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http://president.jp.reuters.com/article/2009/12/18/9A240836-EB9B-11DE-878D-BD193F99CD51.php
今週、ワシントンから友人が来日していた。大手シンクタンクの研究員である彼は、日米の安全保障問題から東京の食文化までを縦横無尽に語りつくした後、帰国の途についた。 本場の鮨のうまさに目をつぶりながら静かにうなづいたかと思えば、普天間問題が予想以上に日本のメディアに大きく扱われていることに驚きもした。 「フテンマという名前を口に出せるアメリカ人は知日派だけでしょう。アメリカのTVコメンテーターでさえ『沖縄の米軍基地』と表現するのが一般的です。普通のアメリカ人は興味を示していません。日本にきて、あまりの過大報道に驚いています」 普天間問題にかぎらず、日米間には記事のあつかい方に違いがあることが多い。敢えて言わせていただくと、アメリカにとって普天間は瑣末な問題でしかない。 というのも、オバマ大統領が憂慮している世界の安全保障問題を100とすると、アフガニスタン、イラク、パキスタン、イランといった中東諸国の対応に約80が取られる。イスラエルと北朝鮮に15、残りの数パーセントに普天間が入るという構図である。 ところが、鳩山政権と日本の主要メディアの関心事の9割は、いまや普天間移設に向いているといっても差し支えない。 今月15日、鳩山首相が同問題の年内決着はないと判断すると、翌朝の朝日新聞は「普天間袋小路」、日本経済新聞は「日米関係混迷」という大見出しを打った。読売新聞は「日米亀裂」というコラムを始め、日米関係の危機とあおっている。 日経は記事中に「軍事バランスが崩れかねず、リスクも高まる」と書き、鳩山政権の過失によって同盟関係の危機が深まっているというトーンだ。ほとんどの新聞とテレビが鳩山政権を攻める姿勢で共通しており、悲しいほどに暗い論調である。 そんな時、ある夕刊紙に普天間問題について、 「普天間問題で日米関係に本当にヒビが入ると思いますか。両国関係は本当に危機なのでしょうか」 という内容のインタビューを受けた。私はすぐに「ノー」と答え、次のような趣旨の回答をした。 「外交というものは、小さな問題によって両国政府の関係が冷え込むことがよくあります。けれども、政府間交渉に関係のないところで、日米両国はすでに深い根をおろしています。企業間同士のつき合いや、文化人の連携、さらに科学者同士の共同研究など、緻密な関係が崩れることはないでしょう。現在の報道姿勢をうのみにすると危機感を覚えますが、大局的に日米関係を見ると盤石です。ですから交渉決裂というフレーズに惑わされてはいけません」 普天間問題の悲観報道の起源をたどると、アメリカの知日派、特にブッシュ政権時代に自民党とつながりが深かった共和党の元高官たちが発信源であるように思える。 というのも、彼らこそが何年もかけて「再編実施のための日米のロードマップ」を作成し、普天間飛行場代替施設の合意にこぎつけた立役者だからだ。鳩山政権になって自分たちの合意がないがしろにされているため、 「それはないだろう」 との思いを強くしている。 今秋、渡米した時にインタビューしたヘリテージ財団のブルース・クリグナー上級研究員も、民主党政権への猜疑心を隠さなかった。 「鳩山首相はアメリカとの対等な関係を強調しますが、どこまで本当の対等さを望んでいるのでしょうか。軍事的にも対等な関係を目指しているのであれば、アメリカは自衛隊のさらなる貢献を期待しても構わないのでしょうか。それとも財政面での負担を対等にしたいということですか。または国連安保理の取り決めに沿った枠内での活動を積極化させるつもりですか。これまでの伝統的な日米同盟の関係を越えた部分で協力するつもりなのでしょうか」 同氏は鳩山首相の態度が煮え切らないままであれば「日米関係に緊張が走る」とはっきりと言った。 だが、オバマ政権内の高官でいま、アフガニスタンと同じレベルで日米同盟を憂慮している人はいないだろう。 今月4日、ジョン・ルース駐日大使が初めて公の席で講演を行い、招待を受けたので出向いた。公式な見解とはいえ、内容は日本メディアの報道姿勢とまったく逆だった。大使が強調したのは、あらゆる分野で親密に結びついた日米関係はいまでも東アジアの礎であり、これからも発展させていきたいという、バラ色といっても過言ではない肯定論だった。普天間で揺れるいまの両国間にあっては拍子抜けするほどの内容である。 もちろん鳩山政権内の見解の不一致に多少のいら立ちはあるだろう。しかし、それが大きな亀裂に発展し、日米関係の破綻にいたる危険性は低い。ルース大使もオバマ大統領も、もちろん鳩山首相もそれを望んでいない。日本のメディアは騒ぎ過ぎである。 仮に鳩山首相が同盟関係を見直して、真に対等な関係を築くつもりならば、オバマ大統領と東アジアの戦略協議をすべきである。確固とした戦略を立てれば、自然に安全保障問題での行動が見えてくる。アフガニスタンへの協力においても、「憲法上の制約で自衛隊を国際治安支援部隊(ISAF)には送れませんが、日本は民生支援でアフガニスタンを再建します。米軍はいちはやくアフガニスタンでの出口戦略を策定して撤退すべきです」とオバマ大統領に箴言できるはずである。そうした観点を踏まえ、世界の安全保障問題を軸にして普天間問題を眺めると、ライト級であることがわかるはずだ。 |