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マスコミによる世論操作によって世論が一方向に流れるのは、恐ろしいことであるには違いない。しかし、もっと恐ろしいことがある。それは、その世論操作をしているマスコミ、さらにはその操作をさせている者自体が、その世論操作の渦に巻き込まれてしまい、現実を見失ってしまうことだ。世論操作を仕掛ける側にとって世論が自分の意のままに動くのを見るのは快感であり、一種の麻薬である。
しかし、世論操作という麻薬は自らをも蝕む。
この顕著な例は、米国によるイラク攻撃に関わる報道でも見られた。ベトナム戦争の敗北をマスコミのせいとしたペンタゴンは、第一次湾岸戦争以来、記者を自分たちの統制下に置くことにした。いわゆるembedded journalist、従軍記者(一種の記者クラブ制)であり、記者が本国に送る記事は検閲された。第一次湾岸戦争は瞬く間に終わり、この従軍記者体制は大成功を収めた。しかし、イラクは別だった。
長期化して、ネットを通じて現地米軍兵士から本国の家族にイラクの現実が伝えられ、イラク国民の生の情報も世界に発信された。伝えられることは、米国民が普段目にしていたマスコミの報道とはほど遠い内容だった。そのうち、マスコミ報道そのものを喋り続けていたと思えるブッシュは、現実を見ていない、現実遊離と揶揄され、支持率が急落した。本人自体も、「自分でも何が起きているのか分からない」と言うところまできた。
金融資本からの献金とかいろいろ言われるにしても、一昨年の大統領選でクリントンさんではなく、オバマさんが民主党候補、また大統領に選出された理由が、イラクに対する姿勢、政策の違いにあったと見ていいだろう。また、2007年、2008年と米国の景気は急速に陰りはじめ、米国民の関心はイラクから経済に大きくシフトしていた。
この世論操作の麻薬現象は、日本でも、昨年の衆議院選挙前に起きた。いわゆる民主党小沢氏の大久保秘書逮捕に絡む一連の報道、にもかかわらずの選挙での自公の没落、民主党の大勝利である。世論操作を仕掛けた側は、世論調査を含めて、あれだけ小沢バッシング報道を繰り返したのだから、ある程度の手応えを感じていたに違いない。しかし、結果は惨憺たるものだった。
世論操作する側は、何を見誤ったのだろうか。
米国とはパターンは違うが、日本もまた国民の最大の関心は、日本の経済、自分たちの生活に大きくシフトしていた。「食と住」。そこに困難が生じれば、政治資金規正法違反などどれほどの問題だろうか。しかし、世論操作する側にとっての最大の関心は、自分たちの世論操作の行方であり、国民の最大の関心がどこにあるかではなかった。
検察・マスコミなどの世論操作する側は再び同じ過ちを犯そうとしている。国民の税金のおかげで自分たちが安全地帯にいるために、一般の国民が直面している現実、「食と住」の問題を前にして一般の国民が感じること、思うことに頭がいかない。もっぱら関心は世論操作の行方であり、自分たち自身がその世論操作に蝕まれている。日本の現状にあっては、政治資金規正法違反などということがいかにちっぽけな問題であるかを認識できない。というよりは、彼らのレーダー、視野の中に入ってこない。
マスコミによる世論操作は、仕掛けた側の頭をも蝕む「麻薬」であり、戦前の軍部の暴走もこうであったのだろうことを伺わせる。現政権がやろうとしているメディアの「クロスオーナーシップの禁止」は、この「麻薬」を断つ有効な手立てかもしれない。
新聞・テレビの猛反発は必至 総務相「新聞社の放送支配禁止」表明
http://www.j-cast.com/2010/01/15058061.html
メディアが変われば日本も変わる?!
http://www.videonews.com/on-demand/0141141150/000547.php
湘南の片田舎から
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