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2010年1月16日
愛川欽也パックインジャーナル
http://asahi-newstar.com/web/01_packin_journal/?cat=18
<コメンテーター>
山田厚史(朝日新聞シニアライター)
石川 好(作家)
川村晃司(テレビ朝日コメンテーター)
下村満子(ジャーナリスト)
横尾和博(社会評論家)
※第1項目 コーナーゲスト
郷原信郎(名城大学コンプライアンス研究センター長、元東京地検特捜部)
(一部記述)
検察対小沢 元地検郷原さんに聞く
愛川)ちょうど打ち合わせのあと、石川さんが逮捕されて、先ほど大久保さんも逮捕された、というニュースがはいってきた。
昭和11年当時の特高警察というのは、とりあえず捕まえといて後で容疑は作れるんだと。敗戦があったので、私の恩師はでてこれた。
一体、小沢さんは何が問題なのかわからない。
検察はリークはしないんですよね?
郷原)検察がリークしているかどうかというよりも、報じられている中身がどうかということを吟味していかなくてはいけない。
愛川)4億円は記載されていたというのは、どういうことなのか説明してください。
郷原)陸山会が世田谷の土地を取得した。それが収支報告書には、2005年1月に取得したことになっているけれども2004年10月に既に土地の代金が支払われ取得されていた。2004年であるのに2005年と嘘の記載が行われていた、ということがまず問題になった。その2004年に取得した時の原資はどうなっているのか、というのが問題だといわれていた。私は、最初2004年の収支報告書には記載されず、2005年に記載されているのだろうと思った。
その報道の後、石川さんの供述で小沢さんから4億円の現金がでていた、という話になり、これが収支報告書に記載されていないという「不記載疑惑」というのが大きく取り上げられるようになった。私は、その小沢さんからの4億円が記載されていないことが、政治資金規制法に違反とされているのだと思っていた。ところが、2004年の収支報告書には、小沢一郎からの4億円が記載されていた。
では、一体何が問題になっているのか、司法記者クラブの人たちに聞いてみた。わかりにくかったんだけども、銀行からの借入4億円が記載されているんだけれども、小沢さんから入ってきた4億円が不記載だ、という説明であった。それは、そういう見方も可能かもしれないけど、すぐにわかる話ではなく、捜査機関の方から話を聞かされないとわからない話だ。そんなことを当然のごとく、4億円は不記載だ、と新聞に書かれていることは、検察からの情報がでているのではないか、ということを問題にしようとしていた。ある編集委員の方が、顔色を伺って確認するといわれるから、いや、今回のケースはそうともいえないんじゃないですか、という例として4億円を指摘した。
そうしたら、そこにいる人たちは、そもそも2004年の収支報告書に記載されていることを知らないでコメントをされていた、ということがわかって私は驚いた。
問題は、検察が説明しているように、4億円の借入金は銀行からであって、小沢一郎さんからの現金の借入金ではないといえるのかどうか。ここでよく考えてみなければいけないのは、この土地は、陸山会の実質所有の土地ということで、収支報告書に記載されている。しかし、登記上の所有名義は、小沢一郎さんである。なぜなら、陸山会は法人格がないので、登記ができない。だから、小沢一郎所有名義だけども、実質は陸山会の保有する土地ということで、収支報告書に記載されている。小沢こと陸山会所有ということです。
一方で、銀行からの借入金も、陸山会が直接借りているわけではなくて、小沢さんの名義で陸山会が借りている、と考えるのが自然だ。そうだとすると、借入金の相手先は、銀行にならないとおかしい。一方、小沢さんから現金ではいっていたのであれば、借入先は小沢一郎なる。
山田)小沢さんからの4億円というのは、2004年に実行されているわけですよね。
郷原)そうです。おそらく、銀行からの借入によってこの土地を買うという手続きが進められていたんだと思います。
山田)いってみれば小沢さんはつなぎ資金を提供したということですね。
郷原)そうです。
山田)よくありますよね。銀行からのローンの結論が下りるのは先だから、それまでは親戚から借りようか、というようなことをやったということですよね。
郷原)その際、小沢さんのほうから4億円が出たという事実があれば、収支報告書には、まずこれ(借入先小沢一郎)を記載しますよね。
ただ、こっち(借入先銀行)の方は、4億円と4億円がダブって土地の代金に充てたわけでなく、つなぎ資金だから、最初に収支報告書には、これ(借入先小沢一郎)が記載されるべきで、それが次第にこちら(借入先銀行)の4億円に振り変わっていった。同じ4億円のウエイトが、小沢さん個人が現金で出したものが、次第に金融機関からの借入に振り変わっていったと考えるべきである。
山田)世の中によくありますよね。つなぎ資金として、その土地を買ったときに、小沢さんが、金を出したということですよね。難しい話じゃない。
郷原)ええ。そうだとすると、2004年収支報告書の「小沢一郎4億円借入金」の意味は、どう考えても、こちら(借入先小沢一郎)なんです。
ですから、書いてあるんです。2004年の収支報告書に記載がない、不記載だというのはおかしいんです。
新聞記者が言っていたのは、(検察が)金融機関からの借入が土地購入の原資になっていたと説明していて、それを根拠としていた。それは、この現金(借入先小沢一郎)の話がでてなかったからだ。土地購入の原資は、こちら(借入先銀行)だという筋立てで捜査をしていた。それで現金借入(借入先小沢一郎)が出てきた分、これが不記載だと検察が考えて、それをマスコミが前提として報じていたけれども、よく考えてみると何の根拠もない。
愛川)ちょっと待ってください。新聞の記事を改めて読んでみると、石川議員を捕まえて、「東京地検、4億円不記載の疑い」って出でる。これはどう説明すればいいんですか。
郷原)昨日の逮捕事実を、私も今朝初めて知ったんですが、ずっと言われていた4億円不記載(「不記載」というのは収支報告書に記載しなかったという犯罪)かと思っていたら、そうではないんです。これ(借入先小沢一郎)ではなくて、これ(借入先銀行)と合わせて、トータルの金額が、形式的には入金があったと考えて、8億円になりますよね。8億円て書かなければいけないのに、4億円しかか書かなかったから、トータルと4億円違っていますと、そういう話になってしまった。
私が、サンデープロジェクトでも言ったし、日経ビジネスオンラインにも書きましたから、その後「まずい」と思ったのかもしれないです。このままでは、持たない。
愛川)持たない、というのは、これ(4億円不記載)を進めていったんでは、地検は持たないよと、無理だよと。
郷原)無理だと。それで、トータルの金額だけを問題としたということではないかと思う。
ところが、新聞は未だに4億円不記載にこだわっている。
下村)8億円というと、土地代が8億円だったわけではないですから合わないですよね。今の説明の、とりあえず立て替えて、銀行からお金が下りたら、ということですと合わないです。
郷原)ただ、恐らく8億円の根拠としてあるとすれば、定期預金が担保に入っている。これが4億円別にある。だから、土地だけでなくて、定期預金も資産としてあるから、トータルで8億円に見合う収入が、4足す4なのかもしれない。
しかし、この定期預金は担保なんですよ、あくまで銀行からの借入に担保として提供したものですから、別にお金を使ったという話でないし、土地を買ったっていう話ではない。定期預金の名義が陸山会になっているということが、誤解を招いたのかもしれない。
いずれにしても、この8億円のお金の流れを、収支報告書に記載しないといけないのに書かなかったという事実だけでは、一体何が悪いのか、何が犯罪なのか、さっぱりわからない。