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「検察から言われたままを証言した」
「胆沢ダム工事の下請け受注の見返りに、04年と05年に5000万円ずつ、計1億円を小沢の秘書に渡した」―。
小沢幹事長を狙い撃ちにしている検察の“頼みの綱”は、この証言だけだ。
証言の主は、中堅ゼネコン「水谷建設」の元会長・水谷功(64)。法人税法違反(脱税)の罪で実刑判決が確定し、今は獄中の身である。
特捜部は水谷証言を武器に、強引な捜査を続けているが、ホントに水谷証言は信用できるのか。水谷には特捜部の口車に乗って、“偽証”をはたらいた前科があるのだ。
佐久間達哉特捜部長が、副部長時代に手がけた06年の佐藤栄佐久前福島県知事の収賄事件。2審公判中に水谷は服役中の津刑務所で、佐藤の主任弁護士と面会し、次のように語ったという。
「1審での供述は、当時自分の裁判(脱税事件)が進行中で、実刑を回避しようと、検察から言われたままを証言した」
アキれたことに水谷は、もはや自分の裁判での実刑は免れないとみて、本当のことを話そうと思ったのか、「戦術を間違えた。話がしたい」と佐藤の弁護士に直接、コンタクトを取ってきたのだ。
佐藤前知事の汚職事件で特捜部が描いたシナリオは、@県発注のダム工事の入札をめぐり、00年1月に前知事が“天の声”を出したAその見返りに、落札企業の意向を受けた水谷建設が、前知事の親族会社の所有地を時価よりも高く買い取った―。時価と買取額の差額が賄賂にあたるという筋書きだ。
「水谷は1審で『受注の礼に土地を高く買うのだと思った』と証言したが、面会した弁護士の前で『土地取引は自分が儲けようとしてやった。賄賂行為はない』と翻(ひるがえ)したのです。さらに『ダムの受注は99年5月に、仙台の有力ゼネコンOBらとの会合で決まった』と新たに証言。これでは翌年に佐藤前知事が“天の声”を出すまでもなかったことになる」(司法関係者)
水谷は「出廷して正直に話してもいい」との意向を示し、佐藤の弁護側は2審で水谷を証人申請。東京高裁は証人申請を却下したが、弁護側は昨年7月の最終弁論で水谷の新証言を暴露した。
「福島汚職では贈賄側の時効が成立しており、特捜部は水谷建設などゼネコン関係者から都合のいい調書を多数取ったようです。小沢事件も同じ構図で、昨年夏から何度も水谷氏を取り調べて、冒頭の証言を引き出したいのです」(検察事情通)
いいかげんなオッサンの証言に頼らざるを得ないとは、検察も相当、苦しそうだ。
(日刊ゲンダイ 2010/01/22掲載)