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生存権を求めることが罪になる国、日本。
生活保護申請の現場でとんでもないことが起こっています。
まず、背景のおさらいから。前ジミントー政権下で、「水際作戦」という名のもとに生活保護申請をできるだけさせないようにする方針が強化され、定着した観があります。制度はあっても使えない状態です。結局、生活保護を本来受給できる人のうち現に利用している人の比率、いわゆる生活保護の捕捉率を国際比較すると日本がダントツに低いと推定されるということも言われています。たとえば、愛媛大学の湯浅先生の説明するこちら。
http://www.yuasa.cpm.ehime-u.ac.jp/pp/lecture2/no1.doc
最低生活費未満の世帯のうち、実際に公的な生活保護を受給している割合は捕捉率と呼ばれている。捕捉率の推定結果をみると、95年が19.7%、98年が 16.3%、01年が16.3%であり、非常に低い数字にとどまっている。これは、イギリス・ドイツなどの他の先進諸国で推定された捕捉率(37%[ドイツ]〜80%[イギリス])と比較して、相当に低い数値である。
捕捉率が高いイギリスの制度についてみてみると、イギリスでは「所得扶助制度」という公的扶助がある。これは、稼得収入やその他の収入だけでは日常的必要がまかなえない人々を対象に、資力調査により、その不足分を一週間ごとに現金支給する制度である。また、「社会基金制度」では、所得補助で対応できない個々の世帯の一時的、または特別なニーズに対して六種類(コミュニティ・ケア助成金、緊急貸付金、生活費貸付金、葬儀支出金、寒冷気候支出金)の支出・貸付けが行われる。この「所得扶助制度」は1996年のデータによると、全人口の約 17%、約960万人が受給しており、実際の捕捉率は1994・5年の推計で給付費ベース88%〜92%、取り扱い件数で76%〜83%とされている。
一般世帯に対するセーフティ・ネットとして、日本の生活保護制度はほとんど機能していないが、イギリスのように生活保護制度が充実していればワーキングプアの存在は極めて低い水準に抑えられることが可能になるだろう。
わが国の捕捉率が低い理由は、前述した通り、第一に適正化によって相当厳格な資格審査、所得調査、資力調査が課されていること。それに加え、第二に、家族・親族に経済支援の能力があれば、生活保護の受給資格が認定されないこと。第三に、そもそも生活保護制度に対する十分な情報を低所得世帯が入手しておらず、そのことで申請に二の足を踏んでいること。第四に、恥の文化によるものか、なかなか生活保護の権利を行使しない人が多いこと、である。最低賃金が有効に機能していなくても、生活保護が最後のセーフティ・ネットとして機能していれば、これほどまでに貧困層が生まれることはなかったといわざるを得ない。
(引用ここまで)
そんな中から、相談員や支援者など、誰かと一緒に役所の窓口に申請に行くと、「水際作戦」を破って(?)申請が受け付けられやすいなどの「ノウハウ」が生まれてきました。生活のかかった切実なノウハウです。そんな切実な「ノウハウ」の一つが、「申請の時の様子をビデオ撮影する」というものですが、それを犯罪扱いする実例が大阪府柏原市福祉事務所で出てしまいました。恐ろしい話です。
以下、抗議集会からのレポートを読みます。特に、レポートしている一人、「広島瀬戸内新聞ニュース」ブログのさとうしゅういちさんは福祉事務所職員でもあり、その内容は的確です。
●JanJanニュース
■水際作戦の福祉事務所「逆切れ」、生活保護申請者不当逮捕
さとうしゅういち 2009/11/30
http://www.news.janjan.jp/living/0911/0911283759/1.php
福祉事務所(昔は都道府県、今は多くの地域で市町村に事務移譲されています)は、生活保護申請のために来た人には、申請はさせないといけません。申請をさせずに追い返すのは「水際作戦」と呼ばれています。申請用紙を渡すまえに職員が理由をつけて追い返すことにより、保護の件数を予め抑制しようという手法ですが、もちろん、違法行為です。
その「水際作戦」=違法行為を働いた福祉事務所が、逆切れし、申請者を警察に訴え、警察が申請者を「不当逮捕」するという事件が大阪府内で発生しました。
10月27日朝、大阪の非正規労働組合「ユニオンぼちぼち」の組合員でもあるAさんは、いきなりやってきた大阪府警によって家宅捜索をされ、職務強要罪で令状逮捕されました。29日に送検、勾留延長もされ11月16日に起訴されてしまいました。
■「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる
さとうしゅういち 2009/12/25
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912244747/1.php
8月18日、Aさんは、生活保護申請書を受け取ろうとしない職員に対して、証拠保全のためにビデオを回し「公務員でしょ。申請させてください。ちゃんと対応してください」「生存権を保障してください」「ユニオンチューブ(労働組合の動画サイト)っていうのがあるんですよ」と抗議しただけです。
抗議を受けた職員は、即座に警察を呼び被害届を出します。それに対してAさんはユニオンぼちぼちの組合員に電話をしました。そして、第三者が間に入ることで職員も誠実に話を聞くようになりました。そして翌日、Aさんが14日付の申請の取り下げと再申請を行った結果、8月31日に保護決定がなされます。
決定前の27日に、組合員が同行して福祉事務所を訪れた際、職員は被害届の取り下げを検討する旨を伝えていました。
また無事に保護決定がなされたこともあり、取り下げは行われたものだと判断していました。当たり前です。違法なことをさせたわけではないと福祉事務所も認めているのですから。しかし福祉事務所は、Aさんの言動が脅迫的な行為にあたるということで「職務強要罪」で刑事告訴をしていたのです。
10月27日に「職務強要罪」で突然、逮捕されたAさん。同時に、組合の事務所も、大阪府警の暴力団担当課に捜索されます。そしてAさんは、11月16日には大阪地検により、起訴されてしまいました。
起訴状では、「保護開始申請書の受理及び保護決定の処分をさせるために脅迫を加えたもの」とされています。しかし、申請書の受理は法律で定められた義務です。受理しようとしなかった福祉事務所職員こそ、違法行為をしています。また生活保護自体は逮捕後も廃止されていません。不当な決定はなかったと福祉事務所自体が認めています。もちろん撮影された映像の公表もされていません。
にもかかわらず、今なお、勾留が続いています。そして、12月11日には職業訓練校から退校を命令されてしまいました。拘留されている為に授業に出席できない。そこで、「正当な理由なくして授業の2割以上を欠席した」として退校命令が出たのです。
せっかく自立へ向けて歩んでいたAさんの生活は無茶苦茶になりつつあります。
橋口委員長は「市民の自立を助けるべき福祉事務所が、警察に解決を任せ、A君の自立を踏みにじった」と憤りました。
■なぜ生活保護申請に同行者が必要なのか?
海形マサシ 2009/12/25
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912244745/1.php
この事件に関して、弁護士の山本志都さんは、職務強要罪の適用要件を満たしていないと説明。そもそも、この罪状による判例は極めて少ない上、男性が自らの権利を主張し、カメラで撮った映像を流すサイトがあるという事実を述べたまでであるため、この逮捕と起訴は、政治的判断によってなされたものであると考えていいと述べた。
日本では検察に起訴されると99%以上の確立で有罪となる。つまりは、かなりの確証と有罪にする意志がないかぎり立件はされず、政治的な動機で検察が動くことが大いにあるのだ。
集会の講演者としてNPO(自立生活サポートセンター・もやい)の稲葉剛氏は、増大する生活保護申請の水際阻止作戦に、支援団体が同行申請して受理させることに対する、行政のさらなる阻止作戦として、今回のような逮捕劇に至ったのではないかと述べた。
また、映像撮影者の立場から、山川宗則さん(Media Champon)と根来祐さん(フリーター全労働組合ムービーユニオン)は、カメラがあるのとないのとでは、行政の接し方が変わり、撮影が抑止力になることがあるので、それに対しての萎縮効果を狙って、今回のような逮捕がなされたのではないかと危惧をつのらせた。
しかし、この事件の根源的な問題は、逮捕された男性の行為が適切であったかなかったかということではなく、なぜ、男性がカメラを持ち込まなければいけなかったのか、また、なぜ、申請を福祉事務所に受理させるのに、支援団体が同行しなければいけないのかということだろう。
(引用ここまで)
当秘書課広報室としてはもっと早くに取り上げるべき事件でしたが、なんとしても無罪を勝ち取らなければならない事件だと思います。無罪以外の結論はありえません。
もし有罪とされるなら、日本は、「冷たい行政を必死に動かして生存権を求めることが罪とされる国」ということになるのですから。
一人でも多くの人にこの事件のことを知ってほしいと思います。
このような事件を白日のもとにさらし、多くの人に伝えるため、上のJanJanの記事の中の根来祐さんと山川宗則さんの発言が、「映像による記録」の重要性を強調しています。強調のためにもう一度引用します。
●JanJanニュース
「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる
さとうしゅういち 2009/12/25
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912244747/1.php
さらに、フリーター全般労組・ムービーユニオンの根来祐さん、Media Champonの山川宗則さんからは「カメラと公共性」ということで問題提起がありました。
根来さんは、フリーター全般労組が主催するデモなどでカメラを担当しておられます。「(公安刑事など)公務員の違法行為を抑止する機能をビデオ撮影は持っている」。「生活保護でも、水際作戦により死を選ぶしかない状況の予防につながる。カメラがあることで、心の持ちようも違ってくる」と指摘しました。
そして、「一人の偉大なジャーナリストより、100人の市民がカメラを回して表現することが大事ではないか」と提起しました。
山川さんも、「今回の事件で、行政行為が不透明化」しかねない、と懸念しました。
(引用ここまで)
カメラ付き携帯電話がこれだけ一般に普及している現在、なにか異常な弾圧がされているときに、素人であってもフットワーク良く手持ちの携帯電話でその現場を撮影することが、生存権をかちとるために、言論弾圧とたたかうために、要するに民主社会の実現のために、とても重要になりうるのだと思いました。
最後に、民主党員であるさとうしゅういちさんの締めの言葉を引いておきます。
●JanJanニュース
「生活保護申請を記録して逮捕って何だよ!?」抗議集会開かれる
さとうしゅういち 2009/12/25
http://www.news.janjan.jp/living/0912/0912244747/1.php
今回起きたことは、結局、行政(憲法遵守義務がある)生活保護申請をなかなかさせないでおいて、憲法25条の生存権を侵害する。それはおかしいと、国民が声を上げたら、「職務強要罪」などとこじつけて逮捕する。
結局、「人権を保障できないものだから、力で押さえつけるしかない」今回の事件はそういう構図で捉えられます。この事件は、どこかほかの貧しい国ではなく、日本でのことなのです。
そして、逮捕要件は政権交代前の事件であるにしても、逮捕自体は政権交代後に起きている。このことに、わたしは現与党第一党の一員としても衝撃を受けています。
政権を変えた「だけ」ではだめなのだ。そのことは残念ながら認めないといけない。まずは、Aさんの釈放を勝ち取らないといけません。生存権を求めることを、押さえつけるようなことを許してはいけない。
それと平行してマクロ的な課題にも取り組まないといけない。自治体が水際作戦に打って出る背景にある地方の財政難を打破せねばならない。小泉政権による地方交付税のカットなどによるダメージを回復しないといけません。そういう政策を現政権が取るよう内部から求めるのも義務だ、と感じます。
(引用ここまで)
このような事件は、日本では国民主権、基本的人権の尊重という民主主義思想が根付いていない証拠の一つだと考えられます。民主社会として未熟な日本では、ジミントーから民主党連立政権に交替したことだけでは民主政治はほとんど何も実現しないのだと思います。政権交代だけで安心してはいけないということです。民主党員であるさとうしゅういちさんの言葉は説得力があります。
このような具体例を通じて、民主政治の実現を民主党と議員に強く意見する有権者の姿勢がますます重要になるということです。