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2010年01月14日(木)
小沢抹殺を狙う検察官僚の荒々しき国家権力
テーマ:政治
昨日、小沢一郎関連の事務所などに突然のガサ入れをした東京地検特捜部。その指揮にあたるのが特捜部長、佐久間達哉氏である。
「一罰百戒」。検察としてこの言葉をどう解釈すべきか。佐久間氏と同期の元長崎地検次席検事、郷原信郎氏はかつて、このことについて議論したことがあるという。
郷原氏は「一罰」について、悪質性の高いものでなければならないと主張した。検察が悪質性の高い罪を犯した一人を罰することによって、「百戒」、すなわちその他大勢の戒めにできるという考えだ。
これに対し、佐久間氏はこう反論したそうだ。「一罰」は何でもよい、悪質であるかないかにかかわらず、何でもひとつ罰すれば、「百戒」につながる、と。
これを聞いたとき、筆者の思考回路は、不覚にも戦前の日本陸軍内の路線対立に短絡してしまった。
いわゆる「皇道派」と「統制派」の二つの派閥に分かれた軍事官僚たち。
政治の腐敗を批判し、軍の力で国家改造をめざしたのはどちらも同じだったが、組織を重視する統制派に対し、皇軍、皇国を唱える荒木貞夫大将を信奉する皇道派の青年将校が反発し、ついに行動を起こした。斎藤実内大臣、高橋是清大蔵大臣ら三人が殺害された昭和10年の「2.26事件」である。
軍部の暴力的な政治干渉は、それより前、昭和7年の「血盟団事件」や「5.15事件」で顕在化する。
5.15事件では、首相官邸に乗り込んで不正献金を指摘する陸海軍の士官たちに、犬養首相が「話せばわかるじゃないか」と言ったとたん、「問答無用」と射殺された。
この事件で、犬養の政友会はぶっ潰され、結果として戦前の政党政治は息の根を止められた。それが、軍部の大暴走につながっていく。
こうした動きの背景にあったのは、昭和6年の満州事変以来、軍部と癒着して、部数拡張を続けた新聞社の戦争賛美報道だった。
軍部は機密費で新聞社幹部を接待し、紙面の大応援により大衆を煽って戦時体制を作り上げた。
いささか話が脱線しすぎたようだ。以上は、筆者の頭のなかで勝手に働いた連想に過ぎない。
さて、問題は現在進行形の事態をどうとらえるかである。
昨夜の報道ステーションで、朝日新聞の星浩氏が確かこのような趣旨の発言をしたと思う。
「小沢さんの定例会見を見てカチンときたんじゃないですかね」
カチンときて、強制捜査におよんだというのである。言葉のアヤといえばそれまでだが、検事たちの気分で「やってしまえ」となったとしたら恐ろしいことだし、それを言っているジャーナリストがそのことに疑問を感じないのも不思議だ。
自衛隊に昔の軍部のようなマネができるわけがないとしたら、政治家を失脚させうる力を行使できるのは、強制捜査という国家権力を握る検察組織であろう。
「自分たちこそ正義」と考え、独善性に陥りやすい集団であることも、田中森一らヤメ検弁護士の証言からわかる
記者クラブという仕組みのなかで、官僚からの情報にもっぱら依存して記事を書いてきた大マスコミの記者は、官僚に操作されている自分を顧みる余裕がない。
いかに他社に先駆けて、行政官庁や捜査当局からの情報を紙面や電波に流すかという競争を日々やっている。
国にとって何が大切か、公益とは何か。そんなことに考えが及ぶヒマがないほどに、締め切り時間は次から次へと迫ってくる。
情報提供者であるお上の言うことやることに何ら疑問を持たない一方で、口が堅くて無愛想な政治家叩きにはことのほか熱心である。お上、すなわち行政組織のやり方に鈍感かつ寛容なのは、星氏だけではないということだ。
いつも通り、カメラを待機させるなか、肩をいからせて繰り広げた今回の捜索劇。国民が「変革」を期待して誕生させた新政権の、与党幹事長周辺に対する捜査のあり方としては少々、荒っぽい印象を受けるのだが、いまのところ大メディアからは疑念の声が上がっている様子はない。
この7月に迫った参院選。自民党、公明党が大勝すれば、衆参ねじれが再び起こり、政治的混迷が深まって、民主党を追い込むことができる。自民党復権は、官僚組織の歓迎するところだろう。
宮内庁長官、駐米大使ら、官僚の“反乱”が目立ちはじめた。検察も、7月の参院選との時間的距離感からみて、「今しかない」と荒々しく立ち上がったのかもしれない。
小沢幹事長はこれに徹底抗戦するのか、白旗をあげるのか。4億円の原資にやましいところがないのなら、一刻も早く検察にしかるべき資料を提出して疑惑を晴らし、党務に専念してもらいたい。