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http://tanakanews.com/100112flu.htm
インフルエンザ騒動の誇張疑惑
2010年1月12日 田中 宇
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昨年末12月31日、欧州議会(EUの議会)の保健衛生委員会(Health Committee)は、昨年夏から豚インフルエンザが流行した際、欧米の製薬会社が、ワクチンや関連医薬品の売り上げを伸ばすため、国連のWHO(世界保健機構)や国際医学界などに影響力を行使し、インフルエンザに対する危機感を世界的に扇動した疑いがあるとして、調査を開始することを全会一致で決議した。(EU To Investigate WHO 'False Pandemic' Scandal)
特に同委員会は、WHOが昨年6月に豚インフルエンザに対する警戒度を最高まで高めて「2つ以上の地域の国々で大規模な感染」を意味する「パンデミック(世界的感染症)」(6段階の危険度の最高位の「6」)を宣言したことが、不必要に高い警戒度だったと考えており、製薬会社がワクチンや医薬品を売るために影響力を行使した結果ではないかと疑っている。同委員会の委員長(Wolfgang Wodarg。ドイツ議員)は医師だが、この問題について「医薬業界における今世紀最大のスキャンダルの一つだ」と述べている。(European Parliament to Investigate WHO and "Pandemic" Scandal)(WHO declares first 21st century Swine flu pandemic)
スウェーデンの新聞が昨年末に報じたところによると、WHOの顧問団をしている専門家組織(SAGE)は、グラクソ(GlaxoSmithKline)、ロシュ、ノバルティスといった、欧米の製薬会社から資金を供給されている専門家たちで構成されている。欧米の製薬業界は、豚インフルエンザ騒動で40億ドル儲けたとされている。(Experter samarbetar med industrin)
オランダでは、同国エラスムス大学の教授でWHOとEUの顧問委員会の主要メンバーである保健衛生の専門家アルバート・オスターハウス(Albert Osterhaus)が、複数の製薬会社から裏金として資金援助を受け、その金を隠匿・脱税していた疑いで、オランダ議会の委員会などが調査をしている。報道によると、オスターハウスは「豚インフルエンザのローマ法王」(Swine Flu Pope)とあだ名される最高権威者で「鳥インフルエンザは人に感染する」と主張して煽り、ロシュに1億ドルを儲けさせた前歴もある。(WHO `Swine Flu Pope' under investigation for gross conflict of interest)
オスターハウスは、WHOの顧問として力を持っており、彼や製薬会社から金をもらっている他の顧問群が集団で影響力を行使し、昨年6月のWHOの誇大なパンデミック宣言につながったと、オランダ議会で疑われている。オランダでは、昨年7月に「全世界の人に2発ずつインフルエンザの接種が必要」という報告書を書いたフレデリック・ハイデン(Frederick Hayden)というWHO顧問の専門家も、ロシュ、スミスクライン、グラクソから裏金をもらった疑いで捜査されている。オランダのこの件が、EU全体の決議に拡大した。(Swine Flu Gate: Is Virologist Albert Osterhaus the Ringleader?)
▼風邪と戦争を混同する
豚インフルエンザの騒動は、昨年4月にメキシコから世界に感染が拡大したと騒がれたが、大した被害をもたらさず沈静化し、その後7月ごろから「秋から冬にかけて、再び豚インフルエンザが世界的に猛威を振るう」という危機感の扇動が、各国政府やマスコミによって再び流布された。米英などでは全国民への強制的なワクチン接種が検討された。(インフルエンザ強制予防接種の恐怖)(Swine flu vaccine to be given to entire population)
しかし結局、例年インフルエンザが拡大する秋から冬にかけても、今年度のインフルエンザは例年よりも大したことのない被害しか世界にもたらしていない。米ハーバード大学と英政府系研究所が12月にまとめた調査によると、昨春以来の豚インフルエンザの流行は、最悪の見積もりでも「例年よりわずかにひどい程度」である。米国の研究者は米ABCテレビの取材に対し「豚インフルエンザは大した病気ではないのに、先に不必要な恐怖感が煽られた結果、各国の政府や人々が過大な対策をとってしまった」と述べている。(Has Swine Flu Been Oversold?)
日本でも、03年にSARSの発生時に大騒ぎしたが結局大したことがなかった関西地方では、私が昨秋に訪問したときに大阪の人から「関西の人はSARSの空騒ぎの後、感染問題が過剰に騒がれる傾向を感じ、豚インフルエンザがいくら騒がれても、東京の人のようにみんなマスクをして怖がる状態にならない」と聞いた。東京の人は、私自身を含め、大半の先祖が根暗で真面目で押しが弱い東北人(蝦夷)の系統なので、大陸系の知能犯的な気風がある関西の人よりプロパガンダを信じやすいのかもしれない。
専門家の中には、今春に豚インフルエンザが流行し始めた最初から「豚インフルエンザは季節性の毎年のインフルエンザより症状が軽い」と指摘していた人もかなりいた。だが、結果的に正しいとわかったそれらの指摘は無視され、WHOや米英などの政府が発表する「豚インフルエンザは変異して猛威を振るうだろう」「スペイン風邪のような、世界で何千万人もが死ぬような事態になる」といった誇張が「真実」とされてマスコミ報道された。(Scientists see this swine flu strain as relatively mild)(WHO: Swine flu virus may face deadly mutation)
今回のEUやオランダの議会による調査に象徴されるように、欧州は、インフルエンザ騒動が仕組まれた誇張によるものだと疑う健全性を持っているが、米国は違う。米国において製薬業界は、航空産業やマスコミと同様、軍産複合体系の産業である。製薬会社の中に生物化学兵器の開発を手がけているところがある関係かもしれない。イラクやベトナムなどの戦場に派兵された米英兵士に戦場の混乱に紛れて開発中の新薬を本人をだまして投与し、本国の病院でやれないリスクの高い臨床試験(人体実験)を行った疑いが持たれているが、そういったこととの関係かもしれない。(豚インフルエンザの戦時体制)
米国では、インフルエンザ対策の官庁に、テロ対策担当として911後に作られた国土安全保障省が含まれている。911テロ事件の対策として「犯罪捜査」と「戦争」が混同され、軍産複合体の権限が拡大したのと同様、インフルエンザの大流行によって社会不安が起こるという理屈で、風邪予防と戦争が混同されている。米国では「不景気になると失業者が暴動を起こす」という理屈から、不景気も戦争(国内反乱鎮圧)と混同されている。(Homeland Secretary Napolitano predicts severe swine flu epidemic for fall)
欧州では昨年、副作用を恐れてインフルエンザのワクチン接種をしない人が多かったが、ドイツでは、政府要人と軍人に対し、添加物(補剤 adjuvant)が入っていないバクスター製のワクチンが優先配布されて、その他の一般市民には添加物が入っているグラクソ製が配布されていることが報じられ、問題になった(この添加物の存在については以前の記事に書いた)。(Europeans Reject Swine FLU Vaccine)(インフルエンザ強制予防接種の恐怖)
▼悪用されたピアレビュー
国際的なインフルエンザ騒動が、製薬業界による金儲けのための誇張策の結果かもしれないという疑惑は、以前に書いた「クライメートゲート」の地球温暖化の誇張疑惑と本質的に同種である。インフルエンザ誇張疑惑は、WHOという国連機関の方針決定を左右できた学者たちが、学界での権威を乱用して誇張を行い、国際的なマスコミ界がそれを増幅した疑惑である。温暖化誇張疑惑は、IPCCという国連機関の方針決定を左右できた学者たちが、学界での権威を乱用して誇張を行い、国際マスコミ界がそれを増幅した疑惑だ。(地球温暖化めぐる歪曲と暗闘(1))
いずれの騒動でも、英米中心主義や軍産複合体の影響下で行われている。温暖化問題を最も誇張してきたのは英国だし、マスコミは軍産複合体の一部である。英米中心主義の傘下にある日本では、温暖化問題もインフルエンザ騒動も、いまだにマスコミによる誇張が続き、誇張疑惑はほとんど報じられず、多くの国民が軽信状態に置かれている。
いずれの問題にも「専門家しか語る資格がない」という社会的な縛りがかけられている。専門家(学者)の業界には「ピアレビュー」という国際的な制度がある。新たな主張を載せた論文を書いたら、同分野や近隣分野の世界の学者たちに論文を読んでもらって学術的な間違いがないかどうか確かめ、その上ではじめて正当な主張と認められる制度で、もともとは間違った主張が横行しないようにする良い制度だった。温暖化問題ではそれが悪用された。("Climategate": Peer-Review System Was Hijacked By Warming Alarmists)
英米の権威ある学者たちが、地球温暖化に懐疑的な学者の論文が出てくるとピアレビューで難癖をつけ、その学者の権威を落とす策を続け、温暖化懐疑論を封じ込めてきた。懐疑論を封じ込めるため、専門誌の編集者や、専門誌に併設されているピアレビューのための学者の編集評議会に圧力をかけることも行われていた。(Subject: Re: Fwd: Soon & Baliunas)
学界の多くは、上の世代の権威ある学者たちが、下の世代の学者たちの出世を決める。地球温暖化は、最初に問題にされてから20年近くたつが、これだけの期間があれば、下の世代の学者たちの中から懐疑論者を冷遇して追い出し、国際的な気候学界の論調全体を変えることを何世代か繰り返し、学界を「純化」できる。マスコミは温暖化問題を誇張する学者を重用し、名声欲や上昇志向の強い学者ほど誇張を言うようになる。状況に不満な学者たちも、権威筋から攻撃されたくないので、懐疑論を唱えることを避ける傾向が強まる。頑張って懐疑論を唱え続けても、マスコミは報じないので人々に伝わらず、本人に対する冷遇が強まるだけだ。
教授など大学の専任教員は、いったん就任したらよっぽど問題がない限り定年まで辞職に追い込まれないので、いったん作られた学界の歪曲体質は、簡単には壊れない。クライメートゲートによって、米国のマイケル・マンや、英国CRUの上層部など「首謀者」とされる人々は追放されるだろうが、その他の「加担者」たちは黙るだけで職位を維持できる。
こうした学界の状況の上に「専門家(学者)しか語る資格がない」という社会的縛りが作られる。「ピアレビューされた論文に書いてある主張以外は、無知な素人か勝手に言っているだけだから意味がない」という「常識」が作られる。クライメートゲートが暴露された後、FOXニュースのライブのテレビ番組のキャスターが、温暖化対策推進の著名な運動と討論し、キャスターが懐疑論を展開したのに対し、運動家が「お前は専門家じゃないんだから黙れ」と叫び続けたのが象徴的だった。(TV Environmentalist Goes Nuts Over ClimateGate)
▼近現代を象徴する諸分野での情報操作
ピアレビューと専門家のみに発言権を与えるやり方で情報操作が行われるときがあるのは、金融、財政、経済、外交、安全保障、軍事、歴史解釈、環境など、広範な分野だ。いずれも近現代を象徴する分野だ。近現代は情報操作の時代でもある。日本の記者クラブ制度もピアレビューの一種だ。911テロ事件の後には、諜報機関や公安のOBが「テロ専門家」としてマスコミに登場し、実は有名無実の「アルカイダ」が、いかに恐ろしい敵であるかを解説していた。イラク戦争の前後には「軍事専門家以外は、イラクについて語るな」という風潮が米国や日本などにあり、専門家は「米軍侵攻はイラク人を幸せにする」と解説していた(今でも「イラクは失敗じゃなかった」と言っている専門家もいる)。リーマンショックの直前まで(人によっては今も)、金融専門家たちは永遠の右肩上がりを予測していた。
現代の世界が情報操作と不可分である以上「騙される方が悪い」とも言える。温暖化やインフルエンザについて、私が記事を書くたびに、読者から「科学と政治を混同するな」「NHKや大手新聞が報じる事実を認めないのか」といったメールをよくいただいた。政策が関係する場合、科学は不可避に政治と重なる。それがわからない「科学信奉者」は、騙され続けるしかない。新聞の無誤謬を疑わない「ジャーナリズム信奉者」(さすがに最近は減った)も同様だ。
学界やマスコミの歪曲状況による長期的な弊害は「おおかみ少年」の状態である。地球の気候は以前から大きく変動し続けており、人為排出の二酸化炭素と無関係に、今後も温暖化や寒冷化が起こりうるが、その時に世の中の気候学に対する信頼性が低下していると、気候学者たちが歪曲なしに「もうすぐひどい寒冷化(温暖化)が起こりそうだ」と叫んでも、世の中の人々は「また羊飼いの少年がウソを言っている」としか思わず、対策が遅れる。本当にひどいインフルエンザが流行しそうなときや、本当に大規模テロが起きそうなときも同様だ。WHOは最近「まだ豚インフルエンザが変異して大流行しうる」と発表した。これも誇張だと疑われるものの、確定はできない。現代人は、不確実な状況を厭わず、気楽な軽信状態に安住せずに生きていく必要がある。(Swine flu virus 'could still mutate' WHO warns)
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(新世紀人コメント)
欧州(EU)が米国と同一歩調で歩まない事に注目すべきだろう。
米国の場合は国内の危機対策として”この意図的騒ぎ”が選択されていると考えられる。
私の周りでもマスクをしている人は少なく、消毒用のアルコールが備え付けられている場所においても使ってる人は少ない。
日本ではワクチンは使われなかって余るものが出るかもしれない。
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