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http://www.the-journal.jp/contents/futami/2009/12/post_11.html
日本のマスコミもアメリカも、頭を冷やして考えよ
16日、鳩山総理は、アメリカの脅迫的な要求をしりぞけ、普天間問題の結論を、三党合意を盾に来年に先送りした。翌17日のマスコミの反応は予想どおりとはいえ、厳しいものだった。日本経済新聞は社説「普天間先送りが深める日米同盟の危機」の中で「日米同盟の空洞化と対中傾斜に対し懸念を覚える」と述べ、読売も社説で「普天間移設 展望なき『越年』決定は誤りだ」と、アメリカ国防総省の宣撫班に成り下がっている。
普天間移設問題の原点は沖縄の歴史にある。太平洋戦争では本土防衛の捨石にされ、戦後、今日まで、アメリカの世界戦略の要石という名の捨石の役割を強いられ、また、本土を米軍の基地化から守る防波堤という現実である。11月のマスコミ各社の世論調査によると、「年内に辺野古移設で決着しないと、日米同盟に重大な亀裂が生じる」というマスコミの、戦時中の大本営発表を思わせる脅しにもかかわらず、「朝日」は「見直して再交渉」が54%に対し「移設合意を守る」は28%に過ぎない。「毎日」は「県外国外を目指し、米と再交渉」50%、「辺野古移設認める」22%、「読売」も「合意どおり進める」は31%に過ぎず、「少しは修正」「大幅に見直す」見直し派は51%である。「NHK」も「合意どおり」は23%である。「フジTV」が12月10日に行った調査でも「沖縄県民の思いを重視する」が55.4%で,「日米同盟を重視する」34.4%を21ポイントも引き離している。この調査で注目すべきは「連立政権の維持を重視する」が6.0%しかないことである。マスコミは民主党が社民党に引きずり回されたと酷評しているが、国民は政権絡みではなく、人間としての尊厳を奪われてきた沖縄県民の心情を真正面から受けとめようとしているのだ。マスコミの浅薄で冷酷な沖縄観とは天地雲泥の差があると言えよう。
マスコミや自民党は「日米同盟の危機」を喧伝しているが、日米同盟は普天間問題がこじれたくらいのことでガタが来るほどもろいものなのかと、反論したい。アメリカは強大な国ではあるが、中国や日本に国債の大半を買ってもらってアフガンやイラクの戦費を賄っているのだから、もはや覇権国ではない。かつては、アメリカがくしゃみをすれば日本は風邪をひくと揶揄されたが、いまでは、日本が(あるいは中国が)アメリカの国債を売却すると表明すれば、アメリカ経済は瞬時に崩壊し、そのあおりをうけて、世界が壊滅する危険もあるのだ。「日本は米国債を脅しに使え」と唆しているわけではない。世界は、各国がそれぞれ、不満を抱えながらも、譲り合わなければ生きていけない、共生を模索する時代に入っているのである。アメリかにその時代認識がなく、軍事力で脅そうとする従来の世界戦略に固執するのであれば、世界から軽蔑されるだけだ。日米同盟の中で軍事は重要ではあるが、経済など、軍事以外の分野での協調と関係強化こそ肝要なのである。
「日経」は「対中傾斜に懸念を覚える」と主張している。中国は一党独裁を堅持しながら、経済では資本主義的手法を取り入れた結果、沿海都市部と内陸農村部間の所得格差が拡大して胡錦涛政権の不安材料になっている。また、党幹部の腐敗・汚職、頻発する暴動、少数民族問題と人権など多くの不安定要因を抱えていることは周知の通りである。このことを百も承知の上で、オバマ大統領は「米中関係は21世紀をかたちづくる最も重要な二国間関係」と位置づけ、7月29日の米中戦略経済対話では「米中が安全保障、経済など世界をとりまくさまざまな問題をめぐり共通の利益を目指していくことで一致」したのである。オバマは「風雨同舟」(運命共同体の意)と述べたという。他方、世界経済の軸足は、アメリカから中国などアジア新興国に移りつつあるとの見方もある。日本経済を立て直すためにも、中国やアジアとの結びつきを強めることは大切である。「日経」の主張は、時代の大きな流れを見失ったアナクロニズムだ。
アメリカによれば海兵隊が沖縄に駐留する理由は、朝鮮半島有事と中国に対する牽制である。
しかし、北朝鮮が韓国に侵攻するシナリオは考えられない。韓国の政治的・経済的な地位は朝鮮戦争の時とは格段に違う。当時、北朝鮮を全面的に支援した中国は、現在では韓国を承認し、友好関係にある。また、中国のGDPはアメリカに次ぐ世界第二位で、アメリカとの関係も、体制の違いを超えて良好である。その中国が国益を犠牲にしてまで北朝鮮を全面支援するとは考えられない。むしろ、「北」の、自殺行為に等しい暴発を抑えるのに苦労しているのだ。
私は、北朝鮮がソウルを奇襲攻撃するために38度線を越えて掘削したトンネルを視察したことがある。また、レダーに映らない、木製のステルス戦闘機を保有しているので、北朝鮮には短期間の、部分的な奇襲攻撃をする能力はあると推察しているが、一か月以上戦える国力・経戦能力はない。「北」の暴発は、米韓空軍の空爆と韓国地上軍の反撃で、金王朝のみならず、国そのものの崩壊をまねくだろう。そんな愚を犯すほど金正日はバカではない。アメリカ自身が第二次朝鮮戦争というシナリオを想定していないのだ。むしろ私が恐れるのは、金王朝が崩壊し、それに代わる統治能力のある政権がなく、無政府状態になって、膨大な難民が近隣諸国に流れ込むことである。1994年、「北」が「核開発」を振りかざし、「20分でソウルを火の海にする」と恫喝したとき、私は運輸大臣だった。「日本には30万〜50万人の難民が押し寄せるかもしれない。難民の中に不穏分子が紛れ込んでくるだろう。これに対処する体制は日本には全くない」ことに愕然としたのである。
北朝鮮が無政府状態になったとき、事態を収拾できるのは、中米韓ロ日を中核とする国連PKOで、アメリかの海兵隊はむしろ、邪魔である。
ところで、米海兵隊の任務はなにか。96年12月、ペリー国防長官(当時)は「万が一、朝鮮で戦争が起きた場合、海兵隊は、初期において重要な役割を果たすであろうが、戦争に注ぎ込まれる兵力全体に占める割合は大変に小さい(very small)ものとなろう」と述べた(注)。「初期の重要な役割」とは在韓アメリカ人の救出である。日本が期待している朝鮮有事に備えるという、米海兵隊の沖縄に駐留する前提は崩れているのである。
海兵隊の歴史は存続のための戦いだった。トルーマン大統領は強烈な海兵隊廃止論者であり、後に、大統領になったアイゼンハワー陸軍参謀総長も廃止論者だった。海兵隊が生き残ってきたのは、軍事上の必要性からではなく、猛烈なロビー活動の成果であった。いうなれば、アメリカ国内の「軍閥のヘゲモニー争い」である。米ブルッキングス研究所のM・オヘロン主任研究員は「沖縄の米海兵隊は死活にかかわるような戦略上の重要性を持っていないし、日本に駐留している他のいかなる米軍施設にもまして日本国民と日米同盟関係にストレスを与えている」と述べている。海兵隊の沖縄からの撤退こそ日米同盟の深化・強化に必要だと思う。
中国の軍拡路線には厳しい態度が必要である。マスコミは報道しなかったが、600人を引き連れて訪中した小沢一郎幹事長は、11日、北京市内で会談した梁光烈国務委員・国防部長に、中国軍の近代化、軍備増強について「日本にとっても、日中両国にとっても、将来決していい結果をもたらさない」と自制を求めた。今回の小沢訪中を朝貢外交にように騒ぎ立てる一部マスコミは、悪意に満ちているのか狂っているのかのどちらかである。台湾と中国の関係は「通信、通商、通航」の三通が自由化され、経済の結びつきは堅い。中国が武力で台湾を制圧することは考えられないが、万が一、台湾海峡で米中が一戦交えることになれば、即第三次世界戦争となろう。それを抑止できるのは、国際世論であり、軍事的な側面からみれば、中国の自制と米第七艦隊である。沖縄駐留の米海兵隊の出番はない。
2月17日、小沢一郎民主党代表(当時)は、クリントン国務長官が日米合意の沖縄海兵隊問題について理解を求めた際、「米軍再編問題は、両国で世界戦略を話し合い、その合意のうえで個別問題に対応することが大事だ。今までの日本政府は、自らの主張を主張し得ないところに問題があった。北朝鮮は核のカードを手放すとは思えない。それ以上に、中国問題がより大きな問題だ。中国発展に市場主義を入れたことは大きいが、諸刃の剣で市場主義と共産主義は相いれない。矛盾が表面化するだろう。中国問題が世界にとって最大問題。中国の民主化をいかにして行うかが日米にとって最大のテーマだ」と述べた。海兵隊問題は、沖縄の問題にとどまらず、「日本の世界戦略やいかに」という発想が要求されることを自覚しなければならない。
それとともに、沖縄の再生について「本土人」も沖縄県民の苦しさを自分のこととして考えるべきである。1971年、「基地つき、核つき返還反対」と叫んでいた私は、沖縄の友人から「基地抜き、核ぬき返還に大賛成だが、基地に依存してきた我々は、それだけでは明日からメシが食えなくなる」と言われ、沖縄問題の深刻さ、複雑さに愕然とした。普天間飛行場の移設先として辺野古の沖合を埋め立てるよりも、海上に、鉄板を浮かべて作る浮体工法のヘリポートのほうが環境への負荷は少ないと言われていたとき、沖縄政界の有力者から「浮体工法で儲かるのは、石川島播磨や三菱重工業など本土の大企業だ。埋め立てなら島内の土建屋ばかりでなく、労働者が仕事にありつける」と言われた。普天間が返還されても、元の姿に戻さなければ県民の生活にプラスにはならない。そのためには膨大な経費が必要になる。財務省が金科玉条としている「財政規律」の枠外で対処する覚悟が必要だろう。
ジョン・レノンは歌った。
Imagine all the people Sharing all the world You may say I'm a dreamer
But I'm not the only one I hope someday you'll join us
And the world will live as one
「想像してごらん すべての人々が この世界を分かち合っているのだと。いつの日か、世界は一つになるのだ」
夢想家だと笑わば笑え。厳しい現実に真正面からぶつかる勇気こそが、夢に一歩、一歩近づくのだと私は信じている。
沖縄の自立が始まろうとしている。マスコミはアメリカや自民党時代の理論や発想の呪縛を断ち切り、新しい、将来を見据えた発想で沖縄の自立に寄与すべきではないだろうか。
(注:植村秀樹「海兵隊沖縄駐留論の再検討」
投稿者: 二見伸明 日時: 2009年12月22日 00:29 | パーマリンク