事件当日に眞須美被告人を目撃した他の住民たちの誰もが、捜査段階では眞須美被告人の服装を「黒だった」「黒っぽかった」と証言していた。加えて、当の眞須美被告人も二審の公判で「事件当日は黒いTシャツを着ていた」と証言した。そんな中、A子だけが捜査段階から一貫して、眞須美被告人の服装を「白いTシャツ」だったと証言しているのだ。
 こうなると、A子が目撃したと言っている「白いTシャツ姿の人物」は、眞須美被告人ではなく、他の誰かではないかと考えるのが通常の感覚であるはずだ。
 実際、二審で眞須美被告人は「白いTシャツ姿だったのは、一緒にいた(自分の)次女。カレー鍋のフタをあけたのも次女で、味見をするためだった」と証言している。これは、次女の証言とも合致する内容だ。加えて、事件当時は中学2年生だった眞須美被告人の次女は、写真週刊誌『フライデー』に眞須美被告人と誤認され、その姿を撮影された写真を掲載されたほど、眞須美被告人と背格好が似てもいた。
 これらをもって弁護側は一、二審共に、A子が目撃した人物を「次女」だと主張した。これは、A子証言の信用性だけでなく、「犯行に及ぶ機会があったのは、事件当日の午後0時20分頃から1時頃まで1人でカレー鍋の見張りをしていた被告人だけである」とする前記@の検察のストーリーも突き崩すための主張だった。
 一、二審判決はこの主張を退けるにあたり、眞須美被告人の証言を「他の住民らの証言とことごとく矛盾する」(二審)、次女の証言を「関係住民の供述と大きく食い違う」(一審)、「母親をかばうための虚偽」(二審)などとしたのだが、これもいかがなものか。普通に考えれば、他の住民らの証言と矛盾するのは、A子証言のほうだろう。

───────────────────
不自然な証拠にまつわる核心証言
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 眞須美被告人の周辺から発見された亜ヒ酸と、カレー鍋に混入されていた亜ヒ酸が「同一」だとされている点(前記B)については、大型放射光施設「スプリング8」をはじめとする最先端の科学技術を用いた3回の鑑定の結果を元に認定されている。
 しかし、公判では鑑定結果がどーこー以前の問題として、鑑定資料となった亜ヒ酸にまつわる不自然な事実が数多く明らかになっている。
 いくつかある証拠の亜ヒ酸の中でも、何より不自然さが際立つのが、眞須美被告人の自宅の台所から発見された「プラスチック容器」に付着していた亜ヒ酸だ。
 まず、このプラスチック容器は、事件発生から約2ヶ月以上経ち、眞須美被告人が逮捕された後の家宅捜索で発見されている。つまり、眞須美被告人が本当に犯人ならば、そんな重要証拠を2ヶ月以上も自宅に置きっぱなしにしたことになるわけだ。
 この不自然さを二審判決は「被告人はマスコミの取材攻勢に遭い、同容器を投棄するなどして処分するのが困難な状況であった。その中で内容物を洗い流すなど、可能な限りの罪証隠滅をしていたと評価して差し支えない」などと一応、説明してはいる。
 しかし、この裁判官の論理ではまったく説明がつかないのが、この容器の側面にマジックで大きく「白アリ薬剤」と書いてあることだ。事件発生当時、「亜ヒ酸は白アリ駆除などに使われている」「疑惑の夫婦は白アリ駆除業を営んでいた」などと連日、盛んに報じられていたことを思えば、この事件において「白アリ薬剤」とは「亜ヒ酸」と同じ意味の言葉である。これでは、「可能な限りの罪証隠滅をしていた」とは到底言えないだろう。
 また、林一家の旧宅のガレージから発見・押収されたという缶入りの亜ヒ酸についても、不可解なことがある。この缶の発見経緯から説明しよう。
 この家は善明寺という園部の隣町にあり、事件発生当時の住人は林夫婦の知人男性のT氏である。林夫婦は事件の約3年前、この家をT氏に売却したのだが、園部に引っ越し後もT氏に頼み、所有物の一部をこの家のガレージに置かせてもらっていた。そのことから警察はこの家のガレージを捜索し、亜ヒ酸入りの缶を見つけたという話になっている。
 ところが、T氏は3年以上もこの家に住んでいたにも関わらず、公判で弁護人の尋問に対し、そのような缶の存在に「全然気づかなかった」と証言しているのだ。
 このT氏とは、私は会うことができた。問題の缶入り亜ヒ酸が発見された家宅捜索をT氏は「ヒ素がガレージから出てきたと警察に言われたけど、俺はあんな缶、全然見覚えがない。あの時はビックリしたわ」と振り返り、こう言った。
「それから、俺はたしか居間におったと思うんやけど、警察にガレージに呼ばれ、棚にあった缶を『指させ』と言われたんや」
 これは、非常に興味深い話だ。
 というのも、この家宅捜索にあたった捜査員の証言によれば、T氏は缶入りの亜ヒ酸が発見された際、発見場所のガレージの捜索に「ずっと立ち会っていた」という話になっている。そして、そのことを裏づける証拠である捜査報告書には、ガレージの棚に置かれた亜ヒ酸の缶をT氏が指さしている写真が添付されている。
 しかし、T氏が私に語ったことが事実なら、捜査員の証言は虚偽であり、捜査員が問題の缶を発見した際にT氏は、その場に立ち会っていなかったことになる。本当にそうならば、この亜ヒ酸の缶について、T氏が見覚えがなかったという事実はきわめて重い意味を持つ。

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強引に被害者にされた夫
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 眞須美被告人がヒ素を人を殺害する道具に使っており、人の命を奪うことに対する罪障感、抵抗感が鈍麻していたとされている点(前記C)については、要するに「保険金目的で夫や周囲の人物たちにヒ素や睡眠薬を飲ませていたらしい」という別件の保険金詐欺疑惑が、本件のカレー事件の状況証拠として有罪の立証・認定に使われているわけだ。
 結論から言うと、このような茶番がどうしてまかり通ってきたのか、不思議である。
 はじめから説明すると、検察はカレー事件と同時に、眞須美被告人が保険金目的で夫の健治氏や知人男性らにヒ素を飲ませていたとする殺人未遂の疑惑4件と、保険金詐欺の疑惑4件の計8件を起訴している。それに加え、保険金目的のヒ素使用疑惑7件、保険金目的の睡眠薬使用疑惑12件の計19件を、検察は「類似事実」と称して立証を試みた。
 そんな数多くの疑惑のうち、裁判で眞須美被告人の犯行、もしくは関与があったと認定されているのは、ヒ素使用疑惑4件、睡眠薬使用疑惑2件の計6件(※A)だ。まずは、この6件に話を絞ってみよう。
 6件の疑惑のうち、1件の疑惑で被害者と認定されているのは、眞須美被告人の保険金詐欺の共犯者として懲役6年の実刑判決も受けた夫の健治氏(2005年6月まで服役)だ。ちなみに起訴状では健治氏は、約9年間に4回も眞須美被告人に死亡保険金目的でヒ素を飲まされ、うち2回で予後不明の急性ヒ素中毒に陥ったことになっていた。
 賢明な読者諸氏なら、ここで早くも、検察が描いた事件の構図がそもそも不合理だったことに気づかれたろう。健治氏がそんなに何度も眞須美被告人に殺されかけながら、何も気づかずに一緒に暮らし続けたことを前提にする検察の主張はあまりにも無理がある。
 実際、健治氏は一審でこそ曖昧な証言に終始したが、二審では「保険金目的でヒ素は自分で飲んでいた」と、自分と妻が純粋な共犯関係だったと訴えている。詳細は割愛するが、その証言は、眞須美被告人の証言と細部までほとんど合致するものだった。
 それでも、二審判決は健治氏の証言を「妻をかばうための口裏合わせ」とみなして退け、健治氏を強引に被害者のイスに座らせたのだ。
 しかし、夫婦など、元々はアカの他人である。たとえ妻とはえ、自分を殺そうとした人間を、自分を貶めてまでかばうほどにお人好しな人間など、この世に存在するだろうか? その点について、健治氏は私にこう言った。
「検察や裁判官は、『林健治は妻をかばっている』なんて簡単に言いますけど、よく考えてみてください。私はカレー事件が起こったせいで過去の保険金詐欺がバレ、6年の懲役を食らった。出所後も4人の子供たちと離れて暮らすことになりました。もしも眞須美がカレー事件の犯人なら、かばう理由なんか何もありませんよ」
 これが、普通の感覚というものだろう。

───────────────────
被害者らしからぬ被害者
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 問題の6件の疑惑(前記※A)のうち、健治氏の件以外の5件はすべて、同一人物が被害者とされている。林家に使用人的な立場で居候していたI氏だ。
 このI氏は公判では、検察側の最重要証人と言える存在でもあった。健治氏が眞須美被告人にヒ素を飲まされていたとする一、二審の認定も、I氏の証言が最大の拠り所にされている。それはたとえば、「被告人から提供されたくず湯を食べた健治が、激しい腹痛と嘔吐を発症するところを見た」とか、「健治が入院先の病院で意識障害に陥っていた時、病院にやってきた被告人は健治に『はよ死ね』と真剣な様子で言っていた」などである。
 しかし、一方でI氏には、本当に被害者だとは信じがたい事実があまりにも多いのだ。
 まず、I氏は起訴状では、約2年間で眞須美被告人にヒ素を4回、睡眠薬を10回飲まされ、そのたびに激しい腹痛や嘔吐を発症したり、意識不明状態になって入院したことになっていた。にも関わらず、I氏の病院のカルテには、I氏が自分の症状の原因を探ろうとした跡がまったく現れていなかったのだ。
 また、健治氏が保険金詐欺目的で入院するたび、I氏は健治氏に付き添い、健治氏が病院側に症状を重く偽るための協力もしていた。そしてその都度、ちゃんと健治氏から金銭も受け取っていたのだ。
 さらに、I氏は自らが体調が悪くなって入院した際も、いつも症状を実際より重く偽り、入院期間を引き延ばしていた。入院するたびに病院を無断外出し、パチンコをしたり、居候していた林家に戻って麻雀をするなど、入院生活をむしろ楽しんでいたとしか考えられない事実も明らかになっている。これで被害者だというのは、さすがにムシが良すぎよう。
 実際、裁判でI氏は「不正な保険金収入によって維持された林ファミリーの一員」だったと認定されている。とはいえ、これは「林夫婦の共犯者」とまでは認められていないということだ。I氏が林夫婦の保険金詐欺に協力していた事実について、一、二審判決共にI氏が林夫婦に経済的に依存していたことなどを根拠に「林夫婦に利用されていただけ」として片づけたのだ。
 さらにこの裁判では、I氏が「無口でおっとりしていて、要領の悪いタイプ」であるため、I氏が何度もヒ素や睡眠薬を飲まされながら、自分の症状の原因に気づかなかったとしても「不自然ではない」という話になっている。こうしてI氏は、被害者のイスに座らせてもらい、健治氏が眞須美被告人にヒ素を飲まされていたとする検察主張に沿うI氏の証言も、ことごとく信用性が認められているわけだ。
 このI氏にまつわる一、二審の認定は、あまりにも無理があろう。事実関係をみる限り、I氏と捜査機関が「デキている」とみたほうがはるかに自然であるはずだ。
 実際、そのことを伺わせる事実もある。カレー事件発生後まもない時期から、眞須美被告人と健治氏が起訴されるまで約4ヶ月に渡り、I氏は警察官官舎で捜査員と寝食を共にしながら取り調べを受けていたのだ。
 このいかがわしさについて、一、二審判決は共に「(林夫婦の知人ということで)取材攻勢にあっていたI本人の要請により警察官官舎に保護しただけ」という検察の主張をそのまま認めているのだが、少なくともI氏には、保険金詐欺の共犯者として立件されてもおかしくない弱みがあったのだ。仮に「保護」の実態が「身柄拘束」だったなら、捜査機関にとって約4ヶ月は、I氏から望み通りの供述を引き出すのに充分過ぎる時間だったろう。

───────────────────
直撃調査に重要証人は…
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 私は実際、I氏の自宅を訪ね、自分が確信する「真相」を出勤前のI氏にぶつけてみた。
「ヒ素は、自分で飲んでいたんですよね?」
 横に並んで歩きながらの質問だったが、I氏は「へっ?」と驚いたような声をあげて歩みを止め、やや間があった後に不機嫌そうな顔をこちらに向け、「飲んでへんって」とだけ言った。
 その他にも、私はI氏と並んで歩きながら、I氏が本当に眞須美被告人にヒ素を飲まされた被害者ならば、失礼にあたる質問を次々にぶつけてみたのだが、I氏はほとんど私の顔を見ることなく、携帯電話をいじりながら押し黙ったまま歩き続けた。たまに返ってくる答えも、「ウソなんかついてへんって」などと短くつぶやくのみだった。
 私はI氏が、本当に眞須美被告人にヒ素を飲まされていたとはまったく思っていないが、それでもやはり、I氏は被害者だと思っている。警察官官舎で「身柄拘束」された4ヶ月間、I氏は相当厳しく締め上げられたのだろう。自分の証言により、かつて親しくしていた人間に死刑判決が言い渡されている現実はI氏にとって、相当心苦しいはずである。
「Iさんが本当のことを言えば、裁判はひっくり返ると思いますよ」
 私がそう言った時、終始むっつりしていたI氏が一瞬、戸惑ったような表情になったのが印象的だった。

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保険金詐欺疑惑の真相
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 起訴状では、健治氏やI氏の他にも4人の人間がカレー事件以前、眞須美被告人に保険金目的で亜ヒ酸や睡眠薬を飲まされたことになっていた。被害者だと認定された健治氏やI氏ですら、かくも被害者だとは信じがたい事実が多いのだから、被害者だと認定されていないその他の人物たちについても、推して知るべしだろう。
 たとえば、起訴状では、眞須美被告人に睡眠薬を飲まされ、交通事故を起こすなどしたとされていたD氏については、林夫婦が詐取した保険金の多くは、このD氏所有の休眠会社名義で契約されていた。また、起訴状では、眞須美被告人に保険金目的でヒ素入りのお好み焼きを提供され、ヒ素中毒に陥ったとされていたM氏については、退院後、独自に契約していた保険金を約2000万円受け取っていた事実が明らかになっている。
 そして一、二審では、こうした人物たちがI氏同様、保険金詐欺の罪を捜査機関に一切追及されることなく、眞須美被告人がカレー事件以前から「毒婦」だったとする検察の主張に沿う証言をしているのだ。眞須美被告人がカレー事件の犯人に違いないという心証を世間の多くの人に固めさせた保険金詐欺疑惑ストーリーの真相がどういうことか、賢明な読者諸氏なら、もうおわかり頂けたはずである。
「いくら捜査や裁判に怪しい点が多くても、林眞須美が犯人じゃなければ、他に誰が…」という疑念を拭いきれない人も多いだろう。その点については、残念ながら現時点では何も述べることができないが、機が熟せば、どこかで何らの形で報告したい。(文責・片岡健)

デジタル紙の爆弾 http://kamibaku.com/modules/weblog/


2008/07/30
和歌山カレー事件から10年 
林真須美被告の夫、林健治氏を園部の事件現場で独占インタビュー 

だから○が犯人! その1

   カテゴリ: 事件・事故 :
   執筆者: kamibaku
   (2008/07/30 9:31 am)


1998年7月、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーにヒ素が混入され、4人が死亡、
63人がヒ素中毒に罹患した、和歌山カレー事件。

犯人として逮捕されたのは園部の住人で「毒婦」と呼ばれた、林真須美被告。

1審、控訴審で死刑判決を受け、最高裁に上告中だ。

デジタル紙の爆弾でも真相に迫るべく、リポートをお届けしている。

ちょうど10年になる、和歌山市園部の事件現場。
デジタル紙の爆弾では真須美被告の夫、健治氏に独占インタビューした。

健治氏はついに「真犯人」について具体像をしゃべりはじめた。

━━○さんが真犯人という決定的証拠はあるのですか?

「キミらに教えてやるが、なんで真須美が犯人になったか、わかってるか?」

━━もちろん、わかっているつもりですが?

「真須美はカレー作りをしたから、容易に鍋に近づけた。ヒ素も自宅にあった。
キレやすい性格だから、住民とイザコザがあって、腹が立ってヒ素を入れた」

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━━なるほど。裁判はそのようなストーリーでしたね

「それと同じ内容を満たしている人物がまだいるんや」

━━それが○さんだとおっしゃられるのでしょうか?

「その通り」

━━まず、カレー作りからうかがいますが、○さんはカレーの鍋に簡単に近寄れたのですか?

「近寄れた。それも、犯行時間と言われる12時から1時以外でも近寄れた。まったく、
不審に思われることもなかったはず。それは合理的に説明がつく」

━━○さんなら、不審がられずヒ素をカレーの鍋に混入できたのですか?

「間違いなくできたよ」

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(写真はヒ素があったとされた、林家の台所)

━━では次に、住民とのイザコザについてうかがいます?

「イザコザはしょっちゅうよ。○さんは自営業者やから、外部からの出入りが多いんや。
それゆえ、トラブルは絶えなかった。カレー事件当時、うちがトラブルメーカーだと
よく書かれたわ。けど、○さんはうちよりもずっと長く園部にいる。元祖トラブルメーカーだ。
真須美ともよくもめてたな。クラクションを鳴らして、怒鳴りあいしたこともあった」

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(写真は調理現場のガレージ)

━━そうすると、激昂してヒ素を入れたりする性格というのでしょうか?

「真須美と変わらない、いやそれ以上に激昂するタイプだ。そして、キレやすい。○さんの
ブログ知ってるか? あれを読めばよくわかるだろう」

━━デジタル紙の爆弾でも書いていますよ。

「ええところに目を付けたな」

以下続く

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2008/08/01

和歌山カレー事件から10年 
林真須美被告の夫、林健治氏を園部の事件現場で独占インタビュー 

だから〇が犯人!その2


      カテゴリ: 事件・事故 :
      執筆者: kamibaku
      (2008/08/01 9:53 am)


1998年7月、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーにヒ素が混入され、4人が死亡
63人がヒ素中毒に罹患した、和歌山カレー事件。

犯人として逮捕されたのは園部の住人で「毒婦」と呼ばれた、林真須美被告。

1審、控訴審で死刑判決を受け、最高裁に上告中だ。

デジタル紙の爆弾でも真相に迫るべく、リポートをお届けしている。

ちょうど10年になる、和歌山市園部の事件現場。
デジタル紙の爆弾では真須美被告の夫、健治氏に独占インタビューした。
健治氏はついに「真犯人」について具体像をしゃべりはじめた。

http://kamibaku.com/uploads/weblog_imagephotos/206.jpg">

━━仮に〇さんがヒ素を持っていても、入れて得することはないですよね?

「それはうちも同じ。保険金、儲からんからやる必要がないんや」

━━真須美被告が裁判で認定された、ヒ素とのかかわり、激昂してヒ素を入れた、
キレやすい悪い性格。〇さんもそれを満たすというのが健治さんのお話?

「そうよ」

━━真須美被告もヒ素には詳しかった?

「猛毒でえらいことになるのは、ワシが死にかけていたから、よくわかってるはずや。
だから、犯人はヒ素のことよく知らないから、あれだけ大量に入れたんやないのか。
なめただけで死にそうになる猛毒よ」

━━ただ、真須美被告と似ているだけでは、どうにもならないでしょう?

「しゃあない。お前に見せてやるわ」

と健治さんは和歌山市内の自宅に記者を案内。ビデオテープを取り出し、再生した。
そこには、カレー事件を報じたニュース番組が収録されていた。
カレー事件当日の模様の映像もある。

「ここや」

と健治さんは大声で怒鳴った。

「これみてみろ。〇さんや」

そこには、確かに〇さんが映し出されている。

━━〇さんですよね?

「そう、これおかしいと思わないか?」

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(写真は当時の祭り会場)

━━どうしてですか?

「どんくさい奴やな。〇さんはカレーを食べたと言っている。みんな吐いて大変やったのに、
〇さんは笑い平然としている。なんでなんや、一人だけ」

―なるほど、確かに苦しむどころか笑っていますね?

「あまりにおかしいんや。自分が入れたのがばれるのが怖くて、ちょっとだけ食べて、
被害者と言っているんじゃないかな」


以下続く
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2008/07/28
和歌山カレー事件から10年 
林真須美被告の夫、林健治氏を園部の事件現場で独占インタビュー

真須美が犯人でないこれだけの証拠! その1

   カテゴリ: 事件・事故 :
   執筆者: kamibaku
    (2008/07/28 10:09 pm)

1998年7月、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーにヒ素が混入され、4人が死亡、
63人がヒ素中毒に罹患した、和歌山カレー事件。
犯人として逮捕されたのは園部の住人で「毒婦」と呼ばれた、林真須美被告。
1審、控訴審で死刑判決を受け、最高裁に上告中だ。今も「冤罪説」がくすぶるこの事件。
ちょうど10年になる、和歌山市園部の事件現場を訪れた真須美被告の夫、健治氏に
デジタル紙の爆弾は独占インタビューした。

━━○さんが犯人で真須美被告が犯人でないというなら、真須美被告が犯人ではない証明が
不可欠ですよね?

「そらそうやね」

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━━真須美被告、カレーにヒ素を入れて、アリバイのため
   カラオケに行ったという話になっています?

「事件当日、真須美はカレー作りの当番だった。朝は病院で診察を受けて、昼前に帰ってきた」

━━それから、カレー作りに参加したと?

「ちょうど、昼やったから、腹減ったと真須美にそうめんつくらせて近所の寿司屋のすしを
注文させて、ワシや娘は食べていたんや」

━━その後、真須美被告はカレー作りに参加したのですか?

「そのようや。ワシはその直前まで、保険金詐欺するために病院に入院していたから、
その日が夏祭りやとか真須美がカレー作りの当番なんていうこと、知らなかった」

━━何かおかしな様子は?

「まったくない。カレー作りが忙しいのか、あわただしく家に戻ってはまた出て行った。
頑張って、カレー作りの当番をやってたみたいよ。娘も一緒に行ってたよ」

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━━娘さんたちはどう話しているのか?

「お母さんは普通やったと話している。二女が、カレーを味見したいと、指でなめたりも
したそうや。ヒ素が入っていたらそんなことさせるか? 味見したカレー鍋とヒ素を
入れたカレー鍋が仮に違っても、絶対にさせない」

━━どうしてですか?

「ワシは、2回、ヒ素を自分で飲んでいる。最初は、ヒ素って抵抗力を体につくるという話を
聞いて、なめてみた。それが、えらいことで、死線をさまよう重症。次は、耳かき1杯ほど
のんだら、死線どころか、葬式の用意がいるかなというくらいになった。ほんのわずかで
命取りになるほどヒ素は猛毒だと、真須美はよく理解している。仮に違った鍋に入れたと
しても、ひょっとしてひょっとすることがあるかもしれない。 味見なんてさせへんわ」

━━それで、カレーにヒ素を入れたのが疑われてはいかんとカラオケに行きましよね?

「これ、お前、入れてないっていうねん。ヒ素まいたろか!」

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(写真は和歌山県警が押収したヒ素のドラム缶)

━━いやいや、まくのは水だけで十分ですが・・・

「それは、おいといてや、カラオケはワシが言いだした。その日、真須美の親戚などの
マージャン仲間で、マージャンの予定があった。けど社員旅行の関係で帰宅が遅くなる
と言われて、がっかり。それで、カラオケに行くぞとなったんや」

━━それに真須美被告を連れて行った?

「無理やり連れて行ったんや。ワシ一人でカラオケにいってもおもろうないからな。
真須美がアリバイ工作でカラオケやなんて、ちゃんちゃらおかしなストーリーなんや」

以下続く
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2008/07/29

和歌山カレー事件から10年 
林真須美被告の夫、林健治氏を園部の事件現場で独占インタビュー 

真須美が犯人でない証拠! その2


   カテゴリ: 事件・事故 :
   執筆者: kamibaku
    (2008/07/29 9:00 am)


1998年7月、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーにヒ素が混入され、4人が死亡、
63人がヒ素中毒に罹患した、和歌山カレー事件。
犯人として逮捕されたのは園部の住人で「毒婦」と呼ばれた、林真須美被告。
1審、控訴審で死刑判決を受け、最高裁に上告中だ。

デジタル紙の爆弾でも真相に迫るべく、リポートをお届けしている。

ちょうど10年になる、和歌山市園部の事件現場。
デジタル紙の爆弾では真須美被告の夫、健治氏に独占インタビューした。

http://kamibaku.com/uploads/weblog_imagephotos/195.jpg">

━━カラオケはアリバイではなかったというのですか?

「もちろん。うちは完璧な亭主関白。ワシに歯向かったら真須美でも子供でも、即座に
ビンタや。だから、真須美に、適当に用事があるからと近所の人に謝って夏祭りの
準備は断れと押し通させるように、しちゃうんよ」

━━それで本当に、近所の人に断りを入れた?

「そうよ、だから、カラオケにいけたんや。真須美に艶歌という店に電話させて、
今から行くからと予約も入れさせた」

http://kamibaku.com/uploads/weblog_imagephotos/197.jpg">
(写真は健治さん愛用のマージャン台)

━━裁判で「カラオケ店の真須美被告は暗かった」「なんで子供二人が一緒なのか」と
アリバイ工作と思えるような主張が検察側からあった。

「いや、暗いことなんかあらへん。ワシが亭主関白やから怖いから、そう見えるだけ。
子供もそれまでカラオケには連れて行ってるわ。何がおかしいねん」

━━検察の主張では、昼12時から1時ごろにヒ素を入れたと。その時間帯は何をして
いたか、健治さんは知らないんでしょう?

「ワシはずって家やから、カレー作りの現場は見てないよ。けど、うちの娘、二女と三女が
一緒やった。三女はまだ4歳だったか、当時は。けど、二女は中学生2年やったわ。
そんなヒ素を入れてたら、カレーの味見をしたいなんていうわけない。二女は真須美が
ヒ素を入れるなど、不審な動きは全然なかったと言っている」

http://kamibaku.com/uploads/weblog_imagephotos/187.jpg">

━━けど、目撃証言が重要な証拠で不審な動きだと裁判でなっている。

「裁判でも争点になったが、その時、真須美は黒のTシャツをきていた。娘も黒だと覚えて
いる、ワシもそうや。カレー作りに参加した住民も黒と言っている人がいる。けど、重要目撃
証言は、白のTシャツだという。その証言が出て以降の調書は、みんな白のTシャツ。
あまりにおかしいがな。警察が誘導しているんや」

━━そうでもしないと、真須美被告を犯人とできなかった?

「そうそう。それに、真須美は紙コップでヒ素を入れたとなっている。そのヒ素は自宅の
台所にあった、プラスチックの容器から持ち出した。プラスチック容器のヒ素は園部に
引っ越す前に住んでいた、東洋台の家を買ってくれた田中満宅のガレージから持ち
出したという筋書きや。けど、紙コップ、プラスチック容器から真須美の指紋はない。
指紋くらい残るわな」

━━田中さんというのはデジタル紙の爆弾でもお伝えした、
「自宅ガレージにヒ素はなかった」と新証言をしているあの方ですか?

「その通りや。田中もワシのシロアリ商売を手伝ってくれていた。ヒ素の恐ろしさは十分、
理解している。 田中もシロアリから足を洗っていた。だから、はっきりとガレージにヒ素は
ない、ないものをどうして真須美が持ち出せるのかと話している。目撃証言とヒ素、どちらも
ええ加減な証拠なんや」

デジタル紙の爆弾 http://kamibaku.com/modules/weblog/

2009/04/22

和歌山カレー事件、最高裁が林真須美被告の上告棄却 
今も犯行説に疑問の声 捜査にかかわった不良刑事


     カテゴリ: 裁判・検察・弁護士・司法ネタ :
     執筆者: kamibaku
      (2009/04/22 10:04 am)


デジタル紙の爆弾でこれまで重ねてお伝えしてきた和歌山カレー毒物混入事件。
1998年7月、和歌山市園部の夏祭りで出されたカレーにヒ素が混入され、
4人が死亡、63人がヒ素中毒に罹患した。

犯人として逮捕されたのは地元住民で「毒婦」と呼ばれた、林真須美被告。
1審、控訴審で死刑判決を受け、最高裁に上告していたが、昨日、上告棄却の
判決が下された。これで、真須美被告の死刑判決が確定する見込みだ。

しかし、今も真須美被告の犯行説に疑問を投げかける人も少なくない。

「こうして判決が出ても、腑に落ちないよなぁ〜」 とため息をつくのは、地元の園部
に住む住民。

事件から11年。転居した住民やシャッターをおろした店もあり、
事件を知らない住民も増えた。

「真須美被告は怪しいが、動機もわからず、激昂しただけであそこまでやるのかな。
今もって、わからない」 と前出の住民はそう続けた。

上告審では、デジタル紙の爆弾が既報した地元住民を弁護団が「犯人の可能性」に言及。
最後の勝負をかけた。しかし「怪しい」だけでは最高裁も分厚い壁を打ち破ることは
できなかった。 そして、今も「疑問」の声があがるのはやはり捜査に問題があった
ことにもなる。 デジタル紙の爆弾既報の、真須美被告の夫、林健治氏は
捜査についてこう話す。

「最初からうちが怪しいことを前提に、調べていた。しゃべったら、医療刑務所に入れて
やるとか、求刑を軽くしちゃるとか、取り調べもむちゃやがな。 それが、検事調べよ。
検事がそれやから、警察はもっとええ加減だったんじゃないかな」

真須美被告の法廷では、証人の警察官が十分に証言できなかったこともあった。

和歌山県警は
<和歌山市園部におけるカレー毒物混入事件捜査概要>

という捜査の詳細を綴った、カラー写真入りの「アルバム」を作成している。
<取扱注意><部内資料>と書かれている。

真須美被告の弁護団が「Xファイル」と呼び、上告趣意書の作成に参考にしたものだ。

その8ページに捜査にかかわった刑事の名前が担当別の一覧表になっている。
そこには、びっくりするような名前がある。

「Sのことでしょう」 というのは和歌山県警のベテラン刑事。

写真の一覧表を見ると、S刑事が現場捜査を担当しているとかかれてある。


このS刑事は「問題児」なのだ。

S刑事は外国人犯罪取り締まりのため、選抜されてタイ語を専攻していた。だが、
ある時知り合ったタイ人女性、通称Pちゃんと親密な関係になった。

だが、Pちゃんは不法滞在者。にもかかわらず、S刑事は半同棲生活をおくっていたのだ。

おまけに、Pちゃんの住む和歌山市の繁華街のマンションで、S刑事よりも前に付き合って
いた男性が、二人の関係を知り激怒。Pちゃんにケガを負わせしまい、マンションの
備品なども破損した。

すると、S刑事は男性の前歴や車のナンバーなどを警察の力を誇示するように照会。
それをマンションの管理人のIさんらに教えていたのだ。また、不法滞在のPちゃんを
隠匿したのではないかとも、疑われた。

「Pちゃんと男性は逮捕されました。」 

S刑事は守秘義務にかかわる地方公務員法違反と犯人隠匿容疑で書類送検された。
起訴猶予になり、退職することで決着がついたという。

「カレー事件の捜査中に、タイ人女性と知り合い、妻に内緒で浮気。おまけに、不法滞在
ですわ。 そんなヤツが現場を調べたんだから、捜査の内容、レベルがわかるでしょう。
だから、死刑判決が確定しても、こんな調子になるんや」 と前出のベテラン刑事。

よくも、こんな刑事がかかわって、有罪判決となる捜査ができたものである。

最高裁判決に対するコメント

平成21年4月21日、最高裁判所第三小法廷より被告人林眞須美さんに上告棄却の判決が言い渡されました。
弁護人、林眞須美さん、林健治さんのコメントは、以下のとおりです。
 弁 護 人 

1 最高裁の判決は、不当にして著しく正義に反するものです。
 林眞須美さんが犯人であるとする直接証拠はありません。あるのは、彼女が犯人らしいという証拠だけです。しかし、これらの証拠をいくら重ねても林眞須美さんを犯人であると断定することはできません。
 そもそも、林眞須美さんには、本件事件を行う動機がありません。ヒ素の混入に使用された紙コップにも林眞須美さんの指紋はありません。林眞須美さんがヒ素を混入した場面を目撃した人もいません。ヒ素を混入できる可能性は林眞須美さんだけではありません。それらの人の吟味も一切行われていません。
 林眞須美さんが犯人であるとするには、多くの疑問があり、この程度の証拠で有罪を認定し、しかも死刑にするのは、近代刑法の無罪推定の原則と証拠裁判主義の原則に反し、あまりにも酷いと言うほかありません。
 他の、くず湯事件をはじめとする毒物混入事件ついても同じです。

2 本件事件は、異常なマスコミ報道に突き動かされて、捜査機関が無理矢理に林眞須美さんを犯人に結びつけたものです。
 林眞須美さんは、和歌山カレー事件の犯人ではありません。林眞須美さんは、再審に取り組み、無実を証明したいと願っています。弁護人もその任を果たす決意です。是非、多くの方々のご理解とご支援をお願いする次第です。
 以上
 林眞須美さん 

本日、最高裁判決がありましたが、私は殺人の犯人ではありません。
私はカレー毒物混入事件には全く関係しておりません。
 真犯人は別にいます。
全ての証拠がこんなにも薄弱であって犯罪の証明がないにもかかわらず、どうして 私が死刑にならなければならないのでしょうか。
もうすぐ裁判員制度が始まりますが、同制度でも、私は死刑になるのでしょうか。
無実の私が、国家の誤った裁判によって命を奪われることが悔しくてなりません。
1男3女の母親として、この冤罪を晴らすために、これからも渾身の努力をしてい きたいと思います。
 林健治さん 

本日の最高裁判決は明らかに誤りを犯しました。
妻眞須美はカレー毒物混入事件の犯人ではありません。
このことは、いつもそばにいた私が一番知っていることです。
また、くず湯事件は私がすすんで砒素を飲んだのに、どうして妻眞須美の私に対する殺人未遂になるのでしょうか。こんなに確実で明白な殺人未遂ではないという証拠があるのに。
今後も妻眞須美の雪冤に向け頑張ります。


動機も目的も不明・・・、それで、死刑判決か?

 大阪高等裁判所は、2005年6月28日、和歌山カレー事件の被告林眞須美さんに対し、一審同様の死刑判決を再び言い渡しました。
 判決書には、動機はおろか具体的な証拠さえも挙げられていません。単に、状況証拠、しかも、極めて杜撰な状況証拠を積み重ねただけのものでした。
 私たちは、このような、なんら具体的な証拠もなく、しかも、無実を叫ぶ林さんの弁護団が請求した証拠調べの全てを恣意的に却下して結審したこの裁判が極めて異常なものと考えざるを得ません。
 私たちは、国民に等しく認められている正しい裁判を受ける権利をもつ市民の一人として、林眞須美さんが正しい裁判を受けることが出来るよう支援をして行きたいと考えています。

http://enzai.org/masumi_hayashi/
 

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コメント
 
01. 2010年2月11日 20:55:19
 想像ですが。
検察(警察かも)が、実は同じ砒素を二つに分け、一つはカレー鍋から採取したものでもう一つは林家の台所(猛毒の砒素を台所に置くか?)から発見したものと言って、スプリング8で分析させた可能性は考えられませんか?
 聞くところによると、検察(や警察)は自らの描いたストーリーに沿って証拠を発見(捏造?)することもあるらしいので…

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