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早稲田大学でのルース大使講演【朝日新聞の報道を検証】(Peace Philosophy Centre ) http://www.asyura2.com/10/senkyo79/msg/225.html
http://peacephilosophy.blogspot.com/2010/01/ambassador-roos-speaks-at-waseda.html Friday, January 29, 2010 まず朝日 の報道を見ながらコメントする。 (引用)「全面的に日本から撤退すれば、機動性が損なわれる」と駐留継続の必要性を訴え、海兵隊の全面的なグアム移転を求める動きを牽制(けんせい)した。 とあるが、原文では とあり、「グアム移転を牽制する」ようなことは言っていない。「沖縄から海兵隊がいなくなったら次に近い戦闘部隊はハワイの陸軍になるので有事の際には距離的に遠くなるので対応が遅くなってしまう」ということだ。 ちなみに現行案通りグアムに海兵隊が行くのなら有事の際はグアムから行けばいいのではないか。グアムに海兵隊受け入れの準備を進めておいてどうしてルース氏は有事を語る際にハワイの話だけをしてグアムの海兵隊を無視するのか。 (引用) 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設などの米軍再編については、日米両国が10年以上にわたって議論した結果、現行計画に至っていることを強調。「思いやり予算」と呼ばれる駐留経費の日本側負担を見直す動きに警戒感を示した。 これは全く誤訳である。原文では、 「この予算をどのように使っているのが疑問を持つ人が多いのは理解できる。だから2008年に host nation support 受け入れ国負担総合的な見直し作業をすることに合意した。日本の納税者が効率的な予算の使い方から受益できるようにする。」と言っているのだ。「見直す」と言っているのに「見直す動きに警戒感」という全く異なる報道をしている。 *Host Nation Support については、複数の訳し方を見たが、「受け入れ国負担」が一番読んだ人にわかりやすい表現と思いここではこれを使う。 ちなみにこの受け入れ国負担をルース氏はこう言っている。 まず、受け入れ国負担には二種類ある。直接支援と間接支援だ。直接支援がいわゆる「思いやり予算」といわれるものである。『「軍事植民地」沖縄』(吉田健正著、高文研、2007)によると、この直接支援の予算が使われる対象は「借地料、基地従業員の労務費、騒音公害の対策費、隊舎や家族住宅および娯楽施設やショッピングセンターなどの整備費、光熱水道費、施設移転費など」であるということだ。間接支援には、「土地の無償使用、家賃の免除、税金や関税の免除、有料道路や港湾使用料の免除」といったものがあるとのことだ。 直接支援(「思いやり」)は2000−2500億円ぐらいの規模の予算なので、ルース氏が言っている4000億円の予算とは、この直接支援と間接支援を合わせた額のはずだ。 これらが全て日本経済に還元されていると言えるだろうか。直接支援では確かに日本の個人や業者の収入になっているものもあるだろう。しかしこの間接支援は内容を見たらほとんどが「免除」「無償使用」ばかり、ようするに米軍にこういったサービスのタダ乗りをさせてあげる経費ということだ。日本側の収入には全くならない。 ちなみに何日か前に国防総省のデータで米軍を受け入れている他の同盟国の受け入れ国負担のデータ、比較表を示し、日本が同盟国の中でも信じられないくらい多額の負担をしていることを書いた。こちらをどうぞ。(今のところ英語のみ) 普天間についてはいくつかのメディアは、ルースが「現行案が最善と言った」と言っているが、原文をよく読むべきだ。 The relocation of Futenma Marine Corps Air Station to Camp Schwab, which involves moving 8,000 Marines to Guam, has been the most controversial part of the plan. This arrangement is certainly not perfect; no compromise ever is. But, what makes this issue especially difficult is that our two nations studied and debated virtually every conceivable alternative for more than a decade before deciding that the current plan is the best option to enable us to close Futenma as quickly as possible without degrading our ability to fulfill our treaty commitments. But I want you to know that I remain confident that we will work through the current issues and our alliance will be stronger for it. ここで言っているのは、 ということだ。必ずしもわかりやすい表現ではないが、「完璧ではないが最善と判断した計画なので困難を伴うが日米で協議して決めていく」と言っているのである。ルース氏が日本に「現行案が最善だ」と主張しているという印象を与えるような報道があったとしたらそれは全くの文脈の読み違えであると強く指摘しておきたい。 ルース氏のスピーチの内容の議論でなくどう報道されているかなどに時間を費やしたくないが、相変わらずアメリカ政府の見解の報道では英語力不足なのか、聞きたいところだけ勝手に聞いて解釈するような報道ばかりなので指摘した。内容的にはここではルース氏が有事の際のグアム海兵隊に触れなかったことと「思いやり予算」のこととにしか触れられなかったが、このルース氏のスピーチには他に議論するべき点がたくさん含まれていて、特に駐日米陸海空軍と海兵隊の役割について具体的に言及しているところは検証に値すると思う。昨日の投稿で防衛省研究所の柳沢協二氏の記事にもあるように、あいまいさを残さずに日本における海兵隊の抑止力についての議論をしていくべきだという意見と呼応する点がある。
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