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毎日新聞
特集ワイド:攻勢どころか、浮かない自民 議員逮捕、幹事長聴取の民主を前に…
民主党の危機だ。国会開会直前に石川知裕衆院議員ら3人が逮捕され、23日には小沢一郎幹事長が検察に事情聴取された。自民党はこれを反転攻勢の機とできるのか。逮捕の激震が走った後の1週間、永田町を歩いてみた。【國枝すみれ】
19日、100人近いメディアが国会議事堂の廊下で待ち受ける。テレビカメラのライトとフラッシュの中、数人の男に囲まれた小沢氏が歩く。一言も話さない。
警備にあたる国会衛視はいつも親切なのに、今日はなぜかいばっている。「党からの要請です。部屋の壁には近寄らないでください」
20日。鳩山由紀夫首相の参院本会議での答弁はぼそぼそとしているうえ、自民党のヤジがうるさい。最前列に座る丸川珠代参院議員がひっきりなしにヤジるが、声が通らず何を言っているのか分からない。
うんざりする。そのせいかやたらにおなかがすく。脳が疲れて糖を要求しているのだと思い、あんパンをかじる。人けのない階段で、疲れ切った政治部記者がひざを抱えて眠っているのを見た。
赤じゅうたんの上をぶらぶら歩く。自民党の国対会議室の扉に「鳩山総理巨額脱税追及チーム」と書かれた真新しい張り紙を見つけた。隣の扉は「民主党小沢幹事長不正資産追及チーム」。
一方の民主党も「捜査情報の漏えい問題対策チーム」を発足させている。参議院で「土地代金4億円不記載をめぐる論点整理勉強会」も作られた。
捜査への不満は強い。弁護士の民主党・辻恵衆院議員は「(石川議員の)逮捕容疑は政治資金規正法違反の虚偽記載なのに、4億円の出所とか、水谷建設と会ったかなどと聞く。別件だ。違法だ。検察は容疑があって聴取するのではなく、(小沢氏という)ターゲットに目をつけて動員して証拠あさりをしている」と反発する。
でも4億円は、間違いで処理するにはあまりに大きな金額ではないか?
「(疑惑が)ごまんとある中で選別的なんだ」という辻議員。記者が「でも隠れていたことが表ざたになって面白くなってきた」というと「面白くなんかない!」と怒った。
英語でパニックを起こしている人を形容するのに「頭を切られた鶏のように走り回る」という表現がある。いまの民主党はその鶏みたいだ。小沢氏が民主党大会で話したように4億円が「私どもが積み立ててきた個人の資金」で「なんら不正なお金を使っているわけではない」なら、検察に呼ばれても泰然自若としていればいい。
自民党にとって鳩山首相と小沢幹事長のスキャンダルは絶好の機会。自民党議員たちはさぞ気合が入っているだろうと思いきや、反対だった。
平沢勝栄衆院議員は「民主党の支持率が下がっても自民党の支持率は上がらない。敵失じゃだめなんだ。ザ・自民党、つまり顔、考え方、自民党なるものすべてが変わっていかないと」とばっさり。
河野太郎衆院議員も「自民党は(有権者から)まず家の中を大掃除してください、と言われてるわけですよ。一番重要なのは自民党が変わりましたというメッセージを出すこと。金権体質が象徴する古い自民党の中心にいた人物には引退してもらわないと」。
自民党は存続の危機にあるといってもいい。河野氏は自分のウェブサイトで15日、「自民党はもう立て直せないから新党を考えよう」と先輩議員からいきなり電話で言われて驚いた、と暴露。
谷垣禎一総裁や河野氏と総裁の椅子を争った西村康稔衆院議員も「状況は厳しい」と認める。「野党になって官僚がやってくれないから、自分の頭で考え、文献をあさり、文章を書かなくてはいけない。これができない議員は自民党を去るしかない。秘書も党職員も同じだ」
西村氏も河野氏も目指すのは党改革。今の時点で新党結成は考えていないという。「新党作るより総裁になった方が早いじゃん。おれが総裁になったら悪いけど執行部はみんなクビにしちゃう」と河野氏。さらに父の河野洋平氏が新自由クラブを結成したことを引き合いに「うちの家訓は、新党を作るなら作った後で作ったと言え、です」。パフォーマンス重視の他の議員への皮肉か?
史上最小の規模となった自民党。24日の党大会は結束を強調するイベントとなった。谷垣総裁は「一部の人間が利益を分配して内輪の権力闘争に明け暮れる。そんな自民党とはきっぱり決別いたします」と宣言。地方支部から「総裁は確固たる自信を持って号令を発していただきたい」との応援演説もあった。
実はこの党大会で若手議員を中心に動議を出そうとする動きがあった。議員32人が署名した「自民党の改革を推進する決議案」。党改革を党の最優先課題とする▽若返りを進める▽中堅・若手を抜てきして影の内閣を設置する−−など当たり前の内容にもかかわらず、動議発動は流れた。
「全員野球」を訴える谷垣執行部の求心力は地に落ち、若手は言いたい放題だ。鍋のふたに穴が開き、ピーと音が鳴って、勢いよく湯気が立ち上る様子が思い浮かんだ。だが、穴があまりたくさん開いているとガス抜きされ、ふたはふっ飛ばない。
自民党の票田だった組織から出た議員は、どうしているのだろう。
農協中央会(JA全中)元専務理事の山田俊男参院議員が3年前に自民党から出馬した理由はずばり「政権党だったから」。だが政権交代しても民主党に乗り換える気はない。
「小沢氏のやり方、政策議論の進め方は納得できない」。政権交代から4カ月たっても、JAトップは農相と会えないという。一度会談をセットしたが、2時間前に大臣からキャンセルされた。理由は「今まで自民党候補を作ってきたじゃないか」。山田議員は「小選挙区制は(ぱたぱたと変わる)オセロゲームみたいなもの。再び何が起きるかわからない。作物や動物は日々継続して育つのに」。
自民党本部に行く。背広をひるがえしてこちらを見る谷垣総裁のポスターがあちこちに張ってある。「谷垣で再起動」。え!? それじゃあ、フリーズしてたの?と突っ込みを入れたくなる。
自民党は再生できるのだろうか?
西村議員が真顔で答えた。「わずかなチャンスはある。参院選までにがらっと変えないとだめだ。夜明け前は一番暗いというでしょう? まあもう少し暗くなると思うけど……」
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20100125dde012010009000c.html?link_id=RSH05