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http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/091230/plc0912300235004-n1.htm
「スリック・ウィリー(つかみどころのないウィリー)」とはビル・クリントン元米大統領、「トリッキー・ディック(狡猾(こうかつ)なディック)」はリチャード・ニクソン元大統領のニックネームだ。政敵や米メディアが命名し、いつしか庶民に広まった。
俗語辞典などによれば、前者はあいまいな言葉で相手を丸めこんだり、言を左右に責任逃れをするずるさからこの名がついた。後者は政治にトリックを多用するのでそう呼ばれたそうだ。
クリントン氏は、アーカンソー州知事時代の土地転売疑惑や女性関係をめぐる疑惑などが政界で問題化し、大統領弾劾裁判に持ち込まれた。得意の弁舌や言い逃れを駆使して、弾劾裁判では無罪放免を勝ち取っている。
ニクソン氏はその昔、上院選を戦った際のエピソードが伝わっている。相手の女性候補が左翼系だったため、「彼女は下着まですべて赤い」と品性を疑われるスレスレの個人攻撃を展開した。このため相手陣営から「陰険でずるいディック」と反撃を食らい、それが定着したという。最後はウォーターゲート事件で史上初の大統領辞任に追い込まれた。
本人たちにはうれしくない愛称だろうが、それなりに両氏の性格や政治スタイルを言い当てているような気がするから不思議だ。
それでも、2人とも言葉が政治指導者の重要なツールであることは熟知していたに違いない。時には言葉を弄(ろう)して批判を浴びたものの、そこは政治家だ。時代と世界の流れには敏感で、外交・安全保障や経済面でアメリカの国益を見失うことはまずなかった。
ニクソン氏は冷戦さなかに「チャイナカード」を切って歴史的な米中接近の道を開き、ソ連の孤立化に成功した。クリントン氏も、旧ユーゴスラビア内戦やコソボ空爆では大筋で妥当な判断を下している。欧州から「ひとり勝ちの経済」などと揶揄(やゆ)されながらも、8年間の任期中は米経済の繁栄と優位を守り抜いた。
鳩山由紀夫首相も、言葉の軽さや迷走発言を批判されている。だが、クリントン氏やニクソン氏の言動と比べて、大きな違いはこの点にあると思う。
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)移設問題では、日米首脳会談でオバマ大統領の信頼を裏切った発言が何度も報じられた。コペンハーゲンでクリントン国務長官と交わした会話についても、事後に駐米大使がその内容に事実上訂正を求められるという前代未聞の外交ハプニングに発展した。
普天間をめぐる迷走について、首相は正月用ラジオ番組で「ぶら下がり取材などで『多少サービスするか』みたいな発想になったのが拡大されてしまった。反省している」などと語ったそうだ。これには正直いってあきれた。
国家の安全をかけた判断とメディアへの「サービス」とでは重要度も優先順位もまるで違うはずだが、その弁別すらないのだ。ことによると、オバマ氏やクリントン氏らにも「サービスのつもり」で発言してきたのだろうか。
政府のトップが最も重要な同盟国の大統領や国務長官の信頼を相次いで失っては、日米関係に与える損失は深刻だ。次に会うとき、首相はどんな顔と言葉で相手と向かい合うつもりなのだろう。
言葉の軽さだけなら、いずれはジョークですむかもしれない。だが発言のたびに大切な国益を棄損する指導者では、とても笑う気にならない。