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2009/12/20 10:00
http://netallica.yahoo.co.jp/news/104777
●大マスコミは少しくらい普天間問題の真相を報じろ
普天間問題の先送りで、沖縄の銀行マンが頭を抱えている。名護市への基地移設の巨大利権をアテ込み、地元ゼネコンにジャブジャブ融資したものの、県外移設の可能性が出てきたことで、回収不能の恐れが高まっているのだ。実は、普天間問題がニッチもサッチもいかない根っこには、この銀行・土建コンビの問題があるのだ。
●オバマ政権は沖縄基地問題の遅れなんかに対して関心はない
なんだか日本人は毎日、アメリカの新聞を読まされている気分だ。鳩山首相の「普天間移設先送り」に対し、以前にも増して日本の大新聞・テレビは「いらだつ米高官」「日米同盟の危機」などと批判キャンペーンを繰り広げている。「このままでは日米合意が白紙に戻りかねない」「自民党時代に合意した現行案を早く実施しろ」と、米政府の代弁まで買って出ているから、「どこの国のマスコミなのか」と言いたくなってくる。こんな報道の洪水に、多くの読者も“洗脳”されているようだが、実際のところは、米政府は、沖縄基地の移設先送りなんかに目くじらを立てていない。アフガンやイラク、イランの問題で頭がいっぱいだ。
米国事情に詳しいジャーナリスト・堀田佳男氏がこう言う。
「オキナワは知っていても、フテンマを知っているアメリカ人はほとんどいません。オバマ政権が抱える安全保障問題で、全体を100とすると、アフガンやパキスタンが80、北朝鮮、中東が15程度。沖縄の基地移設なんて5以下です。今いろいろと米国で反日発言をしているのは、アーミテージ元国務副長官など旧ブッシュ政権下で自民党議員と近かった人たちです。彼らにとっては長い間かけて決めた基地移設が棚上げされるのが許せないのでしょう」
ワシントン支局の日本人記者が、米国務省や国防総省の東アジア担当者にマイクを向ければ、外交テクニックとして、「困った」「早く解決してほしい」くらいなことは言う。それを何倍も強調して「いらだつ米高官」と、日本で報じているのだ。だいたい、「激怒」したことになっているルース駐日大使にしても、米大使館関係者は「怒ってなんかいませんよ」と日本の報道に呆れている。
それに世界を見ても、英の高級紙フィナンシャル・タイムズは、オバマ政権がブッシュ時代のミサイル防衛基地計画を中止した例を挙げて、「新たな日本政府が、徹底的に政策見直しを行うのは当然」と報道。米ワシントン・ポスト紙も「日本はアジアの中で、最も重要で、民主的な同盟国だ」と冷めたものである。
ささいな日米のヒビを無理やり広げて大きくしているのが日本の大マスコミなのだ。
「環境、騒音、安全と言いながら、裏では埋め立ての利権ですから」――。かつて普天間問題について、こう喝破したのは、小泉首相秘書官時代の飯島勲氏だ。事実、1996年の返還合意からの迷走の13年は、利権拡大の歴史だった。
「当初、代替施設の計画は、撤去が可能な海上浮体式(メガフロート)と、くい打ち式(QIP)の2案が有力でした。しかし、代替施設を受け入れる名護市周辺の土建業界が猛反発。『新工法で儲かるのは本土企業だけ』『埋め立てで仕事を沖縄に回せ』と巻き返しに出たのです」(沖縄県政関係者)
票とカネを土建業界に頼り切ってきた自民党政権が、“スポンサー”の意向を無視するわけがない。98年に旧竹下派が中心になって担ぎ出した稲嶺恵一県政が誕生すると、撤去可能案は消え、「埋め立て案」が前提となって事業規模もドンドン膨らんでいった。
「この間、政府内ではコストが安上がりな既存基地への併合案も浮上しましたが、常に『沖縄(の意向)に譲れ』と、自民党の有力者の横やりが入り、潰れていきました。結局、06年に日米間で合意した『V字形滑走路案』は埋め立て工事を伴うため、最低でも4000億円、下手をすれば 1兆円を超える大型公共事業となったのです」(防衛省事情通)
今も地元市長などが、騒音を理由に「現行計画より100メートル沖合に移動せよ」と日米政府に求めているが、バックにいる土建業者が「埋め立て面積が増えて潤う」というのがホンネだ。難クセをつけて利権を拡大させるハラである。
● 鳩山首相が先送りしたのは当然
日米が合意した移設作業完了のリミットは、2014年。V字滑走路建設の工期は3〜5年の予定である。膠着状態にしびれを切らした地元の土建業者は、巨額の埋め立て利権を見込んで、すでに動き出している。
「海上の埋め立てには“キロ石”と呼ばれる巨大な岩石や、莫大な量の土砂が必要です。今から押さえなければ、入札に出遅れます。石や土砂の権利を握るには、かなりの“実弾”が必要。銀行も利権をアテ込んでカネを貸しているのです」(土建業界関係者)
それだけに、県外移設は銀行と土建業者にすればアテ外れ。巨大利権が消えてしまう。埋め立て利権を狙った名護市の土建業者の会長は、沖縄県政を裏で牛耳るドンだ。来年1月の名護市長選や秋の県知事選で、銀行サイドとタッグを組み、巻き返しに出るのは間違いない。鳩山政権が辺野古移設案を残しているのは、ドンへの配慮ともみられている。
普天間移設の経緯のすべてを知る元防衛次官の守屋武昌被告は、最新号の中央公論でこう指摘していた。
〈与野党を問わず有力政治家が普天間移設に必要な土砂の需要を見込んでどこそこの山を買っている、などといった情報が地元ではまことしやかに噂されている。これは一体、何なのか〉
ゴルフ接待漬けで刑事被告人となった男ですらアキれる利権構造。普天間問題混迷の元凶はここにある。それで鳩山首相も、「現行案通りだと、自民党利権政治の追認になってしまう」「かと言って名護市以外に移したら、どんな逆襲を受けるか分からない」と、はざまで揺れているのだ。
(日刊ゲンダイ2009年12月17日掲載)
2009/12/20 10:00 更新