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報道機関は、小沢一郎・民主党代表に対する「捜査の意味」を明快に説明するべきでは?(朝日新聞平成22年1月25日付夕刊より)
2010/01/26 [Tue] 03:52:03
小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる疑惑事件については、新聞報道やテレビ報道を見ている限り、東京地検特捜部は一体何を問題としているのか(=何罪の容疑で捜査をし続けているのか)、これからどうなろうとしているのかが、さっぱり分かりません。「いずれは小沢幹事長が逮捕されるのではないか」と勘違いしている市民も多いのではないでしょうか。
そこで、いつも分かりやすい説明をしてくれる元NHK報道記者主幹でジャーナリストの池上彰さんによる説明を紹介したいと思います。池上彰さんは、朝日新聞の夕刊で「池上彰の新聞ななめ読み」というコラムを連載していますが、そのコラムにおいて、「陸山会」の土地購入をめぐる疑惑事件の報道について分かりやすく説明していましたので引用してみます。
1.朝日新聞平成22年1月25日付夕刊3面「池上彰の新聞ななめ読み」
「小沢氏の金をめぐる報道 捜査の意味や見通し示して
なんとも、もどかしい。何が問題で、これからどうなろうとしているのか。新聞は見通しを示してほしい。
このところ、そんな気分にさせられます。民主党の小沢一郎幹事長のお金をめぐる問題の記事のことです。
小沢幹事長の資金管理団体「陸山会」の会計事務を担当した秘書らを、東京地検特捜部が政治資金規正法違反の容疑で逮捕しました。
連日の大々的な新聞報道で、「いずれ小沢幹事長がお金の問題で東京地検に逮捕されるのではないか」と考えてしまっている読者が、私のまわりには大勢います。
ところが、記事を読むかぎり、そんな話ではないのですね。新聞報道によれば、小沢氏の当時の秘書で会計事務担当だった石川知裕容疑者(現在は衆議院議員)が、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたという容疑です。
東京地検は、石川議員個人による行為なのか、小沢氏の指示があったのかを調べている、という段階のようです。
政治資金規正法違反の容疑が出てくれば、捜査するのは当然のこと。その結果、不自然なお金の流れが見つかれば、徹底的に捜査するのも当たり前でしょう。お金の流れを解明せずに捜査を終了すれば、今度は検察が批判されてしまいます。
お金の流れを解明していたら、お金が建設業者から出ていた疑いが浮上したので、建設業者からも話を聞く。これも当然の捜査です。
ところが、もし建設業者から小沢氏側にお金が渡されていても、小沢氏は当時野党議員でしたから、何の職務権限もありません。職務権限のない人にお金を渡しても、贈収賄事件にはなりません。
ただし、小沢氏側が、職務権限のある当時の与党議員あるいは官僚に働きかけをしていれば、「あっせん収賄罪」ないしは「あっせん利得罪」の容疑が出てきます。
とはいえ、新聞報道を読むかぎり、いまのところ、小沢氏に、そんな疑惑が浮上しているようには見えません。
となると結局、小沢氏をめぐる報道は、「小沢氏が4億円も現金を持っていた。土地を購入する際、不思議なお金のやりとりがあった。よくわからないが、けしからん」というレベルです。
検察は、石川議員の事件の立証のための証拠集めをしているだけなのか。小沢氏の別の容疑を視野に入れているのか。新聞は、単に東京地検の捜査状況を報道するだけでなく、捜査の持つ意味や見通しまで説明してくれなくては、読者の不満が募ります。(ジャーナリスト)
◆東京本社発行の最終版を基にしています。」」
2.新聞報道を読む限り、小沢一郎氏の場合、野党議員時代の金銭の受け取りは「贈収賄事件にはなりません」し、また、「あっせん収賄罪」ないしは「あっせん利得罪」の容疑も、いまのところ、「小沢氏に、そんな疑惑が浮上しているようには見えません」。「本来問題の焦点は、「ゼネコンからのヤミ献金や公共工事の口利き疑惑だったはず」(小林良彰慶大教授・日経平成22年1月24日付朝刊30面)でしたが、そうした問題もいつの間にか消えてしまいました。
(1) このように殆どの犯罪が成立しないのですが、他に成立し得る犯罪としては、何罪が考えられるでしょうか?
池上彰さんは触れていませんが、東京地検が「小沢氏の指示があったのかを調べている」場合、「政治資金規正法違反(虚偽記入)」の共犯の疑いが問題となっていると推測できます。はっきり言えば、本命のはずだった「ゼネコンからのヤミ献金や公共工事の口利き疑惑」が消え去り、取っ掛かりにすぎなかった「政治資金規正法」の共犯の成否のみしか残っていないのです。
ただし、「虚偽記入」の共犯といえるだけの要件(共謀ないし教唆行為)が必要となる以上、特定の虚偽記入に関して(指示をした日時・場所も特定して)具体的な指示がない限り、曖昧な指示の存在だけでは(共謀ないし教唆行為といえず)共犯といえるだけの要件を欠いてしまいます。
「■立件へハードル
外形的には石川議員や池田元秘書が虚偽記載を「報告」し、小沢氏が「了承」したようにも見えるが、最大のネックは小沢氏を含め3人とも「会計責任者」ではないことだ。規正法は、正しい収支報告書の提出を会計責任者に義務づけている。当時の会計責任者は小沢氏の公設第1秘書、大久保隆規容疑者(48)=同=で、石川議員や池田元秘書は虚偽記載を大久保秘書に報告したと供述している。しかし、会計責任者ではない小沢氏は「大久保秘書と共謀したり明確に虚偽記載を指示したようなケースでなければ、単なる報告と了承で規正法違反に問うのは難しい」(ある法務・検察幹部)。
毎日新聞 2010年1月25日 東京朝刊」
逮捕された元秘書3人は、3人とも小沢氏から「逐一指示を受けるような話ではない」と否定しているようなので(朝日新聞平成22年1月24日付(日)朝刊1面)、「曖昧な指示」程度のものしかないため、政治資金規正法違反(虚偽記入)の共犯が成立するとの立証は相当に困難といえます。
(2) そうなると、民主党の小沢一郎幹事長のお金をめぐる疑惑については、刑事罰という法律問題に至っておらず、報道機関は単なる感情論で小沢一郎氏を非難しているにすぎないことになります。
「となると結局、小沢氏をめぐる報道は、「小沢氏が4億円も現金を持っていた。土地を購入する際、不思議なお金のやりとりがあった。よくわからないが、けしからん」というレベルです。」
このように池上彰さんは、現在の報道に関して辛辣な評価を加えています。現在の報道は、「『よくわからないが、けしからん』というレベル」で報じている感情論・道徳論にすぎないと――。
東京地検といえども、建前は犯罪捜査のために捜査をしているのです。ですから、報道機関は、単に東京地検の捜査状況をだらだらと牛のよだれの様に垂れ流すだけでなくて、「捜査の持つ意味や見通しまで説明」するべきで、そうしてこそ、知る権利に奉仕するという報道機関としての役割を果たすものだというわけです。
池上彰さんは、「検察リーク」を含めた捜査状況の垂れ流し報道を、直裁に非難しているわけではありません。しかし、連日の大々的な垂れ流し新聞報道で、「いずれ小沢幹事長がお金の問題で東京地検に逮捕されるのではないか」と誤解している読者がかなりいると、現在の報道を暗に批判しつつ、報道機関としての在るべき役割を説いたもので正論といえます。
(3) 最後に、読者の投稿を1つ紹介しておきます。
「憶測不要、事実のみ報道せよ――横浜市栄市・60代
テレビで声を変え、モザイクをかけたインタビューがよくある。そして関係者の証言など。私はこの手の「証言」は信じない。
最近、小沢一郎・民主党幹事長の資金管理団体を巡る政治資金規正法違反事件に関する報道が、このような不特定の人の証言に憶測を交えて作られているように見受けられる。どこの誰だか公表されない人の発言を証拠として出す、それは報道にふさわしいことだろうか。実に、質を下げている。
芸能界の醜聞を面白おかしく流すことと同じ手法で、国政の重要問題を扱うのは非常に危険だ。このような映像を繰り返し流すことにより、白いものでも限りなく黒に見えてくるから恐ろしい。東京地検の事情聴取の内容は裁判で初めて明らかになるものだ。国民に先入観を刷り込むような報道は慎んでほしい。
後に憶測は誤りだったと訂正しても、先入観は消えない。無責任に憶測を交えた報道は国民を惑わすだけだ。現段階で報道できることは、「東京地検が3人を取り調べている」という事実だけでいいのではないか。」(朝日新聞平成22年1月25日付朝刊9面「声」
もし、「関係者」という表現ではなく、検察関係者というように検察リークである旨を明示すれば、「虚報」とレッテルを張り、「出入り禁止」を言い渡すという「ペナルティー」を行うようです。ですから、「『関係者』としか書かないのは、情報源を守るとともにペナルティーを避けるための工夫でもある」ようです(東京新聞平成22年1月23日付朝刊24・25面【こちら特報部】)。
このように、もし良心的な報道機関であっても、検察庁の脅しのおかげで「関係者」としか報道できないようになっているわけで、「関係者」という表現を使わざるを得ないことに多少の同情の余地はあるように思います。
しかし、現在のところ、民主党の小沢一郎幹事長のお金をめぐる疑惑は、法律問題に至っておらず、「よくわからないが、けしからん」というレベルで報道している感情論・道徳論にすぎません。こんな報道しかしていないのに、その根拠として挙げているのが「関係者によると」という匿名発言ばかりです。
犯罪捜査とは懸け離れた単なる感情論・道徳論の「刷り込み」のために、「関係者」を連発するのはあまりにも行き過ぎで、「無責任に憶測を交えた報道は国民を惑わす」だけです。「関係者」という匿名ばかりで捜査情報を無批判に垂れ流す報道では、「かつて戦争をあおったように、特捜部の尻馬に乗っているだけだ」として(「発信箱:「権力」たちの暴走=与良正男」毎日新聞 2010年1月21日 東京朝刊)、報道機関に対する不信感がより強まってしまうように思われるのです。