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「副島隆彦の学問道場」―今日のぼやき―から転載。
http://www.snsi-j.jp/boyaki/diary.cgi
「1099」 ワシントンで、日本の鳩山・小沢政権を打ち倒す計画が年末から密かに練られ始めていたようだ。詳報はお待ちください。 その他、私の少し古い政治・経済の分析の文を載せます。
副島隆彦です。 今日は、2009年1月22日です。
私たちの学問道場に、国税庁・税務署が襲いかかった5年前からの税金裁判 の 高等裁判所での判決が、一昨日、1月20日に、東京でありました。「控訴棄却(こうそききゃく)」すなわち、私たちの負けです。 原告は、私、副島隆彦ですから、訴外(そがい)である学問道場には、直接関係ありません。
東京高裁での審理は一切なし。去る11月に、2分間ぐらいの一回目の「期日」(裁判)があったきりで、「次回1月20日に、判決言い渡し」と言われ、たったの一回の口頭弁論(こうとうべんろん)も無しで、すぐに結審でした。これが日本の裁判所の実態です。 ひどいものですの、一語につきます。
私たちも、今、騒がれている 政治家・小沢一郎事務所「陸山会」と同じ、政治資金の収支報告書を東京都の選挙管理委員会に提出してあったものも、証拠として出してあったのですが、それらに対しても、一顧、一瞥(いちべつ)さえしないで、原告敗訴としました。
高裁の裁判官たち、といっても、東大法学部を出て、エリートだと、自分たちで思い込んでいるだけの人たちであり、正義判断(せいぎはんだん、ジャスティス justeice )というものの持つ、重要な意味が分からず、国民に尊敬されるような人間たちではないものだから、法廷でも、おどおどして、ひきつった表情をしています。
国民に尊敬されない自分たち日本の裁判官、法曹(ほうそう)が、問題なのだ、という自覚もありません。哀れな連中です。
このあと、私たちは、最高裁判所まで、憲法訴訟を掲げて、闘います。 どうせ、一回の、法廷への呼び出しも無しに、紙切れ(判決文)を、ぺラリと、1年後ぐらいに送りつけてくるだけでしょう。 それでも、闘い続けなければなりません。
詳細は会員ページの方に、判決文その他を整理して載せます。
それで、私は、自分のことで忙しいです(世の中の人は皆、同じです)が、アメリカから情報がありまして、首都のワシントンDCで、日本の鳩山・小沢政権を打倒する、という権力者謀議(コンスピラシー)が、年末に行われたようです。
全体の司令官は、ジョゼフ・ナイ・ハーバード大学教授です。昨年、6月に、駐日本アメリカ大使として、赴任する予定だったのに、オバマ大統領のまわりにいる、アメリカ民主党の立派な人々に阻止されて、オバマの友人の弁護士(ジョン・ルース氏)が、アメリカ大使としてやってきました。 イギリスも、フランスも、オバマの個人的な親友が選ばれて大使になりました。
これに怒っているのが、政治謀略でもなんでもやって、属国群を管理してきたきたない 米国務省官僚たちです。彼らは、オバマ大統領と、ミシェル夫人という立派な人間たちを、ホワイトハウスから追い落として、そして、性悪女(しょうわるおんな)のヒラリーを、早ければ、今年の年末に、遅くても、来春には、大統領にするでしょう。
そうしないと、共和党は、あやつられているサラ・ぺイリン候補で決まりつつあるので、2012年の大統領選挙運動の開始に間に合わなくなる。そして、さらに次の4年もヒラリー大統領で行き、アメリカだけでなく、世界中に、金融統制体制、国民統制体制を敷く予定が、狂うからです。 このことは、私が、ずっと予測(予言)してきたことです。
どうせ、今年の年末から、アメリカの景気(経済)は、大きく
崩れます。それに対応して、緊急で、たくさん国民統制の法律を作って、それで、「世界恐慌ではない」ということにする気でしょう。そのために、各国の検察庁、警察、税務署(国税庁)、地方公務員までを動員して、統制経済体制(コントロールド・エコノミー)に世界を持ち込もうとしています。
日本の民主党の若い清新な政治家(国会議員)たちは、国民と団結して、どうか、襲い来る、この厳しい事態と闘ってください。
いよいよ始まった、日本の国家転覆、政権転覆の、アメリカが仕組み、日本の手先たち(検察、法務省、警察、そのほかオール官僚 と、 日本の大手テレビ・新聞そして、文春、新潮の出版社 など) の幹部たちが、この クーデター計画に、深く関わっています。
私たちは、用心して、もっと注意深くなって、日本国民の団結を推し進めなければならない。 そして、清廉潔白な鳩山政権を支えて、小沢一郎幹事長を守って、日本国のために、本気で戦わなければならなくなりつつあります。
以下に載せるのは、私が10年前に書いた、本の中の一文です。 「アメリカが作って育てて操(あやつ)る日本国内の支配層」のことを書いています。
(引用はじめ)
・・・・日本の戦後は、アメリカの政治勢力であった「ニューディーラー」にたちによってつくられた。 これが初期のグローバリスト( globalists 地球支配主義者)である。 彼らニューディーラーたちは、1930年代のアメリカのリベラル勢力である。
彼らの代表がフランクリン・ ルーズベルト大統領であった。そしてこのルーズベルト大統領を、抜擢し背後からあやつったのはロックフェラー財閥を中心とするニューヨークの金融・石油財界人たちである。 このニューディーラーの一部が敗戦直後にマッカーサー元師の取り巻きとして日本にも上陸した。
この者たちによって私たち日本人は、敗戦直後から現在までずっと管理・教育されてきた。この事を英文で書くと次のようになる。
The‘New Dealers' ( i.e the prototypical globalists ) brought into Japan with their ideas that brainwashed the Japanese people during the Occupation years.
As a result, Japan has led a sheltered existence for the past half-century from the rest of the world in terms of prevailing political thoughts, thus creating a one- dominated ruling class.
This ruling class then intentionally isolated the country from the outside, in order to maintain control over the japanese people.
上の英文の訳
「ニューディーラー(すなわち、グローバリストの初期の形態) が、占領時代に、日本に彼らの思想を植えつけた。 その後、それらの意図的な思想が、日本国民の思考の中に根づいた。
だから日本は、この半世紀の間ずっと、世界中で通用している本物の政治思想や考え方から壁を作られて遮られてきた。そして国内に専制的なひとつの支配階級をつくった。 この支配層は日本国内の支配を維持するために、日本を外側世界と意思が通じない状態に置く原因をつくった。」
この英文を、自分の友人や知人のアメリカ人やイギリス人その他の英語圏国民に見せてみとよい。 政治問題に関心のある少し知的な英米人であれば、必ずそれなりの興味深い反応を示すだろう。もし、本当に頭の良い賢明な アメリカ人であったら、「どうして、お前は、このことを知っているのだ?」 と驚かれたあとに、さらに多くの 恐るべき真実をあれこれ語ってくれるだろう。
出典; 副島隆彦 著「日本の危機の本質」(講談社、1998年4月刊、P33〜34から)
(引用終わり)
副島隆彦です。 以上のような次第です。
以下に載せるのは、やや長いですが、かつ、内容は少しだけ古いですが、私が、年末に書いて、会員ぺージ用に載せようと思っていた、政治と経済の分析の文です。 会員でない人たちにもたまには、こういう、落ち着いた文の レポートを読んでもらおうと思いまして、ここに載せます。
私たちは、何が起ころうも、私たちの日本国のために、誠心誠意、出来るだけのことをやって、つくしましょう。そして、いつも正しい人間としての誇りをもって、生きていましょう。
副島隆彦拝
(転載貼り付け始め)
●財務省主計局に圧力をかけて埋蔵金を拠出させた
副島隆彦 筆
小沢一郎民主党幹事長を最高実力者とする鳩山由紀夫政権は、脱官僚を目指した政治主導の改革を行っている。しかし、当初のシナリオからやや軌道修正を余儀なくされている。当初、民主党政権は、昨年9月の発足時点では、日本の国家資金を管轄している財務省の主計局部門 には手を出さない。
その代わりに、厚労省や国交省の事務次官や、その直系の部下の担当局長を立て続けに更迭(こうてつ)することで利権を奪い、改革の主導権を握ろうという考えであった。この計画が狂いはじめている。
例えば、財務省の事務次官(じむじかん)には、ほとんどの場合、主計局長(しゅけいきょくちょう)しか昇格することができない。同様に厚労省の次官も、年金課長や年金局長を経験しないと就任できない。
日本国民の大事な資産である年金基金(ねんきんききん)は、2年間からの米国発の金融危機によって、80兆円ほどの資金を喪失していると推測されている。その責任をいかにとらせるかが、官僚主導の行政を刷新するうえで重要な焦点になっている。このため、同省の次官や局長を更迭することはかなり大きな意義がある。
民主党が2009年8月30日の総選挙で圧勝し、民主党政権が成立することは確実視されていた。昨年7月の状況の中で、財務省主計局の官僚たちは、総選挙に先立つ、2009年7月の人事で、杉本和行(すぎもとかずゆき)次官をさっさと勇退させて丹呉泰健(たんごやすたけ)主計局長を後継次官に昇格させた。
また同時に、米国への“資金貢)(みつ)ぎ係” である 国際金融局(こくさいきんゆうきょく、現・国際局)の人事でも、篠原尚之(しのはらなおゆき)財務官が国外に逃げるように退任して、IMFの副専務理事になることで、 玉木林太郎(通称「タマリン」)局長を財務官(ざいむかん)に昇格させることで、小沢幹事長に対して“恭順の意”を示した。
小泉純一郎元首相の側近だった丹呉新次官 と、2009年2月14日のローマでの先進7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議の際に中川昭一財務相(いずれも当時)に薬を盛って陥れた玉木新財務官の、“ふたつの首”を、お盆の上に載せて「どうぞ首をきってください(そのかわり、他には手をつけないでください)」と差し出したのである。
既に2009年9月21日には、斎藤次郎(さいとうじろう、通称「デンスケ」 )元次官が日本郵政の社長に、そして彼の直系の“子分”である坂篤朗(さかあつろう)元主計官(元内閣官房副長官補 ) が副社長に就任していた。 同様に子分である勝栄二郎(かつえいじろう)主計局長を、次の事務次官(財務省のトップ)に昇格させる手筈(てはす)っていた。 そうすることで鳩山民主党政権は、斎藤社長を中心とする旧財務省主計局の勢力と提携しようとした。
民主党政権が、どうして官僚権力の“中枢”ともいうべき財務省主計局の勢力と提携したのか。それは、“財務省の裏切り者”である高橋洋一(たかはしよういち)元東洋大学教授 が暴露した、75兆円もの「霞が関埋蔵金」の所在(ありか)が、主計局勢力の中でも、斎藤元次官を中心とする系列の者にしかわ分からないからだ。
とりわけ郵便貯金や簡易保険の資金の一部は特別会計に回っているので、斎藤次郎や坂篤朗らを日本郵政の社長、副社長の要職に就けることで、民主党陣営に取り込み、時間をかけてじっくり資金の所在を聞き出そうとしたのである。
そこで、民主党側は、主計局の勢力と当初は妥協するにあたり、細川護煕政権で大蔵大臣を務め、高齢で政界から引退することになっていた藤井裕久(ふじいひろひさ)代議士を、2009年8月30日の衆院総選挙での、比例区名簿で一位につけ衆院議員の地位を維持したうえで、鳩山内閣の財務相に起用した。
藤井財務相は、財務省主計官出身で、大蔵官僚から政界に転身しており、若手の官僚や財務省出身政治家の“ご養育係”のような存在だ。こうした人物を起用したところに主計局の勢力と妥協したことがうかがえる。
ところが、年末に2010年度の予算を策定するにあたり、景気が急激に落ち込んだため、税収が36兆円と、予定より10兆円も激減したことが誤算となった。景気の悪化に伴う税収の急激な落ち込みは、麻生太郎前自民・公明連立政権の責任だ。だから鳩山政権は、総選挙で掲げたマニフェストを満足に実行できなくなってしまった。
それでも、とにかく予算を組まなければならない(専門用語で「予算を上げる」という)ので、小沢幹事長の意向を受けた亀井静香郵政改革・金融担当相が、勝(かつ)主計局長に対して、更迭をちらつかせて圧力をかけ、なんとか埋蔵金の中から15兆円もの資金を拠出させることに成功した。
それによってガソリンの暫定税率は維持せざるを得なかったものの(ガソリンは今は暴騰していないので国民生活に困らない)、子供手当てを全家庭に支給するのに必要な約2兆4,000億円分を確保し、44兆円の国債発行枠をも守ることができた。
主計局の勢力の“裏切り者”である高橋元東洋大学教授は、75兆円もの埋蔵金の存在を暴露した著書『恐慌は日本の大チャンス』(講談社)の中で次のように述べている。
「予算は締め切りが来れば必ず策定できるのだが、予算策定の方法は、@ 赤字国債の発行、A 予算要求の内容の組み換え、B 埋蔵金の使用、と三つの手法がある」
としている。このうち、Aについては、事業仕分けで3兆円削減する予定だったが、実際の削減額は1兆円にも満たなかった(当初の目標がわずかに3兆円に過ぎなかったように、どちらかといえばパフォーマンスの色彩が強かった)。 一時、赤字国債を発行することも検討されたが、結局44兆円もの国債発行枠を維持することになった。
当初の予定が狂ってしまい、とにかく性急に強引に特別会計から埋蔵金を拠出させようとしたので、主計局の勢力には強硬な圧力がかかることになった。斎藤日本郵政社長を中心とするごく少人数しかその所在を知らない。このため、若手の主計官の間では「ないと言っているのに‥‥」といった悲鳴が上がった。
若手主計官たちの悲鳴が藤井財務相(当時)の耳に入ってきたので、彼は嫌気が差した。辞任表明の背景には自身の体調の問題が表向きの理由とされ、多くのメディアは小沢幹事長の圧力を指摘する論調が多いが虚偽の報道である。それは藤井氏本人が、中日新聞等で、明確に否定している。
高橋洋一氏が指摘した埋蔵金の残りはまだあと30兆円ほど残っている。だから鳩山政権は、国民の一般家計にこの資金を使おうと決意を固めているようだ。それで菅直人副総理が、財務大臣になってその陣頭に立つことになった。
当初の予定では、斎藤社長を中心とする勢力を、“なだめすかす”ことでじっくり引き出そうとしていた。しかし勝主計局長に圧力をかけて出させたために、財務省主計局が委縮して容易にはその所在先を明らかにしなくなっている。この意味では難しい局面になってきている。
しかし、この埋蔵金からの予算ねん出に他に、郵貯・簡保資金を、直接、増発する国債の購入に回すことで、実質的に直接、埋蔵金の残りを国家予算に組み入れることができるのではないか。
郵貯資金は今も自然に増えている。これで国債を買い続ければ、貧しい国民層に向けて直接の給付金(子供手当や、農民支援金など)の政策を推進して予算規模を100兆円にまで大きくしてもいい。今はケインズ政策(財政出動)を愚直に実行して政府が国民を助ける時期である。日本は圧倒的な貯蓄超過大国なので、マクロ経済的には問題はない。
日本経済は、(景気落ち込みの)“二番底”に陥る懸念がささやかれているが、これは、再度の次のアメリカ発の金融危機によって世界的に起きることであるから日本だけに起こる事態ではない。年末に予算をすでに成立させたことから、ある程度は下支えされることが期待できる。
2兆4,000億円の子供手当ての多くは、生活がそれほど楽ではない一般家庭に直接、支給されるので、そのすべてが消費に回ると思われるからその分も需要を喚起する。
日本経済はこれまで、大企業が米国を中心に輸出を伸ばすことで成長率を維持してきた。しかし、今や米国が世界の大消費基地ではなくなっている。このことは北米での自動車の売り上げが急激に落ちていることに表れている。年間1200万台だったアメリカの新車が800万台にまで落ちており、中国に抜かれることが確実になった。だから輸出に頼るよりも、日本国内の家計の消費意欲が出てくるような政策を打ち出すことで景気下支えや浮揚を図っていくのが当然のことだ。
輸出主導 の景気回復では、大企業ばかりが高収益を計上して、かつ、そのかなりの部分が金融機関に預けられ、米国内に滞留して、米国を中心とする海外の金融市場で運用されている。その結果、多くの一般国民には景気回復の恩恵が回りにくい。これに対し、多くの一般国民が恩恵を受けるような内需主導を目指す対策は、今の日本にとって大変に望ましいものである。
消費活動が少しでも盛り上がれば、使われた資金が回っていく。その結果、有効需要がさらに創出されていく。自民党の景気対策は公共事業を増やすことだが、それでは国が発注する際に初期投資としての需要が出るものの、家計の消費意欲が停滞しているのでケインズ経済学でいうところの乗数効果がそれほど期待できず、あまり景気は浮揚していかない。ところが、多くの家計が消費をするような政策を打ち出せば乗数効果が高まるので、それだけ多くの有効需要を創出することができるわけだ。
民主党の景気対策は、業者や管轄する機関を通さずに、家計に直接資金を供与することで生活を支援していき、内需の浮揚を図っていくことで徹底している。農家への対策としては、自民党なら農水省の巨大な天下り先であり、重要な集票基盤である農業協同組合(農協)を介すことになるが、それでは農協が中抜きをして、農家にはごくわずかしかお金が行き渡らない。
民主党は選挙前に個別所得保障を公約して直接資金を渡すことにしたため、今では地方圏での農家の多くは民主党支持に傾いているようだ。
同様に、自民党は、景気対策では、公共事業が中心になるので、“土建屋”といわれる建設業者を支援していた。ところが、現在の鳩山政権では景気対策の策定をめぐり、亀井郵政・金融相がその公共事業費の増額を求めて、菅直人国家戦略担当相、仙谷由人(せんごくよしと)行政刷新担当相(いずれも当時)と対立した。民主党の議員の多くは、そうした公共事業中心の景気対策には否定的である。
建設業者は全国に50万社ほどあるが、前原誠司国交相が既に実質的に機能していない業者がそのうち20万社ほども占めているので、そうしたところはむしろ早く整理していく意向を示している。年間の売り上げが、100万円もないのに建設業者を名乗っているところがかなりあるので、そうしたところを助けても意味がないというわけだ。
● 金融恐慌への対処で統制経済化が不可避に
今回の予算の策定では、総選挙の際に公約したマニフェストを完全に守ることができず、国債発行額も飛躍的に積み上がったので非難する向きが多い。金融市場でもそうしたことが悲観的に解釈され、円安が進んだ一因とされている。
これは、2009年11月20日に、菅国家戦略相(当時)がデフレ宣言を発したことによるところが大きい。この時、「不況」を宣言していれば、財政出動による景気対策を策定するだけで済んだはずだ。しかし、物価の継続的な下落現象を意味する「デフレ」と表現したため、通貨価値の安定を目指して金融政策を扱っている日銀の責任になってしまったのである。
おりしも、当時、米国ではティモシー・ガイトナー財務長官やベン・バーナンキFRB議長が、さらに活発に投機筋にドル・キャリー取引を行わせて株価を引き上げようとしていた。2008年9月15日のリーマン・ショックに端を発する金融危機が、2009年3月には一応収束したものの、金融機関の財務内容が悪化し続けていたなかで、増資をさせるには株高が進むのが望ましかった。
そこで米国市場が休場だった2009年11月26日のサンクスギビング・デー(感謝祭)に合わせて、意図的にドバイ・ショックを引き起こし、日銀やECBにもさらなる追加金融緩和策を実行させることで、株高を後押しさせようとしていた。
ドバイ向け債権は欧州の銀行勢が大量に抱えていたため、危機を受けてドル安だけでなくユーロ安も進み、円独歩高となって、翌日の2009年11月27日には、1ドル=84円台後半に一気に円高が進んでしまった。それにより、日銀は、2009年12月1日に、臨時の金融政策決定会合を開催し、追加金融緩和策に動かざるを得なくなってしまった。
ただ、日銀が米国の意向に追随せざるを得ない状況に追い込まれたのに対し、ECBは従わなかった。ドバイ・ショックの直後の2009年12月3日の理事会では、1年物の資金供給を年内に取り止めることを示唆するなど、「出口戦略」に踏み出し、会見ではジャンクロード・トリシェ総裁がドル高を望む姿勢を示した。
その報復として、米財務省やFRBとつながっている格付け機関が、ギリシャをはじめ複数のユーロ圏加盟国の格下げに動いたことから、一時ユーロ安が進んだ。ただ、FRBとしてはECBが出口に向けて動き出す以上、それに歩調を合わせないと米国への資金流入に支障を来してしまうので、2009年12月15〜16日のFOMC(連邦公開市場委員会)では、自らも多くの資金供給策を、2010年2月1日で中止することを決めなければならなくなってしまった。
ただ、それでも日銀が量的緩和策を強化したことから、株高をさらに推進する目的は達成されている。2009年12月4日に11月の雇用統計で非農業部門の雇用者数が前月比1万1,000人の減少にとどまるなど、意図的とも思えるような良好な景気指標が相次いで発表された。
FRBが出口戦略を打ち出したこともあって市場では将来的に利上げ観測が強まったことから、円安・ドル高が進むことにより株式をはじめリスク性資産にさらに資金が流入していった。本当は利上げなど議論できる状況ではないため、そのうち修正局面になるとその反動が到来しそうだが、日銀が緩和策に動いたことで当面は米国の政策当局の“思う壺”となっている。
とはいえ、株価を引き上げて金融機関に大規模な資本調達をさせても、デリバティブ取引がピーク時には800兆ドル(8京円)を超えていたように、本来的に抱えている不良資産の規模はまさに天文学的なものだ。
自力で増資するだけでは到底問題を解決できるわけがなく、単に問題の解決を先送りにしているに過ぎない。本当に問題を解決するには、まず金融機関相互で焦げ付いた契約そのものを打ち消しあう“抜け解け合い”をする必要がある。そのうえで、最終的に残ったものを金融機関本体から別機関に分離して公的資金で買い上げ、さらに金融機関にも公的資金を注入して自己資本を強化し、財務内容が健全化することでようやく終了する。
ところが、その第一段階となる抜け解け合いをすることが非常に困難である。例えば、2008年9月15日に、証券大手リーマン・ブラザーズが破綻した際に、同社関連のCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)をどのように処理するかが問題となった。この取引は、企業が発行する社債を購入して運用するにあたり、発行体の企業が破綻して元本が焦げ付くリスクを保証するものだ。
デリバティブ取引が当初のリスク・ヘッジを目的としたものからさらに投機目的で天文学的に普及していったなかで、アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)を最大手とする保険会社は手数料収入が得られるので無尽蔵に発行したのである。
ところが、リーマンが破綻したことで、CDSの発行元である保険会社が巨大な支払い義務を負ってしまい、AIGも一気に連鎖破綻して国有化されてしまった。この時には、リーマン関連のCDSの保有者の金融機関が集まって互いに契約そのものを打ち消したことから、最終的な損失額はわずかに8%超で済んだ経緯がある。
こうした取引は「1対1」での相対によるものであり、相手がはっきりしていることから、双方が合意すれば容易に契約そのものを打ち消すことができた。しかし、デリバティブ取引で非常に多く出回っている債務担保証券(CDO)については、民間金融機関相互の交渉で解決することはまず不可能である。
米国では日本とは異なり直接金融主体なので証券化(セキュリタイゼーション)が発展しており、住宅や消費者、学資といった各ローンが証券化されて出回っている。
これを資産担保証券(ABS)といい、昨今の金融危機を引き起こした住宅ローン担保証券(RMBS)や商業用不動産ローン担保証券(CMBS)といったものが含まれている。金融工学の発達により、これらのローンが細分化されて他の金融商品と混ぜ合わされて加工されたものがCDOである。
金融危機は当初、「サブプライム問題」といわれたように、移民の多いヒスパニック系を中心とする低所得者層向け住宅ローンであるサブプライムローンが焦げ付いたことで引き起こされた。このローンは、全米で住宅ローンの残高が13兆ドルほどあるうちのわずかに1兆4,000億ドルと、年間GDP13兆〜14兆ドルの、たかだか10分の1程度に過ぎない。
このため、多くのエコノミストや金融アナリストの間では、危機が起こった当初はそれほど大きな被害に発展することはないといった見方が一般的だった。しかし、それが巨大な危機に発展したのは、それらを組み込んだCDOがすべて無価値になってしまったことにより、不良資産が著しく積み上がってしまったからである。
しかも、厄介なことに、このCDOは、多くの金融商品を混ぜ合わせて組成されたものであるため、民間金融機関の間ではCDSのように契約そのものを容易に打ち消すことができない。1対1での相対取引とは異なり、多くの金融商品が混ぜ合わされて組成されたものであるため、どの金融商品に腐ったものがあるのかまったく見当がつかないことから、双方の合意により契約を打ち消すことができないのである。
このため、これらのCDOのかなりの部分を打ち消すには、統制された権力の下で、一元的に対処しなければ不可能である。このため、金融危機を最終的に終了させるには、近いうちに統制権力体制への移行は不可避と見るべきである。
統制権力体制への移行は、不況を克服するうえで巨大なケインズ政策ともいうべき軍需を創出するためにも不可欠なものだ。ごく最近では、2000年初頭の新興株を主体とするITバブルの崩壊による不況克服策として、ジョージ・ブッシュ前政権下で、ネオコン派主導で、2001年10月にアフガニスタン戦争が、2003年3月にイラク戦争が行われている。
両戦争は2001年の「9.11同時多発テロ事件」を受けた対テロ戦争が戦争に突入していく大義名分とされたが、当時は強力な言論統制が敷かれて、米国人がこの事件への疑惑を追及すると必ず社会的制裁を受けたものだ。
ただ、規模の面で現在の金融危機に匹敵するのはやはり1930年代の大恐慌であり、当時、スイスに駐在していたジョン・フォスター・ダレス元国務長官(ドワイト・アイゼンハワー政権)がナチスのアドルフ・ヒトラー総統を操り、米国でもフランクリン・D・ルーズベルト政権の策謀で、第二次世界大戦が意図的に引き起こされ、それにより世界経済は巨大な景気の落ち込みから脱することができた。
これから「第三次世界大戦」が引き起こされるとは思わないが、地域戦争としては中東や中央アジアで、あるいはインドとパキスタンといった紛争の火種が至るところで散見される。そうした地域で紛争当事者の双方を煽って双方に兵器を売りつけ、軍需産業が業績を伸ばしていくのは容易に推測できる。いうまでもなく、最新鋭兵器の多くは日本製の精巧で極少な部品が組み込まれているため、日本の製造業も多大な恩恵を受けることになる。
● ネオコーポラティズムの概念が重要になってくる
そこで「コーポラティズム」あるいは「ネオコーポラティズム」といった政治思想、政治体制論が重要になってくる。私はかなり以前から金融統制体制に移行していくと悲観的なことを主張していた。
日本で小沢幹事長主導による鳩山政権が成立したため情勢が変わり、やや楽観的な見方に変わっていた。ところが、米国でバラク・オバマ政権が崩壊し、任期途中でヒラリー・クリントン現国務長官が大統領に昇格して新政権が成立すると、どうしてもその余波が日本に波及して厳しい情勢にならざるを得ないだろう。
現在でも普天間基地移設問題をめぐり米国と難しい問題を抱えており、移設をめぐり資金を貢がされるといった問題は、当然のことながら今後も続いていくだろう。それだけでなく、さらに金融経済面で国民経済に対する締め付けが強まり、国民生活への監視体制にまで至るような状況になっていくだろう。まさに、1937(昭和12)年以降の戦争動員体制のような経済統制体制に突入していくという問題が視野に入ってこざるを得ない。
米国では、2008年3月半ばのベアー・スターンズの実質破綻までの金融危機の第一波に続き、同年9月15日のリーマンの破綻を契機とする第二波が起こった。現在では小康状態が続いているが、それは時価会計の適用を大幅に緩和し、各部分について“恣意的”に実施してもしなくても良いようにしたからだ。
それにより、シティ・グループやバンク・オブ・アメリカ(バンカメ)、モルガン・スタンレーといった問題金融機関は貸借対照表上での「資産」の部でそれを適用せず、「負債」の部だけで適用することで損益計算書での当期利益を計上している。
しかし、そうしたなかでも、アメリカ国内の地銀の破綻が増加傾向にあるのに見られるように商業用不動産市況が下げ続けており、さらに優良顧客層向けの住宅ローンであるプライムローンの焦げ付きも増えているため、大手金融機関の間でも不良資産がさらに累増しているのは間違いない。そのうち、危機の第三波が到来するのは避けられない。
それにより米株価が急落し、それが全世界的に波及していくことで、オバマ現大統領が責任をとらされて辞任せざるを得なくなり、クリントン現国務長官に交代していくことが予想される。2012年の大統領選挙では、クリントン現職候補に対し、共和党からは前回の選挙戦で副大統領候補だったサラ・ペイリン前アラスカ州知事が対戦する構図になりそうだ。
ペイリン前知事はリバータリアンであり、下から這い上がってきた貧乏人層出身の活動的な人物なので、反連邦主義者(アンチ・フェデラリスト)=反中央集権主義者である。あえてこうした人物を共和党の候補者に据えることで、クリントン現長官が圧勝する筋書きが仕組まれることになるわけだ。
共和党は本来、“上品な”中小企業や大規模農場の経営者が支持していた政党であり、いわば“カントリー・クラブ”のような性格が強い。ニューヨークの金融財界や石油財閥と一体化し、米国の覇権国化とともに世界支配を目論んでいった大企業のオーナーや経営者といったグローバリスト系に対し、米国内で堅実に生きていけばいいといった思想が共和党内では今でも根強い。
こうした思想を「アイソレーショニズム」といい、かつてチャールズ・リンドバーグが「アメリカ・ファースト」と表現したように、本来的には「米国内優先主義」と訳すべきものだ。
米国はあくまでも米国のことだけを考えればいいのであり、金融業や軍需産業のように世界規模で進出することに反対する傾向がある。ただ、こうした思想は、伝統的な共和党の保守思想ではあっても現在では主流であるとはいえないため、大手メディアをはじめ多くの支持を得られず、選挙戦では勝利できるわけがない。
オバマ大統領が辞任した後、ヒラリー・クリントン国務長官が任期途中で大統領に就任し、次の選挙戦でも圧勝する。その後も4年間、ヒラリー・クリントンは、デイヴィッド・ロックフェラーの意向を受けて統制経済体制を強めていくことが予想される。米国では、こうした体制に少なくともこれから2年以内に突き進んでいくため、日本では小沢幹事長が主導権を握っている民主党主導の現政権は大きな試練に立たされざるを得ない。
おそらく、鳩山現政権は今年夏の参院選まで存続すると見ているが、9月頃には次期政権に交代する可能性がある。それでも民主党主導の政権自体は今後も続くので、米国と厳しい関係になっていかざるを得ない。
現在の民主党主導の鳩山政権は、トヨタ自動車出身の直嶋正行(なおしままさゆき)経産相や松下電器産業出身の平野博文(ひらのひろふみ)官房長官が閣僚の中枢部門を占めているように、日本を代表する世界的な大企業の労働組合の支持を得ている。
巨大な輸出大企業の“技術屋”を中心に、日本が、世界的に巨大な付加価値を提供し、国内経済を牽引している勢力によって運営されている。本来、宗教団体と労働組合は、全国的な政治運営を行ってはいけないのだが、日本経済の秩序を考えると、健全な国家体制といえる。
欧州では「社会民主主義(ソーシャル・デモクラシー)」という伝統的な政治思想があり、これは、労働組合の活動を主体に全国民の幸福を追求するものだ。そして、実は、社会民主主義は、「ネオコーポラティズム」の政治思想の流派に属する。
端的にいえば、これは「開発独裁」と表現すれば最も理解しやすいだろう。韓国の朴正熙(パク・チョンヒ)政権や台湾の李登輝政権、マレーシアのモハマド・マハティール政権、シンガポールのリー・クアンユー政権といった事例が挙げられる。
開発独裁とは、独裁政権ではあるものの、国民の活力や各産業部門への国家規模での集中的な投資を国家政策として、全体を統合して高度経済成長を追及する政治体制といえる。現在でも、ロシアのウラディーミル・プーチン、ドミトリー・メドベージェフ政権は開発独裁型といえる。中国でケ小平が1978年に改革開放政策を始めて以降の「社会主義的市場経済」も、政治思想的にはこの形態に属するといえる。
開発独裁は、戦後のアジアでの高度成長を成功させた政治システムだが、政治思想としては第二次世界大戦直前から戦中にかけて、イタリアで独裁政権を握ったファシスト党のベニート・ムッソリーニが発端であり、それを尊敬していたのが同時期のドイツのアドルフ・ヒトラーが率いた国家社会主義ドイツ労働者党(ナチス)だった。
ヒトラーはともかく、ムッソリーニは今でも欧州ではかなり尊敬されており、“本物のイタリア人”の間では最も慕われているといって過言ではない。第二次大戦中、米国はイタリアを攻撃するにあたり、この地域出身のマフィアの“ボス”のラッキー・ルチアーノを介して、南部シチリア島からジョージ・パットン将軍率いる第5軍が攻め上がってムッソリーニ政権を攻略している。
米軍は、港湾での荷揚げ作業に携わる“沖仲し”の労働力を動員するうえで、こうした勢力を配下に置いているマフィアと提携することが多かった。日本でも、山口組の田岡一雄3代目組長が米国と提携したことにより、“ヤクザ世界”で全国制覇を成し遂げたのと同じようなものだ。
ネオコーポラティズム論が恐ろしいのは、労働組合を中心に国民各階層を動員していくエネルギーを形成することだ。カリスマ的な指導者の下に国家資源をすべて最も効率よく集中して配分することで、大きな成長経済を達成することができる。
これから米国では、クリントン政権下でそれに類似した政治体制に移行することで、2007年のサブプライム問題から始まった金融恐慌が世界恐慌に発展していくのを、“形式上”食い止めていこうとするだろう。
1930年代の「大恐慌」時代にルーズベルト政権が行ったことと同じような政治体制を、クリントン政権は目指すことになるわけだ。国内的には、労働者階級をはじめ低所得者層や貧民層の生活を支援する姿勢を見せながら、富裕層の財産権や大企業の経営者の経営権を侵害する形で、産業部門ごとに国家統制経済体制に移行していくことになる。日本では、1937年に電力や鉄鋼、石炭等の国有化が推進されたが、それと似たような状況が押し寄せるだろう。
● ネオコーポラティズムの潮流が日本にも押し寄せる
そうした潮流が日本にも押し寄せてくるのは避けられないことであり、それを私は最も危惧している。私は現在の小沢幹事長が主導権を握る現政権を、国民運動を起こしてでも徹底的に支援していこうと思っている。とはいえ、日本は、米国の情勢の変化に応じて、恐慌への突入を阻止するための統制的な体制への移行についての法律が制定される事態をどうしても想定せざるを得ない。
私は、小沢幹事長が主導権を握る政権を支えていく。しかし、これから変化していくであろう政府や国家体制を、支持するわけにはいかない。今のうちに、国民に選ばれているわけではなく、試験に合格しただけで、天皇の直属の官吏だと思い込んでいる官僚の勢力をできる限り叩きのめしておくことが重要だと考えている。
また、属国支配をするうえで国民全体を洗脳するために、米CIAが育ててきたことが如実に明らかになってきた日本のテレビ局を有する大手メディア6社体制を、できる限り打撃を与えておくことが必要だ。
例えば、ビジネスマンが購読している日本経済新聞は、小泉元首相の“ポン友”といわれる杉田亮毅(すぎたりょうき)社長が強大な権限を握っている。日経新聞に小泉・竹中構造改革路線の推進を主張する論調が多いのを見ればわかる。他の一般紙では、最も発行部数が多い読売新聞は、ヘンリー・キッシンジャー元国務長官につらなる中曽根康弘元首相の盟友である渡辺恒雄(通称ナベツネ)会長が、また日本テレビ放送網も氏家齊一郎(うじいえせいいちろう)会長がともに、現在83歳の高齢にもかかわらず、強大な影響力を誇っている。
創業者で警察官僚出身であり、CIAの意向で動いていたことが明らかになっている正力松太郎(しょうりきまつたろう)元会長から親米路線を忠実に受け継いでいる。
フジサンケイグループはフジテレビジョンの日枝久(ひえだひさし)会長や産経新聞の住田良能(すみだながよし)社長が、鳩山政権が続くと自分たちが潰されるといった恐怖感から、公平性や中立性を放棄し、憎しみを込めた報道しかできなくなっている。
左派・リベラル色が強い朝日新聞も、デイヴィッド・ロックフェラーの直系の子分である船橋洋一(ふなばしよういち)主筆が編集面での権限をすべて握っており、西松建設の献金問題をかなり以前から報道するなど小沢幹事長への攻撃を行っている。
NHK(日本放送協会)は必ずしも親米的ではないが、それでも海老沢勝二(えびさわかつじ)元会長が不祥事で辞任したとはいえ、依然として竹下登元首相につらなる系列が強い。
そして最近、資金管理団体の「陸山会」の土地購入問題で最も先鋭的に批判的な報道をしている毎日新聞やTBS(東京放送)は、創価学会系だ。その背後には、民主党の献金団体である立正佼成会と対立色を強め、池田大作名誉会長がデイヴィッド・ロックフェラーに接近している事情がありそうだ。
ただし、こうした大手メディアは、小沢幹事長や鳩山政権に対して批判的な報道を繰り広げているものの、米国からの指令や支援により動いているのではなく、あくまでも独自に報道しているに過ぎないと見ている。と言うことは、鳩山政権や小沢幹事長は表面的には偏向した報道による攻撃で窮地に立たされているように見えながら、実際には有利な情勢にあるともいえる。
沖縄の普天間基地移設問題をめぐりリチャード・アーミテージ元国務副長官やマイケル・グリーン元NSC(国家安全保障会議)上級アジア部長といった“知日派”とされる元米外交官が日本経済新聞の招待で来日し、現政権批判を繰り広げるといった事例が見られる。
とはいえ、日本の現政権は対米関係ではオバマ政権と交渉するのであり、相手にする必要はない。ただし、カート・キャンベル元国防副次官補が東アジア・太平洋担当の国務次官補に就任したので、相手にしなければならないのは厄介だが。
ところで、ネオコーポラティズムは、別の側面から見れば金融寡占支配という意味合いもある。これはマルクス経済学の流れであり、政治思想的には、ベーム・バベルクの批判に対する“反批判”を行ったルドルフ・ヒルファーディングの金融資本論から始まるものだ。
金融資本論を簡単に説明すると次のようになる。マルクス主義経済学によると資本主義経済はやがて寡占や独占の過程に至るとされるが、各産業部門の上位に君臨する重化学工業部門のさらに上位の大銀行によるコンツェルンのような寡頭支配体制が形成され、それが国家体制をも支配するようになるというものだ。
日本では労農派(左派)のマルクス主義経済学者である向坂逸郎(さきさかいつろう)らが、「国家独占資本主義」という言葉を用いたが、それがまさしくネオコーポラティズムという政治体制と表裏関係にある。ネオコーポラティズムは、構造改革派の思想である。
そして、政治革命としての社会主義革命はあり得ないのであり、人類がすべて平等になることはないといったことがはっきりした時点で、ネオコーポラティズムが出現したのだ。
ただ、そうした構造改革派の思想さえも、カリスマ的な指導者を戴く国民成長経済モデルの開発独裁体制に組み込まれていく、という恐怖がどうしても存在する。世界的な金融恐慌を阻止するため、より正確には、隠蔽して何事もなかったかのように自由社会が継続していくように見せるために、ネオコーポラティズムは必要な政治体制といえる。
小沢一郎というカリスマ性があり、優れた指導者が亡くなった後に(おそらく、これから3年もかからないだろう)、それを引き継ぐだけの人材が現れるかといったことを、私はかなり危惧している。現幹事長と同等の頭脳や人格、知力や体力のある人材が現れることを私は待ち望んでいる。
このため、個人的には「日本型ムッソリーニ」とでも呼び得るようなカリスマ的な人材が出現することに対し、必ずしも否定的ではない。日本国民は国内に立て籠もり、優れた指導者の下で団結して生き延びればいいのであり、またその能力がある。日本の製造業は世界で最も優秀なので、自由貿易体制が維持される限り輸出して多くの外貨を稼ぐことができるからだ。
ところが、フランスの反ネオコン、反グローバリストの知識人として台頭していたエマニュエル・トッドが『帝国以後』を著している。そのなかで、欧州(EU)は自由貿易体制を廃止すべきだと主張している。それは主に中東地域との関係もあるが、反米志向もあり、ブロック経済化の進展が不可避なので欧州が自立を目指すべきだというものだ。この人物は、かつては旧ソ連の崩壊を、そして今回は米国の金融危機を予測したといわれているが、私には欧州帝国主義者にしか見えない。
私は、米国の世界覇権が後退していくという見方では一致するものの、チャールズ・キンドルバーガーが「インターレグナム(大空位期)」と呼んだような、多極化理論やブロック経済化が進むといった見方を排除している。そうではなく、BRICsといわれる新興4大国がこれからは世界を指導していくと見ている。
国際会議で各国の首脳が集まった際に、ブラジルのルラ・ダシルバ大統領やロシアのメドベージェフ大統領、インドのマンモハン・シン首相、そして中国の胡錦涛国家主席の4カ国の首脳が目配せし合っている様子を見ると、これらの国々による世界の管理体制の構築が着々と進んでいることがうかがえる。
2009年6月16日に、ロシアのエカテリンブルクでこの4カ国による首脳会議が開かれたのは、その第一歩といえるだろう。これから米国で金融恐慌が起こることで、2012年ごろにはドル基軸通貨体制が劇的に崩壊していくだろう。
ただ、ネオコーポラティズム体制が世界的な潮流になるにあたり、その影響で日本国内でも統制経済体制が強まる際の態度のとり方に、私は個人的に苦慮している。米国内で現在隆盛している経済学の3大経済学といえば、ケインズ主義、マネタリズム、オーストリア学派である。この最後の学派は、ルードヴィヒ・フォン・ミーゼスに始まるものであり、市場原理主義者とでもいうべき資本主義の崇拝者のような派閥であり、統制の動きに徹底的に反対している。
金融危機が起こると金融システムが麻痺して経済活動が破壊されるリスクが出てくることから、一般的には大銀行の救済はやむを得ないこととして当然のことのようにいわれるが、オーストリア学派はそうしたことにも反対している。
大銀行の経営者や株主に責任をとらせて破綻させるべきであり、一般の従業員や預金者も相応の責任を負っているのだから救済する必要はないといったことを求めている。それ以外にもあらゆる規制に反対し、さらには「FRB」というおかしな捏造された中央銀行を解体せよと主張している。
また、オーストリア学派を信奉する経済学者の間には、ジョゼフ・シュンペーターのように、いくつかの期間のサイクルから構成される経済波動循環論を原理としている一群も存在している。こうした一群も、不景気が生じると調整されるべきものが調整されないと景気が回復軌道には乗らないのであり、景気対策を実施すると調整が遅れてしまうのでどれほど大きな不況が到来しても対策を行うべきではないと主張していた。
とはいえ、こうしたオーストリア学派の主張は、それ自体は正しいが、その見解をまともに採用すると経済秩序だけでなく政治体制をも崩壊してしまいかねない。このため、やはり望ましい経済政策はケインズ主義型なのであり、いたずらに経済秩序を崩壊させてしまい、ネオコーポラティズム的で国家管理的な統治体制を成立させてはいけない。
現実的には高級公務員たちによる国民生活の監視をさせないようにし、また個人の財産権を侵害しないような政治体制を維持しなければならない。官僚が強大な権力を保持し続けると、いろいろな法律を勝手に変え、新しく作成することで国民生活への統制を強めることになりかねない。そのため、国家統制体制に向かわないようにするためには、政治主導の改革を推進して官僚の権力を弱体化させなければならない。
とはいえ、国内問題としては政治主導の改革を推進していけばいいが、大きな潮流としては、ロックフェラー財閥の傀儡である、ヒラリー・クリントン政権下の米国が圧力をかけてくることが想定されるため、国内での取り組みでは限界がある。そこで生き延びるためには、日本はどうしても中国に接近していくという戦略を採らざるを得ない。
実際、鳩山政権を支えているトヨタ自動車や松下電器産業は、中国をはじめアジア圏で生産・販売体制を構築して利益を上げていくという経営姿勢を明確に選択している。こうした事例に見られるように、日本の1,200社に及ぶ大企業は、中国をはじめアジア中華圏を主戦場にしないと経営が成り立たなくなっている。
こうしたことから、中国に対する敵対的な行動はさせない、というのが日本国内の主流派の言論になりつつある。私も中国との友好を促進しながら、日本の大企業が、政府間協定で必要な技術を中国に提供することで利益を上げて生き延びている現在の状態を支持している。
ただ、中小企業のオーナー経営者や、大企業の子会社で仕方なく一緒に中国に駐在しなければならないような小規模の企業が、騙されて、ひどい目に遭い、資金や資材を置いて逃げ帰る事態が後を絶たないのも事実である。中国政府は内陸部の開発に重点的に取り組んでいこうとしているが、日本企業もそうしたところにまで進出する気には、中々なれないようだ。
その一方で、建設業界や各プラント業界の技術者が“出稼ぎ労働者”のようにアジア経済圏をはじめ世界中に出向いてプラント建設に着手し、維持・管理する要員として勤務している。日本の大企業は研究開発や非常に高度な技術を要する部品の製造には、国内で生産拠点を保持している。
が、それ以外は中国だけでなく、ベトナムやマレーシア、タイ、インドネシア等の国々で先端的な部品を製造し、利益を国内に還流しないで再投資していく経営姿勢で生き残りを模索している。例えば、トヨタも北米での自動車生産工場に依存せず、状況によっては撤退するほどの覚悟までしているのではないか。
● 政治主導・反官僚を掲げる鳩山内閣の顔ぶれの補足説明
最後に鳩山内閣の顔ぶれについて、以前、指摘していなかった人たちについて補足しておきたい。松井孝治(まついこうじ)官房副長官は、通産官僚出身だけあって経産省の利害を代弁しているところがある。
また、財務省主計局から小沢幹事長のところに送り込まれていたのが、古川元久国家戦略局副大臣である。古川元久副大臣を、大串博志(おおぐしひろし)財務金融委員会委員や、政治家ではないが斎藤日本郵政社長の娘婿である稲垣光隆(いながきみつたか)同省主計局次長が補佐している。
さらに金融行政では、亀井郵政・金融相から、かなり気に入られているのが大塚耕平(おおつかこうへい)金融担当副大臣であり、個人的には、亀井大臣と小沢幹事長との間を取り持っていると見ている。大塚副大臣は、早大政経学部出身で非東大系なので、官僚と敵対させるには好都合であり、また出身である日銀の利害を代弁している。
ちなみに、この古川、大塚両副大臣と稲垣次長の3人は、同学年ではないが、名古屋の旭丘高校出身であり、この高校は愛知県の公立校では最も難関だといわれている。愛知県や名古屋では、この高校に入学するだけで“一目置かれる”という。大塚副大臣が財務省を“柔らかく”脅していく戦略を推進していると思われ、同郷で出身高校が同じ人物が主計局の中核にいるのもそれに役立っているのだろう。
厚労省では事務次官に就任できるのは年金課長の経験者が多いが、それと並んで医政局長も強大な権限を握っている。そこに打撃を与えようとして、篠崎英夫(しのざきひでお)医政局長の後継者とされる、上田博三(うえだひろみ)健康局長を、医師出身の足立信也(あだちしんや)同省政務官が潰そうとして頑張っている。
この医政局長(いせいきょくちょう)は毎年の国家予算のうちの、なんと35兆円もの資金をひとりで動かすといわれている。
医療業務に携わった経験がないにもかかわらず、形式上は事務官とは異なり、医者を意味する「医系技官」である。財務省主計局では“裏切り者”として高橋元東洋大学教授が出現したが、同様にこの部門でもそれに相当する人物として木村盛世(きむらもりよ)医系技官が出現している。
現在では地方の検疫所に左遷されて苦労しているが、それにめげずに“反骨精神”で頑張っている。
また、同省内部には小沢幹事長と盟友である石井一(いしいはじめ)選挙対策委員長と良好な関係にあり、2009年9月7日に虚偽公文書作成、同行使容疑で逮捕された村木厚子(むらきあつこ)元雇用均等・児童家庭局長も、圧力に屈しないで頑張っている。
それ以外に同省の官僚群を潰す担当として鈴木寛(すずきかん)文科副大臣がおり、足立政務官とともに舛添要一前厚労相とつながっている。舛添厚労相はかなり怒っており、現与党の民主党の厚労省担当の政治家と共同歩調をとってもかまわないといった姿勢を見せているようだ。ちなみに、前厚労相は民主党と合流するといった観測もあるが、おそらく、東京都知事選挙の出馬を意識しての行動と思われる。
また、松井孝治(まついたかはる)官房副長官が今、同じ内閣官房で財務省主税局出身の福田進(ふくだすすむ)官房副長官補を更迭するように求めているのが注目される。沖縄駐留米軍の普天間基地移設問題では、社民党から出ている辻元清美国交副大臣が、米国とつながっている外務、防衛両省幹部を更迭させるように要求している。
小沢幹事長直系の政治家たちは、幹事長や国会対策委員会の要職を占めている。幹事長系では輿石東(こしいしあずま)幹事長代行、その下に細野豪志(ほそのごうし)副幹事長がおり、組織委員長や企業団体委員長を兼務している。それ以外の副幹事長には、樋高剛(ひだかたけし)、佐藤公治(さとうこうじ)がおり、この4人で幹事長系人脈が構成されており、各利益団体の陳情を一手に受ける構図となっている。
国会対策委員会は、山岡賢次委員長を中心に、筆頭副委員長に、松木謙公(まつきけんこう)、笠浩史(りゅうひろふみ)、さらに委員長代理に三井辨雄(みついわきお)といった人たちで構成されている。さらに、奥村展三(おくむらてんぞう)総務委員長も石井選対委員長の下についている形なので小沢幹事長直系だ。 (了)
(転載貼り付け終わり)
副島隆彦拝
2010/01/22(Fri) No.01