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http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2010012402000081.html
筆洗
2010年1月24日
「ごめんなさい。勘弁してくださいよお」。足利事件の再審公判で、菅家利和さん(63)が泣きながら否認を撤回し、再び「自白」に戻る取り調べの内容を録音したテープが法廷で再生された▼
拷問などがなくても、密室の取り調べで精神的に追い詰められた人が虚偽の自白をする。その状況が初めて白日の下にさらされた衝撃は大きい▼
自白偏重の捜査を見直すために、密室での取り調べをすべて録音・録画する全面可視化を求める声が強まるのは当然のことだ。ただ、それを「政争の具」にしてもらっては困る▼
可視化法案を早期に提出する民主党内の動きは、小沢一郎幹事長の政治資金規正法違反事件を捜査している検察への牽制(けんせい)に映る。鳩山由紀夫首相が冷静な対応を求めたのは、賢明な判断だ▼
小沢氏はきのう、東京都内のホテルで東京地検特捜部の事情聴取を受けた。終了後には記者会見も開き、説明責任を果たしていないとの批判に応える姿勢を見せたが、国民は納得できただろうか。今後の捜査の焦点は、政治資金収支報告書への虚偽記入がゼネコン資金を「洗浄」する偽装工作と立証できるかどうかに尽きる▼
資金提供が事実なら、有権者が初めて実現させた政権交代に泥を塗り、政治不信は極まる。検察の描く構図が誤りなら足利事件と同様司法の信頼は地に落ちる。真実は何か。私たちはそれを知りたい。