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2010年1月 7日 (木)
透明で正当な処理が求められる日本航空問題
日本航空の経営再建問題が決着せずに現在に至っている。日本航空は日本を代表する航空会社でいわゆるナショナルフラッグキャリアと呼ばれる企業である。運輸ビジネスの停止に追い込まれないための対応は必要であるが、民間企業である以上、経営の失敗の責任は適正に問われなければならない。
本ブログでは昨年10月23日に
「真価を問われる前原誠司国土交通大臣」
11月25日に
「政官業癒着を断つべき日本航空経営危機の処理」
の記事を記述した。
日本政策投資銀行が日本航空の資金繰り融資に応じているが、日本政策投資銀行は公的金融機関であり、国民資金が投入されていることを意味する。
日本航空はすでに実質債務超過状態にあり、通常の企業であれば破たん処理に移行している状況にあると判断される。これまでの記事にも記述してきたように、自由主義経済の基本ルールは、自由な経済活動を認める代わりに、結果に対する責任を自己が負うというものである。
この基本ルールを排除するには、正当な理由が必要である。政治との結びつきが強いという理由だけで、市場経済のルールに反して政府が一民間企業だけを優遇して救済することは容認されない。
正当な理由とは、当該企業を救済しなければ国民が大きな被害を蒙る場合に、その国民被害を回避するために救済策を講じるというものである。
代表的な事例が大規模な金融機関の破たんを回避する施策である。大規模な金融機関が破たんする場合、この破たんが引き金となって破たんの連鎖が生じる恐れが高いときに、例外的に金融機関の救済策が採られることが検討されることがある。
だが、この場合に発生する重大な問題がある。これを「モラル・ハザード」と呼ぶ。責任ある当事者の責任が問われなければ、無責任な経営が助長されてしまうからである。したがって、金融機関を救済する場合にも、責任ある当事者の責任を厳しく追及することが不可欠とされている。
金融恐慌が発生するといった国民全体に重大な被害が生じるような特別のケースを除いて、政府による個別企業救済は行うべきでないというのが、市場経済の基本ルールである。法的整理を実行して企業再建を進めることにより、責任は明確化され、企業再建は透明に行われることになる。
企業経営の失敗の責任を負う第一の存在は、経営者と出資者である。株主の責任を問うことが企業経営失敗の基本になる。
海外での航空事業を継続して中断させないためには、一定の運転資金が必要である。航空運輸事業を中断せずに企業再建を進めるために、さまざまな対応が求められるが、これらの体制を万全に敷いた上で法的整理を適用するなら、国民に大きな被害は発生しない。
国土交通省は天下り先を含めた傘下の産業が日本航空の大株主であることなどの事情から日本航空の法的整理に反対する意向を示していると伝えられているが、行政機構の基本姿勢として本末転倒と言うしかない。
政権交代が実現し、これまでの「政官業癒着の構造」を破壊して、「主権者である国民の幸福を追求する政府」を樹立しようとするなら、癒着の構造に基づく問題解決を図る姿勢は根本的な矛盾である。
前原誠司国交相の指揮が注目されるが、癒着の構造を基礎に据えた問題処理を図るなら、政権交代の意義が完全に失われることになる。
株式市場は政府の問題処理に強い関心を示しているが、りそな銀行の事例にみられるように、政策動向が重大なインサイダー情報になる点を十分に踏まえる必要もある。
前原国交相は、早急に透明で正当性のある問題処理策を示す必要がある。日本航空の処理に際して、これまでの自民党政治と同様の政官業癒着構造を引きずるなら、鳩山政権に対する失望が一気に広がることになるだろう。
国民の幸福を第一に位置付ける透明で正当な問題処理を早期に実現することが強く求められる。