振り込め詐欺の検挙率急上昇、昨年の19%から78%にGoogle Cache 全国の振り込め詐欺の検挙率が、今年1〜11月は78%となり、昨年同期の19%から大きく上昇した。犯行に使われる銀行口座や携帯電話を調達する「道具屋」と呼ばれる人物の摘発を強化するなどした結果、被害が大幅に減り、犯行グループの割り出しにもつながって検挙件数が増えたためだ。一方で、一般市民が道具屋として安易に加担する実態も浮かび上がっている。 検挙率は、一定の期間を設定し、犯罪の検挙件数を犯罪認知件数(被害件数)で割った数値。摘発の進み具合を示す目安になる。 警察庁によると、11月末時点の2009年の振り込め詐欺の認知件数は6776件、検挙件数は5347件。08年同期はそれぞれ1万9419件、3804件。被害額は88億円で、08年の263億円から激減した。 口座、携帯「道具屋」重点摘発 同庁は今年4月、振り込め詐欺を手助けする道具屋の摘発を進めるよう各都道府県警に通知。他人に譲り渡す目的で金融機関に口座を作り、通帳をだまし取る「口座詐欺」の検挙数は11月末で3589件となり、過去5年で最多となった。 暴力団関係者が組織的に行う場合もあるが、女子高生や主婦、高齢者らが道具屋になるケースも。犯行グループと通じた貸金業者から「借金の担保として口座を作れ」と指示されたり、口座売買を持ちかけるインターネットの「闇サイト」を利用したりし、口座は数万円で売買されるという。 京都府警では、1〜11月に道具屋108人を逮捕したり、書類送検したりした。中には生活費目的の主婦(32)や、金に困っていた派遣社員(37)もいた。「小遣い稼ぎをしたかった」と供述するなど、安易に手を染める傾向があるという。 兵庫県警明石署は今年8月、振り込め詐欺に使うための口座の通帳作りを拒んだ大学生から金を脅し取ろうとしたとして、関西大野球部員(当時)の男(22)を恐喝未遂容疑で逮捕。「数人に通帳を作らせ、知人に渡した」などと供述し、同署は9月、別の元部員(22)を詐欺容疑で逮捕した。 道具屋を摘発すれば、供述や通帳の送達先などが犯行グループ摘発の手がかりになる。京都や東京、北海道などでは、過去の事件も含めて摘発が進み、検挙件数が同じ期間の認知件数を上回って、11月末時点の検挙率が100%を超えた。 同庁によると、検挙率上昇の要因はほかに、現金自動預け払い機(ATM)での一斉警戒や、犯人の携帯電話に警察官が直接電話して出頭を促す「電話作戦」なども挙げられるという。 振り込め詐欺に関する著書がある西田公昭・静岡県立大准教授(社会心理学)の話「検挙率の低さが『振り込め詐欺はおいしい犯罪』と犯行グループに思わせていたので、望ましい結果だ。一般市民が道具屋になるのは、他人が被害に遭うことに対する想像力の欠如や、不況の影響で目先の利益に走るからではないか」 (2009年12月31日 読売新聞) |