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「経済コラムマガジン09/12/21(597号)
・今年を振返って
・日本だけは二番底へ?
本誌は今週号が本年の最後であり、ちょっと今年を振返ってみようと思う。色々とあった中で、一番のトピックスは、やはり政権交代と個人的にはそれに伴って亀井さんが金融・郵政担当大臣に就任したことである。
亀井静香氏は、自社さ政権の画策者や自・自連立、自・自・公連立の中心人物の一人と目されている。世間にはこのような政権工作が得意で、政局の人と思い込んでいる人々がいる。しかし筆者は、亀井さんは政策の政治家と思っている。自民党時代の政調会長や今の閣僚と言ったポストが似合っている。今、本人も生き生きと活躍している。
亀井大臣は、手際良く臨時国会で債務返済猶予法案(中小企業金融円滑法案)と日本郵政改革法案を仕上げた。特に債務返済猶予法案は臨時国会での成立は無理ではないかと危惧されていた。筆者も、せいぜい金融庁の検査マニュアルを年内に見直す程度と思っていた。
ところで今後この法律が実効を上げるかが注目される。実効が上がらない場合は手直しも必要であろう。筆者は保証協会の保証割合が4割になっているのが気になる。4割程度で本当に銀行が債務返済猶予に応じるかということである。
保証割合が4割と低くなった背景には、新銀行東京の乱脈融資が影響している気がする。審査能力のない新銀行東京が返す気がない者にどんどん融資を行い、不良債権を大量発生させた。このことをきっかけに、信用保証協会の保証割合が10割から8割に引下げられたと聞く。また保証付き借入の申請書類の作成が大変になったようである。もし返済猶予法案の実効が上がらない場合は、保証割合を引上げることも検討する必要があると考える。
次は今年の日本経済を振返る。やはり昨年9月のリーマンショック以降の異常な消費の減少によって、世界的な急速な経済の落込みがあった。日本でも昨年10〜12月さらに今年1〜3月のGDPは二桁のマイナス(年率)を記録した。3月までの在庫調整は過去にちょっと経験したことがない規模であった。
さすがに4月以降はこの反動が起り、また新興国から経済の復興が始まった。さらに各国が財政と金融の両面から対策を講じたため、世界経済は最悪期を脱出した。少なくとも9月までは世界の経済は回復を示している。日本も麻生政権の景気対策と輸出の持直しによって7〜9月は低いながらプラス成長に転じた。
問題は10月以降の経済の動向であり、はたして二番底があるかということである。11月に米国の対前月の物価変動がプラスに転じ、金融緩和政策の転換が早まるのではないかという観測が流れている。しかし筆者は、これは米ドル安によるものであり、米国経済はまだ底を這っていると見ている。中国などの新興国の経済が力強く回復しているといっても、最終需要国である米国の存在は依然として大きい。新興国の経済発展に期待する声が大きいが、これらの国の経済規模は決して大きくない。
今後も米国の経済動向が世界に及ぼす影響が大きいのに、米国経済を軽視する論調が大きいのが気になる。筆者は、日本を除き他の国の回復は鈍るか、あるいは米国のように底を這うことになると見ている。しかし日本だけは二番底に向かって再びマイナス成長に戻る可能性が高いと感じている。
・景気ウオッチャー調査
筆者は、直近の経済の状況を一番適切に伝えてくれる情報は景気ウオッチャー調査(街角景気)と見ている。同じ内閣府の発表する景気動向指数やGDPの速報値より、筆者はこちらの方を信頼している。特にGDPの速報値は、集計が遅過ぎること、また設備投資のブレが大き過ぎることなど問題が多すぎる。しかし社会的にはGDPの速報値が一番重要視されている。ところでGDPの速報値は実質値ばかりが注目されているが、デフレが続く日本では名目値がもっと重視されるべきであろう。
12月8日公表された11月の景気ウオッチャー指数は33.9と前月から7.0ポイントも低下した。これは調査開始以来、最大の下落である。しかし科学性に劣るという理由なのか、景気ウオッチャー調査は軽視されている。同日に公表された10月の景気動向指数の一致指数の方は7ヶ月連続の上昇を示している。しかし景気ウオッチャー指数は数カ月前から既に足踏みから下落傾向を示していた。
景気動向指数は、権威はあるが景気ウオッチャー調査(街角景気)に比べ経済の動向を正しく示しているとは言えないと、筆者はずっと思っている。景気動向指数のデータは、過去から経営が継続している優良企業から得られたものと考えられる。このような企業は経営基盤がしっかりしており、悪い数字がなかなか出てこないのである。
日銀などの調査にも言えるが、継続してデータを取れる企業は決して平均的な企業ではない。ところがこのような優良企業のデータを元にした経済数字は良く見えるので、政府や与党にとって都合が良かったのであろう。しかしこのため政府の経済対策が常に遅れるのである。世間の実感からかけ離れたこれらの数字を信じて経済を語っていたから、自民党は支持者を失ったのである。
筆者は、10月あたりから、再びかなり急激に日本経済は落込み始めたと見ている。前段で日本経済だけが二番底に向うリスクがあるという根拠の一つは、この景気ウオッチャー調査(街角景気)の結果である。
日本では、ケインズ経済学上では考えられないことが起っている。給与や賃金が下落しているのである。ケインズ経済学は賃金の下方硬直性を指摘している。一方、新古典派経済学では労働への需要が減れば、賃金が下がることによって失業が発生しないことになっている。これに対してケインズ経済学では賃金には下方硬直性があり一定以下には賃金は下がらず、失業が発生するとしている。
ケインズの指摘は、当時の英国で大量に出ていた失業者の発生メカニズムを説明するものであった。ケインズのこの失業理論は欧米では程度の差はあるが今日でも有効である。ただ日本だけが例外となってきたのである。
今年、日本では、給与やボーナスのカットが平気で行われた。賃下げは公務員の俸給にさえ及んでいる。一方、失業率は依然先進国の中で一番低い。これらの現象を見ていると、日本の労働市場だけが、新古典派経済学の理論が適用される世界になってしまったと見られる。
20年前までは考えられなかった給与やボーナスのカットが公然と行われるようになって(ボーナスはカットされることがあっても、給与がカットされることはなかった)、国民の可処分所得が大きく減っている。日本経済が二番底に向かうのではないかと筆者が考えている二番目の根拠はこれである。景気ウオッチャー調査にもこれがいち早く反映されている可能性が高い。しかし失業率があまり大きくならいことに安心しているのか、民主党連立政権は「国債の発行44兆円の死守」なんてのんきなことを言っている。
今年もなんとか終わりそうである。新年の第一号は1月11日を予定している。では皆様良いお年を。」
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